cogito,ergo sum

アクセスカウンタ

zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第9話 招かれざる客人<前編>

<<   作成日時 : 2011/08/20 10:21   >>

面白い ブログ気持玉 3 / トラックバック 1 / コメント 0

「んじゃ、行こうぜ。シャルル。」
「うん。」
 イリュジオンの最終調整と稼働データの収集が終了した翌日、俺とシャルルはいつもどおりに登校した。
 最近では、シャルルの笑顔も前より良くなって、俺も嬉しい。
 だが、世の中、そう、いいことばかりではなかった。

「ねえ、ねえ、聞いた?」
「え、何ですの?」
「あのね。」
「そ、それは本当ですの?」
「嘘ついてんじゃ、ないでしょうね?」
「本当だって、何しろ、出所は、あの人なんだから。」
 女子生徒の間には、奇妙な噂が流れていた。

「おはよう。どうしたんだ。」
 そこに、一夏とシャルルが教室に入ってきた。
「「「織斑君!」」」
「お、おう。」
「今月末の個人トーナメントで優勝したら、優勝者は織斑君になんでも願い事を一つ叶えてもらえるって本当?」
 それを聞いた途端、一夏の頭はフリーズした。

 え?なんだって。
 俺が、どうしたって?
 一つ願い事を、かなえる?
 どういう事だ?
 何が、どうなってるんだ?

「ふふふふ。一夏くん。神妙になさい!」
 参上と書かれた扇子を広げて登場したのは、あの人。
 生徒会副会長、更識楯無さん。
 元は生徒会長だったが、俺が勝負で勝ったことで副会長になっている。
「楯無さん!なんでこうなってるんですか?」
 本人の意見を無視して、何やってるんだよ!?この人は!
 人権侵害で、訴えるぞ!
「いやあ、こうした方が盛り上がるし。何と言っても創立以来初めての男子生徒。しかも、その実力はIS学園最強。となれば、こうなるのが自明の理。」
 どこが、自明の理ですか?
 単に、あなたが楽しんでいるだけじゃないですか?
 俺は、人間の形をした賞品じゃないんですよ!!
「織斑君。お願い。ここは、一つ。」
 女子生徒一人が、俺に迫ってくる。
 うっ、なんだ?この迫力。
「そうだよ。織斑君の一日って、訓練、生徒会の仕事、後はセシリア達、専用機持ちと一緒にいる。こればっかなんだもん。あたし達にも幸せ頂戴よ。」
 何で、俺といることが幸せになるんだよ?
 俺は、大吉のおみくじか?
 それとも、幸運を呼び寄せる招き猫か?
「楯無さん。俺が優勝したら、それは無効になるんですよね?」
「「「えええっ、そんなあ!」」」
 悲鳴のような声が聞こえてくるが、とりあえずスルー。
 今は、そっちが大事だ。

「ええ、一夏君が優勝したら、願い事をかなえる権利は誰の手にも渡らないわね。」
 よし、絶対に優勝してやる。
 どんな願い事が来るか解らないから、負けられない。
 飯をおごるくらいならいいけど、さっきの女子の迫力から嫌な予感がする。
 絶対に勝つ!!
「その代り、もし、一夏君が優勝したら、お姉さんが素敵なサービスをして、あ・げ・る♡。」
「「「えええ!そんなあ…。」」」
 再び、悲鳴が木霊する。
 やめてくださいよ!本当に。
「期待しててね、一夏君。当日は、思いっきりセクシーな下着で、おもてなしするわ。お風呂も、大人の素肌の感覚をしっかり覚えさせてあげるからね♡」
 そう言って、退散と書かれた扇子を広げると、ISを部分展開させてさっさとどっかに行く。
 本来ならば、激怒している俺だが、最近はもう慣れた。
 あの人の、ああいう所は、一生治らないだろうし…。

「一夏さん…。」
 背筋が冷たくなるような声は、まぎれもなくセシリアだ。
「な、何だよ?セシリア。どうしたんだ。」
 俺は、出来うる限り、平静を装ってセシリアの話を聞こうとする。
「いつの間に、素敵なサービスを受ける事になったんでしょうね?いつのまにやら、一夏さんに男の甲斐性が備わってきたという事でしょうか…?」
 思いっきり、誤解だぞ!!
 だいたいなんだよ?その男の甲斐性って?
 そういうのはだな、きちんと守るべきものを守れてこそだぞ。
「い〜ち〜か〜。」
 こ、この声は…。
「どうしたんだ?鈴。何か、不機嫌そうだが…。」
「一夏って、何時から、ナイスバディな女の子が好きなケダモノに、なったのかしらねえ…。」
 しまった。
 鈴は自分の胸が小さい事に、コンプレックスを持っていたんだ!!
 楯無さんは、対称的なナイスバディ。
 怒らないわけがない。
 だがな、鈴。
 俺だって、被害者なんだぞ!

「一夏。貴様という奴は、何故、そこまでふしだらな男になったのだ!?元々は、私だけとの約束だったはずだぞ!」
 あ、そう言えば、そうだ。
 誰が、この事を耳にしたんだ?
「ちょっと、篠ノ之さん、ズルイ!!」
「そうだよ。2ヶ月間も、同じ屋根の下で同棲までしていたくせに、まだ足りないの!?」
 女子生徒の非難の矛先が、箒に向いた。
「べ、別にいいではないか。第一、私たちは幼なじみ。嘗ては、小学4年生まで、一緒に風呂に入った事もある。」
 そう言って、俺の腕を取る。
 開き直ったな…。
 馬鹿、箒、胸を押しつけるな!
「「ああっ。ずるい、大きい胸を武器にして、誘惑するなんて」」
 これ以上、騒ぎを大きくするのはやめろって!!
 それに、そろそろ…。

「ほう。朝からいい度胸だな。小学生でも、もう少し、行儀よくしているものだがなあ…。」
 教師用の端末を脇に抱えた、鬼教官千冬姉が教室に入って来る。
「この馬鹿たれ共が!きちんと席につかんか!!」
 全員に、端末の一撃が襲いかかる。
 ちなみに、俺とシャルルはきちんと席についていたので、関係無かった。
「織斑。後で生徒指導室に来い。ゆっくり、話を聞かせてもらう。ゆっくりとな…。」
「ちょっと待てよ。千冬姉!俺は何もしてないぞ、というか被害者だ!」
 そう言った途端に、俺の顔は机に押しつけられていた。
「織斑先生と呼べ、馬鹿者。」
 俺は、大事な事をすっかり忘れていた。
 学園では、織斑先生と呼ばないといけない事を。
 そして、俺は千冬姉に呼ばれて、みっちりお説教をされた…。
「誰か一人に決めろ。」って、何だよ?

「噂は広まったみたいね。」
「はい。これで、全校生徒の大多数は試合会場のアリーナに集まるでしょう。」
 生徒会室で、楯無は虚から報告を受けていた。
「後は、こそこそ入って来る鼠を私達が退治すれば、OKね。」
 その時、虚の端末に連絡が入って来る。
「本音からの連絡です。周囲に不審な人物は確認されず。」
「IS学園内部にも、敷地の近くにも入りこもうとする勇者はいないわね。結構。そのまま続けるように連絡を入れて。」
「はい。」
『これで、こちらの防衛体制は完成ね。向こうは、どう攻めてくるかしらね。』
 生徒会室を出ながら、楯無は今後の予想をしていた。

「これが、デュノア君の新しい専用機かあ…。」
 真新しい浅葱色の装甲のIS、イリュジオンを見て、他の女子生徒が羨ましがる。
 フォルムは、リヴァイブとは一変している。
 肩部と腰部には、ウェポンラックを兼ねたアーマーが装備され、姿勢制御スラスターが搭載されている。
 背部には大型スラスターと、荷電粒子砲らしき砲身が一対装備されている。
 両腕部には、取り回しに影響がないように大きさが考慮されたシールドが装備され、その下に何かが装備されているようである。
 各部の装甲もリヴィブに比べて、多い。
 しかし、そのフォルムは空力学的に非常に洗練された、スタイリッシュなものである。
 
 コアの量産ができない以上、ISの絶対数は限られている為に、専用機を持てるのは、IS操縦者の中でもほんの一握りである。
 しかも、今までの専用機に変わって新しい専用機を受領するのは、極めてまれである。
「ねえ、ねえ。これって、会長も開発に関係してるんだよね。」
 本音が、一夏の手をくいくいと引っ張る。
「フランス政府から要請があってさ。俺は、開発企業の人間じゃないから、どうにか法的にはギリギリセーフだな。」
「ふうん。変というか、面白いねえ。」
 本音が不思議な事もあるなあ。という、表情になる。

「さて、いよいよ。来週が個人トーナメントだ。各自、それまで鍛錬に余念なきようにな。」
「「はい!」」
 何か、気合いの入りようが違うと思うのは、気のせいか?
 いずれにしても、気をつけないとな。
 足元掬われたら、冗談抜きで笑えない事になりそうだ。
 とにかく、絶対に勝つ。
「では、それぞれ、トレーニングを始めろ。まずは、今まで講義した戦闘技術の確認をしておけ。」
 うん、それは大事だ。
 戦い方が解らなけりゃ、戦いようがないからな。
「織斑一夏。」
 話しかけてきたのは、ボーデヴィッヒだった。
「何だよ。」
「貴様とは早く戦いたかったが、気が変わった。トーナメントで完膚なきまでに叩きのめしてやるよ。」
「いいぜ。それまで負けるなよ。」
 随分と自信満々だな。
 まあ、昨日見た録画の実力からすれば、ベスト4はまず固いな。
「そう簡単に、いきますかしら?」
「油断していると、痛い目見るわよ!」
 セシリアと鈴が、ボーデヴィッヒに詰め寄る。
「ふん。お前たちなど、話にもならん。私と、シュヴァルツェア・レーゲンの前では、唯の雑魚だったではないか。何度来ようが同じだ。凰鈴音。荒削りの剣技を砲撃で補おうとも、貴様の衝撃砲は通用せん。セシリア・オルコット。BT兵器の弱点を考慮しない戦い方など、恐れる迄もない。」
「言ってくれるじゃないの!!」
「今度もそうななるか、試してよくってよ!!」
 わ、やべえ。二人の怒りに火がつく、コンマ一秒前だ。
「三人とも、こんな所でいがみあっていた所で、一文の得にもならないぞ。鈴も勝ちたいんなら、まずは指摘された弱点を克服することだけを考えろよ。挑発に乗ってどうする?それとな、ボーデヴィッヒ。日本には「窮鼠猫を噛む」っていう諺があるんだぜ。覚えておけよ。」
「ふん。その言葉通りに行くといいがな。まあ、いい。決勝前に負けるなよ。」
 そう言って、トレーニングを始めた。
 さて、俺も、トレーニングを始めるか。
 と、言っても、白式は白兵戦オンリーなので、マシンガンやミサイルが装備されたターゲットを相手にトレーニングして、後は剣術の鍛錬な訳だが。
 他の面々も、自分なりのトレーニングをして、山田先生や千冬姉が意見を求められたらアドバイスをするという形だ。

「それにしても、イリュジオンは凄いね。」
「ん?何だよ、いきなり。それって、データ収集の時も言ってただろう?」
 男子用のシャワールームで汗を流しながら、シャルルは俺に言ってくる。
 ちなみに、昨日以来、シャルルは俺に裸を見られるのを、別に恥ずかしがらない。
 それはそれでどうかと思うんだが、あまり俺が目をそむけようとすると、悲しそうになる。
 何でだよ?
 というわけで、こうなっている。
「だって、実質的には、新規開発というよりは、プロトリヴァイブの全面改修機でしょう?それなのに、あれだけの性能を発揮するなんて。」
 普通ならシャルルの言う通りなんだが、プロトリヴァイブはリヴァイブに使われている各種技術の実証機なので新機能を増設してテストができるように、改修は容易だった。
 俺は、それに目をつけて設計データを元に各部の拡張性を確保しつつ、徹底的にブラッシュアップして、第三世代技術を実装したわけだ。
 言ってしまえば、コロンブスの卵。
 言われてしまえば、技術者はその手があったと納得するレベルだ。
 設備も、揃ってたしな。
 そうでなければ、いくらなんでも二週間じゃ無理だった。
「ま、シャルルは、ならないと思うけど、性能に溺れるなよ。強力なISだって、乗り手がそれに釣り合わないと、ただのなまくらな刀だからな。」
 俺は、頭を拭きながらそう言って、着替え始める。

 部屋に戻ると、端末に全校生徒への連絡の着信音がなった。
「あれ?一夏。お知らせだって。トーナメントの事に関してだ。」
 俺はそれを聞いて、凄く嫌な予感がした。
 また、楯無さんが妙な事をしでかしたのか?
 これ以上は、勘弁してくれよ。
 在学中に死ぬくらいなら、退学するぞ。マジで。
「コンビを組めって。」
 コンビ?
 俺はシャルルの言った事が、一瞬理解できなかった。
「何で、コンビなんだよ?」
「さあ…。僕にも、解らないよ。」
 ふうん…。
 コンビねえ…。
「難しいなあ。なんせ、相方との連携がうまくいかないと負け決定だしな。」
 誰かとコンビを組むのは、ISに限らず、思ったより難しい。
 互いの息が合わなければ、そこを相手は容赦なく突く。
 だからこそ、互いに戦術を確認して、それに基づき練習を積み重ねていく必要がある。
 それにしても、誰と組むかねえ…。

「ねえ、一夏…。」
「ん?何だ、シャルル。」
 もじもじしながら何か言いたそうなシャルルを、俺は見る。
「よければ、その…。」
「俺と組むか?」
 なんとなくそう言いたげなシャルルに、俺は言ってみる。
「え?いいの。」
 びっくりしたような、嬉しそうな表情でシャルルが言う。
「ああ。考えてみれば、ルームメイトでいる間に模擬戦やったり、ISの戦術について議論したり、結構、互いの事解ってるだろ?だから、よければと思ってな。」
 そう。
 俺とシャルルは、ISの戦術論についても結構話しあう仲でもある。
 元々は、俺のデータ収集の為に、シャルルから話し掛けてきたが、いざやってみると、そんな事を忘れて、互いに夢中になっていた。
 だから、結構、息が合いそうな気がするんだよな。
「じゃあ、申し込んじゃうね。それと第二アリーナが、まだ空いてるはずだから、ちょっと確かめてみる。空いてたら、戦術のすり合わせに入ろう。」
「ああ、頼む。」
 調べてみたら、第二アリーナが開いていたので、俺達は戦術のすり合わせに入った。

「織斑君、酷いよ!」
 え、何だがだ?
「そうだよ。いくら、ルームメイトだからって、デュノア君とペアを組むなんて!!」
 息が合うんだから、いいじゃないか。
 それにシャルルには言わなかったけど、他の奴と組むのはまずいから、しょうがない部分もあるんだよ。
 第一、ルームメイト同士組むのは珍しくも何ともないだろう。
「まさか、デュノア君。織斑君と…。」
 女子の1人が、この世の終わりが来たかのように、俺とシャルルを見る。
 まさか、何だって…?
「ち、違う、違う。僕と一夏は唯のルームメイト。それだけだよ。」
 シャルルが、真っ赤になって否定する。
 なんだかよく解らんが、まあ、いいか。

「一夏!」
「一夏さん!」
 鈴とセシリアの二人が、俺達の前に立つ。
「あんたは、シャルルと組んだ訳ね。まあ、いいわ。優勝するのは、私達よ。必ず、あんた達を倒す!!」
「そうですわ!デュノアさん。新型のISだからと思っていると、大やけどをしますわよ。」
 お前のも、新型じゃん。
 何、言ってんだよ。
 ここまで来ると、わけが解らん。
 何か、面倒な事が起こりそうだな。
 勘弁してくれよ。
 ホント。

 いよいよ、個人トーナメントの日が来た。
 貴賓席には、生徒達の中で見所のあるのをスカウトしようと来ている企業の担当者や、代表生徒の成長具合を見に来ている各国のお偉いさんがいるのが、ディスプレイに映った。
 主にこういった大会で使用される、第四アリーナの更衣室の空中投影ディスプレイには、既に組み合わせが表示されている。
「第一試合は、鈴とセシリアのペアか。ボーデヴィッヒさん達のペアは第二試合だね。」
 ちなみに、ペアが決まらなかった生徒は任意で組まされる。
 あの、剣のような鋭さを持ったボーデヴィッヒと組む気になる奴がいなかったので、最終的に箒がパートナーになった。
 その後、箒はみっちり鍛えられていた。
 あまり、誰かと関わらないようにしている奴だが、厳しくも面倒見のいい教官のような面も持ち合わせている。
 軍の一部隊の隊長というのもあるのかもしれないが、割といい奴なのかもな。
 後で、話しかけてみるか。
 そんな事を考えていると、シャルルが何だか不機嫌そうな表情になる。
「どうした、シャルル?」
「別に。ただ、一夏がずっとボーデヴィッヒさんの事、見てるなと思って…。」
 そう言って、何故だかそっぽを向いた。
 今更だが、本当に女性の事は男にはよく解らん。
 順調にいけば、鈴達がボーデヴィッヒとぶつかるのは準決勝かな?
 さてと、俺達は第3試合か。

「二人とも、相当に特訓したみたいだね。」
 何とかシャルルをなだめた後、俺達は第一試合の鈴とセシリアのペアの戦いぶりを見ていた。
 互いに、連携しあって、着実に相手にダメージを与える。
「ああ。よくここまで、頑張ったよな。」
 動機が不純でなければ、尚、良かったけどな。
 もっとも、ボーデヴィッヒにボロ負けした事に対する悔しさも、力の源にはなっているんだろうが。
「射撃と射撃の連携か。成程な。それに…、セシリアのライフルに銃剣がついてるな。」
 ブルー・ティアーズはあくまで、中遠距離の射撃戦闘を想定している機体だから、今まで、白兵戦用の装備はなかった。
 それが、ライフルに銃剣がつき、短くなって取りまわしやすくなっている。
「今までのデータをフィードバックした、カービンタイプだね。銃剣も装備されているってことは、いざという時の白兵戦も想定しているってことか。」
 いくら、相手と距離を置いていたとしても、やはり取り回しがいい方が、次の射撃までの時間を短縮できる。
 それに、銃剣術は代表候補生でも、訓練は受けているはずだ。
「接近戦で一気に勝負をつけられるとは、限らないね。」
 シャルルが真剣な表情で、セシリアを見る。
「それでも、俺は、磨き続けた自分の剣技を、信じるさ。なにしろ、白式の唯一つの兵装だしな。」
 それに、千冬姉だって、雪片だけで世界の頂点に立ったんだ。
 つまり、やりようはいろいろあるはず。
 なら、それを探すさ。
 それに、セシリアの銃剣術もまだまだだしな。
 油断しなければ、何とかなるさ。
「セシリアさん達の勝ちか。順当と言ったところかな?」
「専用機持ちのペア相手だからな。でも、いい経験になったと思うぜ。」
 勝利よりも、むしろ敗北からの方が学ぶ事が多い事って、世の中多いしな。

 そして、第二試合。
 ボーデヴィッヒと箒のペアの試合が始まった。
「強いね…。」
「一方的だな…。」
 箒が使っているのは、リヴァイブ。
 元々、白兵戦のコツは掴んでいるから、ボーデヴィッヒは銃火器の使い方を出来うる限り叩きこんだんだろうな。
 基礎はできている。
 それを利用して、箒は牽制役が主で、隙を見せた所をボーデヴィッヒの攻撃が命中する。
 大型レールカノンがどうしても目立ちがちだが、プラズマ手刀やワイヤーブレードを使用したコンビネーションも実に巧みだ。
「決まりかな…。」
 シャルルが、そう呟いた途端に、対戦相手が箒にせめて一矢報いようとする。
 その時、左腕に装備された物理シールドに装備された物が姿を現した。
 69口径パイルバンカー「灰色の鱗殻」。
 通称盾殺し(シールド・ピアース)。
 攻撃力で言えば、第二世代兵器でも間違いなく最強クラス。
 その一撃が、相手に引導を渡した。

「リヴァイブを使っていた時の、僕の奥の手でもあったんだけど。向こうも使ってくるとはね。」
 なるほど、物理シールドの下はそれだったのか。
「そんなに不思議じゃないさ。箒は古武術の類もやるから、充分にあの手の兵器も使いこなせるさ。」
 驚くシャルルに、俺はそう話した。
 それにしても、技の切れも増している。
 箒も強敵と言っていいな。
 まだ、充分に勝てるレベルだけど、自由に動き回られると相当に面倒な事になる。
 さて、どうするか…。
「一夏、次は僕たちだよ。」
 ああ、そうだった。
 じゃ、行くとするか。

「何はともあれ、ベスト16に残れたね。」
「ああ。けど、これからが正念場だな。決勝までボーデヴィッヒやセシリア達とぶつかる事はない。けど、他の一般生徒も侮れないな。」
 今は夕飯。
 シャルルはカルボナーラ。
 俺は、シーフードカレーを食べながら、明日からの試合について意見交換をする。

「よく、敗北せずに勝ち残ったな。褒めてやる。」
 食べ終わって、トレーを片づけようとすると、ラウラが一夏達の前に立ちふさがる。
「そりゃ、どうも。そっちこそ、負けなくてよかったな。で、何の用だよ。」
 一夏が、ラウラの顔を真っ直ぐに見ると、ラウラは胸が高鳴る。
 頬が染まりそうになるのを必死に抑えながら、一夏を見据える。
「決勝まで負けるな。お前たちを決勝で叩きのめすのは、私たちだからな。」

「ちょっと、私達の事も忘れないでよね。」
「いつまでも、前のようにいくと、思わないでいただけますかしら。」
 腰に手をやった鈴と、腕を組んだセシリアが、ラウラ達の前に立つ。
「ふん。少しはできるようになったが、まだ不足だな。ぶつかるとしたら準決勝か。だが、結局は、お前たちの負けだ。」
 ラウラが自信に満ちた態度で、セシリア達を見る。
「その言葉、そっくり返してあげる。」
「明日。精々、泣きを見ないように、神にお祈りなさいな。」
 そう言って、鈴達は食堂を去った。
「何か、策があるみたいだね。」
「だな。」
 やや、自信過剰である事が、二人の共通点だが根拠も無しに、言いはしない。
 何か策があるのは、間違いないだろう。

「さあ。いよいよ。1年生の部は、準決勝第二試合。最初に決勝戦に駒を進めたのは、織斑・デュノアペア。圧倒的な強さで、決勝への切符を手にしました。
しかし、次のカードも見逃せません。イギリス代表候補セシリア・オルコットと、中国代表候補の凰鈴音のペアと、ドイツ代表候補ラウラ・ボーデヴィッヒと、篠ノ之束ペア。双方ともに、相手を寄せ付けず、勝利をつかみ取ってきました。さあ、決勝戦に駒を進めるのは、果たしてどちらのペアか?遂に試合開始です!」
 試合が始まると、双方動き始めた。

 箒は近接戦闘ブレードに、アサルトカノンを呼び出して、鈴を牽制する。
 その間に、ラウラはセシリアを仕留めようとする。
「さあ、どうする?ビットを展開するか?そうなれば、貴様はそこから動けんがな。」
「別に使わずとも。戦えましてよ!」
 セシリアは、レーザーカービン「スターレイン」をフルオートにして、ラウラに攻撃を仕掛ける。
「ふん。そんな物、かわすのに造作もない。」
 レーザーの射撃をかわしながら、ラウラはワイヤーブレードを繰り出す。
「それこそ、そんな物ですわ。」
 銃剣で防ぎながら、後退しつつ射撃を続ける。
「ちょこまかと!」
 苛立ったラウラは、右肩部の大型レールカノンを、セシリアに向ける。
「あら?そんな事をしてよろしいのかしら。」
 再び、セシリアは、フルオート射撃を開始する。
「ふん。貴様の射撃など、かわすのは造作もない。」
「そうですわね。あなたはそうでしょうね。でも、今回はペアでしてよ?」
 ラウラが回避したレーザーは、箒を背後から襲う形になった。
「それじゃ、いくわよ!」
 箒のアサルトカノンを蹴り飛ばすと、鈴はチャージサイクルを短くした龍咆を数発叩き込み、距離を取りながら、高出力の龍咆をチャージして、箒に発射する。
「そう、何度も!」
 物理シールドで防ごうとするが、態勢が悪く、箒は吹き飛ばされる。

「成程な。こういう手があったか。」
 動き回っていれば、いつかは射線がボーデヴィッヒ越しに箒に通る。
 二人はこれを狙っていたのか。
「ただ、今の二人じゃ、ラウラさんの相手はきついよ。どうする気かな?」
 シャルルの言うとおり、鈴とセシリアではラウラとの戦いは苦戦する。
 特に、鈴は龍咆がAICに完全に防がれる為に、シュヴァルツェア・レーゲンの前では、甲龍は白兵戦専用機同然だ。
「AICを封じながら、ボーデヴィッヒの懐に飛び込めば何とかならなくもないが、セシリアを箒が抑え込もうとするから、難しいか。」
「うん。セシリアさん達が勝てるかは、箒さんをどうやって無力化するかにかかっているね。」

 2対1になっても、ボーデヴィッヒは全く遅れを取らなかった。
 ワイヤーブレードとAICを駆使して、二人を寄せ付けない。
 さすがに、千冬姉の教え子だな。
 複数を相手にした訓練も、みっちり積ませたみたいだな。
「背後を取れれば、何とかなるんだがな…。AICの弱点をつける。」
「AICの弱点?」
「ああ。」
 どんなに優れた装備でも、弱点のない装備はない。
 AICには、ある致命的な弱点がある。
 そこをつけば、鈴とセシリアにも勝機はある。
 ただ、気づけるかだな。
 ピットのモニター越しに、試合を見ながら俺はそう考えていた。

「私はまだ、終ったわけではないぞ!」
 鈴とセシリアの横から奇襲をかける形で、箒が試合に復帰する。
 しかし、残されたシールドエネルギーは、もう、僅かだ。
 たいして、戦えないだろう。
「セシリア、箒をお願い。」
「解りましたわ。」
 セシリアが、箒の方に向かう。
「さあ、少しの間。私が相手をするわ。」
 鈴が双天牙月の二刀流の構えを取る。
「ふん。やれるものならな。」
 AICを使うまでもないと考えたラウラは、プラズマ手刀で迎え撃とうとする。

「この短期間で、よくここまで上達なさいましたわね。でも、私、負けるわけには行きませんの。」
『そう、優勝して、一夏さんに…。』
 だが、それは箒も同じだった。
「私とて、負けはせん!!」
 弾切れになったアサルトカノンから、サブマシンガン「連撃」に換えて、再び箒は射撃を開始する。
「しかし、まだまだですわ。1対1の戦いでは、あなたの射撃はまだ未熟…。」
 セシリアは、複雑な、しかし優雅な回避運動をしながら、箒にレーザーを次々と命中させる。
「くそーっ!」
 射撃が駄目ならば、剣術でと、サブマシンガンを捨てた箒はセシリアに向かう。
「チェックメイトですわ。」
 リヴァイブのシールドエネルギーが尽き、箒は試合続行不能になる。

「鈴さん。今すぐ、そちらに参りますわ。」
「とっとと来なさいよ!こっち、大変なんだから。」
 プラズマ手刀のみでの戦いでも、鈴は苦戦を強いられていた。
 一撃が重い双天牙月に対して、間合いこそ狭い物のスピードを活かして、ラウラは試合を押し気味に戦っていた。
 トーナメントまで、指摘された自分の剣術の粗さを克服する為のトレーニングを重視してきたが、それでも、ラウラの方が実力は上だった。

来るわよ…。
その内1人は、助けてあげて。

「シャルル、何か言ったか?」
「ううん、何も。どうしたの?」
 空耳、それとも…。
 俺は、白式を待機状態にしたまま、ハイパーセンサーをフルレンジにして索敵をした。
 この反応は…。

「外部ハッキングです!!警戒レベル4に引き上げられました。シャッターが閉じられ始めています。」
「またか!生徒達の避難経路は、何としても守り抜け!!」
「避難経路は確保されています。え…?」
 真耶が驚きのあまり、声を失う。
「どうした?」
「所属不明のISを確認。数4。そして…。」
 次の真耶の報告に、千冬の表情が変わる。
「データ照合。さらに、イタリア製第三世代ISテンペスタU。」
「イタリアが?いや、違うな。おそらく、どこかの組織に強奪されたか…。生徒達の避難状況は?」
 冷静に事態を分析しながら、千冬は避難状況を確かめる。
「そちらは、問題ありません。え。ちょっと、あなたたち、何しているんですか?」

 やれやれ、またかよ。
 しかも、4機。1機は改良型だな。
 こりゃきつそうだ。
 白式を緊急展開して、アリーナに出た俺は、クラス代表対抗戦の時に戦った無人機3機と改良型らしき無人機1機と対峙していた。
「しかも、おまけに、テンペスタU。イタリアの第三世代ISかよ。」
 冗談きついぜ。
 これだけの数を相手にするのは、半端じゃなくきつい。
 でも、何としてでも、負けられない。

「一夏。篠ノ之さんはぎりぎり、ピットに送れたよ。」
 戦闘準備を完了したシャルルが、俺の横に立つ。
「ここは、私たち専用機持ちの出番ですわね。」
「同感。」
 セシリアと鈴もいた。
「さてと、さっさと片付けるぞ。」
 ボーデヴィッヒもいる。
「おーい、織斑。先輩を忘れんなよ。」
「全員、エネルギーは補充しておいたから、心配しなくていいぜ。楯無は、外に来た鼠を退治しに行ってる。皆は無事に避難できるぜ。生徒会長。」
 ケイシー先輩と、フォルテ先輩が、誰に持たされたのか、緊急用のエネルギーチャージキットを持って後ろにいた。
「一夏くん。君は1人じゃないよ。さ、さっさと片付けちゃおう。」
 コアネットワークに、楯無さんからんお通信が来る。
 そうだな。そうなんだよな…。
 よし、さっさと片付けるか!

「セシリアと鈴、シャルルとボーデヴィッヒ、ケイシー先輩とフォルテ先輩で、あの3体をペアで1体ずつ相手にしてください。手ごわいですから、気をつけて。残りの1体とテンペスタUは、俺が引き受けます。」
 俺は、その場で指示を出す。
「おいおい。お前一人で、2体のお相手か?」
 フォルテ先輩が、驚いて俺に確認する。
「数が合いません。誰かが、こうする必要があるんです。片づけたペアは援護をお願いします。行きましょう!」
 それぞれのペアが、戦いを始める。

後書き
いよいよ、トーナメント戦です。
原作では、優勝したら一夏と付き合えるでしたが、そのままですと捻りがないように思えて、願い事を一つ叶えてもらうにしました。
考えようによっては、こっちの方が大変かもしれないので(笑)。
さて、ラウラには箒のコーチをやらせてみました。
私の書くラウラは、性格が原作より大分柔らかいので、隊員の面倒見もしていても可笑しくないと思いましたので。
そして、セシリア達のリベンジかと思いきや、またもやトラブル。
原作で名前だけ出ていた、テンペスタUを自分なりに設定を作って、登場させてみました。
それでは、お気に召しましたら、後編をお楽しみください。

ブログ村のランキングに参加しております。
来てくださった方は、よろしければクリックをお願いいたします。
励みになりますので。

にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ

相互リンクはいつでも大歓迎です。
リンクをしてくださる方は、コメント欄にお書き下さい。
リンクの設定をした後に、お知らせします。

後編へ
目次へ戻る。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 3
面白い 面白い 面白い

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
◎そふてにっ第9話「ひとまずっ」
前回までのあらすじと、24風にはじまる。合宿に来るが、コトネちゃんが帰ってしまう。ミサキさんが私が見つけ出してあげるわよと、モニタリングルームへいく。赤い点で人が表示さ... ...続きを見る
ぺろぺろキャンディー
2011/10/04 05:13

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
ブログランキング・にほんブログ村へ
IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第9話 招かれざる客人<前編> cogito,ergo sum/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる