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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第9話 招かれざる客人<後編>

<<   作成日時 : 2011/08/20 10:46   >>

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 シャルルによってピットに戻らされた箒は、モニター越しに戦いを見ていた。
「一夏…。」
 他はペアで、クラス代表対抗戦で出現した謎のISを相手にしているが、一夏は1人で2体を相手にしている。
 その内の1体は、箒の記憶が正しければ、イタリア製第三世代ISテンペスタUである。
 決して、容易い相手ではない。
 それでも、一夏は2体を完璧に抑え込んでいる。
『私にも、専用機があれば…。』
 しかし、箒のIS適性はC。
 専用機持ちには、到底なれない。
 専用機持ちは、皆、適性は一夏を含めてAである。
 始めから、自分は蚊帳の外である。
「どうして…、私は…!どうして…。」
 悔しさで涙がこぼれた。

「くっ!なんて、機動性なの!」
 目の前の謎の機体。
ゴーレムTは、近接戦闘も龍咆での攻撃も、通常では信じられない機動で全て回避する。
 ブルー・ティアーズのオールレンジ攻撃も、ほとんど効果がない。
「厄介ですわね。各所のスラスターをあれだけうまく使われては、ビットでの攻撃をまともに当てる自信がありませんわ。」
 呼吸を整えながら、セシリアは何とか状況を打開する手を考えようと、必死に頭を働かせる。
『考えるんですのよ、セシリア・オルコット。一夏さんは1人で、これを打ち負かしたのですから…。』
 あのときの一夏は、回避できない状況を作り出して、仕留めた。
『回避できない状況…。つまり、誰かが、動きを止めれば…。』
 セシリアの頭に、ある策が閃いた。

「鈴さん。もし、もしですわよ。あいつの動きが止まったら、龍咆の連続攻撃でかなりのダメージが与えられますかしら?」
「それができないから、苦労してるんでしょ!…考えがあるのね。」
 鈴はセシリアが、何か、策を考えた事に気がつく。
「私が、必ず動きを止めますわ。鈴さんは後方から、龍咆の連続攻撃を。」
「危険だわ!ISの絶対防御があるにしても、ただじゃ、すまないわよ!」
「他の方法がありまして?」
 セシリアの言葉に、鈴は反論できなかった。
「解った。必ず、動きを止めるのよ!必ずよ!」
 そう言うと、鈴は、ゴーレムTの後方に回り込もうとする。
「あなたの相手は私ですわよ!」
 セシリアが急接近して、レーザーを浴びせようとするが、ゴーレムTはそれを回避できなかった。
 セシリアはビットを機体に押しつけて、ゴーレムTが回避するのを無理やり止めていたのである。
 だが、体の自由を封じていたわけではないので、肩部のレーザーが容赦なく降り注ぎ、ブルー・ティアーズのシールドエネルギーを削っていく。
 ビット兵器には欠点がある。
 使用時には、セシリアは制御に専念しなければならない為に、動けなくなるのである。
 つまり、回避運動が取れない。
「やられっ放しては、ありませんことよ!」
 スターレインのフルオート射撃が、ゴーレムTに容赦なく降り注ぎ、互いに壮絶なシールドエネルギーの削り合いになる。
「後ろ取ったわよ!」
 鈴が、双天牙月の二刀流の強烈な一撃を、ゴーレムTに喰らわす。
 続いて、龍咆の連続攻撃を容赦なく浴びせる。
 そして、セシリアも、スターレインとビットで容赦なく攻撃し、やがて、スクラップ同然になったゴーレムTは、崩れ落ちた。
「手こずらせてくれましたわね。」
「他のペアは、どうかしらね。」

 ラウラはレールカノンの攻撃を、容赦なく浴びせるがゴーレムTは軽々とかわしながら、レーザーを発射する。
「舐めるな!」
 AICで動きを封じようにも、ハイパーセンサーでそれを感じ取られたのか、動きを封じる事が出来ない。
「僕を、無視しないでよね。」
 シャルルが、ラウラの攻撃の回避に専念しているゴーレムTに、イリュジオンに6基装備されているビット「オルドル」の攻撃を容赦なく浴びせ、新開発された、レーザーライフルとレールガンの連装銃「ルー・トロワ」の射撃を浴びせる。
「ボーデヴィッヒさん。1人で戦っているわけじゃないの、忘れないでね。僕も、ちゃんといるんだから。」
「ふん。」
 そう言いながらも、ラウラは不愉快ではなかった。
 イリュジオンの性能だけではない。
 使いこなしているシャルルの技量が高い事も、理解していた。
「どちらかが動きを止める。そして、片方が、攻撃をするいいな?」
「うん。」
 どちらも、今年の1年の中ではトップクラスの優秀な生徒だ。細かい打ち合わせはいらなかった。
「それと、私の事は、ラウラでいい。」
「じゃあ、僕の事も、シャルルでいいよ。」
「了解した。行くぞ!」
 レーザーを回避して、二人は左右に散る。
 シャルルはオルドルで、各方向から攻撃を仕掛ける。
 ゴーレムTは悉く回避する。
「もらった!」
 そこを、ラウラのレールカノンでの一撃が襲う。
 さらに、ワイヤーブレードで縛り上げる。
「シャルル、やれ!」
「了解!」
 背部に装備されている可変砲身荷電粒子砲「トネール」の一撃が、襲いかかる。
 さらに、ウェポンベイも兼ねている左右の肩部装甲から、LOSAT「ルール・フレッシュ」が発射される。
 連続しての強烈な攻撃に、ゴーレムTはかなりのダメージを受けて、飛行するのが精いっぱいの状態になっていた。
 そこに背部から、プラズマ手刀を展開したラウラが、正面からは、両腕に装備された、グレースケールの発展型である電磁式パイルバンカー「リオン・セール」を展開したシャルルが迫り、止めを刺した。

「今年の1年、織斑以外もやるなあ。」
「こっちも、負けてられないっスね。」
 ゴーレムTの攻撃を回避しつつも、ダリルとフォルテは少しずつダメージを与えていた。
「そうだな。ジャブもそろそろ効き始めてきたみたいだしな。んじゃま、K.Oといこうか?」
「了解ッス!」
 ダリルが大型プラズマナイフ「ハウンドクロー」を構える。

「行くぜ!」
 ダリルがゴーレムTに、突撃する。
 それを、フォルテが重武装第二世代IS「コールドブラッド」に装備された、超高初速ライフル「イピリア」と多連装ミサイル「タイパン」の攻撃で援護する。
 回避しようとするゴーレムTだが、当初の機動性はない。
 常識を超えた機動性を見た二人は、まず、これを奪う事を考えて、スラスター付近に命中するように攻撃を開始した。
 ボクシングのジャブのように、それは徐々に効き始め、今、その積み重ねがゴーレムTの機動性を少なからず奪っていた。
 それでも、残ったシールドエネルギーを頼みに、ゴーレムTは二人を迎え撃とうとする。
 ダリルのIS、ヘルハウンドVer2.5の主兵装はライアットカノン。
 弾丸は散弾なので、攻撃力は他の兵装に比べると弱い。
 だが、散弾にはスラッグショットと呼ばれる、大型動物用の弾丸がある。
 ファイアーレインにスラッグショットを装填して、レーザーを発射しようとするゴーレムTの両腕のレーザー砲の砲口に、ハウンドクローを突き立てる。
「その腕、戴くぜ!」
 至近距離からの、スラッグショットの連続射撃でゴーレムTの両腕は、肩からもぎ取られる。」
「フォルテ、決めろよ!」
「了解ッス!」
 2門の大出力レーザー砲「オロファト」が、ゴーレムTを打ち抜く。

 よし、皆は大丈夫そうだな。
 それぞれ、無人機を相手にしている様子を、少し見て、ほっとする。
 俺も、ふんばらないとな。
 さて、まずはあの無人機だな。
 テンペスタUも面倒だが、ある意味では無人機の方が楽だ。
 今度の改良型は、指と爪先がプラズマクローになっていて、外観も前より洗練されている。
 腕には4門のレーザー砲、胸には拡散タイプのレーザー砲が装備されている。
 前より、機動性も増しているが、無人機との戦いは初めてじゃないので、戸惑わずに済む。
「行くぜ!!」
 テンペスタUの攻撃を回避しながら、俺は無人機に狙いを定める。
 それにしても、テンペスタUの攻撃の切れ味が半端じゃない。
 最低でも国家代表の中の、かなりの実力派だ。
 とは言え、フルフェイスの物理装甲だから、顔は解らない。
 他の部分も、物理装甲が多い。
 無人機の手刀が襲いかかってくるが、俺は腕ごと断ち切る。
「いい加減に、慣れてくるんだよ!」
 それでも、胸の拡散タイプのレーザー砲で反撃を試みるが、俺は一旦下がって、発射が終わる直前に加速を掛けて、一刀のもとに斬り伏せる。
 真っ二つになった無人機は、地面に倒れて爆散した。
 さて、最後はテンペスタUだけなんだが、実はこれが一番厄介だったりするんだよな。

「皆、凄いですね。楽な戦いではありませんが、あの無人機相手に、見事に戦ってますね。」
「1年生は最新鋭の専用機持ちで、しかも二人がかり。あれ位やれんでは、先が思いやられる。ケイシーとサファイアは代表候補の中では、トップクラス。当然の結果だ。」
 それぞれのペアが、ゴーレムTを相手にしているのを見ている間、そう言った後、千冬に通信が入る。
「そうか。ご苦労だった。引き続き警戒に当たってくれ。」
 通信を切った後、千冬はモニターに目を戻した。
『さて、今回のようなケースだと、一夏が、一番厄介だな…。』

 俺は、テンペスタUのプラズマサーベルをかわして、一撃を入れる。
 くそっ、やっぱり浅い。
 向こうは態勢を立て直して、左右肩部の中型レールカノンと腰部のガトリングガンを一斉に発射する。
 回避する俺に、テンペスタUは再びプラズマサーベルで、攻撃を仕掛けてくる
 腕はいいが、隙をつけないほどじゃない。
 六合打ち合うと隙が見えたので、俺はそこを突く。
 くそ!また、浅い。

「どうしたんですか?織斑君。いつもなら、とっくに終わらせているのに…。」
「相手が、無人機ならな…。」
「どういう事ですか?」
 真耶は千冬の言っている意味が解らず、千冬に訊ねる。
「白式は、拡張領域が全て雪片弐型で埋まっているから、拡張領域の狭い機体と思われがちだが、実際の拡張領域数は18ある。」
「18!?それって、デュノア君が使っていた、リヴァイブのカスタム機と…。」
「そう。ほぼ同等の拡張領域を持つ。この意味が解るな?」
 千冬の話を聞いて、真耶はようやく理解した。
「本当は、他にも装備が搭載出来る分を、全て雪片弐型というより、零落白夜に割り振っている。」
 その意味を、真耶は即座に理解した。
「白式は、今まで開発された、いかなるISとも比べ物にならないほど、攻撃に特化したISだという事だ。それ故に、零落白夜の威力は相当なものになる。」
 千冬の言葉から、何故一夏が苦戦しているかを、真耶は悟った。
「狙いは、間違いなく織斑。殺す寸前まで、織斑を痛めつけるつもりだろう。それだけなら、あの無人機と同じ。だが、どうやって知ったか、しらんが、どうやら有人機のようだ。そうなると、織斑も今までのようにはいかない。だから、一撃が浅くなる。」
 既存のISで、最も攻撃に特化したISであろう白式では、相手によっては峰打ちが、酷く難しいという欠点がある。
 それが、今、浮き彫りになっていた。

 駄目だ。
 零落白夜の加減が、難し過ぎる。
 相手を機能停止にさせる程度の出力がどれくらいかが、解らない。
『このままだと、いずれ、テンペスタUの第三世代兵器が出てくるな。あれが出てくると、他のみんなが…。』
 見つけろ、見つけるんだ。
 相手を傷つけずに、一太刀で相手を機能停止させる零落白夜の出力を。
 焦る気持ちを抑えながら、俺は今までの零落白夜の出力を元に、思考を研ぎ澄ます。
『雪片弐型でいければ、楽だったんだけどな…。』
 雪片弐型も、近接兵装ではトップクラスの攻撃力を誇るが、今の状況では攻撃力に欠ける。
 そうしている内に、シャルルとボーデヴィッヒが相手にしていた無人機を仕留める。
 よし、まずは一体。
「緊急警告!敵ISが特殊な力場を形成しています。そのポイントは…。」
 まずい!
 遂に、相手が奥の手を出してきた。
 しかも、そのポイントにいるのは…!
 くそ!
 俺はイグニッションブーストで、そのポイントに急ぐ。
 間に合ってくれ!

『何だ?この妙な力場は。』
 ラウラはハイパーセンサーの情報を見て、何とか脱出しようとしたが、既に間に合う段階ではなかった。
 分析結果は、甲龍の龍咆と似ているので、AICで防ごうとしたが、ここでAICの致命的な弱点が出た。
 AICは、停止させる目標に強く意識を集中させることが必要だが、今の状態では、どこに意識を集中させても、間違いなく攻撃を受ける。
「ボーデヴィッヒ!!」
 聞こえてきたのは、一夏の声だった。
 力場が完成する寸前に、一夏はラウラを抱え込む。
「織斑…。」
「いいから出来る限り、体を抱え込め!急ぐんだ!」
 一夏の言うとおりにしたラウラを、一夏が庇うようにして包み込む。
『暖かい…。それに、安心する…。』
 しかし、そんな幸福に浸っていられたのも一瞬であった。
「うわああぁぁぁっ!!」
 テンペスタUの、最後の切札。第三世代兵装、定点エネルギー乱流発生機構「テンポラーレ・アッヴェント」が、その獰猛な牙を、容赦なく一夏に突き立てる。

「遂に出ましたね。テンペスタUの第三世代兵装、定点エネルギー乱流発生機構「テンポラーレ・アッヴェント」。」
 これは、基本的には甲龍の龍咆の原理を応用しており、任意のポイントでエネルギーを圧縮して解き放つ事により。局地的なエネルギーの嵐と言える状態を作りだして相手に大きなダメージを与える兵装である。
 何より、絶対防御を抜いてシールドエネルギーを一気に削る事は出来なくても、パイロット自身にダメージを与えることができる。

 痛ってえ〜。
 体中が、ひりひりする。
 感覚も、少しおかしいな。
 そうだ。
「ボーデヴィッヒ、無事か。」
 俺は包み込んだ、ボーデヴィッヒの安否を確認した。
「お前のお陰でな。礼を言う。」
「何だ。お前も、素直な所あるじゃん。痛っ!」
 少ししゃべり続けるだけでも、きついわ。
 今度こそ、一撃で勝負をつけないと、皆が危ない。
 そろそろ、とどめの段階みたいだから、尚更だ。
 くそ!シールドエネルギーをゼロにしなくても、ISをシステムダウンさせる事が出来れば…。
 でも、そんなことはできない。
 なら、あれを使う暇もないほどに、ダメージを与え続けるしかない。
 俺は、あちこち痛む体を、どうにか動かす。

「さて、俺はあいつを片づけてくる。」
「一夏、無茶だよ!あれだけの攻撃を受けたのに。」
 シャルルが、俺を必死に止めようとする。
「悪いな。そういうわけにも行かなくってさ。二人には、ヤバくなったペアのサポートの為に待機してもらいたいからな。それに言ったろ。あっちは俺が引き受けるってさ。男なら、言った事は最後まで守らないとな。じゃ。」
 俺は、テンペスタUの方に向かった。

 何故だ?何故動ける。
 あの様子だと、あいつ自身にも相当なダメージがあるはずだ。
 動くどころか、喋るのも辛いはずなのに…。
 第一、あれの攻撃を受けるのは、私だったはずだ。
 攻撃を見抜けなかった私の負債を、何故、お前は背負いこもうとする?
 なぜ、恨みごとの一つも言わない?
 それに、私は…。

 とにかく、奴に時間をやれば、また、あれを使う。
 それだけは、絶対に防ぐ。
 その上で、出来うる限り短時間でシールドエネルギーをゼロにして、システムダウンさせる。
 一撃でシステムダウンさせられればいいんだけど、無理だしなあ。

「零落白夜セカンドモード、構築終了。モード名、ISシステム強制停止機能「封月」。シールドエネルギーを特殊な波長に変換して、強制的に、ISのシステムダウンを起こします。」
 ハイパーセンサーが、情報を表示する。
 同時に、零落白夜を展開した状態の雪片弐型の各部が、変形していく。
 刃は、三日月のように細長くなっている。
 そして、あれほど、酷かった体中の痛みが引いていく。
 よし。これなら、いける。

 装備されている火器を一斉斉射しながら突撃してくる、テンペスタUの動きを冷静に見極めながら、間合いに入った一瞬。
 その瞬間に、俺は上段から袈裟斬りにする。
 すると、フルフェイスの頭部のハイパーセンサーに、強制停止メッセージが表示されて、テンペスタUは動かなくなり、待機状態に戻る。
 そこにいたのは、俺より1つ年上くらいの、女の子だった。
「終ったな。体は大丈夫か?」
「ああ。お陰さまでな。見かけより、頑丈なんだよ。俺は。」
 ボーデヴィッヒに笑いかけた。

「零落白夜セカンドモード、ISシステム強制停止機能「封月」。こんな機能があったなんて。それに、生体保護機能も他のISよりずっと強力です。簡易とは言えないクラスの、治癒機能もあります。白式にこんな秘密があったなんて…。」
 真耶は記録を見ながら、ただ、ただ、驚いていた。
「学園内でよかったな。ここにいる限りは、公表する義務はない。あれは火種になるぞ。なにしろ、どんなISでもシステムダウンしてしまえば、何の役にも立たないからな。」
 そう言いながらも、雪片弐型にこんな機能が隠されていた事は、千冬も予想していなかった。
『それだけではないな。束は、他にも白式に何かを隠している。』
 証拠がないわけではないが、千冬はそう確信していた。
「あの無人機の残骸を、全て回収しろ。調査させる。」
 そう言って、千冬は、生徒の避難状況を見に行こうとする
「解りました。織斑先生。」
「何だ?」
「今回も、織斑君が、大活躍でしたね。」
 避難誘導は教師たちが行っていた物の、無人機とテンペスタUを食い止めていたのは専用機持ちに指示を出していたのは、一夏だった。
「あれくらいは、出来て当然だ。褒める迄もない。」
 少し照れたような表情で、千冬はオペレーションルームを出る。

「結局、トーナメントは準決勝の第一試合で中止だって。」
「安全を考えれば、そうなるさ。」
 シャルルは、チキンドリア。
 俺は、アメリカ風の巨大なステーキを、わさび醤油で食べていた。
 とにかく、今回は腹が減ったしな。
「それにしてもさ。」
「何?」
「どうして、女子があんなに泣いてるんだ?俺に願いを聞いて貰えなかったって、どうってことないだろう。」
 そう。
 食堂では、女子生徒達が互いを慰め合いながら、泣いていた。
「二度も続くと、やっぱり怖いか…。」
 異常事態が好きな奴なんて、いないもんな。
 ホント、どうなってんだか。
「一夏ってさ。どうして、そうなの?」
 シャルルが、テーブルに突っ伏している。
「ん?何がだ?」
「別に。もう、いい!」
 怒ったまま、シャルルはチキンドリアを、再び食べ始める。
 ん?
 そう言えば、シャルルにも優勝したら、権利あったんだよな。
 何を、叶えてもらうつもりだったんだろう?
 ま、いいか。
 とりあえず、俺は楯無さんの魔の手から逃れられて、ほっとしている。
 冗談抜きで、三途の川を渡る所だったからな。
 さてと、俺は行く所がある。

「あ。織斑君。良かった、来てくれたんだ。」
 箒のルームメイトの鷹月静寐さんが、部屋の前で待っていた。
「箒、どうだ?」
「凄く、沈んでる。織斑君と一緒に戦えなかった事が、凄くショックだったみたい。」
「そうか…。」
 考えてみれば、何かあるたびに、箒は蚊帳の外だからな。
 疎外感を、感じたのかもしれない。
「しばらく、二人だけで話させてもらっていいか?」
「うん。」
 鷹月さんもそれを期待していたらしく、黙って頷く。

「箒、入るぞ。」
 俺が目にしたのは、ベッドにただ横になっている箒だった。
「鷹月さんに聞いたぞ。駄目だろ、ルームメイトに心配かけたら。」
 ベッドに腰掛けて頭を撫でようとしたら、箒は頭を移動させる。
 それを見た俺は、わざとらしくため息をついた。
「あれは、別に蚊帳の外にしたわけじゃないぞ。あの時、戦闘不能だっただろう?そんな、お前をあそこにおいておけるわけないじゃないか。」
 そう。
 最大の理由は、箒のISが戦闘不能になっていた事。
 そうなれば、もう、戦えない。
 先輩達のエネルギーチャージキットにしたところで、戦闘不能になったISには使えない。
「私が…。」
 うん?
「私が、専用機持ちじゃないから…。だから、私はお前と肩を並べて戦えない。その気持ちが、お前に解るか!?」
 ああ、そうか。
 今の箒は、嘗ての俺なんだ。
 千冬姉や他の人達に守られて、歯がゆい思いをしていた頃の俺と。

「箒。俺さ、昔は守られてばっかで、凄く悔しかったんだ。千冬姉は、学校に行きながら、外で一生懸命に働いて俺を養ってくれて…。でも、ガキだった俺には、何もできなかった…。」
 今でも、良く覚えている。
 両親に捨てられて、学校以外の時間のほとんどを仕事に充てて、朝も夜も懸命に働いて、俺を養ってくれていた千冬姉に申し訳なく思い、自分に歯がゆい思いをしていた頃を…。
 剣術を始めたのも、せめて、何かしたかったからなんだろう。
 そして、何の因果か、俺は白式を専用機とする、世界で唯一人ISを動かせる男子になっている。
 今の自分に歯がゆさを覚えているのなら、何かを続けていれば、ひょっとしたら、未来に影響するのかもしれない。
 時折、そんな事を考える。
「でも、剣術や武術を続けて、それが今の時間に何らかの影響を与えてる。そう思うんだよ。だから、箒も、続けてみろよ。未来を変えられる可能性がある何かを。きっと、あると思うんだ…。」

「箒…。」
 俺の前には、箒の顔が映っていた。
 艶やかな、長い黒髪。
 整った顔立ち。
 陶器のような白い肌。
 だが、いつもの凛とした感じは、しない。
 まるで、今にも壊れてしまいそうな、ガラス細工。
 そんな感じだった。
「一夏…。」
 俺の方に抱きついて、箒は静かに泣いていた
 そんな箒を、俺は優しく抱きしめる。

「今、箒、眠ってるから。そっとしておいてやってくれ。」
「ありがとう。織斑君。やっぱり、来てもらって、正解だった。」
 鷹月さんが、嬉しそうに笑う。
「じゃあ、俺、風呂、入るから。」
「うん。今日は、ありがとうね。」
 笑いながら、鷹月さんは手を振る。

「ふう。」
 いろいろあったなあ…。
 この学園て、ひょっとして呪われてんじゃないのか?
 でも、過去の記憶じゃこんな事は、無かったらしいし、どういう事だ?
 まあ、いい。
 とにかく、疲れを癒そう。
 それにしても、何だったんだ?あの声は。
 しかも、言っていた事が完璧に当たってる。
 誰がと考えるべきか、何がと考えるべきか…。

 カラカラカラ

「やっぱり、ここだったね。」
 入ってきたのは、シャルルだった。
 俺に裸を見られるのに、全く、抵抗感がないらしい、慣れって怖いなあ。
「そりゃ、事情聴取に、誓約書にサインさせられるわ。いろいろあったしなあ…。」
 前回も大事だったが、今回は改良型に、イタリアの第三世代まで出てきたのだから、レベルが違う。
 最新鋭の第三世代が盗まれたなんて、国家のメンツからしてとてもじゃないけど言えないだろう。
 あの時、戦闘に参加した人間は、全員、事情聴取を受け、起きた事の一切を口外しない誓約書に、サインさせられた。

「あのね。一夏。」
「うん?」
 シャルルが、どこか嬉しそうな表情になる。
「僕、新しい国籍を貰えたんだ。別のデュノア。もう、デュノア社を創立した一族とは縁もゆかりもない、デュノアだよ。」
 そうか。
 親父さんとの縁が切れるって言うのは、常識的に考えたらいい事じゃない。
 けど、血を分けた自分の子供を道具にするような、最低の人間とは、縁があるだけ不幸だ。
 シャルルの場合は、縁が切れた方がいいだろう。
 そこから、また、新しい一歩が踏み出せるんだから。

「それとね。一夏に、一番に最初に、知ってほしい事があるんだ。」
 うん?何だ。
 何かあったか?そんなの。
「一番に知ってほしい事。か?」
「僕の本当の名前、お母さんに貰った本当の名前。」
「何て言うんだ?」
 俺がそう訊ねると、シャルルが抱きついてきた。
「シャルロット。シャルロット・デュノア。それが僕の本当の名前。」
 大切にしている事が、話し方からよく解る。
 そうだよな。
 本当の名前なんだから。
「シャルロットか。綺麗な響きの名前だな。」
 フランスじゃ、ありきたりの名前かもしれないが、俺には本当にそう聞こえた。

「申し訳ありません、教官。任務を全うすることができませんでした。」
 誰もいない職員室で、ラウラが直立不動の姿勢で、千冬に謝す。
「構わん。現に無人機の破壊に一役買った。あれも、無事だ。今回はそれでよしとしよう。」
「はっ!」
 千冬は楯無に、視線を移す。
「そちらも、鼠退治、ご苦労だったな。さすがは更識の当主だ。念のために、ISの緊急チャージキットを置いてある席に、ケイシーとサファイアを座らせておくとは、用意周到な事だ。」
「念には念を入れておきたかったので、ところでこれからの警備体制はどうなさいますか。臨海学校となると、どうしても警備が手薄になりますが…。」
「そうだな。それを考えんといかんな…。」
 3人はしばらくの間、対応を協議した。

「ボーデヴィッヒ。少し、いいか?」
「はい。何でしょうか?」
 ラウラが目にした千冬の表情は、柔らかな物だった。
「一夏の事が話題になると、お前、僅かに頬を染めたな?」
「いえ、決してそんな…。」
 慌てて、否定するラウラを見て、千冬はやれやれいった表情になる。
「ドイツで注意をしていたが、無駄になったか…。」

 ドイツでの教官時代に、千冬はラウラにある事を訊かれた。
「あなたは、何故、それほど強いのですか?どうすれば、強くなれるのですか?」
 そう訊かれた千冬は、柔らかい、照れくさそうな表情になった。
「私には、弟がいる。大切な、何があっても守りたい、大事なただ1人の家族だ。それが、理由だ。」
 守りたい物があるから、だから強くなる事が出来る。
 それが、千冬の答えだった。
「いずれ、日本に来い。そうすれば、解るかもしれん。ただ、一つだけ忠告しておこう。私の弟についてだ。」
 そう言われたラウラは、珍しくきょとんとした。
「気をつけろよ。妙に女の恋心を刺激する。油断すると、惚れるぞ。」
 どこか、嬉しそうにそう言った。

「ボーデヴィッヒか?どうした。」
 自分の部屋に帰る途中に、俺はボーデヴィッヒと会った。
「ちょっとした用事だ。気にするな。」
「そうか。じゃあな。」
 とある事情で、シャルルはラウラと同室になる事になったので、引越しの手伝いを終えたところだった。
「待て。織斑。」
「ん?どうした。」
 何、そわそわしてるんだ?ボーデヴィッヒ。
「今日は、助かった。礼を言う。」
 ああ、テンペスタUとの戦いの時な。
「気にすんなよ。クラスメイトなんだから、助け合うのは当然だろ。」
 というか、おかしい。
 ボーデヴィッヒって、俺とこんなに話をする奴だったっけ?
「わ、私の事はラウラでいい。その代り、お前の事も一夏と呼ぶ。ではな!」
 顔を真っ赤にして、自分の部屋に戻った。

『で、何だよ。これは…。』
 1人部屋になった自分の部屋に戻った一夏が目にしたのは、全てがイタリア製高級家具で統一された自分の部屋だった。
 しかも、ベッドは天蓋付き。
「テンペスタUの件での、まあ、口止め料のような物だ。」
 千冬が、理由を一夏に話す。
「ちょっと、待って下さい!口外しない誓約書を、書きましたよ!なのに、なんで!」
 まだ、言い続けようとする一夏を、千冬は制止する。
「イタリアにとっては、最新鋭機を代表ごと誘拐された挙句に催眠で操り人形にされたなんてのはな、お前の想像以上に、国家の面子に傷がつく。代表のキャリアにもな。だから、なんとしてでも、口止めをする必要があるんだ。表向きには、制御システムが暴走して、それをお前が救助したという事になっている。これはそれに対する礼だ。これが事実だ。忘れるなよ。そして、これは代表の実家からの礼だ。向こうには向こうの事情がある、察してやれ。」
 そう言って、千冬は去る。
 が、ふと、足を止める。
「一夏。」
「何だよ?千冬姉。」
「無暗に女の恋心を、刺激するな。後が面倒だぞ。」
 そう言って千冬は去ったが、一夏は意味が解らず首を捻っていた。

「シャルロット・デュノアです。皆さん。改めて、お願いします。」
 女子の制服を着たシャルロットが、挨拶をする。
 二度も転入の挨拶をするって、なかなかないよな。
 と思っていたら、教室内が騒然となった。
「え、つまり、美少女だったわけ?美少年じゃなく。」
「ちょっと待って、織斑君、知ってたはずよね?部屋一緒だったんだし。」
「それで、ルームメイトしてたわけ?」
「あれ、今まで男子用のお風呂を使っていたって事は、まさか、二人とも、裸で…。」
 しまった!!
 今まで、シャワーやら風呂やらを一緒に使っていた事が、当然知られるのを、すっかり忘れてた。
 と、思ったら、壁にひびが入る。
 そして、ISを展開して、双天月牙で壁を破壊して、鈴が教室内に入って来る。
「一夏!!あんたって、奴は!!シャルロットと、何してたのよ!?」
 龍咆が、発射態勢に入る。
 ちょっと、待て!
 ここは教室だ。そんな所で、ぶっ放すな!

「私の嫁に、何をするつもりだ?」
 ラウラが、ISを展開してAICで凛の動きを止める。
 って、嫁って何だよ。
 そう考えていると、ラウラは俺の襟元を掴んでキスをする。
 え?
 何が、どうなってるんだ?
 誰か、説明してくれ。
「お前は私の嫁だ。他の女と風呂に入るなど、許さん!これからは、私も男子用の浴場とシャワールーム、ロッカーを使う。」
 いや、そりゃ、駄目だって。
 まず、無理だろう。
 シャルロットは、事情が特殊だったんだから。

「一夏…。貴様、今まで混浴などという、ふしだらな事をしていたのか…。そうか、そうか…。」
 箒の冷たい声と同時に、刀が鞘から抜かれる音が聞こえてくる。
 恐る恐る、そっちの方向を向いて見ると、昨日の落ち込みようが別人のような、殺気に満ち溢れた箒がいた。
「箒、ちょっと待て!これには事情が!!」
「ええい、うるさい!!ここで、成敗してくれる!!」
 ああ、俺はここで切り捨てられて、15の短い生涯を終えるのか…。
 なんてのは、御免だ!
 ここは白式を展開して、危険を回避するしかない。
 と考えていたら、ISの物理装甲で何かが弾かれる音がした。

「篠ノ之さん。悪いけど、一夏は僕の初恋の人で、初めて裸を見せて、さらにファーストキスの相手でもあるんだ。傷つけるのなら、容赦はしないよ。」
 おい、シャルロット。
 却って、箒の怒りをあおってどうする!?
 って、ファーストキス?
 いつしたんだ?
 俺にとっても、ファーストキスだったんだぞ!?
 第一、ISを展開したまま、箒とやり合うのは駄目だって!
「シャルロットさん。随分、素敵な話をされていますのね。詳しくお聞かせいただけませんかしら?」
 額に怒りマークを幾つも浮かべたセシリアが、瞬時にISを展開させる。
 頼む、皆、落ち着いてくれ!
 山田先生や、他のクラスメイト達が怯えてるじゃないか!

「ほう。何やら騒がしいと思えば、朝っぱらから、教室内でISを展開して、乱闘か。教師に赴任して、初めて見る風景だな。」
 IS学園最強にして、最恐の教師。
 織斑千冬がそこにいた。
「鳳、ボーデヴィッヒ、篠ノ之、デュノア、オルコット。後で、指導室でゆっくり事情を聞かせてもらうぞ。いいな。」
 うわ、これはきつい事になるぞ。
 まあ、これで、教室内でISを展開させて乱闘するなんて事は、しなくなるだろう。
 いい薬かな。

「織斑。お前とは個人面談で、いろいろと話したい事がある。その後は、私が個人的にISの特訓をしてやろう。IS学園最強の生徒にふさわしい特訓をな。」
 ちょっと、待て!
 俺は、被害者だぞ!
 何でだよ!?
 が、俺に抗う力もすべもあるわけがなかった。

 そして…、俺達は…、地獄を見た…。

「ゴーレムTを3機、改良型のゴーレムU1機が、全機破壊。それに苦労して、専任ごと強奪したテンペスタUは取り戻された。赤字決算もいい所ね。」
 部屋の主は、溜息をついた。
「結構な結果だな。それに、別働隊のゴーレムT2機も破壊されたそうじゃないか。ま、予想はしていたがな、所詮はモドキだ。いくらテンペスタUでも、こうなると忠告はしてやったぞ、機体と乗り手のスペック、双方で大きな差がある。勝ち目はないとな。」
 壁に寄りかかった小柄な少女が、嘲笑を浮かべながら言う。
「言われなくても解っていたわ。それに、これは唯の目くらまし。そっちはどうなの?」
 少女は返事代わりに、自分の左耳にあるイヤリングを見せた。
「向こうも成功している。とりあえず、目くらましは成功したな。赤字決算とは言えないだろう。」
 そう言って、少女は部屋を出た。

『それにしても、白式が最後に見せたあの機能は、一体…。』
 テンペスタUの搭乗者を傷つけまいと、力を抑えていた一夏が一気に決着をつけた機能について、部屋の主は考えていた。
 詳細を分析しようにも、送られてきたデータが破損だらけで修復不能では、どうしようもない。
『篠ノ之束、貴方は白式に何を隠したのかしらね…?』
 部屋の窓から夜景を見ながら、そう考えた。

後書き
各ペアの無人機との戦い。
セシリアと鈴は、肉を切らせて骨を断つで、当たる状況を作って撃破。
セシリアの発想の転換をキーにしてみました。
ビットはそれ自体、推進力を持っていますので、これで動きを止めてはどうかと、頭に浮かんだ事から、こういう展開にしました。
ラウラとシャルロットは、互いの兵装を、使いこなしての勝利。
一年ではトップクラスの相応しい、技巧派の勝利にしてみました。
さらに技巧派というかいぶし銀は、上級生コンビ。
常識外れの機動性がネックなら、それを奪ってしまえばいい。
徐々にそれを奪って、一気に決める。
一夏の場合は、零落白夜という攻撃に異常に特化し、下手をすれば相手を殺しかねない最大の武器でどれだけ苦戦させるかを考えて見ました。
結果、IS強制停止モードを白式が自ら創り上げるという結果に終わっています。
実は、これが白式が白式たる複線でもあります。
後は、お約束のラブコメです。
次回からは、臨海学校。
夏は、女の子を過激にさせます。
世界遺産級の一夏も、遂に恋に目覚めますでしょうか?
そして、裏でうごめく物がなにやらやらかした様子。
色々な意味で、熱い夏になりそうです。

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