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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第15話 一夏の大変な宿題

<<   作成日時 : 2011/10/15 22:10   >>

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「なあ、千冬姉…。」
「束が、お前当てに、送ってきたものだろう。なら、お前の物だ。土地の登記手続きやらいろいろ、きちんとしている。束にしては上等だ。」
 千冬姉は、表情一つ変えずに言った。
 驚いたりしないんだな。
 というより、慣れてるんだろうなあ。

 事の起こりは、山形から帰ってきてからの事だった。
 珍しく千冬姉は、仕事が休み。
 と、言っても、家で仕事をしている。
 家で仕事はやめようぜ。
 休みだか、休みじゃないんだか、解らないからな。
 とか言って、俺も新しいISの設計をしているわけだが、これはどちらかというと趣味だ。
 実際に制作されるかどうかも、解らないしな。
 それに、したらしたで、面倒な事になりそうだ。
 というより、イリュジオンを開発した事で、実は既に面倒な事になっている、ビット兵器「オルドル」の事だ。
 セシリアのISブルー・ティアーズにもビットはついているが、使用している間は、制御に集中していなければならない為に、その場を動く事が出来ない。
 ところが、オルドルにはそういう制約が、一切無い。
 この事で、イギリス政府が、俺にブルー・ティアーズの改良を依頼しようとしたら、その事で随分もめているらしい。
 下手にISを作ると、最悪、国際問題に発展する。
 だから、作る事はないだろう。
 デュノア社も、イリュジオンの開発から第三世代の技術を学んで、それを活かしたISを開発可能になってるから、経営危機に陥る事もないだろう。
 それに、あれはシャルロットを理不尽すぎる状況から、何としても助けたかった俺がやった事だ。
 ああいう事でもない限り、誰かのためにISは作らないだろう。
 売りこむ趣味も、ないしな。
 そんな時に、郵便が届いた。

「千冬姉、束さんから手紙が来てるぜ。」
 朝、千冬がディスプレイに映った、生徒達の考課表を見ながら、2学期の指導方針を考えていると、一夏が千冬宛の手紙を持ってきた。
「うん。」
「じゃあ、俺、戻ってるから。」
 一夏は、部屋に戻ろうとする。
「一夏。」
「うん、何だよ?」
「また、新しいISを作る気か。」
 千冬が厳しい表情で、一夏を見る。
「作らないよ。第一、今度からは、よくよく考えて、委員会からの許可が下りない限り作るなって釘を刺したのは、千冬姉じゃないか。設計はしてるけど、勉強と趣味のミックスだぜ。何かあったのか?他の国が、第三世代の改良を依頼してきたとか?」
 千冬は黙って、手紙を一夏に渡す。
「いいのか?読んで。」
「いいも何も、7割方、お前宛だ。」
 頭の上に、クエスチョンマークを浮かべながら、一夏は手紙を読んだ。

『ちーちゃん、久しぶり。元気かな?私は元気だよ。いっくんは、日々、頑張っているかな?もし、怠けているようなら、ちーちゃんがびしっと言ってあげてね。さて、本題。いっくんに宿題だよ。夏休み中に、第三世代ISを1機に、白式用に9月のキャノンボールファスト用の、追加武装パックを作る事。後、束さん特製の課題をメモリーカードに入れておくから、期日までに答えのデータを、ISと、追加武装パックのデータと一緒に、以下のアドレスまで送る事。さぼっちゃだめだよ。剣の稽古は一生懸命やっているんだろうけど、IS戦は、頭も使わないと強い相手には勝てないんだからね。じゃあね。ふぁいと♡
がんばれば、ちーちゃんが、一緒にお風呂に入ってくれるよ。なんだったら、束さんが入ってあげようか?小さい頃は一緒に入ってあげたからね。研究開発施設は、この住所にもうあるからね。土地も建物も一君の名義だから、自由に使っていいよ。開発資金はこの口座に入っているから。』

 ……………

 つまり、あれか?
 夏休みの間に、第三世代ISを1機作って、白式用の追加武装パックを作って、束さんの課題を片付けるのか…。
 俺は助けを求めるように、千冬姉を見る。
「お前の課題だ。自分で片付けろ。学園の宿題はあらかた片づけたのだろう?ならば、こっちに時間を割いても問題あるまい。一緒に風呂に入るぐらいは、別にかまわんぞ。それとも、束がいいか?」
 千冬姉は、何故か、にやりと笑って言う。
 どっちと入っても、死亡フラグが点灯するからいい。
 
 その時、携帯が鳴った。
 ラウラか。
 委員会から俺の護衛の命令を受けているラウラは、隣の家を買って、周囲を警戒している。
「私だ。何かあったのか?頭を抱えていたようだが。」
 隠すと後が面倒そうだ。
「ふむ。成程、解った。まずは、その住所の所に行こう。この辺りの地理は把握しているが、周辺にトラップを仕掛けられる可能性も高い。その前にこちらが、警備システムを設置したいからな。すぐ、そちらに行く、銃とナイフは携帯しろよ。」
 こんな昼日中でも、俺は狙われるのかよ。
 はあ、たまらんな。
 俺は部屋に戻って、ホルスターをつけて、愛用のUSPを収め、バタフライナイフを後のポケットに納める。
 玄関には、デザートイーグルをホルスターに収めた千冬姉がいた。
 もう少し、威力のある弾丸を使える銃も持っておけと言われるので、また見に行く事になる。
 後で、ネットで情報を入手しておくか。

 その住所には、窓の無い、白い立方体状の建築物があった。
 ラウラが、シュバルツェア・レーゲンを部分展開して調べる。
「罠の類は、ないようだな。しかし、どうやって入るかだ。」
 そうなんだよな。
 何と、入口らしきものが一切ない。
 これで、どうやって、入れっていうんだ?
 俺は、ふと、壁に触れると、壁の一部がスライドして入口が出来た。
「おそらくは、ISのコアナンバーに、専任として登録されたパイロットのバイオメトリクスデータ。さらに待機状態のISを身につけている人間の、バイオメトリクスデータの全てを使って認証している。ロジックはさすがに解らんがな。」
 バイオメトリクスは、認証装置を欺瞞する方法は意外に多い。
 故に、コアナンバーに、束以外に解体不能なISのコアに登録されているバイオメトリクスデータを使用し、さらに待機状態のISを専任操縦者が身につけている事を条件にしている。
 ラウラは、そう結論付けた。

 おっ。明かりがついた。
 こっちは設計のための、部屋か。
 大量のラックサーバーが、ラックに差し込まれている。
 その横には、大容量ディスクが置かれている。
 ディスプレイとキーボードは、空中投影式。
 金かかってるなあ。
 どこに、こんな物作る大金があるんだ?
 って、ISの開発者である束さんは、関係する特許を山のように持っているので、その特許料たるや、目の玉が飛び出るほどだ。
 これくらいは、訳ないんだろうな。

 隣の部屋は、給湯室兼休憩室になっている。
 コーヒー、紅茶、緑茶に、ウーロン茶、ハーブティー各種。
 大型浄水器まで、設置されている。
 至れり尽くせりとは、この事だな。
 落ち着きながら、考えまとめるのには、ちょうどいい。
 さらに、その隣の部屋はバスルームと、ベッドにテレビ、市販のノートパソコン。
 泊まり込み用の部屋だな。間違いない。

「開発・整備区画か。さすがに、一番広いな。」
 明かりをつけて、千冬姉が、区画を見渡す。
 IS開発・整備する道具も、揃っている。
 パーツの新造も、データを入力すればオートで出来るようになっているし、微調整をするための機器も各種揃っている。
「ここなら、白式のキャノンボール用の追加パックも、新しいISもできるな。」
 コアは、メンテナンスベッドの横に、置いてあった。
「ラウラ。もう、外部からの侵入は不可能だから、大丈夫だぜ。」
 常に周囲を警戒しているラウラに、声をかける。
「癖のような物でな。それに100%大丈夫な事態というのは、ないものだ。お前も気を抜くなよ。」
 いや、気はぬいていないけどな。
 ホルスターにはUSP、ズボンのポケットにはバタフライナイフが収まっている。
 これだけあれば、ある程度の事態には対処できる。
 なければ、ガラスや、植木鉢の破片だって立派な武器だ。
 とりあえず、この施設の全容を把握しておくか。

 設計の為の、サーバールームで、サーバーを起動させる。
 電力は、発電区画には、束さんが開発した小型大出力の発電機が数基ある。
 外壁は全て、太陽光発電のパネルで、こちらはバッテリーにためている。
 よし、とりあえず、やるか。
 ええと、まずは、時間がかかるISから行くか。
 あ、そうだ。
 千冬姉達は、帰らなくていいのかな。

「私は、これから帰るところだ。ボーデヴィッヒはどうする?」
「ここにいます。私は護衛の任務がありますので。」
 最近は随分丸くなってきたとはいえ、やはりラウラは軍人である。
 任務を放りだす気はなかった。
「そうか。では、好きにしろ。ところで、一夏。ここから出るときはどうするんだ?」
「ああ、こちらから操作するんだ。」
「そうか。では、帰るが夕飯時には戻ってこいよ。」
 そう言って、千冬は帰って行った。

「さてと、ラウラ。」
「ここで見た事は、見なかった事にしてくれだろ?解っている。安心しろ。」
 ISの開発をするとなると、新装備が実装される事も多い、当然それに関し得の詳細は国家機密である。いかにクラスメイトとはいえ、明かす事は出来ない。
 無論、ラウラは弁えていた。

 さて、いくかと。
 メインフレームは、既に設計が終わっている。高い機動性を持つ汎用的なISがコンセプトだ。
 イリュジオンの時もそうだけど、あまり偏った設計思想は、俺は好きじゃない。
後は兵装か。
 白兵戦は、刀だとありきたりなんだよな。
 かと、言って、長柄武器は、懐に飛び込まれると不利になる。
 普段は刀で、必要に応じて柄を取りつけるか。
 いや、むしろ、瞬時に切り替わる方がいいかな。
 ただ、シャルロットのラピッド・スイッチを、他のパイロットに期待するのは無理のように思える。
 あれは、シャルロットの類まれなる判断力があってこそ、なせる技だ。
 とすると、完璧にとはいわないが、ある程度再現できないかな。
 よし、白兵戦用の兵装は、その方向で行くか。
 拡張領域は、ちょっと多めにしておこう。
 射撃兵装は、もう考えている。背部に高出力荷電粒子砲二門、極高初速レールカノンを二門ずつ。
 荷電粒子砲は肩にマウントして、レールカノンは腰だめに撃つ。
 サブアームをつけておけば、銃身のブレを最小限にできるだろう。

 後は第三世代兵装か。
 こいつが一番の問題だな。
 これで、ISの戦い方自体が決まるとも言える。
 戦い方か…。

 ん?待てよ…。
 汎用的なISは、様々な状況でも戦える。
 でも、弱点が無いわけじゃない。
 その弱点を補うには…。
 よし、大変だけど、これにしよう。
 俺は、早速、設計を始めた。

「織斑先生…。」
「どうした?オルコット。」
 一夏が開発に入って7日。
一夏を訪ねてきたセシリアを出迎えたのは、千冬だった。
「あ、あの、一夏さんは…?まさか、他の方とデートだなんて事は!?」
『あり得るとすれば、シャルロットさんですわ。かなり積極的な所がおありですから。』
「落ちつけ、オルコット。一夏は、束から宿題を出されてな。食事の支度以外は、家にはいない。鳳にデュノア、篠ノ之にも、そう言ってある。」
「え?という事は…。まさか、皆さん、一夏さんの所に!?」
「行っているだろうが、一緒ではないだろうな。そう簡単に入れる所ではないからな。」
 そう言って、電話の横にあるメモに住所を書いて渡す。
「ま、行くだけ、行ってみたらどうだ?さっきも言ったが、簡単に入れないが、それでいいならな。」
「私、行ってみます!失礼しました。」
 頭を下げて、携帯のGPSに住所を素早く入力して、その場所に向かう。

 う~ん。
 さすがに、これを第三世代兵装にするのは、難しいな。
 予想より、大分かかる。
 全自動食器洗い機買ったのは、正解だったな。
 大分、設計の時間を稼げる。
 にしても、夏休みで、IS1機と白式のキャノンボールファスト用の、追加武装パックを作れなんて、無茶苦茶だよ。
 まあ、メインフレームは、7割方、組み終ってるけどな。
 開発・整備区画では、各種機器がISのフレームの組み立てに入っている。
 別のスペースでは、高出力荷電粒子砲と極高初速レールカノンが、間もなく組み立てが終わろうとしている。
 確か、明日からは、千冬姉は仕事で、週末まで帰ってこない。
 その間、泊まり込みでこいつを完成させよう。課題の方も片づけないといけないしな。
 てか、あれが、IS学園の生徒に対して、やらせる課題か?
 どう考えても、研究者クラスじゃないと、無理だっての。
 とにかく、ここに籠って3日で特殊兵装を完成させて、2日で組み立てと、最終調整。
 今、並行して、幾つかのタイプでシミュレートさせている白式用の高機動ユニットの結果を踏まえて、2日で設計を済ませて、千冬姉が夏季休暇に入るまでに組み立てる。
 かなりのハードスケジュールだけど、これしかない。
 それにしても、資材を発注してから、届くまでの早さが凄い。
 なんか、そっち方面に特殊なパイプでも持ってるのか?束さんは。
 まあ、いい。
 とにかく、早く終わらせる事に、集中しよう。

「ここですわよね。」
 目の前の、窓の無い建造物を眺める。
 壁を触ってみるが、磨き上げられた大理石のような感触で、入り口らしきものもありそうには見えない。
「本当に、ここに一夏さんが?」
 訝しみながら、周囲を一周する。
 しばらくすると、電話がかかって来る。
「はい。箒さん。どこにいらっしゃいますの?」
「目の前の、喫茶店だ。解るか?」
 セシリアは目の前にある喫茶店に、すぐに気がつく。
「で、そこで、何をしてらっしゃいますの?」
「とにかく、来い。」
「解りましたわ。」
 電話を切ったセシリアは、その喫茶店に向かう。

 さて、基本的な部分は完成したな。
 後は、それぞれの設計をすまればいい。
 難しいと思ったけど、コツをつかむと、だいぶ進む。
 予定より、早く終わりそうだ。
 荷電粒子砲と、レールカノンも威力は設計通りで、異常なし。
 各スラスターも問題はない。
 うん、順調、順調。
 夕食の時間か、今日はここまでにするか。
「ラウラ、帰ろうぜ。そうだ、夕飯、家で食ってけよ。」
 そう、誘うと、ラウラの顔は真っ赤になる。
「い、いいのか?」
 もじもじしながら、聞いてくる。
「ああ。ラウラも夏休みは、何時も食事は1人だろ?偶には皆で食べるのも、悪くないぜ。」
「じゃ、じゃあ、遠慮なく。」
 暑いからって、そうめんとかばっかは駄目だよな。
 ラウラは、レーションで済ませてる可能性も捨てがたいな、よし、豚しゃぶをメインにするか。
 たれは、市販品だと味が濃すぎるから、自家製だな。
 後は、味噌汁とサラダにするか。

「出てきたわよ。って、ラウラじゃない!!」
「ラウラさん…。まさか抜け駆けなさるなんて…。」
「やってくれるね。油断してたよ。」
「まさか、ラウラが。」
 喫茶店で監視していた4人から、なにやら怨念のような物が漂ってきて、他の客は、怯える一方だった。

「「「一夏!」」」
「一夏さん!」
 な、何だ?
 鈴に、シャルロット、箒、セシリア。
 何で、こんな所にいるんだ。
「さあ、一夏さん。説明してもらいますわよ。」
「な、何だよ。いきなり。」
 いきなり詰め寄られたって、理解できないだろうが!
「いきなりも何も、ないわよ。ラウラと二人で、何してたのよ!?まさか、あ、あんたたち、その、あの…。」
 何、真っ赤になってるんだよ?鈴
「私は、一夏の護衛だ。そばにいて、当然だろう。それのどこか不思議だ?」
 ラウラが、鈴にそう訊く。
「そ、そういう問題ではなくて、一夏さん。中で何をなさっていたんですか。」
 いや、ここで言うと、結構まずいんだよ。
 しょうがないな…。
 俺は、携帯を取り出す。
「千冬姉?俺。夕飯だけど5人増えるけどいいか?解った。」
 俺は携帯を仕舞う。
「とりあえず、家で飯を食いながら話す。」
 家なら、大丈夫だろう。

「篠ノ之博士からの課題だったの?」
 サラダを一口食べた、シャルロットが驚く。
「そういう事だよ。第三世代機だから、開発に時間がかかるんで、束さんが用意してくれた、あの研究所に籠りっきり。」
 イリュジオンは前々から、構想を温めていたし、デュノア社のスタッフもいたから二週間で完成したけど、今回は俺だけだからな。
「おまけに、白式用の追加武装パックねえ。で、それはいいとして、どうして、ラウラがいるのよ?あそこなら、狙われる心配はないでしょう?」
 鈴は豚しゃぶを一切れ食べて、ラウラに訊く。
「あそこは、狙撃に適したポイントが周囲に幾つかあるし、奇襲をかけられるポイントもある。そうなれば、私も任務として同行する必要がある。海外からの不審人物は生徒会が調べているが、一夏の周辺は私が受け持つ事になっている。」
 味噌汁を一口飲んで、ラウラが答える。
「それにしても、篠ノ之博士は、どうして、一夏さんにISを作るように言ったんでしょうか?イリュジオンの時でさえ、委員会は揉めに揉めたと言うのに。」
 セシリアの言う事も、もっともだ。
 そこの所は、どうなってるんだろうな。
「千冬姉は、どう思う?」
 家にいるときは、さすがに織斑先生とは呼ばない。
「各種手続きをきちんとやっている事から、委員会とも話を着けたのかもしれんな。もしくは、例の奴への対応策の一つかもしれん。」
 あれか…。
「教官。それは、やはり、あのゴーレムシリーズというやつですか?」
 ラウラが一応確認のために、千冬姉に訊く。
「ああ。やりあったお前たちなら解るだろうが、スペックは高い。何せ、あの機動性だ。パイロットがどんな訓練を受けて、耐えているかは知らんが、各国の代表候補が全員あれに勝てるとは限らん。その為の、布石とも言えるだろう。」
 ゴーレムシリーズが、無人機である事を知っているのは、この中では俺と、千冬姉だけで、口外無用だ。だから、千冬姉も、あの機動性にパイロットが耐えているのが不思議なように言う。
「それで、一夏。あと、どれくらいで完成する、もし、私の予想が正しければ急いでほしいんだが。」
「明日から、千冬姉は学園で仕事だろ。その間は戻ってこないから、俺はあそこに泊まり込むつもりだよ。あと、5日で組み立てと最終調整を済ませるつもり。」
 これでも、相当な強行スケジュール何だけどな。
「5日を、今日の夜と、3日に短縮できないか?」
 いや、それはちょっと、無理だって…。
「無茶です!それでは、一夏が倒れます。確かに、一夏のISに関する知識は学生とは思えませんが、それでも生身の人間です。それをお解りになっていないはずはないでしょう!?」
 箒が激高して、テーブルを叩く。
「解っている!だが、イリュジオンの件があったにもかかわらず、一夏がISを開発する事が可能になっていると言う事は、何かが蠢いていると言う可能性が否定しきれない。学園が狙われる可能性もある。場合によれば、学園の誰かがそれを使うかもしれん。学園が二度も襲撃を受けているのは、それだけ問題になっているのだ。」
 IS学園は、各国のエリートが集まっている人材の宝庫。
 特に代表候補や専用機持ちは、エリート中のエリートである。
 例え、国家代表になれなくても、企業や軍から引く手数多。
 拉致して、自分たちの手駒にする事を、否定するのは無理だろう。
 以前の、テンペスタUの件もある。
「解った。出来る限り、希望に添えるようにする。」
 千冬姉が、黙って頷く。

「一夏。本当に大丈夫なのか?」
 箒が心配そうに、俺に声をかける。
「大丈夫も何も、やるしかないだろう。前の臨海学校の襲撃を思い出してみろよ。あれだけの戦力を投入しても、俺達は勝っちまった。となると、向こうがどうするか、見当もつかないからな。出来る限り、早く仕上げるしかない。幸い、後は第三世代兵装だけだしな。何とかなるさ。」
 俺は箒の肩を、安心させるように叩いた。
「一夏…。」
「じゃあ、さっさと片付けてくる。」
 俺は走って、戻った。
 さて、ぱっぱと終らせるか。

「推力安定。設計通りだな。これが一番手っ取り早く済むからな。」
 朝になる頃、一夏はISの開発を、夜を徹して続けていた。
 別のモニターには、制御システムが自動生成されている。
 これは、設計図とも言えるフローチャートを入力すると、大まかなプログラムを自動生成して、技術者がそれに指示を加えると、それをプログラムに反映させる。
 これを繰り返して、完成に近付ける。
「よし、次の段階に行くか。その前に、シャワーを浴びて、目を覚ますか。」
 一夏は、シャワーを浴びて、眠りそうな自分に喝を入れる。
 そして、次の段階に入る。
 一部、白式を参考にして、一夏は時間を短縮する事にした。
 白式の制御システムをベースに、システムを作るように、設定をして、ハードの作業に入る。完成する頃には、既に夜になっていた。

 3日後、俺の目の前には、完成し調整も終了した、スカイブルーと白のカラーリングのISがある。
 第三世代IS「巴御前」
 白兵戦、砲撃戦、防御に徹した持久戦。
 全てをこなす、汎用型ISとして設計した。
 白兵戦用兵装として、プラズマ薙刀「巴型」、プラズマ刀「虎徹」、縄標状の腕部内蔵奇襲兵装「大蛇」、高出力荷電粒子砲「閃電」、極高初速レールカノン「飛燕」。
 そして、第三世代兵装として、疑似展開装甲「戦衣」搭載。
 これは、展開装甲を部分的に再現したもので、相手に合わせて、攻撃型か、高機動型か、防御型か、どのタイプに特化するかを戦闘前に、予めセッティングすることで、展開装甲の機能の一部を再現する事が可能になっている。
 待機状態は、プラチナの台座のサファイアリングだ。
 とにかく、完成したな。
 千冬姉に知らせるか。
 体がふらふらして、うまく、視界が定まらないな。
 確か、圧搾式のカンフル剤の類があったよな。
 疲労回復なら、一番軽い奴で十分か。
 ラウラが、注入部と圧搾空気付きのアンプルを、注射器に取りつけて、注入部の先端を腕に押し当てて、スイッチを入れる。注射器が圧搾空気でアンプルの中身を押し出して、注入部を通して、薬剤が俺の体内の血管に入り、体の中を駆け巡る。
 薬が効いてくると、定まらなかった視界がクリアになり、意識もしっかりしてくる。
 ふう。生き返った気分だぜ。
 さすがに、ドラッグストアで買ったら、3000円はするクラスのドリンク剤と同クラスの効果のアンプルだぜ。
 って、こういうのに頼るって、俺はサラリーマンかよ。
「一夏、大丈夫か?」
 ラウラが、心配そうに俺の顔を見る。
「ああ、大丈夫だ。アンプルが効いてきたよ。ラウラの顔もしっかり見える、綺麗の銀色の髪の毛もな。」
 いつもより、なぜか綺麗に見えるラウラの銀色の髪を、俺はそっと手に取った。
「そ、そうか。それは、良かった。」
 ラウラが、顔を真っ赤にする。
 俺、何かやったか?

 さて、白式の高機動ユニットはどんな具合だ?

 やっぱ、どのシミュレーションも苦戦してるな。
 今の白式のスペックは、高機動用パックを追加した第三世代ISと同等以上だし、背部の大型スラスターがスペースを取ってるから、追加スラスターの類を装備するのがかなり難しい。

ん?この概念、面白いな。
これなら、大丈夫か。
 追加スラスターも、搭載できるしな。
 後は、マイクロミサイルポッド、追加スラスターで構成される腰部ユニットに脚部の追加スラスター。
 よし、これでいこう。
 俺は、各部を修正して、設計図を描く準備をしておく。
 さて、学園に行くか。

「そうか。完成したか…。済まんな、相当な無理をさせたと反省している。だが、事態が事態だ。ゴーレムシリーズの件は、委員会にも相当な衝撃を与えている。」
 だろうな。
 総合性能ではISに劣るが、それでも、相当に高性能な兵器である事に変わりはない。
「早速、データを見せてくれ。」
 俺は、データが入っている、メモリーカードを渡す。

「近距離、中距離、遠距離。全て、こなし、拡張領域の兵装の呼び出し時間を短縮。機動性もかなり高いな。それにしても、よく、これを完成させたな。」
 千冬が言っているのは、巴御前の特殊兵装、戦衣だ。
 事前に機能をセットしておけば。高機動型、防御型、攻撃型、戦闘の最中に、それぞれに特化したISとなる。
「凄いですね。展開装甲の簡易版とでも言うのでしょうか。これを特殊兵装にして実装するなんて。」
 真耶は驚きのあまり、目を丸くする。
 疑似展開装甲、もしくは簡易型展開装甲とでも言えばいいのか。
 ごく最近、日の目を見たばかりの、第四世代技術の展開装甲を、限定的とはいえ短期間で完成させた事は、さすがの千冬も驚かざるを得なかった。
『だが、委員会が知ったら、さらに一夏の処遇が面倒な事になるな…。』
 各国が、一夏をスカウトして自国の代表にするとともに、一夏の技術を我が物にしようと考えている事は、有名な話である。
『束の奴、一体、何を考えている?』
 親友とはいえ、一夏にここまでISに関する技術を叩きこんだ束の意図が、まだあるように見えて、仕方がなかった。
「とにかく、ご苦労だったな。医務室で検査を受けてから、タクシーで帰って、ゆっくり休め。」
 千冬は自分の財布から、1万円を渡す。
「タクシー代には、充分なはずだ。それに、何か栄養のある物を食べておけ。」
 そう一夏に言う。
「ボーデヴィッヒは、引き続き、一夏の警護にあたってくれ。それと、生徒会の監視の途中経過だ。目を通しておいてくれ。」
「はっ!」

 さてと、どうするかね?
 飯食いに行くにしても、どこがいいんだろうな。
 携帯で、どこかいい店がないかを探す。
「一夏。ここはどうだ?」
 ラウラが指さしたのは、イタリアンのバイキングレストランだった。
 様々な、イタリア料理にサラダやデザートか、良さそうだな。
「じゃあ、ここにしようぜ。ラウラ。」
「ああ。」
 さて、栄養取って、ゆっくり休みますか。
 明日からは、白式の高機動ユニットの開発に、束さんの宿題も待っているしな。

「で、一体、どういうつもりだ。束?」
「どう思う?ちーちゃん。」
 夜、千冬しかいない宿直室で、対防諜シールドを作動させて、千冬は束に連絡を取っていた。
「一夏の周りに、また、護衛をつけるのか?」
 千冬の表情が、鋭さを増す。
「そっ。IS委員会のサーバーのかなり厳重なプロテクトがかかっている部分に、面白そうなテキストファイルが入っていたから、読んでみると、そう書いてあったんだ。連絡先のアドレスを使って、聞いてみたら、向こうも、いっくんが誘拐されるのを、かなり警戒しているみたいだよ。だから、専用機持ちでも、国家代表でもない生徒から、後で専任をきめるから、ISを作ってくれって頼まれたの。ま、私がやってもいいんだけど。ほら、いっくん、学園で凄い人気でしょ?だから、そのいっくんのお手製ISなら、潜在能力も引き出せるかなと思ってね。」
「まったく…。一夏の方は、精密検査の結果、何の異常もなかったとはいえ、こういう事は慎んでくれ。」
 ポーカーフェースではあったが、一夏の検査結果は非常に気にしていたので、今回の様にハードスケジュールでISを開発させるのは御免こうむりたかった。
「解った。ちーちゃんの、ううん、私にとっても大切な弟だからね。箒ちゃんと同じくらいにね。後で設計開発のサポートユニットをいっくんのラボに送っておく、これでだいぶ楽になるはずだよ。」
「頼む。」
 電話を切った千冬は、誰にも見せないような、ほっとした表情を一夏は見せる。
「大変だよね。可愛い弟や妹がいると、お姉ちゃんとしては。」
 心から箒や一夏を慈しむ表情を見せると、束は設計図を見ながらキーボードを叩くのを再開した。

後書き
夏休みって、楽しいですよね。
でも、宿題は大変。
最初は、「あっ、これなら楽勝じゃん。」と思っても、その内、疲れてきた経験があります。
そして、ゆっくり満喫できたのは、私は、残り1週間くらいでしたね。
そんな事を思い抱いていたら、じゃあ、一夏の宿題の話を書く事に決めました。
まあ、学園のはさっさと終わってしまうので、出すのは束さんなんですが。
しかし、これも一夏に関係ある事。
タイトルはそれと絡めてみました。
第三世代IS「巴御前」
専任になるのは、誰でしょうかね?

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