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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第5話 学年別対抗戦

<<   作成日時 : 2011/07/23 18:02   >>

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「皆。ビッグニュース、ビッグニュース!」
 クラスメイトの谷川さんが、息を切らして教室に入って来る。
 ビッグニュースって、何だ。
「何、何、ひょっとして、学食のデザートが値下がりするとか?いいなあ。」
 のほほんさんが、喜ぶ。
 いや、それ、ビッグニュースなんて言えないって。
「織斑君の幼なじみの子。2組のクラス代表になったって。」
 は?

「ちょっと。どういうことですの!?2組のクラス代表は、もう、決まっていたはずですわ。」
 セシリアの言うとおりだ。
 俺とセシリアのもめ事があった1組以外は、他のクラスはスムーズに決まっている。
 えと、瀬川さんだったっけ?
 2組のクラス代表は?
「それがね。幼なじみの…。織斑君、名前なんだっけ?」
「鈴だよ。凰鈴音。」
「そう。その鳳さんが、何度もクラス代表の座を譲るように言って、織斑先生が「IS戦で決めろ。」って言って、こてんぱんにして、代表の座を勝ち取ったんだって。」
 何、やってんだ。あいつは。
 可愛くなったけど、性格変わってないぞ。
 鈴は、自分の要求が通らないと、強引に通そうとする癖がある。
 今回は、もろにそれが出た事になる。
 第一、千冬姉も、千冬姉だ。
 代表候補と一般生徒を戦わせるなんて、何、考えてるんだよ。
 ISに適性があると確認されて、IS学園に入学する意思を持つ中学生は、試験勉強としてISについての基礎知識を学ぶ。
 しかし、代表候補に選ばれた場合は、IS戦闘についての知識を学ぶ。
 最初の時点で、差がついてるんだから、自ずと、勝敗は目に見えている。
 ああ、そうか。
 いつまでも長続きする前に、終らせようと、あえて戦わせたのか。
 やれやれ。

「とすると、1年で専用機持ちのクラス代表は、織斑君を含めて、2組の鳳さんと、4組の…、えと、誰だっけ?」
 おいおい、名前忘れてるのかよ。
 そう言えば、俺も聞いた事ないな。
 誰なんだろうな?4組の専用機持ちって。
 後で、調べてみるか。

「ふうん。もう、知れ渡っているんだ。」
 声の方を振り向くと、腰に手を当てて胸を張った鈴がいた。
 何しに来たんだ、こいつ?
「と、いう訳で、2組のクラス代表は、中国代表候補凰鈴音になったわ。一夏、そう簡単に勝てるなんて、思わない方がいいわよ。」
 宣戦布告か?
 らしくないな。
 つうか。何で、そんなことするんだよ。
「あなたこそ、一夏さんに勝てるなんて思わない方がいいですわよ。何しろ、私、イギリス代表候補セシリア・オルコットに加えて、3年生最強にして、ビッグ3のナンバー2、カナダ代表候補のダリル・ケイシー先輩をも破っているんですから。実質的に、一夏さんはIS学園のナンバー2。勝てるとお思いですの?」
 何で、セシリアがそんな誇らしく言うんだ?
 とは言え、ビッグ3の名を出されて、さすがに鈴も表情が変わる。
 IS学園には、創立以来、全ての生徒の中から最強の3人をビッグ3と呼ぶ慣習が生徒達にある。
 俺たちが入学する前は、ケイシー先輩と、2年生でオーストラリアの代表候補で第二世代IS「コールドブラッド」専属パイロットのフォルテ・サファイア先輩と、まだ会った事はないが、生徒会長。
 この3人が、ビッグ3と呼ばれていた。
 で、俺がケイシー先輩に勝ったので、生徒会長、俺、ケイシー先輩がビッグ3と呼ばれている。

「あなたの戦いぶりを録画で拝見させていただきましたけど、あれでは一夏さんには到底勝てませんわ。剣技の洗練さに差がありすぎますもの。操縦テクニックもどこか力任せ。無理ですわね。」
 そう話すセシリアの目は冷静で、代表候補として冷静に戦力を分析した結果を話していた。
「やってみなくちゃ、わからないでしょ?私、あの時、本気じゃなかったんだから。」
「それを言うなら、一夏も本気ではなかったぞ。」
 そこに、箒が加わる。
「なら、おもしろいじゃない。本気同士でやりましょうよ。」
「お前が引き出せりゃな。織斑、グッド・モーニング。」
 そして、何故だか、ケイシー先輩が来た。
 ISスーツ。
 ああ、これからISの実習か。
「何ですか?ケイシー先輩。」
「いやな。放課後に、連携戦闘訓練やるんだけど、一緒にやらないかと思ってさ。どうだ?」
 連携訓練か、久しぶりだな。
 うん?ちょっと待てよ。
「あれ。ケイシー先輩も、対抗戦出るんですよね?そっちの方はいいんですか?」
「そっちは、そっちで時間をキープするさ。フォルテがお前とやりたがっているし。あたしはお前がいるしな。リベンジくらいさせろよ。」
 ちゃんと、そっちの練習もするんならいいか。
「解りました。で、場所は?」
「放課後、すぐ。第3アリーナだ。遅れんなよ。」
 そう言って、ケイシー先輩は、授業に出るべくアリーナに向かった。

「ふうん。あんた、上級生と随分仲いいんだ…。1年離れているうちに、ますますモテモテになったわねえ…。」
 鈴。何で、そう、恨みがましい口調になるんだよ。
 上級生との交流って、大事だぞ。
 だいた、ますますって何だよ。

「あ、そうだ。凰鈴音だったな。」
 ケイシー先輩が、鈴に声をかける。
「あ、はい。なんですか。」
 いきなり声を掛けられて、鈴がびっくりしながら応える。
「お前、服装には気をつけろよ。スカート履いているって自覚してないと、下のしましまが、織斑に丸見えだぞ。じゃな。」
 って、ケイシー先輩。
 そういう事、言わないでくださいよ。
 が、遅かった。

「見たんだ…。」
 頬を真っ赤にしながら、鈴は涙目になって一夏を見る。
「いや、まあ、不可抗力で…。」
 一夏が気まずそうに頬を掻きながら、目を泳がせる。
「一夏のバカ!エッチ!!」
 鈴が、大声で一夏に叫ぶ。
「何だよ!大体、スカート履いてるにも拘らず、思いっきりジャンプして抱きついてくるのにも、問題あるだろう。」
 さすがに一夏も、黙って謝らずに反論する。
「そ、それは…。」
 嬉しくてたまらず、スカートを履いている事を忘れていたとは、鈴は、恥ずかしくて言えなかった。
「まあ、いいわ。その件は、許してあげる。で。」
「で、何だよ?」
『いきなり話題が変わるな。女ってこれだからなあ…。』
 一夏は内心そう思いながらも、鈴の次の言葉を待つ。
「約束。あたしが転校する、ちょっと前にした約束。覚えてる。」
 鈴が真剣な目で、一夏を見る。
「約束。あ、あれか。もちろん、覚えてるぜ。」
 鈴が、花が咲き誇ったような表情になるが、すぐに戻す。
「耳元で言ってみて。」
「お、おう。」
 一夏が、鈴の耳元で何かを言う。
「偉いわ。女の子との約束を覚えていない男なんて、最低だもんね。」
 鈴が嬉しそうに笑う。

 そんなに、あの約束を覚えていたのが嬉しいのか?
 まあ、忘れられても、いい気分はしないだろうけどさ。
「今度の対抗戦、楽しみにしてなさい。私の実力を見せてあげるわ。もし私に勝ったら、ご褒美に桃包に加えて、蛋撻(タンタァ)も作ってあげるわね。」
「ああ、楽しみにしてる。」
 蛋撻は日本で言うなら、エッグタルトの事だ。
 カスタードプティング入りのタルトで、これも俺が好きな物の一つだ。
 それはとりあえず置いておいて、鈴の実力ってどれくらいなんだ?
 セシリアの話から推測すると、相当に荒削りみたいだな。
 もしそうなら、はっきり言って負ける気はしない。

「一夏さん…。また、何か作っていただくおつもり…?」
 セシリアが迫って来る。表情に危機迫る物を感じるのは、気のせいだろうか。
 つか、料理が出来ないのを、そんなに根に持ってるのかよ…。
「一夏!男たる者、食い物に釣られるとは何事か!!」
 ぐわ、今度は箒か。
 いいだろ、別に。
 作ってくれるんなら、ありがたく食べさせてもらうのが、礼儀だと思うぞ。
「織斑君、ずるい!転校生の子とあんなに仲いいなんて、ずるいよ!」
「しかも、手作りの料理。ひどいよ。」
「そうだよ!あたし達にはねだらなかったくせに!」
 今度は、クラスの女子か!
 中には涙目の女子が混じって、俺を糾弾する。
 ちょっと待てって、俺が何をしたんだよ?
 てか、自分から何か作ってくれなんて、何かずうずうしいじゃないか。

「ほう。授業前だというのに、いい度胸だ。今年の新入生は見所があるな…。」
 審判の時、来たれり。
 千冬姉が、端末を振り上げる。
「席につけ。馬鹿どもが。」
 ゴン、ゴン、ゴン。
 クラスメイト達の頭の上に、裁きが下される。
「織斑。騒ぎを起こすな。馬鹿者が。」
 その言葉とともに、俺の頭の上には端末と拳骨のワンツーが決まる。
 俺が、何したっつーんだよ。

「くそ。やっぱ、つえーわ。」
 ダリルとフォルテが、荒い息をつきながらスポーツドリンクをのどに流し込む。
 放課後、第3アリーナで、ダリル達と共に一夏は連携訓練をしていた。
 本来は2年生からだが、一夏は既に訓練を終えている。
 雪片弐型しか、固有武装のない白式だが、学園で訓練に使用されている兵装は、登録されているIS全てが使用できるので、量子化はできないが白式も使用することができる。
 一夏が選んだのは、アサルトカノン「ガルム」である。
 非常に使いやすく、日本以外の多くの国で正式採用されている。
 一夏は、3年の天城美希と組んで、ダリル・フォルテ組と戦闘を行った。
 天城は、専用機持ちでも代表候補でもない。派手さは無く、戦い方は地味である。しかし、代表候補にせまる技量である。
 だが、戦い方が時として裏目に出て、思いきった攻撃が出来ない事があり、ダリル達はそこをついた。
 天城の欠点を知った一夏は、欠点を突いたダリル達を牽制して天城に態勢を立て直す時間を与えるとともに、自分が前面に出て、派手に動き回ることで、天城の長所を活かす機会を作った。
 一夏のおかげで、天城は、自分の持ち味を存分に活かして、戦う。
 ダリル達はそれを崩そうとするが、結局はうまくいかずに敗北した。
 その後、休憩を置いてダリルとフォルテは一夏と手合わせをしたが、物の見事に敗北した。

 連携訓練も久しぶりだな。
 昔は、うまく、パートナー役の教官と呼吸が合わずに、怒鳴りつけられてたっけな。
 悔しかったんで、手本を見せてもらった時に、必死に自分でやるべき事を考えて我武者羅に自主訓練をして、できるようになった。
 俺の場合は、動き過ぎて駄目だった。
 だから、俺は必要以上に動く事のないように、周囲の状況を把握する事に全力を注いで、うまくできるように努力した。
 連携戦闘で大事なのは、自分が何をすべきかを、周囲の状況を把握して考えて、確実に実行する事。
 簡単なようで、これが凄く難しい。
 コツの掴み方も、人それぞれだしな。

「これなら、学年別の対抗戦はお前の優勝決定だな。1年の、ええと、何ていったっけ?」
「鈴の事ですか。」
「そう、そいつ。お前の幼なじみなんだってな。中国の代表候補だった話だけど、まず、お前には勝てないって。戦い方に粗さがありすぎるな。」
 ダリル先輩は、既に、鈴の戦いの録画を見ているらしい。
 俺も、見ておかないとな。
 足元をすくわれるのは、ごめんだ。
「ほれ。録画な。」
 ダリル先輩が、メモリーを俺に手渡してくれる。
「あ。ありがとうございます。」
「いいって。ま、久方ぶりの幼なじみの戦いぶりを見るのも。面白いぞ。ボリュームに欠けるけどな。」
 ボリューム?
 何だ?そりゃ。
 首をかしげる俺を見て、ダリル先輩とフォルテ先輩はにやにや笑う。

「これが、鳳の戦い方か。」
 寮の部屋で録画を再生していると、箒も空中投影ディスプレイを覗き込んでくる。
「ああ。強いって言えば、強いな。」
 日本で言えば、一撃必殺の流派、示現流に近い。
 これをさばききるのは、一般生徒じゃ難しいだろう。
 ISの操縦も見事だ。
「しかし、随分と荒っぽい戦い方だな。」
「ああ。いかにも、力で相手をねじ伏せる戦い方だ。」
 そう。
 箒の言うとおり、戦い方がかなり力任せな部分がある。
 隙が多い。
 攻撃をかわされたら、一方的に攻め立てられるだろう。
 もっとも、それが出来るのは代表候補クラスだから、鈴は気にしてないみたいだ。
 そういえば、ボリュームって、なんだったんだ?
 先輩達の言った事の意味を、俺は少しして理解した。
 それは、鈴に対しての最大の禁句。
 胸のサイズだった。
 その点、箒は、その、大きいよな。
 俺は、バレないように、横目で箒を見た。

『粗削りだが、強い…。』
 鈴の戦いの映像を見ながら、箒は鈴の強さを認めていた。
 確かに、粗い。
 剣技もかなり力任せで、技術的な面で言えば箒にも劣る。
 それでも、総合的に非常に試合運びがうまい。
『これが、専用機持ちか…。』
 同じ幼なじみであっても、専用機を持っていない自分。
 専用機持ちの国家代表候補である、鈴。
 その事実が、箒にのしかかってくる。
『それに私は、あの時、途中で…。』
 幼少の頃、後ろ髪をひかれる思いで生まれ育った地を去らざるを得なかった。
 しかし、どうしても気になって仕方がなかった事がある。
『その後、鳳は…。』
 その後、鈴は転校してきて、一夏と2人、幾年か同じ時を過ごしてきた。
『私だって、本当は…。』
 その思いを心にしまったまま、録画を見終わった後、箒は床についた。

 対抗戦当日。
 控室に使われているロッカーの大型ディスプレイに、試合の組み合わせが表示されている。
『俺と鈴が、第一試合でぶつかるのかよ。』
 そう。
 第一試合には、1組代表織斑一夏と2組代表凰鈴音の名が記されていた。

「遂にこの日が来たわね。一夏。あたしの実力、思い知らせて上げる。」
「ああ。しっかり見させてもらうぜ。」
 鈴のISは、中国製第三世代IS甲龍。
 資料によると、確か、燃費と稼働率を重視した手堅い設計だ。
『長期戦になると、まずいか。さっさと、終らせたいところだな。』

「一夏!」
「ん?なんだ。」
 鈴が、俺を指さす。
 何かするのか?
「約束したわよね。あたしの料理の腕が上達していたら、毎日、あたしの手料理を食べてもらうって。」
 ああ、あの約束の事か。
 あれって、何の事だ?
 毎日、タダ飯喰わせてくれるのか?
 それはそれで嬉しいが、タダより怖いもんは無いからなあ。

「それに、ある条件を加えるわ。あたしが勝ったらよ。いい?あたしが勝ったら、毎日、あたしの手料理を食べてもらうからね。いいわね。あんたが勝ったら、前に約束した桃包と蛋撻、腕によりをかけて作ってあげる。」
 は?何かそれって、変じゃないか。
 まあ、桃包と蛋撻が食えるのは、嬉しいが…。
 あれ?観客席の雰囲気が、妙な感じがするのは何故だ?

「ちょっと。何よ!それ。」
「抜け駆けよ!ルール違反だわ!そんな、羨ましい事を、皆に無断で決めるなんて。」
「卑怯者!正々堂々と、勝負しなさいよ!!」
 いきなりブーイングの嵐だ。
 鈴が、皆を怒らせる事、言ったか?
 ちなみに対抗戦には、各国のIS関係者が招かれているが、皆、面喰ってる。そりゃ、そうだよな。

「あの、馬鹿者が…。」
 オペレーションルームで、千冬は頭を抱えていた。
「あの〜、織斑先生。」
「何だ?山田先生。」
 疲れたように、千冬は真耶を見る。
「鳳さんの言っている事って…、あれですよね…。自分が勝ったら、お婿さんになれってことですよね…?」
 真耶がおそるおそる、千冬に訊く。
「世間一般ではな。あの大馬鹿者。何をやっているのだ。とにかく、試合を始めてくれ。頭痛を治めたい。」
 投げやりな口調で、千冬は言った。

『一夏…。』
『箒か?何だ。試合前なんだから、通信は…。』
 するなよ。と続けたかったが、俺は続けられなかった。
 よく解らんが、むちゃくちゃ怖い。
『負けたら、解っているな…。お前を三枚におろしてやるぞ…。』
 おい、それ、殺害予告だぞ。
 つーか、何で、そうなるんだよ。

『一夏さん…。』
 ISの通信システムである、コアネットワークに通信が入って来る。
 今度は、セシリアか。何だよ?
『ご存知ですか?我が英国の誇る、銃器の製造メーカー、アキュラリー・インターナショナル社から、新製品が発表されましたのよ。新開発の20mmHEIAP弾を使用する、セミオート狙撃銃ですのよ。体験なさっては、いかがかしら?』
 冗談じゃない。
 HEIAPは徹甲弾、榴弾、焼夷弾の3つを兼ね備えた特殊な弾頭で、対物狙撃ライフルに使用される。
 しかも、20mmとなると、その威力は洒落じゃ済まない。
 負けたら、地獄が待っている…。

 こうして、負けられない戦いになってしまった。
 何でだよ…。

「行くわよ。一夏!」
 鈴が、甲龍の近接戦闘用兵装らしい、青龍刀を振り下ろしてくる。
 録画で見た通りに、勢いはあるが技に洗練さが欠けている。
 これなら、かわすのは訳もない。
「もらったぜ。」
 がら空きになった上半身に、一撃を加える。
「やるわね。じゃあ、これなら、どう。」
 背中にマウントされていたもう一本を加えて、二刀流で猛攻を加えてくる。
 よくわからんが、そんなに俺にお前の料理を喰わせたいのか?
 後で聞いてみよう。

『この勝負だけは、絶対に負けられない。』
 鈴が一夏と友達になったのは、転校して少し経ってからだ。
 とある理由で入院していた一夏の世話をしていた千冬に、鈴の父が手助けを申し出て、しばらくして一夏は退院。
「鳳鈴音よ。よろしくね。一夏。」
 いきなり、自己紹介されて、一夏はきょとんとしていた。
「俺は、織斑一夏だ。こっちは俺の姉さん。よろしくな。鳳。」
 ここから、2人の付き合いが始まる。
 学校生活でも、中国人であることや鈴の勝気な性格で時としてトラブルに巻き込まれることもあったが、いつも一夏が鈴の味方をした。
 千冬がISのパイロットとして活躍するようになると、1人で食事をする一夏を家に誘って、家族で食卓を囲んだ事も何度かある。
 共に過ごす時間が増えていき、鈴の一夏に対する気持ちが友情から、恋愛感情に変わるのに、そう時間はかからなかった。
「あ、あのね。一夏。」
「うん?なんだよ。」
 教室で2人きりになった時、鈴は精一杯の勇気を総動員して、一夏に訊いた。
「もし、あたしの料理の腕が上達したら、毎日、あたしの手料理を食べてくれる?」
 心臓の高まりを必死に抑えながら、鈴は返答を待った。
「おう。楽しみにしてるぜ。」
 それから、少しして、鈴は中国に戻って、高いIS適性ある事が確認されて、中国の最新鋭第三世代IS甲龍を専用機とする代表候補性となり、IS学園に来た。
 もちろん、一夏に会うためである。

『二刀流で少しはましになったが、相変わらず、粗いんだよなあ。』
 鈴の攻めを、時にかわし、時に受け流しながら、隙を見つけて、俺は攻撃を加える。
 リズムが出来てない。
 そもそも武術は、きちんとしたリズムがある。
『中国に戻って、1年じゃ無理か…。』
 甲龍のシールドも、大分削ったな。

「隙だらけだ。あれでは、一夏には勝てない。」
 剣術を修める者として、箒には鈴では剣術ではまるで一夏には及ばない事が、よく理解できる。
「でも、鳳さんは、まるで闘志を失っていませんわ。すると…。」
「何かがあるな…。」
 箒とセシリアは、鈴が何か隠している事を感じていた。

『さすがに、大分、ヤバくなってきたわね。そろそろ、あれを出さないと。』
 鈴の意思に応えるように、甲龍のFCSが一夏をロックする。
 わざと隙を作ると、一夏は一撃を加えようとする。7
『今よ!!』
 甲龍の肩部装甲が展開される。

「周辺の空間に異常が確認されました。圧縮されています。」
 何だ?
 白式のハイパーセンサーが、警告メッセージを表示する。
 そして、続きを見た途端に、俺は反射的にその場を離れる。
 目に見えない何かが、俺の横を通り過ぎ、地面を抉った。

「衝撃砲か。」
 甲龍の兵装を見て、千冬は呟いた。
 衝撃砲「龍咆」。
 中国が開発した、第三世代兵装である。
 空間を圧縮して砲身を形成して、砲弾を発射する。
 特徴として、砲身も砲弾も不可視なので、回避が困難である事。
 そして、事実上、死角がないことがあげられる。
「鳳さん、是が非でも勝つつもりのようですね。よっぽど、織斑君の事が…。どうですか。お義姉さん?」
 ふと、真耶は千冬をからかいたくなった。
「山田先生。あとで、CQCの訓練をしよう。1時間ばかりな。」
「す、すいません、すいません。それだけは、ご勘弁を…。」
 真耶が、必死に謝る。

 まいったな。
 あんな、隠し玉があったとはな。
 砲身も、砲弾も見えない。
 ハイパーセンサーの大気状態の分析結果から、回避はできるが、このままじゃ後手後手だな。
「行くわよ、ここからが、本領発揮なんだから。」
 鈴が再び砲撃を開始する。
 かわすことはできが、その隙に鈴は近接戦闘を仕掛ける。
 成程。砲撃で相手をけん制して近接戦闘を行うのが、甲龍の本来の戦法か。
 けど、それが有効だとは限らないぜ。

「これが、甲龍の本当の戦闘スタイル。」
 モニターを見ながら、真耶が呟く。
「そういうわけでもないさ。砲撃をメインにしてもよし、近接戦闘をメインにしてもよし。どちらでも、構わない。鳳の場合は、自身の剣術の技量不足を龍咆で補う。ただ、それだけだ。」
 なんということはないという口調で、千冬が言う。
「織斑君。ピンチですね。あれでは、回避に専念するしかありませんから。」
「さて、それはどうかな?」
 千冬は、静かにモニターを見ていた。

「いい加減に、観念しなさい。一夏!」
 ここだ。
 鈴の剣術は一撃必殺で攻撃力は高いが、大振りで隙が多い。
 その中でも、青龍刀を連結させての連続攻撃の前は、最も隙だらけになる。
「鈴。忘れてないか?俺が、白式のある力を使っていない事を。」
 鈴は少しして悟ったが、もう遅い。
 俺は零落白夜を発動させて、甲龍のシールドエネルギーをゼロにする。
「勝者。織斑一夏。」
 よし、一回戦突破と。
 これは!
 俺は、ハイパーセンサーの警告に息をのむ。
「鈴!今すぐピットに戻れ、全速力だ!!」
 俺は、鈴にピットに戻るように言う。
「はあ?ちょっと、いきなり、何、言ってるのよ?」
「いいから、急げ!甲龍のスピードなら大丈夫なはずだ!!」
「わ、解ったわよ。」
 全速で鈴がピットに戻り始めて少しして、アリーナのシールドを紙のように破って、レーザーが鈴のいた場所の延長線上にある、場所に命中する。
 白式のハイパーセンサーでなければ、危なかったな。

「な、何よ。あれ。」
 ピットに着いた頃、鈴は地面を穿ったレーザーに驚く。
 IS学園のアリーナは、高出力のシールドが展開されており、外部からの攻撃で貫く事はISの兵装でも非常に困難である。
 そして、鈴が見たのは、見た事もないISだった。
「一夏、待ってて。今、加勢に行くわ!」
 しかし、アリーナの特殊複合装甲製のシャッターが閉まり、外には出られなくなった。

「遮断シールドレベル4。アリーナに繋がる全ての箇所のシャッターが、ロックされています。」
 オペレーションルームは、慌ただしくなっていた。
 アリーナの遮断シールドレベルが、最大のレベル4になっており、さらにアリーナに繋がる箇所は封鎖されている。
 これは、事実上、救援部隊の派遣が不可能な事を意味する。
「確認できました。外部からのハッキングです。」
 状況を調べていた真耶が、千冬に報告する。
「やってくれたな。」
 千冬の表情に、怒りが混じる。
「大変です。避難通路のシャッターがロックされています。これでは、生徒達を避難させられません。」
 他の教師から、報告が入る。
「そ、そんな。」
「落ち着け、山田先生。全教員に通達、状況は知っての通りだが、黙っている義務は我々には無い。整備科の中でシステム関係に強い生徒を選抜して、システムの復旧を開始。3年の中から、突入部隊を選抜。生徒会は、教員と協力して、生徒達の混乱を防げ、以上だ。」
 千冬は冷静に、指示を出す。
 非常時における指揮官の最高位は、嘗て、世界を制した千冬である。
「織斑君。聞こえますか?出来る限り、早く助けに行きます。何とか、持ちこたえて下さい。」
 真耶が一夏に通信を入れる。
「俺の事は気にしないでください。目の前のISを何とかすれば、多分、この状況は何とかできると思います。山田先生はシールドの防御能力が低下しないように維持をお願いします。最悪の場合、多くの死傷者が出ます。」
「そ、それはそうですが。織斑君…。」
 心配そうな真耶を見て、千冬が通信を入れる。
「織斑、やれるのだな?」
「やれるのだな?じゃないですよ。やらなきゃいけないでしょう?皆を守るために。」
 それを聞いた千冬は、何故か、楽しそうに微笑む。
「なら、見事に皆を守り抜いてみせろ。一夏。」
 そう言って、千冬は通信を切る。

「守り抜いてみせろ。か。」
 最後に一夏って俺の事を呼んだってことは、教師じゃなくて、姉としてやってみせろって言ったってことか。
「なら、やらないとな。」
 それにしても、目の前のISは物凄く独特だ。
 ゴツイ両腕には、アリーナのシールドをも突き破る大出力レーザー砲。
 肩にもレーザー砲があり、各所に姿勢制御用のスラスターがある。
 そして、全身が漆黒の装甲に包まれていて、操縦者の顔が見えない。
 ISは絶対防御によって、操縦者の安全が確保されているので、物理装甲で覆われる部分は、多くない。
 だが、目の前のISは、全身をくまなく装甲で覆っている。
「ロックされました。攻撃きます。」
 来るか。

 大出力レーザーが、発射される。
 まずい。これは最悪、アリーナのシールドをぶち抜く。
「出力、シールドの許容範囲内。」
 ハイパーセンサーが、情報を表示する。
 さすがに、あんな大出力は、そうそう撃てないか。
 ただ、もうないとは限らない。早めに決着つけないとな。
「行くぜ!」
 大出力レーザーを回避しながら、俺は零落白夜を発動した雪片で斬りかかる。
 間違いなく、シールドをごっそりと削る事ができたはずだった。
 しかし、各所のスラスターを巧みに使って、相手は俺の一撃を紙一重でかわす。
 ていうか、あんな回避運動をして、人間が持つのかよ?
 PICがあるとはいえ、人間が乗っている以上、やはり機動性には限界がある。
 無理な機動を行えば、最悪、骨折だってあり得る。
『よっぽど、タフなのが乗ってるのか。それとも…。』

 無人だよ…。

 え、誰か俺に言ったか?
 いや、そんなはずはない。
 千冬姉との通信の後、強力なジャミングで外部との通信ができない状況になっている。
 でも、さっき聞こえた声が俺の幻聴でないとしたら、目の前のISは間違いなく、無人機。
 しかし、ISは人間が搭乗しなければ動かない。
『いや、待てよ。どこかの国が、無人機の実用化に成功していて、それを隠していたら…。そして、どこかの誰かが、それを使っていたら…。』
 あり得ない話じゃないな。
 確かめてみるか。
 俺は、突きを繰り出す。
 無駄のない動きで横に回避するが、俺はすぐさま横への攻撃に転ずる。
 平突き。
 新撰組副長土方歳三が考案した、剣技だ。
 突きを回避されても、すぐさま横への攻撃に変化する。
 しかし、相手はそれをも回避する。
 よし、今の動き、記録出来てるな。
 マシンガンのような、肩部レーザー砲の攻撃を回避しながら、俺は再び、同じ攻撃を仕掛ける。
 が、再びかわされる
 大出力レーザー砲が搭載された腕で、俺にパンチを喰らわせようとするが、回避して、再び平突きを繰り出す。
『どうやら、本当らしいな。』
 間違いなく、こいつは無人機だ。
 今までの回避パターンを記録させると同時に、分析させてみたが、スラスターを吹かすタイミング、出力、動き。
 3度とも、完全に一致する。
 人間がISに乗っていれば、こんな事は到底あり得ない。
「なら、問題無しだな。」

「「「先生!」」」
 箒、セシリア、それにISスーツの上にトレーニングウェアの上衣を羽織った鈴が、オペレーションルームに入って来る。
「みなさん。今は非常事態です。織斑君が心配なのは解りますが。ここは先生達の誘導に従ってください。」
 真耶が、3人をオペレーションルームから出させようとする。
「心配するな。もう、終る。」
「「「「えっ。」」」」
 千冬の言葉に、4人が理解できないという顔になる。

 相手が無人機なら、俺は遠慮なしに戦える。
 この状態を長く続かせるのは、好ましくない。
 一つ厄介なのが、相手の回避パターンだ。
 人間ではあり得ない、回避運動をする。
 だが、対策がないわけじゃない。
 俺は、正眼の構えを取り、呼吸を整える。
「行くぞ!」
 俺は小細工せずに、まっすぐに斬りかかる。
 相手は、肩部のレーザーで俺を牽制しようとするが、俺は全て回避して迫り、右斜め下から斬り上げる。
 そして、相手は回避しながら、俺の真下に潜り込むもうとする。
 相変わらず、あり得ない回避パターンだよな。
 でも、それをこちらが想定していれば、話は別だ。
 緊急回避の要領を応用して、イグニッション・ブーストを使い、零落白夜で回避の暇を与えずに、仕留める。

「シールドレベル正常に戻りました。避難経路及びアリーナに通じるシャッターのロックも、解除されました。」
 真耶が嬉しそうに、千冬に報告する。
「機体は回収。分析させろ。」
 真耶に支持して、千冬は箒達の方を向く。
「ここからは、生徒達に見せられない。とっとと、ピットにでも行け。そろそろ、戻って来る頃のはずだ。」
 もちろん、箒達が行かないはずがなかった。
「守り抜いてくれましたね。IS学園の皆を。」
「あれぐらいは、できて当然だ。そもそも、あのISは、白式とは致命的に相性が悪い。エネルギー兵器は、零落白夜には通用しないのだからな。」
 そう言いながら、千冬は2人分のコーヒーを入れる。
「あの、先生。それ、塩ですよ。」
 真耶に言われて、千冬は指につけて舐めてみると、確かに塩だった。
「何故、塩がここにあるんだ?」
 千冬は、首を傾げる。
「初めての公式戦でしたからね。強いと言っても、やっぱり、弟さんの事が心配だったんですね。お姉さん。」
「コーヒーだ。ブラックで済まんが。」
「いえいえ。戴きます。」
 しかし、これだけで済まなかった。
「ああ。やはり、ブラックでは悪いな。塩入の甘い菓子もある事だし、塩入りのコーヒーもいけるのではないか?」
 千冬が真耶のコーヒーに、これでもかという程、塩を入れる。
「す、すいません。どうか、普通のコーヒーを…。」
 真耶が涙目になって、千冬に縋る。
「山田先生。私は、身内の事でからかわれるのは好まない。覚えておくように。」
 威圧感たっぷりの笑顔で、千冬は釘を刺す。

 ふう。
 やれやれ。とんだ、対抗戦だな。
 誰だよ?あんな事してくれたのは。
 それにしても、何だったんだ?あの声。
 何で、無人機だって解ったんだ?
 ISのコアと会話できるなんて話、聞いたことないぞ。
 まあ、いい。
 次の試合まで、のんびりするか。
 そう思いながら、ピットのベンチでスポーツドリンクを飲んでいると、箒達が来た。

「お疲れ様です。一夏さん。」
「ああ。大丈夫だったか。」
 怪我人も出てないようだ。何はともあれ、よかったよ。
「ええ。一夏さんが、守ってくれましたから…。」
 セシリアが、頬を染めて言う。
 風邪か?偶に、セシリアや箒はこうなるな。
 流行りか?気をつけろよ。風邪は万病のもとだぞ。
「見事だったな。一夏。」
「サンキュ。箒。」
 微笑みかけてくる箒に、俺も笑顔で返す。
「やったね。一夏。」
「鈴か。お前も大丈夫みたいだな。」
「学園の生徒で、怪我をした人間はいないわ。」
 鈴の言葉を聞いて、俺は本当にうれしかった。
 守れたんだからな…。

 新聞部の取材に聞き取り調査が終わって、俺はやっと人心地ついていた。
 狭いバスタブでも、肩までゆっくりつかれれば天国だ。

 初めて、守れた…。
 高校に通いながら外で働く千冬姉に養われるのに、歯がゆさを覚え続けてきたけど、今日は違った。
 守られる方じゃなく、守る方になれたんだからな。
 ま、これからも、そうなれるとは限らない。
 訓練メニューを追加して、もっと自分を磨き続けないとな。
 千冬姉だって、そうやって強くなっていっただろうから。
 あのISの乱入で、結局対抗戦は中止。
 安全を考えれば、そうなるだろうな。

「一夏。もう、いい?」
「鈴か。もう、着替えたからいいぞ。」
 バスケットを持った鈴が、部屋に入って来る。
「はい。桃包と蛋撻。ご褒美よ。」
「お、サンキュ。」
 一夏は、熱々の桃包を頬張った。
 美味しそうに頬張る一夏を見て、鈴がどこか切なげに微笑む。
「何かあったのか?その…、親父さんとおふくろさん。」
 以前に聞けなかった事だが、鈴の笑顔から聞いてほしいと感じたので一夏は、あえて訊いた。
「離婚したんだ…。それが…、あたしが中国に帰った理由…。」
「…そうか。食堂で聞いた時、言いにくそうだった理由はそれか…。」
 桃包を食べる手を止める。
「あの時は、ありがとうね。訊かないでくれて。」
「別に、礼を言われる事じゃないだろ。誰だって、訊かれたくない事はあるさ。」
 過去の出来事を思い出しながら、一夏はそう言った。
「自分勝手だよね。大人って。子供の事も考えずに、離婚してさ…。」
 鈴が一夏に寄り添う。
 泣くのを懸命にこらえている鈴の手を、一夏はそっと握る。
『こいつの手、こんなに小さかったっけ…。』
 ちょっと、力を入れれば砕けてしまいそうな鈴の手を、震えが止まるまで握っていた。

 暖かい…。
 一夏の手、大きくて暖かい。
 武術で鍛え抜いて、無駄な脂肪のない引き締まった体を、制服越しに感じる。
 ちょっと離れている内に、なんか、すごくかっこよくなったなあ…。
 ああ…。
 勝てればなあ…。
「なあ、鈴。あの約束ってどういう意味だ。毎日お前の手料理を食べさせてくれるって。あれ。」
 …。
 鈍感さも、全然、変わってないわね。
 でも、今日は特別に許してあげる。
「自分で、考えて。」
 今は、もう少し、甘えていたいから…。

「織斑一夏。たいした強さね。」
 学園内のある部屋で、部屋の主は今日の戦いの映像を見ていた。
 剣技、操縦技術、戦術眼、柔軟な思考、その他諸々。
 申し分ない人物と見た。
「彼、確か、部活はしていないのよね。」
「はい。毎日、自主訓練に明け暮れています。」
 報告を受けて、主はうんうんと満足そうに頷く。
「ますますいいわね。私も、練習相手が欲しかった所だったから、ちょうどいいわ。」
 広げた扇子には、「適材適所」と書かれていた。
「織斑君。あなたはうちで貰うわよ。」
 彼女は、楽しそうに笑っていた。

「どうだ?解析は進んだか。」
 IS学園の地下50m。
 ごく限られた人間しか存在を知らない、特別区画に千冬と真耶はいた。
「それが…。」
「どうした?」
 戸惑った様子の真耶に、千冬は目を細める。
「コアがないんです。コアらしきものはあるんですが…。」
「らしきもの…。一体誰が、そんな物を…。」
 ISのコアを作る事が出来るのは、ISの開発者である篠ノ之束唯一人。
 それに似た者を作れるのも、おそらく束くらいの筈。
 千冬は、そう考えた。
 少し考えた千冬は、ある解答を導き出す。
『今はまだ、早いか…。』
「山田先生。そのコアらしきものは、厳重に保管しろ。政府と委員会には謎のISが出現したが、当学園の生徒、織斑一夏が撃破したとだけ、報告しておけばいい。」
「よろしいのですか?」
「もし、そのコアもどきが、国家の手に渡って全容が解析されてみろ。相当に面倒な事になるぞ。なにせ、予算の許す限り、ISに近い機動兵器が開発できる。」
「そうなれば、世界の軍事バランスが大きく崩れる…。」
 真耶は、千冬の言いたい事を理解した。
「そういうことだ。それで、結局、無人機だったのか?」
「はい。それは間違いありません。ただ、機能の中枢は完全に破壊されています。」
「そうか。仕方ないな。残った部分の解析を進めてくれ。」
「解りました。」
 千冬は、特別区画から地上に出るエレベーターに乗る。
『間違いない。奴らだな…。』
 千冬の脳裏に、嘗ての辛い記憶がよみがえる。
 大事な物を守れなかった、自分をいくら責めても責め足りない記憶が…。
『今度は、同じようにいくと思うなよ。私の弟は、一夏はいつまでも惰弱ではないぞ…。そして、私もな…。』
 心の中で呟きながら、千冬は拳を握りしめた。

「そう。まるで、歯が立たなかったのね。」
 とある場所の、高級マンション。
 その最上階のフロアの一室で、部屋の主は報告書に目を通していた。
「駄目だな。所詮はモドキだ。散々、金を使ってこの始末かよ。」
 もう1人、部屋にいる女性が吐き捨てるように言う。
「落ち着きなさい。まだ、初期バージョンよ。これから改良されるのだから。」
「無駄だな…。」
 部屋に入ってきた、小柄な16歳くらいの少女が、冷たく、だが、はっきりと言う。
「駄目かしら?」
「ああ。やはり所詮はモドキ。しかも、織斑一夏のISは、篠ノ之束自ら開発した機体。現状、性能面で対抗できるISはない。そして、奴の実力だ。客観的に見て、代表候補クラスでは、まぎれもなく世界最強。国家代表にも迫る可能性があるし、潜在能力は未知数だ。何しろ、日本が今の女尊男卑の世論の打破の可能性を見いだして、最高の訓練環境を整えて訓練し、しかも、通常300時間はかかる代表候補の訓練を150時間程度で終了させた。連携戦闘等の、高度な戦闘を含めてな。モドキが相手になるものかよ。」
 鼻で笑いながら、部屋の主に言う。
「じゃあ、どうするんだ?てめえに何か考えはあるのか!?」
「目には目を。歯には歯を。ISにはISを。だ…。」
 そう言って、メモリーのデータを空中投影ディスプレイに表示する。
「作戦の前倒し。こうなったら、やむを得ないわね…。私は、そうそう前線には、出られないし…。」
 そう言って、彼女は自分の左人差し指に嵌っている、トパーズの指輪を見た。
「失礼します。今回の戦闘での問題点の改良に関する資料を。お持ちしました。」
 冷たさを感じさせる青い瞳に、見事な銀髪の女性が部屋に入って来る。
「あなたにも、働いて貰う時が近いわ。お願いね。」
「はい。承知しました。」

後書き
少し、話が動き出しましたね。
謎の無人機。
コアもどき。
それを動かす組織。
それを作ったのは、誰か?
そして、今回も出てきた一夏の謎は、何を意味するのか?
足りないピースだらけの、謎というパズル。
完成した時は、何が明らかになるのか?
よろしければ、次回もお楽しみください。

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