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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第11話 パニック・イン・ザ・シー <後編>

<<   作成日時 : 2011/09/03 20:28   >>

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「じゃあ、箒ちゃん動かしてみて、いつもどおりに行けるはずだよ。」
「はい。じゃあ、一夏、先に言っているぞ。」
 紅椿が一気に加速して、上昇する。
「うんうん。さすがだね、私。それじゃあ、いっくんも試してみようか。新しいパーツとのマッチングも見て見る必要があるしね。
「わかりました。」
 白式を上昇させるが、加速度30%アップは伊達じゃない。
 こりゃ、すごい。
 紅椿と大差ないな。
「びっくりしてるね。箒ちゃん、紅椿はどうかな?」
「はい。さすがに第四世代ですね。」
 う〜ん、やっぱり固いな。
 束さんが自ら手掛けたんだから、もうちょっと喜ぼうぜ。
「いっくんの方も、不具合はないね?もう少し動かしてから、どっちも整備する必要はあるけどね。じゃあ、まずは、箒ちゃんの兵装から試してみようか。データは目を通したよね。」
「はい。」
 量子化されていた、二本の紅椿のブレードが実体化する。
「じゃ、「雨月」、行ってみようか。」
 束さんがそう言って、箒が右のブレード「雨月」を横に薙ぐ。
 すると、ライフルのようなレーザーが一斉に発射されて、小さな雲に穴をあける。
「はい、次。「空裂」ね。」
 そう言うと、シー・スパローの8連装発射機をトレーラーに載せた物が実体化して、紅椿に一斉に発射される。
「はっ!」
 箒が左の「空裂」を横に薙ぐと、シー・スパローは全て破壊される。
 凄え…。
 近接戦闘に、中距離戦闘もこなせるのかよ。
 成程、確かに万能型だ。
「やるな、点と面か。」
 ラウラが、ぽつりと呟く。
 そう、雨月は複数の点にたいする攻撃力。
 銃に例えるならば、アサルトライフル。
 空裂は面に対する制圧力。
 こちらは、榴弾砲といったところか。

「ほんじゃあ、いっくんね。箒ちゃんより、ハードル高いよー。まずは、高速機動での近接戦闘力のテストね。目標を発射するから、斬撃だけで全部さばいてね。あ、それと、雪片参型は全てのモードを試してね。」
 うわあ、きついな。
 でも、やるしかないか。
「頑張りますよ。これでもIS学園最強ですからね。」
「織斑君、頑張れ!」
「ファイト!」
 箒の時と違って声援が送られる、まあ、姉妹ってだけで専用機持ちになれたんだから嫉妬もあったんだろうし、紅椿の性能に声も出なかったんだろうな。
「じゃあ、スタート。」
 小型ブースター付きの装甲板が、次々と向かってくる。
 俺は、参型を右手に、弐型を左手にして、次々とさばいていく。
 最初は双方共に、弐型も参型も物理ブレードで装甲板を切り裂いていく。
 参型は、弐型に比べて切れ味が増してる。
 少ししていると、アップデートされた白式のスペックが体に完全に馴染んだ。
 すると、それを見計らったように、装甲の強度が増す。
 俺は弐型の零落白夜を、発動させる。
 エネルギー無効化の能力を備えると同時に、威力も増すからだ。
 そして、俺は参型の残りのモードの内、エネルギーブレード・モードを発動させる。
 参型の刃の部分が変化し、零落白夜とは違う、エネルギー状のブレードが形成される。
 これは、荷電粒子を特殊な磁場で刃の形にする。
 その切れ味は、零落白夜には劣るが、従来の物理型ブレードを大分凌ぐ。

「うんうん。さすがだねえ、いっくん。スペック30%増しの白式を、完全に使いこなしているし、二刀流も完全に飲み込んでいるね〜。」
 一夏の流派は明王流といい、一刀流である。
 篠ノ之流の手ほどきを受けた経験があるとはいえ、二刀流は本来の戦い方ではない。
 だが、新旧の雪片を見事に使いこなして、装甲板を切り裂いている。
「あれ位は、出来て当然だ。IS学園最強は伊達ではないぞ?」
 はしゃぐ束を、横目で見ながら千冬がいう。

 ぼちぼち、強度が増してくる頃だな。
 じゃあ、参型の最後を試すか。
 参型の最後のモード。
 それが、零落白夜だ。
 再び参型が変化し、日本刀状の参型の刃を、零落白夜の光が覆う。
「はあああっ!」
 スピードを限界まで上げながら、左右の零落白夜ですれ違う装甲板を全て斬り裂く。

「凄い…!」
「織斑君。あんなすごい機体を、使いこなしてるの…。」
「さすがに、IS学園最強ね。国家代表の更識先輩に勝ったのは伊達じゃないか。」
 生徒達は、全ての装甲板を切り裂いた一夏を見て、驚きの声を上げる。

「ご苦労さん。な、わけなくて、不意打ち!」
 俺の背後に実体化したトレーラーから、一本のミサイルが発射される。
 って、おい。
 ロシア製のヴルカーンじゃないですか!!
 全長11.7m
 直径88cm
 翼幅3.2m
 ミサイル本体の重量4.6t。
 対艦ミサイルの中でも、かなりのヘビー級だ。
 対空ミサイルに改造したな。
 ここまで来ると、いじめですよ!
「一夏!」
「一夏さん!」
 シャルロットとセシリアが、俺を心配して叫ぶ。
 二人とも、さすがに、この手の知識は、当然あるか。
 心配させるのは、好きじゃないから、きちんと壊して見せるか。
 対艦ミサイルの中でも、かなりのヘビー級だ。
 正直、結構きつい。
 ミサイルは、索敵・誘導装置に信管が最前部に、中央が燃料区画、最後部が飛翔制御等の構造になっている。
 最後部を破壊すれば、推進力を失ったミサイルは海に落ちるだろうが、ただ、確実に期するとすると、やはり完全に破壊するのが望ましいな。

 俺は急旋回しつつ、ヴルカーンの側面に出て剣技を繰り出す。
 明王流三叉撃。
 三連続の斬撃で相手を圧倒する技を、紅椿で言う雨月のモードで繰り出し、それぞれの部分をハチの巣にして破壊する。

「はい、次、こっち〜。」
 ちょっと待って下さいよ!
 何で、03式中距離地対空誘導弾が18発も、飛んでくるんですか!?
 しかも、高度は上だし、俺より先行してるじゃないですか!!
「大丈夫。いっくんなら、やれるよ〜。」
 気楽に言わないでください!!
 なんて、怒っている場合じゃない。
 俺は、急上昇して、上を取る。
 そして、急降下しながら、再び剣技を繰り出す。
 明王流囲い散らし。
 三叉撃と同じ系統の剣技で、剣の軌跡が檻を作るようにして、最後にとどめの一撃を加える。
 今度は、空裂と同様のモードで制圧攻撃の牢獄を作って、駄目押しの一撃を加える。
 よし、テスト終了。

「うんうん、さすがはいっくん。でも、ここまで成長していると、束さんとしては例外のメニューを試したくなるんだよね〜。何しようかな〜。ぐぎぎ…。」
 束の眉間に、千冬のアイアンクローが炸裂する。
「いい加減にしろ。私の教え子を、遊び道具にするな。テストは充分だろう。第一、白式も紅椿も追加パッケージがないのだから、これでテストは終了だ。」
「解ったよ〜。ほんの軽い冗談だってば〜。」
「なら、悪ふざけはよせ。いいな。」
 ここまで言われては、さすがに束としても何もできなかった。

「織斑、篠ノ之、ご苦労だったな。」
 千冬姉からスポーツドリンクを、受け取る。
 まったく、束さんも、無茶苦茶やるよ。ホント。
「箒、紅椿はどうだった。」
 隣でスポーツドリンクを飲む箒に、紅椿の換装を訊く。
「ああ、これならいける。お前の手助けの一つも、できるようになるぞ。」
 うん?どういうことだ。
 なんか、妙にうれしそうだな。
「い、いや、お前はここの所、運が悪いようだから、その時には、助太刀をしてやるという事だ。」
 何、真っ赤になってんだよ?
 まあ、確かに、俺はここの所、いろいろ運が悪いしな。
「じゃあ、その時には頼むな。」
「ああ、任せておけ。」
 箒が嬉しそうに笑う。

「どうかなあ?紅椿と、パワーアップした白式は?」
 束さんが換装を聞きたくて、うずうずしながら歩いてくる。
「はい。さすがに見事でした。ありがとうございます。」
 なんだかなあ…。
 でも、幼なじみとはいえ、プライベートに嘴突っ込むのもなあ…。
 昔は、仲良かっただけに元に戻ってほしいけど、他人の家庭環境に無暗に首を突っ込むほど子供じゃないつもりだ。
 今は、機会があれば、さりげなくアドバイスをする事にしよう。
「うんうん、喜んでもらえてうれしいよ。丹精込めて作った甲斐があるね。で、いっくんはどうだった?」
 今度は、俺か?
「30%向上って、頭で考えるより凄いですね。びっくりしましたよ。」
 本当にびっくりしたぜ。
 例えるなら、遷音速の機体が、いきなり超音速になるようなもんだからな。
 最初は戸惑った。
 そうだ、それと訊いておきたい事があった。
「それより、雪片参型に、何で紅椿の雨月と空裂の機能が備わっているんですか?ブレードモードと両立させると、燃費の面が相当問題になりますよ。」
 そう。
 参型の中距離戦闘機能は、恐ろしく燃費が悪い。
 零落白夜のシールドエネルギー消耗に関しても20%効率がよくなったが、それを帳消しにしてしまう燃費の悪さだ。
「実はね〜。参型は白式の専用武装として開発を始めたんだけど、紅椿にも装備させて二刀流にしようと思ったんだ。けど、いっくんの言うとおり燃費は悪いは、設計の結果から整備性も悪いから、ブレードモードを外したうえで、機能を分けて二刀流にしたのが、雨月と空裂なんだ〜。」
 要するに、参型は、期せずして雨月と空裂の試作型になったわけか。
 なるほど、それなら納得がいくな。
 でも、これ整備が相当面倒だな。
 そこらのISの装備より、整備の時間が必要になるな。
「あ。でもでも、消費エネルギーは、雨月、空裂と同じだけど、威力は30%増しになるように再設計しているからね。攻撃力では、白式は紅椿には決して劣らないよ。」
 まあ、確かにデータを見るとその通りですけど、これ、使いどころが難しいな。
 さて、今晩は戦術を考えるのに費やすとするか。

 その様子を、サン・アントニオ級ニューヨークから、双眼鏡で眺めている、1人の女性軍人がいた。
「へえ。あれが、ロシアの国家代表を破った奴の腕前かよ。そして、篠ノ之束博士が自ら設計開発したIS、白式。新しい兵装が装備されたみたいだな。あの赤いのも、篠ノ之博士が開発したISか。」
 大胆な、赤のマイクロビキニを着た女性の名を、イーリス・コーリング海軍中尉という。
 第三世代ISファング・クエイクを専用機とする、アメリカの国家代表である。
「傍迷惑な事を、考えていないでしょうね?イーリ。」
 サングラスをかけて、パレオ付きの純白のホルターネックのビキニを着けた、鮮やかな金髪の女性が、自制を促すようにイーリスに言う。
 彼女の名は、ナターシャ・ファイルス海軍中尉・
 海軍で、ISのテストパイロットを、務めている。

「いいだろ、別に。今回は、専用機持ちとの合同演習もあるんだ。ちょっとぐらい挨拶してもよ。」
「今は、向こうのISもテスト終了後のチェックやらエネルギーの補充で忙しいのよ。子供じゃないんだから、自重してね。また、始末書を増やしたいの?これ以上増えると、降格の可能性も出てくるわよ。」
 イーリスは血の気が多く、その行動から始末書を何度も書かされて、現在ではアメリカ海軍で彼女より始末書の数が多い軍人はいない。
 実力はあるが、相当の問題児であった。
「やっぱ、この水着大胆すぎるな。着替えてくるわ。」
 そう言って、イーリスは艦内のロッカールームに向かった。

「一夏は、パッケージを使った事があるのか?」
「ああ。訓練の時に、いくつかな。」
 お互い、パッケージがない俺と箒は、実習を見学していた。
 特に、箒はパッケージを使用した経験がないので、非常に興味深く見ている。
 中には、機体の性格が一変するのもあるのだから、当然だろう。
「まあ、紅椿は万能型だから、必要ないんじゃないのか?それに、束さんの事だから、まだ、なにか機能を隠してるぜ。パッケージもオートクチュールも必要ないくらいにな。」
 オートクチュールとは、専用機の機能特化パッケージの事だ。
 さすがにこればかりは、俺も使った事がない。
 見た事は、一度ある。
 日本の国家代表で、俺のISでの戦闘技術の教官岩本一尉が、「後学の為に、見ておいた方がいいだろう。」といって、超高機動戦用のオートクチュールを見せてくれた事がある。
 あそこまで機能を特化して、それを活かした戦い方を挑まれると、相手は弱点を突かないと相当きついだろうなと、俺は思ったことをよく覚えている。

「いっく〜ん。箒ちゃ〜ん。整備とエネルギー補充。終ったよ〜。」
 束さんから、整備と補給が終わった事が伝えられる。
「さて、受け取りに行こうぜ。」
 箒と一緒に、受け取りに歩き始めた。

「一夏。」
「ん?なんだ?箒。」
 箒が一夏に、何かを頼みそうになる。
「その、何だ。私も専用機持ちになった事だし、だが、追加パッケージはない。このまま見ているのも何だから、その…。」
「手合わせでもするか?」
 箒が言いたい事を、察した一夏が訊く。
「あ、ああ。よろしく頼む。」
 それぞれ、ISを展開して海に出た。
 その時、各国の艦艇が集結しているポイントから、一機のISが飛び出していった。

 何だ?
 何で、揚陸艦や輸送艦の集結地点から、ISが出てくるんだ。
 誰か、ISでも運んで来たのか。
 なんて、呑気の事を言っている場合じゃないか。
 いきなり、ナイフが飛んでくるんだからな。
 俺は参型で、叩き落とした。

「おー、やるじゃねえか。一撃で全部弾き飛ばすとはな。」
 タイガーストライプのISを装着した、俺と箒より年上の女性操縦者が、感心したように言う。
「箒。手合わせ始めようぜ。」
「おいおい。シカトはねえだろ。合同演習の為に、せっかく、日本まで来たんだぜ。」
 そうか、3泊4日の臨海学校の最後のスケジュールは当日発表になっていたが、そうだったのか。
 とすると、これはアメリカの第三世代型ISファング・クエイクか。
 武装は、拳とナイフだけのシンプルなIS。特殊兵装を搭載し、重武装の傾向がある昨今のIS開発の流れにむしろ逆らう感じなので、印象に残っている。
「あたしは、イーリス・コーリングアメリカ海軍中尉。そして、アメリカの国家代表だ。お前が、イチカ・オリムラだな。世界で唯一人、ISを動かせる男にして、ロシアの国家代表を破って、IS学園最強にのぼりつめたって奴だろ?悪いが、ここで勝負してもらうぜ。そっちの嬢ちゃんとの勝負は、後にしてくれや。」
 ぶつかり合った両の拳が、火花を散らす。
 やれやれ、なんでこうなるんだか。
 確かに、運がないな。最近の俺。

「あれは、ファング・クエイク!何故…?」
 双眼鏡で見たISをライブラリで検索した真耶は、結果に驚いた。
「演習は明日。ふむ。なるほど。アメリカの国家代表は血の気が濃いという事か。一秒でも早く、一夏とやり合いたいらしい。」
 驚く真耶とは対照的に、千冬は事態を把握していた。
「揚陸艦ニューヨーク。聞こえますか?こちらはIS学園教師、マヤ・ヤマダです。これは一体どういう事ですか?合同演習は明日のはずです。説明を求めます。」
 実際、今回のイーリスの行為は、外交問題に発展する可能性すらある。
 真耶としては、アメリカ軍の真意を聞く必要があった。

  説明を求められた、ニューヨークのブリッジは上を下への大騒ぎになっていた。
 艦長のマクドネル大佐は、頭から湯気が噴き出しそうに激怒していた。
「誰だ!?あの、じゃじゃ馬を外に出したのは!!」
「艦長、落ちついてください。現在、確認中です。ミスヤマダ。こちら、ニューヨーク副長メイヤー中佐だ。現在、詳細を確認中。しばらくご猶予を戴きたい。」
「了解しました。但し、そちらに誠意が見られない時には、武装教員部隊を動員して事態の収束にあたりますので、その事は承諾していただきます。以上です。」
 マクドネルをなだめながら、副館長のメイヤーが真耶の通信に応えるが、真耶からの返答はいたって強硬だった。
「まずいですな。事と次第によっては、我々は、委員会の査問会議に、軍法会議のセットが待ち構える事になりますぞ。オペレーター、コーリングに通信をつないでくれ。」
「アイサー。ん…?」
「どうした。」
「コーリング中尉の方で、通常回線の通信を切っていると考えられます。更新不能です。」
「何て事だ!」
 メイヤーは頭を抱える。
「後は、ISのコアネットワークだけか…。やむを得ん。非常用通信回線を開く準備をしておいてくれ。」
「しかし、あれは平時に使うには、問題が…。」
「もう、充分非常時だ。国際問題になってからでは遅い。その前に、何としても、我が軍で事態を収拾せねばならん。」
 オペレーターにそう答えて、メイヤーはマクドネルに向き合う。
「いざとなれば、私が責任を取ります。ファイルス中尉を向かせます。どちらにしろ明日には、お披露目。一日早まるだけです。」
 半ば開き直って、最終的な対応策をマクドネルに提案する。
「やむを得んか…。しかし、最終的な責任を取るのは私だ。ファイルス中尉に連絡。ISスーツに着替えて、ヘリポートに待機させろ。」
「アイサー。」
『まったく、何で、あんなアイダホ出身のじゃじゃ馬が、我が国の国家代表なんだ?何で、他の人間じゃないんだ?何で、大人しく農家にでも嫁いで、丹精込めてジャガイモ作りに専念していないんだ。』
 軍人としてふるまいながらも、マクドネルは心の中で、この事態を呪っていた。

「おら、いくぜ!」
 速い。
 完全に、CQCに特化した設計なんだろう。
 その状況を作る為に、加速と機動性は高い。
「はあっ!」
 参型の雨月モード(俺が名付けた)で、迎撃する。
 コーリング中尉は、もろに弾幕に突っ込む。
「きたねえぞ!近接型なら、白兵戦で勝負しろ!それでも、男か!?」
 別に、汚くないでしょう。
 追加されたモードを、使っているだけなんだから。
 でもまあ、あまり言われ続けるのも、趣味じゃない。
「じゃあ、お望み通り。」
 左右の雪片の零落白夜を、発動させる。
「よ〜し。それでこそ、男だ。行くぜ!!」
 ファング・クエイクの背部に4つあるスラスターの内、2つでイグニッションブーストを使い、一気に距離を詰めようとする。
 甘いな。それじゃまだだ。
 俺は、落ちついて相手の動きを読みながら、間合いに入った瞬間に、雪片で連撃を繰り出して、ファング・クエイクのシールドエネルギーを一気に削り取る。
「なっ!」
 さすがに、一気にシールドエネルギーが減った事に、相手も驚愕した。

「強い…。訓練に入ったのは、確か去年の9月よね。1年も経たずに、あれ?悪いジョークよ。」
 ノートパソコンにカメラを取り付けて、ディスプレイで、一夏とイーリスの戦いぶりを、ナターシャは見ていたが、明らかに一夏が圧倒している。
 零落白夜や、白式の機体性能の事もあるが、ナターシャが驚いていたのは、一夏の技量だった。
「さすがに、初代ブリュンヒルデの唯一人の弟というところかしら。」
 そう呟きながら、ナターシャは自分が出る必要はないだろうと考えていた。

『くそっ!なんて奴だ、隙がねえ…。』
 一気に相手の懐に飛び込んで、殴り倒してやろうと考えていたイーリスだが、それが極めて困難だと悟った。
 幼いころからの鍛錬、ISに適性にある事が解ってからの、過酷な訓練の日々、そして、IS学園に入学してからの経験が、一夏の潜在能力を見事に引き出していた。
 そして、それに白式は見事にこたえている。
『確率低いけど、やるしかねえな。』
 ファング・クエイクの特殊兵装、個別イグニッションブースト制御機構。
 これを使用して、背部の4基のスラスターの個別連続イグニッションブースト。
 成功すれば、凄まじい高機動性能が得られるが、成功率は40%である。
 それほど、制御が難しかった。
『いくぜ。』
 ファング・クエイクのもう一つの武装。
 ナイフを、両手で投げつける。
 無論、一夏にそんな物が通じないのは、織り込み済みだ。
 その間に、イーリスは意識集中させる。
「うおおおっ!!」
 イグニッションブーストで、一夏に迫る。
 スピードに乗った一撃を、一夏に喰らわせようとするが、一夏はそれを読んでかわす。
『やっぱ駄目か。なら次はどうだ?』
 再び、イグニッションブーストで迫る。
「速い!」
 個別連続イグニッションブーストは、スラスターごとに独立させて、イグニッションブーストを使う。
 そして、使うごとにスピードが爆発的に増す。
 これが、ファング・クエイクの切り札だった。
 だが、スラスターごとのイグニッションブーストは、制御が難しい為に、成功率が40%と心許ないのである。
 さらにスピードが増したイーリスの一撃を、一夏は再びかわす。
『こう、スピードが増す一方じゃ、その内、対処しきれなくなる。何とかしないとな…。』
 今までなら、一夏でも充分に対処できたが、これ以上となると、どこまでスピードを増すか予想がつかない為に、打開策を模索していた。

「っと!」
 再び加速したコーリング中尉の一撃を、俺は回避する。
「よくかわしたな。だが、トップスピードのあたしとファング・クエイクの攻撃を交わせるか。」
 次が、相手の最大の攻撃。
 俺を仕留めることがだけ考えるなら、必ず、隙が出来る。
 そこを、突く。
「行くぜ!トップスピードのあたしの攻撃を、かわせるか!?」
 さらに、爆発的にスピードを増した攻撃が、一気に迫ってくる。
 まだ早い…。
 もっと、引きつけないと。
 とは言え、あれだのスピードに乗った一撃をもろに喰らえば、こちらも唯じゃ済まない。
 だが、あのスピードじゃ逃げても追撃されるのが、オチだ。
 あと少し…。
 そして、それは来た。
『今だ!』
 拳が、白式の肩部装甲を僅かにかすりながら、俺達はすれ違う。
 そして、すれ違いざまに、俺の一撃が決まる。

「いずれにせよ。コーリング中尉の行動は問題行為です。規定に則り、IS委員会に報告、大使館を通じてアメリカ政府に抗議させていただきます。」
 ニューヨークの一室で、山田先生は険しい表情で、艦長に抗議している。
 まあ、下手をしたら、かなりの外交問題に発展していたからな。
 ちなみに、俺は正当防衛を認められている。
 そもそも、一方的に戦いを挑まれたわけだからな。
「山田先生。もう、その辺にしておけ。マクドネル大佐。今日のような事があった以上、明日の演習のコーリング中尉の参加は見合わせていただきます。我々も、生徒を預かる身。あのような事態は、困ります。お解りいただけるかと思いますが。」
 山田先生を宥めながら、千冬姉はマクドネル大佐にしっかり釘を刺す。
「解っている。既に、本国に戻るまで、自室謹慎だ。後に、軍法会議に掛けられるだろう。」
 ああ。やっぱ、そこまでいくか。
 でも、いきなり国家代表から外されないだけでも、恩の字か。
「とにかく、今回の件では迷惑をかけた、深く詫びる。」
 制帽を取って、大佐が頭を下げる。
「では、この件はこれまでという事で、明日の演習はよろしくお願いします。代表候補生たちを、少し鍛えてやって下さい。」
「よい、演習になる為に努力する事を、約束しよう。」
 艦長が、真剣な顔でそう言うのを聞いて、俺達は部屋を後にする。

「織斑君も、とんだ災難でしたね。怪我がなくて、何よりです。」
 山田先生が、心から安堵したような表情で、俺を見る。
「まあ、仮にも更識に勝っているんだ。他の国家代表に勝っても不思議はないさ。だが、コーリング中尉より強い者もいる。それを肝に銘じておけ。」
「はい。」
 そうだ。
 まだまだ、世界には強いISパイロットがいる。
 今回にしても、結構ヤバイ賭けだった。
 訓練が足りないな。
 メニューを見直さないと…。

「お久しぶりですね。ブリュンヒルデ。アメリカに来た時からですから、2年ぶりになりますか。」
 俺より、2つか3つくらいの綺麗な女性が、俺たちに声をかけてくる。
 世界最高の称号であるブリュンヒルデの称号で呼ばれる事を、千冬姉はあまり好きではないので、少し眉をしかめる。
「ナターシャか。今日は、お前の連れが、うちの生徒にえらい事をしてくれたな。手綱はきちんと握ってもらわんと困るのだが?」
 どうやら、このナターシャという人は、コーリング中尉のお目付け役だったらしい。
「その件に関しては、私の責任です。ご迷惑をおかけしました。」
 申し訳なさそうな表情で、俺達に頭を下げる。
「一夏君だったわね。本当にごめんなさい。イーリスには私からもよく言っておいたから、今日の事は、どうか水に流してほしいの。決して悪い人間じゃないわ。だから、お願い。」
 俺の方が、背が高いので、ナターシャさんは俺を見上げる形になるが、その目は真剣だった。
 まあ、俺としては、上の方で決着はついてるみたいだし構わないけどな。
「他の人にはやらないように、くれぐれも伝えておいてください。国家間の問題になったら、取り返しがつかない。」
 俺としても、そこはきちんと言っておきたい。
 強い奴と戦って、実力を競い合うような事は俺も好きだけど、それで国家間の問題になったら、目も当てられないからな。
「必ず、伝えておくわ。ありがとう。優しい、ホワイト・ナイト。」
あれ?
俺の頬に柔らかくて、暖かい感触が…。
 
 宿に戻った俺を見たセシリア達は、一瞬硬直し、表情が変わる。
「一夏さん。ニューヨークで何があったのかしら?」
 え?どうしたんだ、セシリア?
 何だか、ライフルがいつもより大きいが。
「一夏、鏡見てご覧。」
 シャルロットが、俺に鏡を向ける。
 同時に、パッケージを追加した、イリュジオンを展開する。
 げ!?キスマーク。
 ナターシャさんか。
「あんた。軍艦でまで。へえ、そうなの…。」
 地の底から聞こえてくるような声で鈴が言うと、増設された衝撃砲が、展開される。
「お前には、いろいろと体に刻みこんでやらんといかんらしいな。」
 ラウラの目に、鋭い光が宿る
 右肩部のレールガンは、大型になって、さらに左右の肩部に装備されている。「一夏…!貴様という奴は、いつもいつも…。」
 箒が、紅椿を展開する・
 
 ちょ、ちょっと待てお前ら。
 パッケージを増設したままで戦闘なんてやったら、宿が吹き飛ぶぞ。
 今晩は、野宿になるぞ!?

「いい加減にしろ、馬鹿ども!毎度、毎度、節度をわきまえんか!!」
 千冬姉の雷が落ちる。
「織斑。お前も、いい加減に、その隙だらけの性格を何とかせんか。馬鹿者!」
 俺にも、雷が落ちる。
 隙だらけって何だよ?

「やれやれ。これからカーニバルがあるのに、呑気なものね。」
 宿から数キロ離れたところから双眼鏡で様子を観察している、美しい銀髪の、ジーンズにワイシャツの女性がいた。
「スノー。準備はどう。」
「いつでも、今からでもいいわよ。」
 スノーと呼ばれた女性は、好戦的な笑みを浮かべる。
「明日でないと駄目なのよ。ルカの宝が出て来るのは、明日だもの。」
 何重にも盗聴処理を施された通信機の向こうから、相手が笑う気配が感じられた。

後書き
私は二刀流が、好きです。
とにかく、カッコイイですからね。
で、白式も二刀流にしようと思って、考えた装備が雪片参型です。
さて、紅椿や白式を見て、血液の温度が沸騰したのが、原作6巻に出てきた、イーリス・コーリングこと、イーリです。
顔見せだったのか、今ひとついい所がなかったので、一夏にぶつけて見ました。
楽勝のように見えて、一夏にとってはきわどい勝利。原作でイーリにも晴れ舞台がる事を願います。
そんな一夏達の周囲が、騒がしくなりました。
よろしければ、次回もお楽しみに。

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