cogito,ergo sum

アクセスカウンタ

zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第8話 貴公子は貴公子?<後編>

<<   作成日時 : 2011/08/14 11:11   >>

面白い ブログ気持玉 4 / トラックバック 0 / コメント 0

「もう、着終わったよ…。」
 後ろを向いていた俺にシャルルが声を掛けて、俺が振り向いた頃にはシャルルはいつも通りの服装だった。
 それをみて、俺は心の中でほっとした。
 あのまま、続けさせていたら、俺は絶対に自分自身を許せなかったから。

「でさ、何で、男装なんてしてるんだよ?」
 そこが、一番、引っかかる。
「父にそうしろって、言われたんだ。」
「親父って、デュノア社の社長にか?」
 うん?頭の中で、何かが繋がりかけた気がした、デュノア社か…。
「僕はね。本妻の子じゃないんだ。愛人の子なんだよ。」
 冷めたような、乾いたような表情でシャルルは言った。

「ずっと、離れて暮らしてたんだけど、母さんが亡くなってね。二年前に引き取られたんだ。孤児院ていう選択肢もあったけど、父が手を回してね。もっとも、ろくに話した事はないよ。その後、調べている内に、僕に高いIS適性がある事が解ったんだ。そして、非公式ながら、デュノア社のテストパイロットになったんだ。」
 そこまで聞いて、大分、事情がつかめてきた。
 多分、自分に愛人の子がいるのが世間に解り、スキャンダルになる可能性を摘み取ったわけだ。
 そして、何か使い道がないかと調べてみたら、ISを動かせる。
 ならば、道具として使おう。
 そう、考えたんだろう。
 知らず知らずの内に、怒りがこみ上げて来て、ズボンの布を握り締めていた。
「それから、少ししてからかな。デュノア社は経営危機に陥ったんだよ…。」
 それを聞いて、俺の頭の中で繋がりかけた物が一気に繋がった。
 今、EUでは第三次イグニッション・プランに基づき、次期主力機の選定にあたっているはずだ。
 その候補が、セシリアが専任を務めている、ティアーズタイプ。ボーデヴィッヒのレーゲンタイプ。そして、イタリアのテンペスタUタイプの3機種。
 しかし、フランス製のISはトライアルには選ばれていない。
 デュノア社以外のIS製造メーカーも、必死に開発を続けてるが、まるで形にはなっていないはずだ。
 ISの開発には、多額の資金がいる。
 ほとんどのメーカーが、政府からの資金援助があって成り立っているのが、現状だ。
「このままいけば、デュノア社は資金援助どころか、開発許可そのものが剥奪される。だから、お前が来たんだな。第三世代以降の機体のデータを盗むために。そして、そこに最適の相手が現れた。束さんが直接開発した、白式を専用機とする、俺がな…。」
 不思議なもんだ。
 怒り心頭なのは間違いないのに、頭だけは妙にさえる。
「二人目のISを動かせる男子ともなれば、広告塔としてはこれ以上ない。そして、俺に接触して、白式のデータも盗みだせるか…。」
「正解だよ。そして、君の生体データ。より正確に言えば、君の遺伝子もね…。」
 それを聞いただけで、俺はシャルルの親父が何をさせようとしたのか、よく解った。
 口にはしたくないがな…。

「はあ。全部喋って、すっきりした。それと一夏。黙っていて御免。」
 シャルルが頭を深々と下げる。
 沸々と、怒りがこみ上げてくる。
 抑えなきゃいけないと思ってでも、抑えきれない。
 いや、俺自身が抑えようとしない。
 勝手に愛人作っといて、生まれた子供は道具にして、自分の会社の儲けの為に使う…。
 我慢がならなかった。

「いいのかよ…?それで。」
 俺は自分が驚くほど冷静に、シャルルに訊ねた。
「えっ…。でも、どうしようもないんだよ。」
 全てを諦めたようなシャルルの表情が、逆に俺に火をつけた。
「お前はそれでいいのかよ!?道具にされてままで、いいのかよ!?」
 言葉が止まらない。
 怒りが止まらない。
 これは俺が怒るべきじゃなくて、シャルルが怒るべきだ。
 解っていても、俺は自分を抑えきれない。
 気づいたら、俺はシャルルの肩を掴んでいた。
 細い肩だ。
 こんな細い肩に、周囲は重い物を背負わせていたのかよ…。
「一夏…。どうしたの?急に…。」
「俺と…、俺と千冬姉は、両親に捨てられたんだ…。」
 そう言った時、シャルルは何かに納得したような表情になる。
 俺に接触する前に、俺の経歴ぐらいは調べていたはずだ。
 両親がいない事は、知っていたんだろう。
 俺は、遠い昔の事を、思い出していた。

 多分、もう10年くらい前だと思う。
 友達と遊んで家に帰ってきた俺は、夕飯の準備をする匂いがしない事に気づいて、台所に行った。
 そこには、テーブルの上に置かれた預金通帳と、表情を消して、ガスレンジで手紙らしきものを燃やしている千冬姉がいた。
「千冬姉…。」
「ああ、一夏か。お帰り…。」
 俺に気づいた千冬姉は、優しい顔で俺を迎える。
「ねえ、父さんと母さんは?どっかに出かけたのか?」
 俺の問いに、千冬姉は、一瞬、泣き出しそうな顔をして、俺を強く、優しく抱きしめる。
「今のお前には、理解できないかもしれないが、これからはお前と私だけの家族だ。他には、誰もいない。だが、安心しろ。何があっても、私はお前を守り抜いて見せる。安心しろ。大丈夫だ。」

 それからは、千冬姉は学校に行きながら、外で働いて必死に俺を育ててくれた。
 それから、少しして、俺たちは篠ノ之さん一家と知り合う。
 そして、世界に始めてISが登場した白騎士事件が起きる。
 ISの圧倒席な性能が原因で女尊男碑の世の中になってから、千冬姉は日本の国家代表になり、今までの家を売って、それを元手に中古の家を買って新しい生活が始まった。
 そして…。
 やめよう。今は、なるべく思い出したくない。
 両親がいなくなって10年。
 もう、会いたいなんて欠片も思わない。
 でも、シャルルは、シャルルには…。

「とにかく、お前はお前、親父さんは親父さんだろ?確かに血は繋がっているけど、お前が道具になる必要なんて、どこにもない。第一、俺にばれた以上、これから、どうするんだよ!?」
 シャルルは本意じゃなかったとしても、会社ぐるみで大ペテンをやらかしたんだ。
 ただで済むわけがない。
「そうだね。デュノア社は、悪くて倒産。よくて、他の企業の傘下かな。いずれにせよ。今まで通りにはいかない。僕は、一生を檻の中で過ごす事になると思うよ。」
 全てを悟り、諦めきった、シャルルの寂しい微笑み。
 何か、何か、できないか?
 要は、デュノア社のペテンを帳消しにできる何かがあれば、状況は打開できる。
 そう。例えば、フランス政府が欲しがっている。何かがあれば…。
 うん?
 フランス政府が、欲しがっている物…?

「ここにいろ!」
「え!?」
 俺の言葉に、シャルルは面喰う。
「俺さえ黙っていればいい。誰にもしゃべる気はないし、仮にばれても、IS学園特記事項第21項がある限り、フランス政府もデュノア社もお前には、手出しはできない。」
 IS学園はその特殊な性格から、国家によって承認された55の特記事項がある。
 その一つが、特記事項第21項だ。
 簡単に言えば、学園に在学している3年間は、いかなる国家、企業、団体に、帰属しない。
 元々は、国家の都合に振り回されずにISの訓練に専念できるように、決められた特記事項だが、これは国家や企業からの介入から生徒を守るために、充分利用できる。
「よく、覚えているね。55個もあるんだよ、特記事項って。」
 シャルルの声に、明るさが戻ってきた。
「これくらいは覚えないとな。外で一生懸命働いてくれていた千冬姉の為にも、今まで学校の授業には、手を抜けなくてさ。気が付いたら、記憶力とか、いろいろ、能力が高くなっていたんだよ。」
「一夏って、本当に、織斑先生が好きなんだね。」
 優しく笑いながら言う、シャルルの言葉に、俺は反論できなかった。
 ああいう、暴力教師だけど、俺を大事に守ってくれる、唯一人の肉親だからな。
「それと、俺はフランス政府と取引をしようと思っている。」
 そう言って、俺は端末を立ちあげて、空中投影キーボードを叩いてあるデータを呼び出す。
「シャルル、ちょっと、見てくれ。」
 怪訝そうな顔をして見たシャルルは、驚愕した。
「これ、フランス政府は欲しがると思うんだよな。幸い、デュノア社の機材が役に立つし、向こうの利益にもなる。」
 実を言うと、通常なら問題になるんだが、俺に関してはギリギリ問題にはならない手段だった。
「これなら、問題も打開できると思うぜ。決めるのはシャルルだけどな。」

「決めるのはシャルルだけどな。」
 一夏の言葉を聞いて、シャルルの胸の鼓動は早鐘のようになった。
 確かに、これは有効なカードになる。
 でも、リスクがないわけじゃない。
 どうして、そこまでしてくれるの?
 最近、知りあったばかりなんだよ。
 確かに、裸の寸前までは見せたけど、その先を止めたのは一夏なんだよ。
 僕が何のために一夏に近づいたのを知っているのに、どうして優しくしてくれるの?
 シャルルは、混乱しつつも、嬉しかった。
 自分の為に、ここまでしてくれる目の前の、明るい笑顔の少年の心づかいが嬉しかった。
『いいのかな…?助けを求めていいのかな?』
 目の前の強く優しい王子様に助けを求めていいのかという疑問と共に、強い願望が生まれた。

「助けて…。」
 シャルルが俺のTシャツにしがみつく。
「シャルル…。」
 俺にしがみつくシャルルは、男じゃなくて、女の子だった。
 細くて、どこか脆くて、守ってやらないと。そう思わせる、ごく普通の女の子だった。
「助けて、一夏…。助けて…。もう、嫌だ…。こんなの…、嫌だ…。」
 震えるシャルルの肩を、俺はそっと抱きしめる。
「解った。出来る限りの事はする。だから、俺を信じれくれるか?」
「うん…。」
 涙がにじんだ目で俺を見たシャルルは、しっかりと頷いた。
「よし。解った。」
 守れる可能性があるなら、俺は守る。
 そう決めた。

 その翌日、フランス国防省は大騒ぎになった。
 送信元が特定不明の、情報が送られてきたのだ。
 しかも、フランスがのどから手が出るほど欲しがっている、第三世代ISの概念図だった。
 国防大臣ジェラール・ロンゲは概念図の解析を命じたが、これだけでは開発は不可能という結果に落胆した。
 その翌日、さらにメールが送られてきた。それは、特定の条件を飲めば、情報の全てを開示する事を確約するという内容だった。
「どうする?」
 閣議で首相のフランソワ・フィヨンが、閣僚に意見を求める。
「条件が何かが問題ですな。」
「解らん。途方もない金か…。いずれにしても、聞いてみなければ何も解らん。送信先は相変わらず、解らんのか?」
「はい。残念ながら。」
 ロンゲが答える。
「とにかく、待つしかあるまい…。」
 そして、翌日、条件が明示された。
「製造メーカーはデュノア社である事。その専任パイロットは、個人の国籍を認める事。デュノア社の抱えているある秘密に関しては、これを不問とする事。尚、この秘密に関しては、汚職や紛争地への武器密輸の類にあらず。」
 デュノア社はフランス最大のIS開発企業である事から、受け入れるのは難しいどころか、至極当然だ。
 しかし、その後については、よく解らなかった。
「秘密裏にデュノア社の経営陣を呼び出す必要が、あるな。」
 フィヨンはそう決断した。
 その2日後、奇妙な声明がフランスから出された。
 要求を全て受諾する。
 ついては、その件について話し合いたい。
 この訳のわからない声明に対して、マスコミは興味を示したが、とある女優の離婚話が出て、興味はそちらに向いた。

「喰いついたな…。」
 一夏はほくそ笑んだ。
「でも、大丈夫なの?」
 データを渡した途端に、一夏を捕縛する危険性もないわけではない。
「それに関しては、問題ないさ。メモリーのデータには、自己崩壊プログラムを予め仕込んであるんだよ。向こうが何かしようものなら、その場でデータはパーさ。」
 この手の事は、習志野での破壊工作訓練で散々やって、俺の十八番になっている。

「成程、やはり貴方だったか、シニョーレオリムラ。」
 在日フランス大使は、どこか納得したような表情になる。
「何故、私だとお考えになられたのですか?フォール大使。」
「貴方の個人データは、委員会によって機密指定されている。それ故に、何ができるか解らない。逆に何ができないかも解らない。ならば、ISの設計も何とかならないかと思っておりましてね。実は、こちらから接触してみようかという話もあったのですよ。」
「アラスカ条約違反ギリギリですね。国家が他国のIS企業に接触するには、委員会の許可が必要になりますが、私はあくまで個人。そして、私が他国のIS開発に携わってはいけないという決まりも、今のところ無い。早ければ早いほど、法の不遡及で妨害される事もないですしね。」
 法の不遡及とは、法律を決めた際に過去にさかのぼってその法で裁きを下してはいけないという、あらゆる国家の法律、国際法の概念である。
「デュノア社から話は聞きました。正直驚きましたし、本来ならばデュノア社は倒産という事になります。パイロットの方に関しては、強要の事実が確認され、しかも未成年ですから、罪に問うのはやめようということで、意見が一致しました。国籍の方も充分認められます。」
 その事を聞いて、一夏は心の中で胸を撫で下ろした。
「安心しました。条件を全て受諾していただいた以上、私も約束は守ります。それで、開発に関してですが。」
「デュノア社のスタッフ並びに、分解式のファクトリーを搭載した軍用機が既に向かっております。明日には到着するでしょう。無茶を承知で申し上げますが、2週間以内に完成させていただきたい。我が国としては学園のトーナメントでデビューさせたいのです。」
 IS一機を2週間以内に完成させろというのは、正直に言って無茶どころではない。
 が、一夏は場合によっては出来なくもないと考えている。
「荷物の詳細を、チェックさせていただけますか?」
「ええ、もちろん。」
 タブレット型の端末で、荷物をチェックしていると、とある物に目が止まり、一夏は笑みを浮かべる。
「突貫工事になりますが、大丈夫だと思います。」
「それはありがたい。ところで、今回の件ですが、我が国が、直接貴方に打診して、開発されたという形にしたいのですが?もちろん、充分な報酬をお支払いいたします。」
 フランスという国のメンツを保つためだろう。
エリート揃いのIS学園とはいえ、1年生に手玉に取られたように、第三世代ISの開発が始まったとなれば、国のメンツに拘わる。
 さらに、一夏自身が危険にさらされるのではないかという、危惧もあった。
 それ故の、措置である。
 そして、一夏の目にとまった物の名をプロト・リヴァイブという。
 文字通り、ラファール・リヴァイブの原型機である。
「では、これで失礼します。準備に取り掛かりたいので。」
「よろしくお願いします。ちょうどIS学園にこの事をお話に行くので、お送りしましょう。」
「助かります。」

「と、言うわけで、フランス政府からの要請で、織斑は新型ISの開発に関わる事となった。授業はしばらく出ない。」
 朝のHRで、千冬姉がIS開発の件を説明する。
「「え〜っ、織斑君、ISの開発もできるの?」」
 いや、最初から最後まで出来るわけじゃないぞ。
 今回の場合は、改装に近いんだから。
「とすると、織斑君は来年からは整備科?」
 ISの整備及び開発に関する知識を学ぶために、2年度からは整備科が1クラス設けられている。
「何、言ってるのよ。織斑君ほどの人が、整備科に行くわけないでしょう。」
 まあ、興味はあるけどな。
 訓練の時も、整備や開発に関する講義は凄く面白くて、のめり込んだ。
 その時から、構想を温めてきたのが、今回開発するISだったりする。

「一夏!」
 学園の近くの海に組み立てられたメガフロート方式のファクトリーに向かおうとする時、シャルルが声を掛けてきた。
「どうしたんだよ?何かあったか。」
 追いかけてきた、シャルルの表情はどこか申し訳なさそうだった。
 いちいち気にするなよ。
 元はといえば、俺が勝手にやったんだからさ。
「ごめん…。僕の為に…。」
 やれやれ…。
 ルームメイトになって分かったけど、シャルルっていい子過ぎて、人に迷惑かけるのを凄く嫌がるんだよな。
「シャルル。俺とお前はルームメイトだろう?時には、迷惑かけて当然なんだぞ。迷惑かけたくないのは解るけど、せめて、俺にくらい迷惑かけていいんだぜ。じゃあな。期待してろよ。」
 そう言って、俺はファクトリーに向かった。

「もう。強引だったり、すぐ、どっかに行ったり。」
 シャルルはそう言って、どこか拗ねたような表情になる。
『ここにいろ!』
 凄く強引な所があるのに、いつもはさりげなく気づかいをしてくれる。そのくせ、すごくとらえどころがないというか、よく解らない所がある。どうして、あんなに人に優しくできるんだろう?
 母が亡くなってからのシャルルの世界には、優しさなど欠片も無かった。
 周囲の人間は、シャルルを道具としてしか見なかったし、本妻は泥棒猫の子と自分を蔑んだ。本妻の娘の方も、自分など見るのも汚らわしいと言う視線で見た。
 気が付いたらシャルルは、心を閉ざし、誰も彼もが人形のように見えた。
 灰色の世界で、誰かの言うとおりに何かをするのが、シャルルの日常だった。

 それを変えたのは、情報を盗むために近づいた、世界で唯一人ISを動かせる男の子だった。
 とても、開けっぴろげで、優しいのに、どこか理解できない所がある。
 でも、その少年といると、心が温かい。
 凄く、ほっとする。
『あの時、止められなかったら、僕は…。』
 間違いなく、裸を見せていただろう。
 それどころか、一夏とならそれ以上の事をしても、全然構わない。
 否、そういう事をしたい。
 そう思う。
『な、何、考えてんだろうね、僕は!こんなこと考えてたら…。』
 エッチな女の子だって、一夏に嫌われちゃうよ。
 自分を落ち着かせるように、シャルルは深く深呼吸をする。
『ありがとう。一夏。頑張ってね。』
 シャルルは、寮への道を歩き始めた。

「終った〜。」
 二週間の突貫工事は疲れたぜ、さすがに。
 他の、デュノア社のスタッフの人達も、全員バテバテだ。
 でも、その甲斐はあったな。
 俺たちの目の前にはるのは、浅葱色のカラーリングをしたIS。
 第三世代ISノブレス・イリュジオン(高貴な幻影)
 プロト・リヴァイブの各部を徹底的にブラッシュアップしつつ、機体に拡張性を持たせたISだ。
 リヴァイブの特徴である拡張領域の大きさも継承しているし、各種の新しい兵装も開発されている。
「やれば、できるもんですね〜。まあ、オリムラさんの設計があればこそですけど。」
 俺の設計はほとんど完成の域に達しており、微調整をすれば充分実用化に耐えうるレベルに達していた。
 勉強は、何でも真面目にやっておくもんだな。

「じゃあ、お披露目は明日ってことで。皆さん、ご苦労様でした。」
 シャルルの親父は、今すぐ半殺しにしても飽き足らないほどだけど、他のスタッフも半分はただ純粋により性能のいい物を作ろうとしていただけだった。シャルルに対しても、命令だからああいうふうにせざるを得なかった事が、よく解った。
 やれやれ、社会人は辛いね。
 最も、やはり半分は半殺しにしたかったが。
「じゃあ、俺は、寮に戻りますんで。」
「オリムラさん。今回の事は我々一同、皆、感謝しております。本当にありがとうございました。」
 スタッフ全員が、深々と頭を下げる。
 俺は、一礼して寮に帰った。

「ああ、風呂が気持ちいいぜ…。」
 湯船に肩までつかりながら、俺は疲れが抜けて行くのを感じていた。
 山田先生が、入浴剤を入れてくれているらしい。
 ああ、いい気持ちだ…。
 
 カラカラカラ

 ん〜?誰だ〜。
 まあ、いいか〜。
 ああ〜、いい気持ちだ〜。
 北斗有○破○拳も、こんな感じなのか〜?

「一夏、お風呂を堪能するのはいいけど、溺れ死にしたら目も当てられないよ。」
 あれ〜、シャルルの声が聞こえるぞ〜。
 おかしいなあ〜。
 あいつは、いつもシャワーなのに〜?
「ほら、しっかりしないと。」
 この柔らかい手は、間違いなくシャルルだ〜。
 腕には、凄く柔らかいふくらみが〜。

 え、膨らみ?
 その瞬間、一瞬で俺の目が覚めた。

「大丈夫?一夏。」
 そこには、一糸纏わぬ、つまり、裸のシャルルがいた。

「お前、何、やってるんだよ?てか、まずいだろ?」
 男女が一緒に風呂に入るのは、どう考えてもまずい!
「その、背中でも流そうかなと思って、駄目?やっぱり、エッチな女の子だと思う?でも、僕、一夏になら、裸見られてもいいんだよ?」
 う゛っ。
 そういう、捨て犬みたいな目で見られると…。
 はっきり言って、シャルルは可愛いし、断れない。
「じゃあ、頼む…。」
「うん!」

「一夏の背中って、広いよね。凄く鍛えられてるし、やっぱり男の子だからかな。」
 背中を流してくれているシャルが、俺の背中を見てそう言う。
 そ、そうか…?
 男なら、大抵こうだろう?
「それに、とっても暖かい…。」
 シャルルが、俺の背中に寄りかかって来る。
 そうか…。
 シャルルは、父親のぬくもりを知らないんだな…。
 俺も似たようなもんだけど、千冬姉は父親みたいな面もあったし、箒の親父さん、その後に師事した、師匠。鈴の親父さん。俺は、そういう人たちに囲まれて育った。
 そういう面でいえば、俺は相当に恵まれているんだな…。
 
 それにしても、やっぱり俺の背中にあたるシャルの胸の感触は、凄い気になる。
 いかん、ヤバい。
「とりあえず、もう一回湯船につかって、上がろうぜ。そろそろ夕食だしさ。」

「なあ、シャルル。」
「うん?」
 俺は、湯船の中でシャルルに向きあう。
 この態勢では、シャルルの裸がもろに見えるが、とりあえずスルーだ。
「一つ、約束してほしいんだ。これからは、何かあったら、せめて、俺にくらいは頼ってほしい。まあ、たいした事は出来ないけどな。でも、出来るだけの事をするからさ。」
 今まで、沢山の人に頼ってきた。
 まだまだ、俺はガキだけど、それでも、少しは誰かの為に何かがしたい。
 心から、そう思った。
 今は、目の前にいる俺のルームメイトの為に…。
「ありがとう。一夏。」
 その時のシャルルの笑顔は、凄く綺麗だった。

「織斑一夏。まさか、ISの開発に携われるとはな…。」
 ラウラは、寮の浴場から少し離れた場所の、高所にいた。
「正直、まずいな。まともに戦えるISパイロットがそういるとは思えないが、気は抜けんか…。」
 雲ひとつない夜空の月を、ラウラは見上げた。
「嫌な事が起きなければ、いいが…。」
 そう呟いた途端に、ラウラの脳裏に一夏の笑顔が浮かぶ。
「な、何で、あいつの笑顔が浮かぶのだ!?確かに、距離を置いて見ていると、笑顔を度々見るが…。」
 自分でも理解できぬ事に、ラウラは戸惑っていた。

「え?セシリアと鈴が、二人がかりでラウラに負けた?」
 風呂から上がった俺は、ノブレス・イリュジオン。略称イリュジオンの開発の間に起こった事をシャルルに聞いていた。
「あ。これが、その時の映像。」
 どれどれ。
 まずは、龍咆でラウラの足を止めてからスターライトmk.Vで、機先を制しようとしたが、肝心の龍咆が見えない壁のような物に遮られていた。
「AICか。開発中に、ちょっと小耳にはさんだけど、こういう使い方があったんだな。」
 AIC。
 正式名称は、Active Inertial Canceler.
 ISの機体制御に使用されるPICを応用して、任意の対象の動きを封じる事が出来るらしいと聞いた。
「成程な。龍咆は空間圧縮砲。圧縮された大気の進行を止めたわけか。けど、これじゃあ、セシリアに対して無防備だぜ。」
「うん。僕もそう思ったんだけど、ボーデヴィッヒさん。やっぱりかなりの腕だよ。」
 鈴に大型レールカノンを発射して、すぐさま、ブルーティアーズとセシリアの動きを止めて、今度はワイヤーブレードとプラズマ手刀のコンビネーションで、かなりのダメージを与えた。
 今度は鈴が好きを突こうとしたが、返り討ち。
 それを何回か繰り返している内に、勝負はついた。
「さすがに、千冬姉の教え子。強いな。今度の個人トーナメント、間違いなく優勝候補の一角だな。」
 まあ、AICも万能じゃないんだけどな。
 今の映像で、それが解った。
 やりようによって、勝機はいくらでもある。

「じゃあ、寝ようぜ。土日は、稼働データを収集して微調整もしなきゃならないしな。」
「そうだね。仮にも僕の専用機だしね。」
 う〜ん、折角、美人なのに僕ってのはなあ。
「なあ、シャルル。二人だけの間は、僕なんて言わなくていいんじゃないのか?」
「気に入らないかな?日本に来る間に、男の子の仕草を徹底的に叩きこまれたから、抜けなくって…。」
 うわ、地雷だったか。
 それにしても、シャルルの親父にますます怒りがわいてきた。
 娘がいるそうだが、よく、親なんかやっていられるな。
「悪い。そういうつもりで言ったわけじゃないんだ。ただ、美人なんだから、もったいないなって思ってさ。」
 そう言うと、シャルルの顔が真っ赤になる。
「本当?本当に、僕の事、美人て思う?」
 真っ赤な顔のシャルが、恥ずかしそうに聞いてくる。
「こういうことで、嘘なんかつくかよ。ま、無理しなくてもいいさ。じゃ、お休み。」
 俺は、ベッドに潜り込んだ。
 ああ、久しぶりに、まともなベッドの上で寝れるぜ。

「美人。僕が…、美人…。」
 久しぶりにそう言われたシャルルは、胸の高鳴りを抑えられずにいた。
 そう言った一夏は、既に寝息を立てている。
 ここの所、ろくに睡眠を取っていなかったのだから、無理もない。
 そっとベッドから抜け出して、一夏の顔を見る。
 どこか、子供じみて、学園最強のISパイロットや、第三世代ISの開発に関われるような少年には見えない。
「でも、一夏は僕を変えたよね。人形みたいだった僕を人間に戻してくれた。」
『そして、僕は恋をした。』
 シャルルは、一夏の唇にそっとキスをした。
「お休み。一夏。」

後書き
後篇です。
一夏がやろうとした、とんでもない事。
それは、自ら設計した第三世代ISの設計図を使用した、フランス政府との取引。
メールアドレスの部分は、実はその手の知識があれば、簡単に改ざんできます。
どこから送信したかについては、この手の事は、入学前に散々仕込まれたという設定にしました。
後編では、自分なりに、シャルルの女の子の部分を書いています。
そして、僅かですが、書かれた一夏と千冬の過去。
いつも、厳しく接しながらも、姉として一夏をとても大事にしている千冬。
その部分を、過去を通してちょっと書きたくなりました。
しばらくは、前後篇が続くと思います。
よろしければ、お付き合いのほど、よろしくお願いします。

ブログ村のランキングに参加しております。
来てくださった方は、よろしければクリックをお願いいたします。
励みになりますので。

にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ

相互リンクはいつでも大歓迎です。
リンクをしてくださる方は、コメント欄にお書き下さい。
リンクの設定をした後に、お知らせします。

目次へ戻る



IS <インフィニット・ストラトス> 第4巻 [Blu-ray]
メディアファクトリー

ユーザレビュー:

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by IS <インフィニット・ストラトス> 第4巻 [Blu-ray] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 4
面白い 面白い 面白い 面白い

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
ブログランキング・にほんブログ村へ
IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第8話 貴公子は貴公子?<後編> cogito,ergo sum/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる