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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第13話 雪羅顕現<前編>

<<   作成日時 : 2011/09/17 19:54   >>

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 端末に表示された内容を見た、千冬の表情が厳しい物になる。
「本日の演習は、終了。各自、割り当てられた部屋に戻れ。専用機持ち及びファイルス中尉は、集合。」
 千冬の声を聞いた生徒達が、理解できずに首を傾げたり、顔を見合わせる。
「さっさとせんか!!」
 千冬の厳しい声を聞いて、全員がすぐに部屋に戻る。
「それから、布仏、お前もこっちだ。よくは解らんが、そういう事になっている。」

 宿で一番大きい部屋に、各種機材が持ち込まれて、さながら司令部だ。
 何が起きたんだ?
「つい先ほど、レベルAの特命任務命令が、委員会より学園に出た。」
 特命任務は、IS委員会から各国の軍隊等の組織に出る命令だ。
 政府等の行政機関を飛び越えての命令となるので、かなり特殊だったり、機密性の高い任務になる。
 その中でもレベルAは、最も機密度が高い。
「2時間前、所属不明の軍用輸送機C−5ギャラクシーらしき機影を見たという情報を入手。その後、衛星による調査で、IS部隊の発進を確認した。後30分後に、ここから10km程の沖合を通過する。」
 全員の表情が引き締まる。
 まず、IS部隊はPMCだって所有を許可されていないし、そもそもIS自体を所有していない。
 となれば、どこかの国家が所属不明を装っていると考えるのが、妥当だ。
 ただ、俺自身、見当がつかない。
 ISはその数が限られている為に、そう簡単にIS部隊を運用はできないし、アラスカ条約に違反する行為にもなるから、国際的に孤立する。
 そんな事をする国があるとは、俺には思えなかった。
「しかしだ…。これを見ろ。」
 千冬姉が、拡大写真を空中投影ディスプレイに映す。
「教官。これは…。」
 ラウラが写真の機影を見て、千冬姉を見る。
「そうだ。個人別トーナメントの際に襲撃してきた、所属不明のISだ。細部を分析した結果、カスタム化されているので、以前より、性能は上がっている。正確な数は確認できないが、10機以上。」
「厳しいわね。こっちは、ファイルス中尉を入れて、7人。ノルマが最低1人1体。それでも、おつりがくるわね。」
 鈴が険しい表情になって、爪を噛む。
「追加パッケージをインストールしているのが、せめてもの救いだけど、向こうもカスタム化している。最悪、向こうの方が性能は上という事もあるね。」
 シャルロットも、厳しい表情になる。
「タイミングが悪すぎますわ。輸送艦群は、丸裸。誰かがそちらの守備につく必要がある。」
 そう。なにしろ、今回は戦闘に巻き込まれる事を想定していないから、護衛艦艇がない。
 セシリアの言うとおり、最悪のタイミングだ。
 先生達も訓練機を持ってきているが、数は4機。
 それに、全ての敵を補足できたとは言えない。
 そうなると、輸送艦群には護衛をつけたいところだ。

「なお、今回は、教師達は、輸送艦の護衛に専念する。よって、他のISは専用機持ちとファイルス中尉に、撃破してもらいたい。」
 やっぱりそうなるよな。
 と、いうより、それしかない。
 とにかく、少しでも早く各々が1機を撃破してと、言いたいが、まともなフォーメーションも組まずに戦えば、不利になるのはこちらだ。
 考えていると、ナターシャさんが、なにやら通信機でやりとりをしている。
「自室謹慎中のコーリング中尉も、加わる事になりました。」
 これで8機か。
 少しは、光明も見えたかな?
 ん?
「織斑先生、そこの部分を拡大してください。」
 俺は、ある事に気づいた。
 拡大した部分を見た俺は、自分の予感が当たった事を確認した。
「テュランノス…。ギリシアの第二世代か。厄介だな…。」
 こっちは、全て第三世代以上のISだが、こいつが加わると話が違ってくる。

「テュランノスって、ギリシアで開発されたけど、採用されなかった奴よね。それがどうかしたの?」
 そうか、鈴は知らないんだな。そっちの話は。
 俺の場合は、一応、束さんの弟子という事で、この方面の事情にはそれなりに通じている。
「テュランノスは、重装甲、重武装、高機動、全てを備えたISとして開発されたんだ。ところが…。」
「失敗したんですのね。土台、無理な話ですわ。武装と装甲を充実させれば、機動性は損なわれますし、かと、言って、機動性を優先すれば、武装と装甲で妥協しなければ、無理ですもの。」
 セシリアの言う事が、常識的には正解だ。
 ただ、今回に関しては外れなんだ。
「こいつ、メインスラスターに、ラムジェットを使ってるんだ。だから、スピードでは、俺達でも勝てるのは、多分、紅椿くらいだな。」
 ラムジェットエンジンは、マニューバによって生じる気流を利用して、空気を圧縮し、燃料を噴射する事により推力を得るタイプのジェットエンジンだ。
 単体では静止状態からのエンジンの始動の為に、ブースターが使用される。
けど、構造が簡単になる利点もあり、マッハ3以上の超音速飛行に適している。
 さらに、ラムジェットのサブスラスターを、各所に設置して、重い機体に高い加速と高機動性能を与えている。
 ただし、これを使用するには薬物の使用が欠かせない。
 それ故に、不採用となった。
 それでも使うってことは、明らかに薬物を使用しているな。
 しかも、強襲用追加パッケージのおまけつきかよ。

「滅茶苦茶だよ。この出力じゃ、乗ってる人間が持たない。当初の目的は達成しているけど、薬物必須じゃ、これ、欠陥品だよ。」
 データを見たシャルロットが、呆れたように言う。
「とすると、こいつの相手は、現在、最も機動性が高い箒か…。」
 ラウラが、考えた末に結論を出す。
「だけど、箒は、高機動戦闘は、未経験。超高感度ハイパーセンサーも、慣れるのって、結構、時間がかかる。きついけど、こいつの相手は俺がする。」
 ここまでじゃないけど、高機動戦闘の訓練もみっちりやってきたしな。
 しっかり、地獄を見るほどに。
「教官。今回のフォーメーションは?」
 ラウラが千冬姉に、各人の役割分担を訊ねる。

「ボーデヴィッヒは、後方から支援射撃。あまり気が乗らんかもしれんが、必中を期すために、ヴォーダンオージェを使用してもらうぞ。鳳とデュノアはボーデヴィッヒの護衛役をしつつ、側面を固めろ。」
「「はい!」」
 途中にコーリング中尉が来た。
「遅れて申し訳ありません。イーリス・コーリング中尉。只今、到着しました。」
 千冬姉に向けて、背筋を伸ばして敬礼しているコーリング中尉を見ていると、あの血の気の多い人とは別人のように見える。
 ま、相手が、相手だからな。
 千冬姉が今までで決まった事を、話す。
「再開するぞ。中盤は、オルコットと篠ノ之。状況によって、前線のサポートにも回ってもらう。」
 成程、スターダスト・シューターしかない、今のセシリアにはバックアップが必要。
 箒にそれを任せるってことか。
「前線は、織斑、ファイルス中尉、コーリング中尉。それに、布仏だ。最も、危険な役回りだが、頑張ってもらいたい。」
「はい!」
「「了解しました!」」
「よし!準備に掛かれ!!」

『一夏の隣に、いられない…。』
 その事が、箒には堪えた。
 折角、専用機を。
 世界最新鋭の機体を与えられたというのに、最前線には配置されなかった。
 一夏から見ても、力量不足な自分。
『一夏…。』
 白式のセッティングをする一夏を見ながら、箒は唇をかんだ。
 その心は、悔しさと淋しさでいっぱいだった。
 共に、肩を並べて戦いたい…。
 でも、一夏の隣にいるのは、国家代表に、海軍のテストパイロット。
 二人とも、実力は折り紙つきだ。
 自分より、相応しいのは解る。
 ただ、本音が一夏と共に前線で肩を並べるのは、納得がいかなかった。

「いい?イーリ。今度は、血の気の多い真似は、慎む事。今度やったら、軍法会議だけじゃ済まないわよ。アメリカ海軍の名誉にも関わるんだから。」
「解ってるって、あの後、お前と艦長にこってり絞られて、反省してるよ。なあ、お前は信用してくれるよな。」
 逃げるように、コーリング中尉は俺に話しかけてくる。
「ま、そこの所は、行動で証明してくれると思いますよ。でなければ、やられるだけですから。」
「そんだけ、手強いってわけか。高機動追加パック入れてきて、良かったぜ。」
 コーリング中尉の表情が引き締まる。
「それは、何より。頼りにしてますよ。」
 これなら、大丈夫だろ。
「私も、追加パックとまでは行かないけど、一応持ってきたあれを、装備しておいたわ。」
「初期型のシルバーベルか?威力はあるけど、機動制御がきついだろう?」
「大丈夫よ。予備のスラスターを増設するから。それで何とかしてみせるわ。」
「そこは、俺達でカバーしましょう。コーリング中尉。俺と、中尉と、ナターシャさんがいるのは、その為ですから。って、何です?その不満顔は。」
 戦闘について話し合っていると、何故だか、コーリング中尉は不満そうに俺を見る。
「何で、あたしだけコーリング中尉なんだ?」
 いや、なんだって言われても。
 特に、理由はないんですけど…。
「コーリング中尉は、コーリング中尉でしょう?別に、俺、変な事言ってないと思いますけど…。」
 そう答えると、コーリング中尉は、ますます不満そうに俺を見る。
「これからは、イーリと呼べ。さん付けは禁止だ。敬語も無し。その代わり、あたしもお前を一夏と呼ぶ、いいな!」
「は、はい!」
「よし!じゃあ、話の続きだが。」
 福音のバランス調整は、白式とファング・クェイクのデータを元にぎりぎりで調整が終った。
 他のみんなも、準備はすんだようだ。
 箒の紅椿は、束さんが再調整を済ませた。
 いよいよ。決戦だな。

「敵IS部隊、補足。接触まで、後10分。各機、最終チェック。」
 司令部では、オペレーターを務めている真耶が、各機に指示を出す。
 空中投影ディスプレイには、迎撃に参加しているISが点となって表示されている。
「ボーデヴィッヒ。敵は補足しているな?」
 通信回線を開いて、千冬はラウラに確認する。
「はい。射程距離まで、後4分47秒、衛星とのリンクは済ませています。」
 ラウラの追加パッケージ、パンツァー・カノニーアはドイツ軍の軍事衛星とリンクすることで、長砲身レールカノンブリッツの長い射程を最大限に活かす。
「射程に入り次第、発射しろ!その後、前線は攻撃に入れ。主導権を握らせるな。」
「了解!射程距離まで、後4分20秒。」
 ラウラに指示を出してから、千冬は一夏に回線をつなぐ。
「織斑。テュランノスと交戦するようになったら、封月で、稼働停止にしろ。そうなれば、ISはただの重りだ。アメリカ海軍の方で捕縛させる手はずになっている。」
「はい!」
 ただ、相手もそう簡単に稼働停止にさせちゃくれないだろうな。
 前の個人別トーナメントで、封月を使ってる。
 詳細は解らなくても、ISの稼働に何らかの影響を与えるぐらいは解ってるはずだからな。

「敵部隊、射程距離に。砲撃を開始する。」
 ブリッツの発射音が、響き渡り、前列にいたゴーレムUの1機に命中する。
 大破まではいかなかったが、相当にダメージを与えられているのが解る。
 機動が、かなりぎこちない。
「任せな!!」
 追加武装パック、タイガーファングを装備している、ファング・クェイクは手足に追加装甲が装備されている。
「おらっ!!」
 拳で殴りつけられた、ゴーレムUは生じた衝撃波で今度こそ大破し、海に落ちて行く。
 電磁衝撃機能内蔵型追加装甲「インパルス・スケイル」
 レールカノンの発射原理を応用し、弾丸を発射する反発力をそのまま相手に叩きつける、ファング・クェイクにはうってつけの武装である。

「やってくれるわね。」
 オリーブグリーンの装甲のISテュランノスを纏ったスノーは、ゴーレムUをファング・クェイクから、一旦距離を置かせて、レーザーによる遠距離攻撃に切り替える。
「そっちは、私のレンジよ!」
 シルバーベルから、無数のエネルギー弾が発射される。
 ゴーレムUは回避運動を取るが、発射されたシルバーベルが多いので全弾回避とはいかずに、直撃を喰らいシールドを削られ、物理装甲をズタズタにされる。
「はっ!」
 一夏の、雨月にした参型のレーザーが止めを刺す。
「くっ!」
 ラムジェットのスピードを活かして、いち早く退避したスノーは苦々しい表情をする。
「ならば!」
 狙いをつけたのは、本音だった。

「う〜ん、やっぱり、弱いと思われちゃうんだろうね〜。でも〜、こう見えても、会長の護衛役だから、そう簡単にはやられないよ〜。」
 のほほんさんが纏っているISは、零式だろう。
 俺が、訓練で主に使っていたISで、現在の日本の主力ISでもある。
 けど、のほほんさんのは、俺が知る限りの零式のバリエーションのどれにも当てはまらない。
 俺が使っていた六型と共通点がありそうな所は、両腕のシールドだが、左のシールドには荷電粒子砲が追加されている。
 追加武装パックを入れている感じらしい事が、背部と脚部の追加スラスターに、ミサイルポッド、大口径レーザーマシンガンらしき追加武装を見て、解る。
 無人機がのほほんさんに攻撃を仕掛けるが、のほほんさんは楽々かわして見せる。
 かなりの腕前だ。
 いつもとは、まるで別人じゃないか。
「じゃあ、行くよ〜。」
 大口径レーザーマシンガンとミサイルを発射しながら、近接戦闘用の日本刀型のプラズマソード2本を実体化させて、攻撃に移る。
 無人機は、前以上の機動力を駆使してかわして、反撃に移ろうとするが、そこに荷電粒子砲が待っていた。
 今までのは、荷電粒子砲の着弾地点に誘導する為の、射撃か。
 のほほんさんの零式は、スペックで言えば、現在の第三世代ISにも引けを取らない。
 多分、第三世代ISの技術を導入して、改修してあるな。
 ダメージを受けて機体を制御し直そうとする無人機に、追加したスラスターを全開にして接近して、斬り伏せる。
「そこのお姉さん。会長に手出しはさせないよ〜。」
 右手に持ったプラズマソードを、テュランノスを纏っているパイロットに向ける。
「参ったわね。護衛役まで、連れているとは思ってもいなかったわ。」
 苦々しく言っている間に、ラウラのブリッツの砲撃と、鈴とシャルロットの攻撃が襲いかかり、2体が撃破され、2体がかなりのダメージを負う。
「もらいましてよ!」
 セシリアがスターダスト・シューターで、1体に止めを刺す。
 ビットが使用できない分、ストライク・ガンナーの兵装、スターダスト・シューターの火力は通常のブルー・ティアーズ総合的な火力を、凌ぐ。
 もう1機が後方に下がろうとする。
「逃さん!」
 雨月から発射されたレーザーが、下がろうとした無人機を撃破する。
「一夏さん。私たちもいましてよ。」
「援護は任せろ。お前は目の前の敵にのみ、集中していればいい。」
 セシリアと箒が、笑顔でそう言ってくる。

『向こうは、第三世代に、篠ノ之博士が開発した新鋭機とはいえ、ここまで被害が出るとは…。』
 スノーは予想外の被害に、動揺を必死に隠していた。
 既に、ゴーレムUは7体が破壊されている。
『これでは、織斑一夏を拉致するどころじゃないわね…。第2陣で向こうを押さえつけて、残りの5機と私で、織斑一夏を相手にするしかないわ。』

「これは…。また来るぞ!!数は、さっきと同じだ。」
 まだ、手札があったのかよ。
 勘弁してくれよな。
 皆の方に向かってる。
 俺と、分断する気か。
 冗談抜きで、テュランノスとやり合う事になるな。
 無人機は5機。
 相当、効率よく戦わないと、こっちがガス欠だ。
 気合い入れないとな。

「くそっ!やってくれるぜ!!」
 イーリスは腕部バルカン砲、「ヘッジホッグ」を至近距離で叩きこみながら、舌打ちをする。
「みんな、いったん散開して、危ないわよ。」
「うわ!お前、あれやるのかよ!?機体制御でドジったら、海にドボンだぞ!」
 ナターシャがやろうとする事を悟ったイーリスが、止めようとする。
「大丈夫。一夏君が、各部の調整をしっかりやってくれているわ。私は、一夏君を信じる。急がないと。一夏君も決して楽じゃないはずよ。」
「解った。お前と、一夏を信じる。但し、無茶はするなよ。」
 皆がいったん散開した後に、シルバーベルが砲撃体制に入る。
 さらに、腕部に装備された、シルバーベルも続く。
 腕部のシルバーベルは、初期に開発された物で、威力だけなら、ウィングスラスターのシルバーベルを凌ぐ。
 但し、機体制御が困難になるという欠点を抱え込んでいる為に、採用はされなかった。
 今回、追加スラスターで姿勢制御を行おうと試み、一夏が各部の調整をした。
 その時の、真剣な様を見たナターシャは、一夏の調整を信じていた。
「受けなさい。シルバーネメシス(銀の天罰)!」
 両腕部と左右のウィングスラスターの、シルバーベルの一斉斉射。
 その反動で、機体制御ができなくなると、イーリスは見たが、各部のスラスターが、見事に機体の制御を成功させる。
 豪雨のように周囲に降り注ぐ、エネルギー弾は第二陣のゴーレムUに容赦なく襲いかかり、一機残らず、深いダメージを与える。
「んじゃ、手早く、たたむぜ。」
 イーリスが両の拳を与えると、インパルス・スケイルの衝撃波が、拳を包む。

 4機目。
 エネルギーブレード・モードの参型で、4機目を両断する。
 左手の弐型は、零落白夜を発動させていない。
 追加武装パックで、火力と機動性を増したテュランノス相手だと、相当にきつい戦いになる。
 エネルギーを無駄に消費する事は出来ない。
 俺は、テュランノスとの直接対決になるまで、近接戦闘しかする気はなかった。
 しかし、5機目を相手にしようとした時に、テュランノスが武装パックのロケットランチャーから、ロケット弾を発射してくる。
「くそっ!」
 俺は、中距離戦闘の封印を解き、空裂でロケット弾を破壊する。
 が、爆発が予想以上で、相手を一瞬失う。
 炸薬まで増やしやがって、くそっ!
 その時、最後の無人機が襲いかかる。
「お前に用は、ないんだよ。」
 左右の雪片に零落白夜を発動させて、一刀で斬り伏せた。

 まずいな。
 さすがに、両方、零落白夜にすると、シールドエネルギーの減りが早い。
「さすがに、あの、織斑千冬の弟ね。ゴーレムシリーズのカスタムタイプじゃ、相手にならないわね。じゃあ、本格的にあたしが相手になってあげる。」
 やるしかねえか。
 相手が装備しているのは、強襲用追加パック「オルソロス」。
 ギリシア神話に登場する、地獄の番犬「ケルベロス」の弟だ。
 でも、見た所、大分、機体にも装備にも手を加えられているみたいだな。
 本来は、ウェポンベイを兼ねた追加スラスターで、AAM「ヴェロス」が4基装備されているが、スラスターユニット自体が大型化している。
 俺の頭の中にある、スペック以上だな。
 さっきのロケットランチャーが4基装備されていて、あと3基残ってる。
 そして、ヴェロスが6基。
 空飛ぶ、武器庫だな。まったく。
「さあ、行きましょうか。」
 薬物のせいか、眼は血走り、顔に血管が浮き出ている、パイロットが腕部内蔵式超高速振動ブレード「コキノ・スパスィ」を展開し、背部大口径ガトリング砲「ネロポンディ」、腰部グレネードランチャー「フォティア」の狙いを俺に定める。
 こうなったら、一気に懐に飛びこんで、封月で相手を稼働停止にする。
 イグニッション・ブーストでテュランノスに迫るが、ラムジェットの高速を活かして急上昇して上を取られた俺は、ネロポンディから発射される無数の弾丸を回避しながら、雨月で相手を狙う。
 あれだけのスピードだ。
 サブスラスターがあっても、小回りは効かないはず。
 しかし、薬物を投与されたテュランノスのパイロットには、その常識は通用しない。
 なら、相手の機動を予測するまでだ。
空裂で回避機動を制限しつつ、雨月の三段突きを叩きこむ。
さすがに、今度は回避しきれずに、雨月がテュランノスのシールドエネルギーを削り、物理装甲にもダメージを与える。
 よし、これなら。
 しかし、俺の期待は裏切られ、6基のヴェロスが俺に向かってくる。
「くそっ!」
 空裂で迎撃するが、そこに狙い澄ましたかのように、テュランノスの最大の兵装が襲いかかる。
 大出力プラズマキャノン「ケラウネス」。
 左の弐型は、封月にしてある。
 モード変更をしても、間に合わないだろう。
 空裂を使いたいが、そろそろエネルギーがヤバくなりはじめる。
 そう考えていると、別の方向から空裂が放たれて、ケラウネスを掻き消す。
 そして、後方からはラウラのブリッツの砲撃が、テュランノスに襲い掛かる。
 ヴォーダンオージェを使用しているラウラなら、テュランノスを捉えられる。
「すまん。手間取った。」
「助かったぜ、サンキュ。エネルギーが、少しきつい所でさ。」
 ラウラに礼を言った。

「それにしても、なんて頑丈さだ。これだけの攻撃を喰らっておきながら、まるで堪えていない。」
 箒が舌打ちする。
「こうなったら、相手が降参するまで、ぶちのめすまでよ!」
 イーリスが、左右の拳をぶつける。
「問題は、当たるかね。あのスピードでは、ボーデヴィッヒ少佐を除くと、ちょっときついわ。」
 再び、シルバーネメシスの準備をしながら、ナターシャが言う。
「俺が、正面から奴にぶつかる。皆、援護頼んだぜ。」
 一夏が、スノーに正面から迫る。
「いいわ。受けてあげる。」
 スノーが、コキノ・スパスィを構えて、一夏を迎え撃つ。
「素晴らしいスピードね。さすがは、篠ノ之博士が直接開発しただけ、あるわね。でも…。」
 スノーは、追加スラスターの出力を上げる。
「あなたは、勝てない。このテュランノスには!」

 速い!
 俺より早く、向こうが俺を間合いに捉える。
 しかもこの状況で、向こうはまた無人機を出してきて、皆はそっちと交戦中だ。
 ったく、何機持って来やがったんだよ。
 とりあえず、俺は目の前の相手を抑える事に専念する。
 そうすれば、状況も、好転するはずだ。
「くっ!」
 数合打ち合って、向こうが苦しくなる。
「剣術の腕自体がまだまだじゃあ、俺には、勝てないぜ。」
 ここで決めたいが、相手は封月の事を知らなくても、やはり警戒はしているらしい。
 白兵戦でも、深入りはしない。
 一撃で勝負を決められずに、逆に劣勢になると解ったら、距離を開けての射撃戦に切り替える。
 こうなると、今度はこっちが不利だ。
 エネルギーが、大分きついから、雨月や空裂もよく考えて使わないとならない。
 使いどころを、判断しながら戦っていると、横から、荷電粒子砲が、テュランノスに襲いかかる。
「くっ。雑魚は黙っていらっしゃい!!」
 肩部多連装ミサイル「エクリクスイ」が、のほほんさんに襲い掛かる。
 見事な機動で回避しながら、レーザーマシンガンで、エクリクスイを打ち落とす。
「反撃いくよ〜。」
 ミサイルポッドからミサイルが発射されて、テュランノスに襲い掛かる。
「このっ!!調子に乗るんじゃないわよ!小娘が!!」
 ネロポンディが、ミサイルを打ち落とし、のほほんさんを狙う。
「そう簡単には、やられないよ〜。私は、会長の護衛なんだからね〜。」
 巧みにガトリングガンの射撃を回避しながら、レーザーマシンガンでテュランノスを狙うが、今度はテュランノスが、のほほんさんを狙う。
 まずい!いくらのほほんさんでも、スピード負けして不利になる。
「やらせん!!」
 背部の展開装甲を開いて加速した箒が、ビットでテュランノスの側面を突く。
「くっ!!篠ノ之束の新型か!!」
 憎らしげに言う。
「箒、ここはいい。皆の方に戻れ!」
 紅椿の展開装甲。
 攻撃・機動・防御と、あらゆる事態に対応可能な半面、かなり燃費が悪いので、戦闘継続時間が短い。
 箒は紅椿での訓練はやっているが、実戦となるとまた違う。
 そろそろ、エネルギーが底をつく事に気づいていない。
 この事を、向こうに気づかせるわけにはいかない。
 早く決着をつけないと、こっちの方がかなりまずいことになる。
 イグニッション・ブーストで、一気に決着をつけるしかないな。
 それにしても、向こうは相当に薬物を投与しているな。
 よくここまで、戦えるもんだ。

 一夏の考えは当たっていた。
 スノーは、オルソロスと戦闘継続時間を考慮して、薬物を通常の倍以上使用している。
 ここまで使用すると、重大な後遺症が残る可能性があるのだが、それでもスノーは使用した。
『あの、小娘…!!』
 スノーの頭の中には、自分を小馬鹿にした少女の憎らしい顔と言葉が浮かんでいた。

『貴様程度で、あれを使いこなせるか。相手は、あの織斑一夏だ。身の程を知れ。まあ、命を捨てる覚悟があれば、別だがな。』
 小馬鹿にしたように、自分にそう言った時の憎悪は忘れる事が出来ない。
『ならば、証明してみせるわ。織斑一夏に勝利する事によってね。』

「はああっ!!」
 箒が背中の展開装甲を使用した、イグニッション・ブーストでテュランノスに迫る。
 まずい、今の紅椿じゃ、キツイ!!
「じゃまをするな!!」
 ロケットランチャーから、ロケット弾が発射される。
「その程度!!」
 箒は空裂で、ロケット弾を破壊するが、その時、展開装甲が稼働停止になる。
 しまった!!
「あら?エネルギー切れかしら。調子に乗っているからよ。代償は高くつくわ。」
 ケラウネスの、発射態勢に入る
 この位置じゃ、のほほんさんも間に合わない。
 俺しかいないか…。
 こうなったら、連続でイグニッション・ブーストをして、箒のガードをして、奴を稼働停止にする。
 これしかない!
 白式、もってくれよ。
 俺はイグニッション・ブーストに入った。

 おまたせ。
 さあ、行きましょう。

 今の声、一体…。

後書き
原作では3巻の後半。
アニメでは10話から12話が、この前後篇に当たります。
ファングクェイクは、第三世代にしては特徴が今ひとつ解らんかったので、一撃必殺の攻撃ができる、追加パックを考えて見ました。
そして、原作6巻にでてきた、福音の初期型のハンドガン型も、出してみたくなって、追加スラスター付きで即席の追加パックにしています。
さて、エネルギー切れの箒を守ろうと、白式の最後のエネルギーを、振り絞る一夏。
そして、謎の声の答えは?
もし、続きを読みたいと、お考えになられたら、少ししてアップされる、後編をご覧ください。

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