cogito,ergo sum

アクセスカウンタ

zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第12話 合同演習

<<   作成日時 : 2011/09/10 19:26   >>

面白い ブログ気持玉 3 / トラックバック 0 / コメント 0

 酷い夜だった…。
 現実と悪夢の区別がつかなくなる事を体験する機会はそうないだろうが、俺は経験した。
 イリュジオンが完成したことで、別のISの構想を練っていると、天井の板が外れて、ラウラが音を立てずに、猫のように忍び寄ってきた。
 もちろん、俺だって、そういう状況に対応する訓練はみっちり積んでいるが、
 やや緩めにした浴衣から覗いた白い肌とか、ブラをつけていない控え目な胸とかが気になっている内に押し倒されてしまった。
 しかも、ラウラの手には、その、フィルムで包装された、薄いゴムが握られていた。
 って、おい!
「いずれは、こうなる。だから、今晩に…。」
 頬を赤く染めながら、言う。
 なんでそうなるんだ?
 意味が解らんぞ。
 それを何に使うか、解ってるのか?解ってて言ってるのか?
 頬を薔薇色に染め、恥じらいながらも熱っぽい眼差しで、まっすぐに俺を見つめるラウラ。
 パニックになりながらも、そんなラウラに俺は見とれていた。

「男子の部屋に天井裏から侵入とは、中々大胆だな。ボーデヴィッヒ。」
 そこに現れたのは、千冬姉。
 その様は、地獄の裁判官ミーノス。
 そして、千冬姉の目に留まったのは、ラウラが持っている例のブツ。
「ほう。コンドームか…。よもや、臨海学校でそこまで関係を進めようとするとはな。」
 腕を組んで、千冬姉は感心したような口調で、そう言う。
「教官!夫婦の営みなら、これ位は当然です。」
 いつから、夫婦になったんだ俺達は?
 法律的に、無理だぞ。
「馬鹿者!!臨海学校中に、淫行に及ぼうとする言い訳が、それか!ここまで、私たちですら気付かなかった。大方、ハルフォーフが宿の図面を手に入れて、お前が天井伝いにたどりつくルートを見つけたのだろう。今年はドイツ出張が入っていたな。そうだったな…。」
 うわ。何だよ、その物騒な微笑みは。
 ドイツにいる人らしいから、ひょっとして千冬姉が、昔、ドイツで訓練を見た人か?
 今年は、その人、地獄を見るぞ。

「さて、もう自由時間を過ぎている。夫婦の営みだか何だか知らんが、それだけ体力が有り余っているのなら、私が相手をしてやろう。CQCの訓練を2時間ほどな。」
 千冬姉の言葉を聞いたラウラが、一瞬、大きく震えて、あからさまにおびえる。
 千冬姉相手の、2時間のCQCの訓練か…。
 滅茶苦茶、きついだろうな…。
 そりゃ、震えるか。

「それと織斑。毎度、毎度、騒動を起こしおって。いい加減にしろ。何度言えば、解る。」
 ちょっと、待てよ!
 俺は被害者だぜ。
 少しは、同情してくれよな。
「まあ、その点に関しては、話をしたいのが4人ばかりいるらしい。」
 そう言って、千冬姉の視線の先を見ると。
 物凄い殺気を放っている、セシリア、鈴、シャルロット、箒がいた。
「一夏さん。ラウラさんと、何をなさろうとしていたのかしら?」
 いや、なさろうもなにも、俺は襲われそうになっていたんだが。
 そして、その、地獄の底から響いて来るような笑いは何かな?
「一夏もやるわねえ。よし、殺そう。」
 何で、殺されなきゃならないんだよ!
 つか、俺がどういう立場だったか、理解してないだろう!
「一夏、追加武装パックの具合を、確かめてくれないかなあ…。」
 いや、それは別にかまわないんだが、殺気を鎮めてくれないか?
 怖くてたまらないから。
「一夏、貴様、臨海学校という場で、そ、そのようなふしだらな行為を…。許せん。」
 お、落ちつけ。
 俺は決して、しようとしていたわけじゃないぞ。

 ラウラは反論すら許されずに、千冬姉に連れていかれて2時間地獄を見たそうだ。
 俺は俺で、怒り狂った4人。
 しかも追加武装付きで、これでもかというほど追い回された。
 怒り狂うと、人間って潜在能力が解放されるのかなあ…。

「本日は、米軍のIS操縦者と専用機持ちの、合同演習となる。他の者は見学となるが、必ず後の為になるので、しっかり見ておく事。」
 千冬姉が言い終わると、銀色の装甲に包まれたISが、俺達の所に来る。
「シルバリオ・ゴスペル(銀の福音)。完成していたか…。」
 ラウラも知ってたか。
 特殊部隊の隊長なら、知っていて、当然か。
 シルバリオ・ゴスペル(銀の福音)。
 通称福音。
 アメリカとイスラエルとで共同開発された、第三世代IS。
詳しい性能は、まだ公開されていないが、なんでも広域殲滅を目的とした、オールレンジ攻撃がメインらしい。
完成したって話は聞いてなかったから、完成したのはつい最近なんだろう。
 とすると、IS学園との合同演習の目的は、間違いなくデータ収集。
 欧州主要国の最新鋭機に、束さんが自ら開発した白式。
 さらには、紅椿が予想外の特典として付いてきたんだ。
 向こうの技術関係者は、泣いて喜んでるだろうぜ。
 それにしても、広域殲滅型か。
 向こうの意図が、透けて見えてくるな。

「アメリカ海軍所属、ナターシャ・ファイルス中尉です。本日は、よろしくお願いします。」
 背筋を伸ばして、敬礼をして挨拶をする。
 コーリング中尉とは、タイプが違うな。
 ナターシャさんは、まじめな人と見ていいだろう。昨日みたいな事は勘弁してほしいけどな。
「よし。これからチーム分けをする。ファイルス中尉を入れて、七人か。織斑と篠ノ之は別チームになることを前提として、チーム分けをする。」
 あ、そっか。
 白式と紅椿は、第四世代機。
 加えて、白式は雪片参型を装備したばかりだからな。
 もし、俺と箒が同じチームになったら、戦力に偏りが出る。
 それを防ぐ為か。
 千冬姉と山田先生で相談した、結果。
 俺の方は、セシリアと鈴、ラウラ。
 箒の方に、シャルロットと、ナターシャさん。となった。
 う〜ん。
 参型が装備に追加されて、ある程度中距離戦闘もできるようになったが、燃費の関係から、やはり白式は近距離戦闘がメインになる。
 その俺を、砲戦パッケージを装備したラウラが援護に回り、強襲用高機動パッケージを装備したセシリアが、一撃離脱で状況に応じて戦う。
 向こうがフォーメーションを崩そうとした場合には、攻撃特化パッケージを装備した鈴が相手の攻撃を止める。

 向こうは、全員問題か。
 福音は、詳細なスペックが不明。
 紅椿にしても、あの束さんが自ら開発したんだ。
 何かあるに、決まってる。
 そして、高機動スクランブルパッケージを追加した、シャルロット。
 新開発したブースターを増設して、武装を追加。
 さらに、防御用のシステムも備えている。
 自分で設計しておいて言うのも何だが、厄介だ。
 シャルの得意技、ラピッドスイッチも健在。
 遊撃戦力としては、これ以上ない位に厄介だ。
 おまけに、箒もシャルロットも、相変わらず、不機嫌っぽい。
 昨日の夜、あれだけ暴れておいてまだ不満なのかよ…。
 ちなみにセシリアと鈴は、一緒のチームという事でとりあえず許してもらったけど、それぞれデート一回。かつ全額俺の奢り。
 何で、デートまでついてくるんだ?
 ちなみに、ラウラは、デートはない。
 どうも、昨日の事で、セシリア達が許さなかったらしい。
「行動しない、お前たちが悪い。欲しい物があるなら、自分で手に入れるために行動するのだな。」
 悪びれずに、そう言った。
 なんつうか、ラウラって将来大物になりそうだな。
「始め!」
 千冬姉の声で、演習が始まった。

「いくぞ!」
 砲撃戦用パッケージ「パンツァー・カノニーア」を装備したラウラは、両肩に装備された80口径レールカノン「ブリッツ」で、ナターシャを狙う。
 ISのスペックで言えば、第四世代の紅椿を纏う箒を狙うべきだが、軍のテストパイロットとしてのキャリアから、司令塔にもなりうるナターシャを、ラウラは最重要目標とした。
「いい判断ですわね。ボーデヴィッヒ少佐。ですが、私を長距離狙撃で落とすのは難しいですよ。」
「ふん。そんな事、解りきっている。」
 ラウラは、右目を覆っている眼帯を外す。
 その下には、金色の瞳が現れる。
 ヴォーダン・オージェ(越界の瞳)。
 ラウラが隊長を務める部隊、シュヴァルツェア・ハーゼの隊員全員が移植された、疑似ハイパーセンサーである。
 脳への情報伝達速度と高速戦闘における動体反射が、飛躍的に上昇する。
「どうやら、そのウィングはマルチスラスターのようだが、今の私には酷く遅く見えるぞ。」
 次のブリッツの砲撃は、容赦なくナターシャを捉える。
「成程。特殊部隊の名は伊達ではありませんわね。では、こちらも、奥の手を出しましょう。」
 ウィングの各部が展開し、エネルギーの砲弾が打ち出される。
「推進ユニットと、攻撃ユニットを兼ねているのか!」
「シルバーベル(銀の鐘)、お受け下さいな。」
 ラウラに向けて、砲弾が一斉に向かう。
「甘いな!」
 ラウラの前面に、物理シールドが展開される。
 しかし、シールドに遮られたかと思った砲弾が、一斉に爆発する。
「ラウラ、気をつけろ。高密度に圧縮されたエネルギー弾だ。着弾のショックで爆発する。喰らいすぎるとシールドが持たないぞ。俺が、ナターシャさんの相手をする。援護を頼む。セシリアは打ち合わせ通りに。」
「了解した。」
「解りましたわ。」
 一夏は、両手の雪片を構えて、ナターシャに向かう。
 一夏を、シルバーベルが迎え撃つが、全てをかわしてナターシャにエネルギーブレード形態の参型で斬りかかる。
「速いわね。並みのパイロットなら直撃だったわ、でも…。」
 次の瞬間、下から零落白夜を展開した弐型の切り上げが、シールドエネルギーを奪い取る。

 なるほど、見た所、砲撃戦用か。
 その他の部分。例えば、頑丈な拳はファング・クェイクと同様に格闘戦も出来るようだが、ナターシャさん事態が、砲撃戦を得意とするらしい。
 コーリング中尉と足して2で割るとちょうどいいな。
「油断したかしら、でも、次は。」
 左右のウィングが、俺を包み込むようにする。
 そうは、行かないぜ。
 俺は、後ろ向きでイグニッションブーストを行って、離脱する。
「器用なまねをするわね。でも…。」
「私を、お忘れですわよ!」
 セシリアが、高速でナターシャさんに接近して、手にしている大型BTレーザーライフル「スターダスト・シューター」の一撃を叩きこむ。
 高機動強襲用パッケージ「ストライクガンナー」を装備しているセシリアは、ビットを使用していない。
 腰部にスカートアーマー状に固定されて、スラスターとして使用されている。
 バイザー状の超高感度ハイパーセンサー「ブリリアント・クリアランス」は高機動戦闘時でも、セシリアに正確な情報を伝える。
 しかし、次の瞬間、弾丸の雨がセシリアに降り注ぎ、セシリアは回避する。
「僕を忘れないでね。」
 各部にスラスターを増設。
 背部にサブアームが増設されて、六連装のガトリングカノンが並んで、左右に装備されている。
 さらに、ミサイルが、発射される。
 回避しようとするが、自動追尾プログラムが優秀で、振り切れない。
「しつこいですわよ。」
 セシリアが、情報を元に打ち落とすと、猛烈な爆発が起きる。
「きゃっ!」
 一瞬、目をそらすと、ガトリングカノンが降り注ぐ。
 六連装ツインガトリングカノン「アシエ・エトワール・フィラント(鋼の流星)」、弾頭に高性能爆薬を使用した多連装誘導ミサイル、「ソレイユ・フレッシュ(太陽の矢)」。
 シャルロットが使用している高機動スクランブルパッケージ「サイント・エール(音速の翼)」。
 緊急時でも、充分に対応可能、且つ、高い攻撃力を持たせる為に、俺が設計した追加パッケージだ。
「お返しですわ!」
 ライフルを、シャルロットに向けて撃つが、サイント・エールは高機動戦闘も想定している為に、そう簡単に命中しない。
 遂に、命中するが、エネルギーシールドに阻まれる。
「その程度じゃ、僕は落とせない。」
「ならば、これでどうだ。後ろが、がら空きだぞ。」
 ラウラがシャルロットの背中に、照準を合わせてブリッツの砲撃を命中させる。
 しかし、今度は物理シールドに阻まれる。
 エネルギーシールドと物理シールド。
 それを可能な限り小型にして、タイルを並べるようにした、物理・エネルギー双方に対応する複合守備システム「プロテクション・リュミエール(守護の光)」。
 それが、シャルロットを完璧に守り抜いた。
「厄介な物を!これでは、援護が!」
 物理シールドを装備しているので、ブリッツの攻撃はそう簡単には有効にならない。
 スターダスト・シューターも同様だ。
 セシリアとラウラを抑えるために、オルドルが展開されて、ルール・フレッシュが、ラウラの物理シールドに襲いかかる。
「やられっ放しでは!」
「いませんわよ!」
 二人の攻撃をかわしながら、シャルロットはルー・トロワと50口径重実体弾ライフル「グリ・セール(灰色の鉤爪)」を呼び出す。
「一夏、すまん。私とセシリアでシャルロットを抑える。動きまわられると、厄介どころの話ではない。」
 レーザーライフルとレールガンの連装ライフルである、ルー・トロワの攻撃がセシリアに襲い掛かり、グリ・セールが容赦なく物理シールドの耐久限界に迫る。
「解った。頼む。」
 やれやれ、我ながら、とんでもない物作ったな。
 最新鋭機を与えられたシャルロットの実力は、半端じゃない。
 あれだけの大口径砲を装備しているとなると、機動力は当然鈍る。
 多分、AICを砲の制動制御に利用しているから、使用は不可能だろう。
 ラウラといえども、回避には苦労するし、いつもの近距離戦はほぼ不可能だ。
 セシリアも、オルドルとルー・トロワの攻撃に手を焼いている。

「はああっ!」
 箒が雨月を横に薙ぐ。
「その程度!」
 衝撃砲が発射されるが、4門に増設されて、不可視の砲弾は炎のようだ。
 攻撃特化パッケージ「崩山」を装備した結果、衝撃砲の威力は格段に上がっている。
 紅椿を纏う箒といえども、その攻撃力は侮れない。
「お返しよ!」
 鈴が双天牙月で、雨月と空裂を押さえつけて、衝撃砲を連続で叩きこもうとする。
 だが、次の瞬間、紅椿の腕部の装甲が展開されて、スラスターとなる。
 その推力を利用して、双天牙月を鈴もろとも押し返す。
「それが、あんたの奥の手ってわけね。」
「ああ。攻撃、機動、防御。全てに対応する。」
 展開装甲。
 束が、雪片弐型の開発データを元に開発した、瞬時にあらゆる状況に対応する万能機構である。
『まずいわね。多分、あちこちに、あれがあるわ。』
 距離を取りつつ、鈴は必死に対応策を考えていた。

「束。あれが、紅椿が第四世代ISである所以か?」
「そう。展開装甲。紅椿を即時万能対応機にしちゃう、束さん特製のスペシャルな技術だよ。もっとも、雪片にも使用されているよ。」
「零落白夜や、各種モード展開の際にか?」
 束の話を聞いて、千冬はすぐに理解した。
「そう。暮桜の時には、最初から発動していたのが、頭痛の種だったのを解消するのに、使ってるわけ。参型も同様だね。」
「成程。白式が第四世代の試験機だというのは、そういう意味だったわけですね。」
 真耶も納得する。
「でも、いっくんが設計したISも中々だね。金髪の子の腕もいいけど、あれだけの火器を搭載しているのに、しっかり稼働しているのはたいしたもんだよ。普通のISなら、制御システムが負荷に耐えかねて、ハングアップしているからね。」

『思ったより、状況がよくないわね。数で向こうが多いのもあるけど、目の前の彼が…。』
 シャルロットは、ラウラとセシリアを圧倒しているように見えるが、完全には攻め切れていない。
 そこを突いて、二人は僅かずつシャルロットを追い詰めつつある。
 箒は、鈴の相手で手が離せない。
 ナターシャがシルバーベルを、再び発射するが、一夏は悉く回避して、肉薄しては、一撃を加える。
 接近戦にこだわっては、却ってまずいのは、シルバーベルの零距離攻撃を受けそうになった時に、一夏は理解した。
 今は、一撃離脱に徹して、時に雨月や空裂を使用している。
 福音のシールドエネルギーは、既に50%を割り込んでいる。
 なにより、シルバーベルはエネルギー兵器なので、回避できない分は雨月や空裂、そして零落白夜で無効化されてしまうので、白式は福音にとっては、相性が悪いことこの上ない。
 スピードと機動性においても、白式の方が勝る。
『後は、彼の機動を予測して、攻撃を仕掛けるしかない。』
 そう決断したナターシャは、一夏の前から離脱しながら、シルバーベルの箒を続ける。
 確実にとは言えないが、少なからず攻撃が機動に干渉されて、一夏は機動パターンを変更せざるを得なかった。
『チャンス!』
 すぐさま、ナターシャは攻撃に映る。
 複雑な機動に入ると同時に、シルバーベルの連続砲撃で一夏を追い詰めようとする。

 さすがに現役の軍人だけあって、強い。
 福音の性能もかなりの物だ。
 特にシルバーベルは厄介だな。
 砲撃が機動に干渉された際、何回か喰らったが、着弾の際に爆発されると機体制御にも影響が出るから、機動に狂いが生じる。
 威力も洒落じゃ済まない。
 一旦、パターンを変更する。
 しかし、その瞬間、シルバーベルの連続砲撃が来る。
 零落白夜での囲い散らしで、凌ぐ。
 しかし、それでは終わらなかった。
 全速で接近しながら、ナターシャさんはシルバーベルの砲撃を続ける。
 離脱しても、喰いついてくるだろう。
 あれをやるか。

『さあ、どうするかしらね。この子なら、白式に何とか喰らいつく事は出来るわよ。』
 シルバーベルの砲撃で、弾丸の雨をばら撒きながら、ナターシャは一夏の出方を見る。
 見えたのは、砲撃を交わしながら、一直線に接近してくる一夏だった。
「望む所ね。」
 ナターシャは、ファング・クェイク同様に格闘戦で威力を発揮する拳に力を込める。
 同時期に開発された為、福音はファング・クェイクに似たような面がある。
 それは、格闘戦にも十分対応できる事である。
 格闘戦の間合いにあと少しというところで、一夏は急上昇する。
「甘いわね!え?」
 ナターシャの目の前から、一夏が消える。
 そして、気がついた時には、福音のシールドエネルギーはゼロになっていた。
『何、何なの、今のは…。』
 ナターシャは、事態が理解できなかった。
 瞬間移動が可能なISなど、聞いた事がない。

 うまくいったな。
 ちょっと、大変だけど、使いこなせるとこういう時には、役に立つ。
 戦況は、とりあえず互角か。
 鈴は、箒をどうにか抑え込んでいる。
 と思ったら、紅椿がエネルギー切れを起こしたみたいだ。
 燃費が悪いのは、第四世代も同じらしい。

「うおおおおっ!!」
 既に限界寸前の物理シールドを展開したまま、ラウラはシャルロットに突撃する。
 ガルムを呼び出して、シャルロットは物理シールドを破壊する。
 それでも、ラウラは構わず突撃して、シャルロットの両腕を掴む。
「この距離なら、外さん!どうだ?動けまい!」
 ブリッツの砲身を押しつけて、AICでシャルロットの動きを止めて、砲撃を続ける。
 やがて、イリュジオンのシールドエネルギーがゼロになる。

「よし、そこまで。各自、通常モードに。」
 訓練の時は、パイロットの安全を確保する為のモードを使用する。
 そこから、通常状態に戻した。
 破損した物理装甲やシールド、消費したエネルギーが元に戻る。

「さて、織斑のチームの勝利だ。第三世代とはいえ。アメリカ、イスラエル両国の最高軍事機密であるシルバリオ・ゴスペルがいるチームに勝った。これに関しては称賛に値する。」
 正直言って、きわどかったけどな。
 下手をすれば、ラウラが撃破されて、次にセシリア、そして、残りを俺と鈴で相手にする羽目になった可能性は十分にある。
「だが、反省点はある。狙いは、まあまあだ。だが、ミスもある。織斑、言ってみろ。」
「砲撃戦用パッケージを装備したラウラは、後方支援専用。それをもっと重視すべきでした。残りの3機で防衛ラインを編成して、相手の攻撃を受け流しつつ、後方からの支援砲撃と攻撃を連動させるべきでした。この際、箒とシャルロットは、俺と鈴で抑えて、セシリアにシルバリオ・ゴスペルの抑えをさせ、ラウラは状況に応じて、支援砲撃を行う。これが、さっきの作戦よりもベターだと思います。」
 千冬姉に言われて、俺は反省点と、取るべきだった戦術を口にする。
「そうだな。確かに、その方が良かっただろうな。今回の事を糧にして、さらに精進しろ。連携戦やチーム戦では、僅かな間違いが勝敗を左右する。その事を胸に刻んでおけ。」
 千冬姉の言葉で合同演習が締めくくられ、宿に戻って昼食となった。

「ふふふふ。呑気なものね、これから大きなカーニバルが始まるのに。」
 ステルス処理を施された巨大輸送機の中でISスーツを着たスノーが、宿の映像を見て、唇をゆがめる。
「それにしても、篠ノ之束博士の新型まで出てくるとは、運がいいわ、あの、白いISとついでに、戴くわ。」
 その機体の格納庫には、改良されたゴーレムUが10体余り、格納されていた。
 数機の輸送機が、宿に向かっていた。

「それにしても、最後のあれには驚いたわ。一夏君。あれって、何?」
 ナターシャさんが、ハンバーグにナイフを入れながら、訊ねてくる。
「ああ、あれですか。昔の空戦マニューバですよ。」
 俺はコンソメスープを飲みながら、そう答える。
「だから、それが解らないんだってば。ねえ、教えてよ。お礼に、私が、一緒にお風呂に入って、背中を流して、あ・げ・る。」
 千冬姉ほどではないものの、大きな胸を強調して俺に迫って来る。

「中尉。今は、昼食の時間だ。色香を振りまく時間ではない。規律が乱れる元だ。慎め。」
 俺の隣に座っているラウラが、鋭い目つきでナターシャさんを睨みつける。
「あら、少佐。今は、お互いの交流も兼ねていますわ。少々、羽目を外しても、よろしいのではありませんか?」
 ラウラの視線を、ナターシャさんは軽く受け流す。
 おい。俺を挟んで、こういうのはやめろよ。
 ったく、しょうがないな。
 そんなに、難しい理屈じゃないんだよ。

「じゃ、説明しますよ。」
 俺は端末を立ち上げて、空中投影ディスプレイに映像を映す。
「織斑。こっちの大型ディスプレイに映して、説明しろ。皆も勉強になる。」
 いつの間にか、食堂になっている座敷の一番前には、大型の空中投影ディスプレイが、展開されていた。
 何時、用意したんだ?
 まあ、いいか。

「基本的には、航空機がレシプロ機だったころの、空戦マニューバです。日本人で多少、太平洋戦争に通じている人なら知っているともいますが、日本海軍航空隊のエース、坂井三郎氏の得意技を、IS用にアレンジしたものです。」
 俺は、前に出て説明を始める。
 こういうの、ちょっと苦手なんだよな。
「坂井三郎って、「大空のサムライ」って呼ばれた、エースパイロットだよね。」
 谷本さんが、思い出したように言う。
 スコアだけなら、「ラバウルの魔王」こと西澤広義氏や、「零戦虎徹」岩本哲三氏の方が上なんだが、知名度が高いのはやっぱりこの人だ。
「じゃあ、説明します。まず、上昇します。その後、ループに移るわけですが、ループする頂点。ここが重要になります。」
 上方へのループの機動から説明に入り、頂点で一旦、止める。
 ここからが、本番だ。
「この際。つまり、頂点の直前で、失速したようにPISとスラスターをコントロールして、ISを横滑りさせて斜め旋回に移って、旋回機動をショートカットする。これが、さっきのマニューバの正体。捻り込みです。零戦は機体の特性上、左しかできませんでしたので、左捻りこみとして、有名ですね。幸い、ISは右も左もできますので、使いこなせるとなかなか有効です。」
 あんまり使いすぎると読まれるから、注意が必要だが、それさえ間違えなければ、相手をパニックにする事が出来る。
 温故知新。
 昔の空戦マニューバにも、学ぶ事は一杯あるってことだな。
 ん?どうした。
 皆、呆けて。

「あの…、一夏さん。それ、そう簡単にできませんわよ…。」
 そうか?練習すれば、代表候補クラスなら、大丈夫だろ。
「あのねえ、失速したように見せかけるのって、そう簡単にできるもんじゃないわよ。」
 鈴が、眉間にしわを寄せる。
「そうだよ、一夏。下手をすれば、コントロール不能で墜落しちゃうんだから。あんまり使わないようにね。」
 シャルロットが、俺を諭すように言う。
「だが、リスクがあっても使わざるを得ない場合があるのなら、機体の整備を万全にして、訓練を欠かさない事だ。教官、一夏に専門の整備チームをつけることはできませんか?それが、もっとも理想的だと思うのですが。」
 ラウラが軍人らしい考え方で、俺に専門の整備チームをつける事を進言する。
「難しいな。世界でただ2機の第四世代ISである白式と紅椿は、それ自体が、国家間の争いの火種になる。諜報活動の訓練を受けた者を送り込んでくる可能性も、高い。」
 嘗て、千冬が駆ったIS暮桜と同じワンオフアビリティ。あらゆるエネルギーを打ち消し、シールドを無効化する零落白夜を持ち、ISの制御システムを強制的にダウンさせる封月を持ち、さらにはISの生みの親である束が自ら開発した多機能ブレード、雪片参型を装備とする白式。
 白式のデータを元に、展開装甲を採用した最新鋭第四世代IS紅椿。
 どの国も、喉から手が出るほど欲しいISである。
 さらに、まずい事に、この二機はどの国にも帰属しないISである。
 一夏は、帰属をめぐって委員会でも激論が続いている。
 専門の整備チームをつけるだけでも、国際問題になりかねない。
「じゃあ、学園内から募集してみたらどうですか?少なくとも、スパイはいないと思いま〜す。」
 本音が、自分のアイデアを千冬に持ちかける。
「ふむ…。」
 千冬が、本音のアイデアについて考え込む。
「織斑先生。私は布仏さんのアイデアに賛成です。二人の場合、日常的な訓練でも専門の整備チームがあった方がいいと、私も思いますし。それにIS学園に情報を盗みに来るような、無謀な人はいないと思いますよ。」
 真耶が、本音のアイデアに賛成する。
「そうだな。臨海学校が終わってから、整備科から募集してみるか。」
 真耶の意見を聞いて、再度考えてから、千冬は決断する。

「じゃあ、私、立候補しま〜す。来年からは、整備科に進むつもりだった〜。」
 本音が、すぐさま手を挙げる。
「布仏か…。」
 千冬が端末を立ち上げて、今までの本音の成績を見て考え込む。
「いいだろう。ただし、整備チームのリーダーは、メンバーがそろってからだ。いいな。」
「は〜い。会長。これから、よろしくね。」
「おう、よろしくな。」
 その時、千冬の端末が鳴った。

後書き
福音対一夏達のチーム。
これだと、原作とあまり変わらなくなってしまうなと思って、合同演習という形にしてみました。
福音を駆るナターシャは、原作を読んでいる人ならご存知ですよね。
福音の専属パイロットです。
もうちょっと、手に汗握る展開にしたかったのですが、文才の無い身ではこれが精一杯です。
一夏が使った捻り込みは、ストライクウィッチーズという作品の、CDドラマが元ネタです。

ブログ村のランキングに参加しております。
来てくださった方は、よろしければクリックをお願いいたします。
励みになりますので。

にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ

相互リンクはいつでも大歓迎です。
リンクをしてくださる方は、コメント欄にお書き下さい。
リンクの設定をした後に、お知らせします。

目次へ戻る。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 3
面白い 面白い 面白い

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
ブログランキング・にほんブログ村へ
IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第12話 合同演習 cogito,ergo sum/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる