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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第8話 貴公子は貴公子?<前編>

<<   作成日時 : 2011/08/13 21:42   >>

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「はっ!てぇいっ!はああっ!!」
 俺はいつも通り、朝の稽古をこなしていた。
 ただ、いつもと違うのは、傍らにシャルルがいた事だ。

「日本の剣術の稽古なの?」
 起きないようにそっと部屋を出るつもりだったが、シャルルを起こしてしまい、どこに行くのかを尋ねられ、それに答えたら、シャルルは強い興味を持った。
「行く、行く。僕、前から、興味を持っていたんだ。」
「そうなのか?」
 シャルルは剣をするようには思えないし、見ていてもつまらないと思うんだけどな。
「だって、日本の剣術だよ。日本刀といえば、斬る事を極限まで高めた、最強の武器の一つ。見てみたいな。」
 まあ、いいけどさ。
「じゃあ、行こうぜ。」
「うん。」

「はああっ!!」
 数本の藁束を纏めて両断して、俺はその日の稽古を終える。
「凄いね。これ、一本斬るだけでも、相当大変そうだけど。」
 実際に大変だよ。
 日本刀は、刃の部分が最も薄くなっている。
 ただ、斬りつけたって、斬れはしない。
 その為の、技や身体操作を習得する必要がある。
「ちょっと、持たせてもらっていい?」
 ん?刀か。
「気をつけろよ。結構、重いから。あ、刀身には絶対に触るなよ。怪我するからな。」
 幾つか注意をして、シャルルに刀を渡す。
「うわ、ほんとだ。結構、重い。」
 腕にずっしりと来る重量感に、シャルルは驚く。

「一夏の愛刀、湯殿国親は、普通の刀よりずっと重い。一度も刀を持った事のない者には、堪えるだろうな。」
 稽古を終えた箒が、来る。
「あれ?箒。その刀。」
「うん?ああ。昨日、実家から届いてな。緋宵。明動陽晩年の作だ。」
 明動陽。
 江戸中期に活動した、刀鍛冶だ。
 俺の刀を打った湯殿国親とは別の意味で、あまり世には知られていない。
 より頑丈で、より切れ味の鋭い刀を目指した国親に対して、陽は女性剣士の為の刀を、打ち続けた刀匠だ。
 女性の剣士を妻にした事が、影響したと聞いている。
 決して相手の剣を受けずに、受け流したうえで必殺の一撃を放つ。もしくは、相手より早く抜刀して、勝利する。
 打った刀は、この二つの思想に分かれる。
 箒の緋宵は、後者だ。
 身幅狭く、通常よりやや長めで、刀の反りも抜刀に最適なようにしてある。
「デュノワ。持ってみるといい。こちらは、国親よりは軽いぞ。」
 箒が緋宵を、シャルルに手渡す。
「あ、本当だ。ふうん、ナイトソードとレイピアの中間みたいな感じだね。」
 俺の国親は、重量48両(約1.8kg)。
 箒の緋宵は、重量19両(約712g)。
 緋宵は、その思想から、通常より軽く作られている。
 しかし、非常に粘りのある刀で、そう簡単に曲がったりはしない。

「興味があるなら、刀匠を紹介するぞ。お前にあった刀を打ってもらって、この機会に日本の剣術も修めてはどうかな?ISの近接戦闘にも役に立つと思うぞ。」
「そうだね。考えてみるよ。ありがとう、篠ノ之さん。」
 箒とは、すっかり打ち解けているシャルルを見て、俺は片づけを済ませる。
「悪い。俺、ちょっと、寄る所があるから、じゃ。」
 荷物を纏めて、俺は、二人と別れようとする。
「あ、一夏。どこ行くの?」
「整備室だよ。ちょっと、やる事があってな。」
 実は、俺は以前からこつこつとやっている事がある。
 部屋でも普通にやっているんだが、できれば整備室の方がいい。
 あっちの方が、揃っているからな。
 今日はIS実習があるから、白式の調整もしておきたいし。
「僕も、行っちゃだめ?」
 またか?
 入学してから、シャルルは俺が白式の調整や整備に行くたびに、ついていこうとする。
 セッティングの参考にするとか言っているが、あいつの専用機を見る限りは、そんなに参考になっているとは思えないんだがなあ…。
「悪い。今日は、パスしてくれ。じゃ、後でな。」
 そう言って、俺は整備室に向かうが、シャルルの微妙な表情が妙に印象に残った。
 シャルルが転校してきてから、どうも、微妙な印象を持つ事が多いのは、気のせいだろうか?

「よかったのかな?これで。本当はよくないんだけど…。」
 一夏が部屋に戻るまで、シャルルは自分のベッドに腰掛けて、そう呟いた。
『お前が、何をなすべきか。それを決して忘れるな。それ以外の事を、お前がする必要はない。』
 学園に来る前の、ある人物に言われた事を、思い出す・
 そう、その為の人形が自分。
 それに、不満を持つとか持たないとか、そんなのはどうだっていい。
『でも、一夏と出会ってから、心がどこか悲鳴を上げている気がする…。』
 転入してきてから、色々と世話を焼いてくれて、友達を作る手助けもしてくれた一夏。
 一夏の優しさの前で、今までの自分がきしみを上げている。
 こんなのは嫌だと、自分の中の自分が叫んでいる。
 本当の自分は、こんなのじゃない。と。
『でも、僕にはどうしようもできない。』
 シャルルは、洗面所に行った。

「もう、専用機持ちの指導も必要ないだろう。今日からは、専用機持ちも本格的に参加してもらう。」
 今までの実習は、専用機持ちがグループのメンバーを指導していたが、上達の程を見て、千冬姉達はもう必要ないと思ったらしい。
 これからは、俺たちも実習か。
 さて、俺は誰を相手にしようかな。

「一夏。よければ、手合わせしない?」
 ん?シャルルか。
「おお、いいぜ。それじゃ、一つ手合わせしてもらうか。」
 シャルルの専用機は、リヴァイブか。
 それにしても、かなり、いじってるな。
 通常機に装備されている、肩部の物理シールドが、すべて取り外されている。
 背部のスラスターも、通常のとは違う。
 物理アーマーも減らされて、全体的に軽量化されている。
 ウェポンラックになっているリアスカートには、幾つもの姿勢制御スラスターが装備されている。
 あれって、サブスラスターにもなりそうだな。
 ここまで来ると、別物だぜ。
 もっとも特徴的なのが、左腕だ。
 物理シールドと、その下に何かが装備されている。

「ああ。僕のは専用機だから、相当、あちこちいじってるよ。スペック上では、特殊兵装以外では第三世代ISにも、そう劣りはしないね。」
 正式名称は、「ラファール・リヴァイブ・カスタムU」だそうだ。
 じゃ、始めるか。

 成程、カスタム機っていうのは、伊達じゃないな。
 性能も基本性能は第三世代にも、そう劣らない。
 加えて、シャルルの腕もいい。
「くっ。」
 アサルトカノンを俺めがけて撃つが、そう簡単に命中してやる義理はない。
 回避しつつ接近し、一撃浴びせる。
「なら!」
 左のアサルトカノンを、連装ショットガン「レイン・オブ・サタデイ」に右はサブマシンガン「フランメ・アイゼン」に換える。
 ISには、兵装を量子化して格納する領域があり、その大きさで搭載できる武装が決まる。
 ラファール・リヴァイブは、元々、それが大きいので距離を選ばない戦い方ができる。
 って、呼び出した途端に、攻撃かよ。
 こりゃ、また、とんでもない事やるな。
 装備を呼び出した後は、狙いをつけるまでに多かれ少なかれ、タイムラグがあるもんだがな。
「遅いよ、一夏。僕の高速切替(ラピッド・スイッチ)の前では、致命的だね。」
 シャルルが、ショットガンで弾幕を張る。
 スラッグだったら、楽なんだけどな。
 しかも、サブマシンガンは、威力は他の銃火器より低いが、単位時間当たりの発射弾数が多い。
 散弾の包囲を逃れながら、相手の攻撃ポイントを予測し、回避。
「そんな!」
 そいつは、致命的な隙だぜ。
 接近した俺は、シャルルが大急ぎで呼び出した、白兵戦用の近接ブレード「ブラッド・スライサー」を弾き飛ばして、リヴァイブのシールドエネルギーをゼロにする。

「やっぱり、強いね。さすがに、IS学園最強なだけはあるね。」
 アリーナのベンチに座りながら、俺はシャルルと話をしていた。
「いや、俺も驚いたよ。とても、第二世代機とは思えない動きだったしな。お前の腕もたいしたもんだ。」
「ありがとう。今度は、フル装備でやってみようかな。基本装備を外して、拡張領域を2倍にしているから、他のISより兵装はたくさん積めるからね。」
 へ?2倍。
 今、2倍って言ったよな…?
「驚いてるね。僕のリヴァイブは、最大、20迄、兵装が積めるよ。」
 20…。
 羨ましくなる話だぜ。
 白式なんて、一つだぜ。
 雪片だけで戦う人間にとっては、本当に羨ましくなるよ。
「見た所、白式には拡張領域がないように見えるけど?どうなの。」
「ああ。雪片弐型で、全部、埋められている。それがなければ、最大18迄兵装が積めるよ。」
 整備をしていて解ったんだが、白式は元々拡張領域が、デフォルトでも相当に大きい。
 でも、装備できるのは雪片弐型だけ。
 結論で言えば、これだけに全ての拡張領域を費やしている事になる。

「そんなIS、聞いたことないけど…。第一世代でも、他に兵装は搭載可能だったし…。零落白夜かな?」
「やっぱり、そう思うか。」
 俺の結論もそこに至った。
 他のISが様々な兵装を装備する分、白式は雪片弐型と零落白夜に全てを費やしている。
 その結果、雪片弐型は通常の近接ブレードより攻撃力はずっと高いし、零落白夜のバリア無効化能力も強力だ。
 でも、ここで疑問がわいてくる。

「でも、零落白夜って、織斑先生が現役で使用していたIS「暮桜」の、ワンオフアビリティでもあるんだよね?同じワンオフアビリティが、他の機体でも発動するなんて、聞いたことないよ。」
 シャルルが、考え込む。
「俺も、調べてみたけど、そんな事例はなかったよ。束さん、何考えて、白式作ったんだよ。あの人なら、何か、知ってる気は、するんだけどな…。」
 知らなくても、その気になればすぐにつきとめられるだろう。
 ただ、相当な気分屋なので、関心を持たないと何もしない。
 これじゃ、永遠の謎になりそうだな。

「何ですの?あの2人。あんなに親しく…。」
 少し離れた所から、物陰に隠れている3人がいた。
 互いを相手に手合わせをした、鈴とセシリア。
 そして、箒だ。
「男同士で、何してるのよ!まさか、そっちの趣味じゃないでしょうね!?」
 どこの世界でも、女子は仲睦まじくしている男子生徒同士を見ると、そう考えてしまうらしい。
「一夏め!私と、再会した時はあれほど親しくしなかったくせに。」
 恥ずかしさのあまり、つい暴力的にふるまった事を棚に上げて、箒が苦々しげに言う。
 その時、驚きの声が上がった。

「ねえ。あれって、ドイツの第三世代じゃない?」
「うそ!まだ、本国でトライアルの真っ最中のはずじゃなかったっけ。」
 俺とシャルルは、声の方向を見た。
 漆黒のISを、纏っていたのは…。
「ボーデヴィッヒさん…。」
 銀で作られた剣のごとき鋭さを持つ、ドイツからの転校生だった。
「シュヴァルツェア・レーゲン(黒い雨)。まさか、こいつを持ってくるとはな。俺はまたてっきり、第二世代のシュヴァルツェア・ランツェ(黒い槍)を、極限までチューンしてくると思ってたんだよ。」
 シュヴァルツェア・レーゲン。
 ドイツが開発に成功した、第三世代ISだ。
 基本装備は右肩部の大型レールカノンと、各所に装備されているワイヤーブレード、プラズマ手刀。
 それ以外に特殊兵装があるが、これに関しては不明だ。

「織斑一夏。」
「何だ。何か用か?」
 おっと、もう授業も終りだな。
「私と勝負してもらう。」
 おいおい、なんだそりゃ?
「大型レールカノン、頭部に照準をロックしています。」
 ハイパーセンサーからの情報に、俺は驚いた。
「理由がねえのに、勝負はしない主義なんだよ。じゃあな。」
 俺がピットに向かうのと同時に、大型レールカノンが発射される。
 着弾するタイミングを読んで、僅かに後ろに下がる。
「どこ狙ってんだ?お前が狙ってたのは、ここだろ?」
 俺は、頭を指先で叩く。
「ほう…。」
 ボーデヴィッヒが瞳を細める。
「俺は、次の授業があるから着替えて教室に戻る。ピットに行くまでにかすりでもしたら、勝負してやるよ。但し、できなかったら、こういう真似はやめろよ。騒ぎになるからな。」
「心配するな。当ててやる。」
 ボーデヴィッヒは、次々と射撃を繰り返すが、俺は全てかわした、
 別に、ボーデヴィッヒが下手なわけじゃない。
 多分、1年では最強だろう。
 故に、狙いが正確で、読みやすい。
 俺は、そこをついて回避して、ピットについた。
「ゴールインだ。約束は守れよ。」
 俺は、ISを待機状態にして更衣室に向かった。

「ったく、何なんだよ、あいつは?俺に対するリアクション、おかしくないか?そっけないかと思えば、いきなり大砲ぶっ放すし、普通じゃないぜ。」
 俺は着替えながら、シャルルに話しかける。
「確かに、妙だよね。一夏とボーデヴィッヒさんて、何か因縁とか、接点て、あるの?」
 あれば、とっくに何とかしてるさ。
 第一、俺は、初対面なんだぜ。
 え。俺は…?
「千冬姉なら、ある…。」
「織斑先生が?」
 現役を引退した千冬姉は、一年間、ドイツでISの教官をしていた。
 ボーデヴィッヒは、その時の教え子。
「でも、それだけじゃ、根拠は薄弱だよね。なにか、こう、決定的な理由に欠ける。」
 うん、俺もそう思っている。
 何なんだろうな?
 う〜ん、解らん…。

『強い…。事もなげに、攻撃を全て回避するとはな…。』
 ラウラは着替えながら、先ほどの事を思い出していた。
 狙いは、完ぺきだった。
 しかし、一夏は最小限の動きで、全て回避した。
 あんな事が、そうそう出来るはずもない。
 始めから、こちらの狙いを読んでいた。
 それしか、考えようがない。
 だが、それ以上に、ラウラは一夏が気になった仕方なかった。
『あいつに会った時、油断していれば…。』
 嘗ての言葉を思い出した途端、ラウラの頬は赤く染まった。
「な、何だというのだ…。」
 自分自身の変化に、ラウラは戸惑っていた。

「う〜ん。こんなところかな。」
 俺は、以前からやっていた事を、珍しく寮の部屋でやっていた。
 習志野でISに関する訓練をしている間に、座学で整備科が学習する内容についても、短期間でかなりの事を叩きこまれた。
「その気になれば、自衛隊の技官にもなれるよ。考えてみたら?」
 講義を担当してくれたある人が、冗談とは言えない表情でそう言った事を、よく覚えている。
「ま、このあたりは、こんな所だな。さて、次はと…。」
「あれ、一夏、どうしたの?」
 風呂を済ませてきたシャルルが、部屋に戻ってきた。
 入学以来、男子用の風呂は無かったが、ボイラーが壊れていた予備の大浴場を整備して、男子用の浴場となっている。
 ちなみに、シャルルは、日本風の風呂には馴染めないので、浴場の隣のシャワールームを使っている。
「ん?ちょっとな。さて、ここは…。」
 俺は、シャルルに曖昧に答えて、キーボードを叩き続ける。
 ちなみにディスプレイは、対軍事スパイ機能対応型なので、登録している人間しか見る事は出来ない。
「よし、形になったな。さて、寝ようぜ。就寝時間過ぎて起きてたら、千冬姉に半殺しにされる。」
「あー。その話、僕も聞いたよ。一晩中、ランニングする刑を受けて、次の日の朝は、ボロボロになっていたんだってね。」
 これは、去年の話だが、就寝時間を過ぎてもこっそり遊んでいた先輩たちが、体験した事らしい。
 ボロ雑巾のようになって教室に入ってきた当時の在校生によって、恐怖と共に語り継がれている。
「そういう事。明日は鈴と手合わせだろ。あいつ、パワー押しでガンガン攻めてくるから、今日はしっかり休んでおけよ。じゃあ、お休み。」
「うん。お休み。」

 カツカツカツ。
 外からは、千冬が巡回していることの証拠である、ハイヒールの靴音が聞こえてくる。
 それを確認したシャルルは、そっと起きる。
「ごめんね。一夏…。」
 IS学園に来て、初めてできた友人。
 何かと世話を焼いてくれて、不可解な行動も黙って受け入れてくれた心優しき友人。
 そんな友人を裏切る事に、シャルルは罪悪感を感じていた。
『でも、僕はこうするしかない…。』
 自分の机から、小さな端末を取りだす。
 そして、座ったのは一夏の机だった。

「どうする気だ?」
 驚いたシャルルの首筋に、鞘に収まったままの国親が突きつけられる。
『そんな、いつの間に…。』
 シャルルも代表候補生である、様々な訓練を受け、さらにある目的で諜報活動の訓練も受けている。
 訓練する側から見ても、シャルルは優等生だった。
「遂に尻尾を出した。いや、出させた奴がいるってことかな?誰だかは知らないけど、元凶はそいつか…。」

 シャルルが入学してから、俺は妙な違和感というか印象を持っていた。
 まず、最初は握手だ。
 手の感じが、男にしては柔らかすぎる。
 それ以外でも、俺が白式の整備・調整をしている間の視線もどこか探るような感じを、覚えていた。
 そして、決定的なのが今の行動。
 これで、シャルルがIS学園に来た目的が、はっきりした。
 そして…。
「お前、男じゃないだろ?」
 決定的な事実を、口にした。

「ばれちゃったね…。うん、その通り。もう、解っていると思うけど…。」
 シャルルの言葉を、一夏が遮る。
「話は、明日聞く。今の時間は、話すのには適していないからな。」
 一夏はそう言って、国親を刀掛けに戻し、ベッドに戻る。
「早く寝ろよ。明日も授業があるんだからな。」
 いつも通りの口調だが、そこにはどこか悲しさがあった。
 ある程度、予想はしていても、一夏は外れて欲しかったのだ。

「この!」
 鈴が龍咆を発射する。
 しかし、シャルルは時には防ぎ、時にはかわしながら、サブマシンガンとショットガンで確実に、甲龍のシールドエネルギーを削っていく。
「くっ!」
 鈴が焦り始める。
 手堅い設計の甲龍でも、こうも立て続けにシールドエネルギーを削られては堪らない。
「こうなったら!!」
 鈴が双天牙月を連結させて、投げつける。
 難なくかわすシャルルだが、連結させた双天牙月はブーメランのような機動を描く。
「それだけじゃないわよ。」
 鈴が最大出力での、龍咆の発射態勢に入る。
「挟み打ちか!」
「いかに、デュノアさんでも、あれでは。」
「そうとは限らないぜ。」
 シャルルの敗北を予期するセシリアと箒に比べて、一夏はいたって冷静だった。

 シャルルは携帯式ミサイルランチャー「オルグ」と、ライフル型グレネードランチャー「ポワン」を呼び出し、双天牙月をオルグで迎撃し、龍咆のチャージ中の鈴にポワンの全弾を叩きこむ。

「オルグはそもそも、近接信管搭載の迎撃型ミサイル。ポワンは、他のグレネードよりか威力は劣るけど、連射が可能。充分、勝機はあったさ。鈴は、少し頭に血が上りすぎたか。そこの所は、修正しないとな。」
 更衣室に向かう途中で、一夏達は実習の時の反省会のような物をしていた。
「でも、シャルルのラピッドスイッチは凄いわよね。呼び出した時には、発射態勢だもん。あれはきついわよ。戦い方、研究しないとなあ…。」
 鈴が小さくため息をつく。
「鳳さんは、少し戦い方が力押しすぎるから、そこを改めればいいだけだよ。甲龍は他の第三世代に比べて燃費も稼働率もいいから、長期戦でも充分問題ないわけだし。」
 シャルルが、鈴にアドバイスしている。
「それと、剣の修行も必要だな。鈴は粗削りすぎる。あれじゃあ、いずれ限界が来る。近くに中国武術の達人がいれば、弟子入りして腕を磨けよ。なんなら、先生に相談したらどうだ?」
 一夏が続いて、アドバイスをする。
 昨日の夜の出来事にも拘わらず、一夏はシャルルに普通に接していた。

「じゃあ、全部話すね。」
 そう言って、シャルルが部屋のかぎを閉め、ブラインドを下ろす。
「ああ。それにしても、なんで、鍵を掛けて、ブラインドまで下ろすんだ?」
 まあ、他人に訊かれていい話じゃないことぐらいは解るが、ブラインドを下ろす必要はないとおもうんだがな。
「必要だから。一夏には、ちゃんと知ってて欲しいから…。」
 そう言って、シャルルは頬を染めて、束ねた髪を下ろす。
 そして、制服を脱ぎ始める。
「ちょっと、待て。何、する気だ?」
 上着を脱いで、ズボンを下ろし、シャツのボタンに手を掛ける。
 これって、まさか…。
 俺は堪らず、後ろを向く。
「目を…そむけないで…。」
 消え入りそうなほど小さい、シャルルの声が聞こえる。
「お願い。こっちを向いて。ちゃんと、僕を見て…。」
「わ、解った。」
 本音を言えば、躊躇していた。
 けど、シャルルも相当に恥ずかしい思いを抑えて言っているんだ。
 それに応える必要が、あると思った。
 前を向いた俺の目に移ったのは、特殊なコルセットだった。
 なるほど。あれなら、外見は男子に見える。
 けど、胸が相当に圧迫されるから、楽じゃないはずだ。
 そんな事を考えていると、シャルルは、コルセットを外して、胸を露わにした。
 って、そこまで、やる必要ないだろう!
 やめさせようとしたが、シャルルは視線で「やめさせないで。」と、訴える。
 俺の目に映る、さほど大きくはないが形のいい胸と、桜色の頂点。
 次に、最後の一枚に手を掛けるのを見て、俺はもう我慢が出来なくなって、シャルルに、脱ぎ捨てられた制服の上着を掛けてやる。

「もういい。もういいから。シャルルが女の子だって解った。これ以上は必要ない。」
「でも…。」
 シャルルにとっては、贖罪の一つだったのかもしれない。
 俺だって男だ。
 人並みに、性欲だってある。
 女の子の裸を見たいって、思う事もある。
 でも、こんな形では、絶対に御免だ!!
「震えてるだろ?本当は恥ずかしいんだろ?なら、する必要はない。とにかく、服を着ろ。な?」
 今だって、シャルルの体は小刻みに震えてる。
 年頃の女の子だ。
 裸を見せるのが、恥ずかしくないわけがない。
 だからこそ、こんな形は絶対に嫌なんだ!

後書き
ブログの文字数の都合で、前後篇に分けています。
後編は、明日、アップの予定です。
原作では、一夏と白式のデータを盗みに来たシャルル。
けど、その雰囲気が全く伝わってこなかったので、一夏の端末からデータを吸いだそうとしたり、整備を見に行ったりという描写を追加しました。
ま、物の見事に一夏にはばれましたが。
さて、シャルルが男装用のコルセットを外して、裸になろうとしたのは、読者サービスでもなんでもなく、本来は女の子なのに、男装をして周囲を欺くのは、
シャルルにとってはどういう事だろうと、考えた事が切っ掛けです。
性は生の字が入っている通り、人が生まれるという意味があり、人が本来持っている感性や心情を表すのが、由来だそうです。
女の子として生まれたシャルロットが、男装をするという事は、自分が生まれた時に宿した心情を封じるという、非常に苦痛を伴う行為ではないだろうか?
そう考えて、そこから自分を解放したい。元の自分に戻りたい。という、無言の訴えとして書きました。
後編では、シャルルの事情を知った一夏がとんでもない事をします。

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