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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第4話  もう1人の幼なじみ

<<   作成日時 : 2011/07/16 21:43   >>

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「やっぱり、強い…。」
「次元が、違うよね…。」
 クラス代表に決まってから少しして、俺はいつもどおりに稽古に行こうとしていたが、剣道部に道場に連れてこられて、選抜された五人と手合わせをしていた。
 先鋒の箒から始まって、大将の部長さん。
 全員を相手に、俺は勝った。
 千冬姉の弟としては、そう簡単には負けられないわけである。

「さすがだね?見事な腕だよ?それにしては初段のままなのはどういうわけだい?」
 やっぱり、聞かれたか。
 まあ、一言で言えば、興味がないからなんだよな。
 俺が、興味あるのは、そういう事じゃない。
「ええ。もったいないよ。織斑君だったら、弐段昇格確実なのに。」
「それどころか、全日本制覇も夢じゃないって。」
「ね。今からでも、剣道部に入部を。」
 そう言ったら、次々と声が上がる。
 だから、そういうのに、興味ないんだって。
 第一、入部は却下だ。
 ロッカーとか、シャワールームをどうするんだよ?
「じゃあ、俺、自分の稽古あるんで。失礼します。」
 防具を片づけて(千冬姉が、どういうわけだか持ってきていた。稽古でもするつもりか?)、俺は自分の稽古に戻る。
「あ、そうだ。織斑君、夕食の後、空いてる?」
「空いてるぞ。もう、白式の整備、終わってるしな。」
 何だ?

「それでは、織斑君のクラス代表就任を祝って、かんぱ〜い。」
 そういう事か。
 気づかないうちに、俺のクラス代表就任祝いの企画が、持ち上がっていたらしい。
 全然、気がつかなかったぞ。本当に。
 女は、秘密が多いって本当だな。
「いやあ〜。今更ながら、ほっとしたよ〜。」
「うんうん。一時は。どうなるかと思ったもん。」
 セシリアと話してほしいと頼んできたクラスメイトが、嬉しそうにしている。
「皆さまには、とんだご迷惑をおかけして、申し訳ございません。」
「本当に御免。迷惑かけた分は、クラス代表として頑張ることで、返す。」
 俺とセシリアが、皆に頭を下げる。
「いいって、いいって。2人とも、すっかり仲良くなったし。」
 あれから、俺たちはすっかり打ち解けて、親しい友人と呼べる間柄になった。
 が、問題もある。

「良かったな、一夏。」
 俺の隣で、不機嫌そうにしている箒である。
「あら、篠ノ之さん。幼なじみがクラスメイトと仲良くしていてそんな顔をなさるなんて、心が狭いんですのね。」
「な、何だと!?」
 おい、2人ともよせって。
 俺とセシリアが和解した途端に、箒とセシリアがこういう状態になっている。
 やれやれ、勘弁してくれよ。まったく…。

「どうも、新聞部です。インタビューに来ました。」
 は?なんでそうなる。
 黄色のリボンだから、2年生か。
 眼鏡をかけて、カメラを持った先輩が就任祝いの会場になっている食堂に入って来る。
 可愛い人だな。
 じゃ、なくて。
「あの、また、どうして?」
「何、言ってるの。織斑君。1組といえば、専用機持ちが2人もいるのよ。上級生からも、注目されているんだから。」
 あ、そうだった。
 たまに、自分が専用機持ちだという事を、忘れそうになる。
 呆けの兆候か?
 いかんなあ。
 まだ、20歳前なんだから、それは御免だぜ。
「あ、私、新聞部副部長の黛薫子よ。さて、1組代表にして、世界で唯一人ISを動かせる男子としての意気込みはどうかしら?」
 俺へのインタビューが、本命か。
 俺の情報というのは、国際IS委員会からの厳しい規制があるので、取材申し込みの許可も出ていない。
 ただ、IS学園内では、それなりに許されている。
 ま、学生が集まる新聞部だからってこと、だろうけどな。
 それにしても、やっぱり、世界で唯一人ISを動かせる男っていうのは、興味を引くんだな、やれやれ。
「そうですね。決まるまで時間がかかった分、皆にも迷惑かけたんで、クラス代表として皆が恥をかかないように、頑張りたいですね。さしあたっては、来月初旬のクラス代表対抗戦では、上位。できれば優勝したいですね。」
 大風呂敷を広げ過ぎかもしれないし、本当は興味無いけど、クラスのみんなの為にもそこにいければいいと思っている。
 よし、明日からは、訓練メニューを追加だな。

「うん、うん。男の子はそうでないとね。あ、記念写真、いい?」
「あ、はい。どうぞ。」
 黛先輩がカメラを構える。
「あ、セシリアさんもいいかしら?ツーショット写真ほしいのよね。」
「はい。喜んで。あの、写真は、後でいただけまして?」
「もちろん。じゃ、二人並んで。」
「では。」
 セシリアは立つと、俺の左腕に自分の腕を構えて密着してくる。
 おいおい、くっつきすぎだろう。
 腕に、柔らかい何とも言えない感触が…。
 いや、考えるな。考えてはいけない。
「いいわね。じゃ、撮るわよ。て、あら?」
 え?
 右腕にも、柔らかい感触が…。
 箒か!
 恥ずかしそうに、腕を絡めてくる。
 な、なんか、その表情は、たまらない…。
 おまけに、その、箒の…は、セシリアより大きい。
 て、考えるな!
「箒さん。何をやっていらっしゃるの?」
「別にいいだろう。私の勝手だ。」
「これは、私と一夏さん。1組の専用機持ちのツーショット写真なんですのよ!?」
 また、始まった。
 なんでこう、お前たちは喧嘩ばっかりするんだよ。
 間にいる、俺の身にもなってくれ。

「私たちも、おりむーと写真撮りた〜い。」
「あたしも。」
 のほほんさんと谷本さんが、近くに寄って来る。
「じゃあ、あたしたちもね。」
 結局、皆が寄ってきた。
「まあ、いいわ。じゃ、撮るわよ。はい、チーズ。」
 ま、これが、いちばん平和かもな…。

 あたしがもっと…になったら、あたし…。

「う、う〜ん。」
 目を覚まして、俺は背を伸ばす。
 しかし、珍しいな。
 昔の夢を、見るなんて。
 俺はどちらかというと、寝ている時に夢は見ないほうだ。
 あれって、確か…。
 まあ、いい。
 稽古に行こう。

「あら、織斑君。今日も、熱心ですね。」
 稽古をしていると、山田先生に会った。
「おはようございます。」
「おはようございます。こうして、毎日、一生懸命に稽古をしている事が、あの強さにつながっているんですね。上級生では、もう、相当な話題になっていますよ。」
 はあ、そうなんですか。
 そういえば、俺とセシリアの決闘の時は、上級生も見に来ていたっけ。
 まあ、確かに3年のケイシー先輩と手合わせする約束したが、そんなことになっていたのか。
 全然、知らなかった。
「ケイシーさん、意気込んでましたよ。上級生の実力を見せてやるって。」
「じゃあ、気合い入れないとまずいですね。専用機持ちの代表候補となると、実力だってかなりのものなんですよね?」
「ええ。3年では、間違いなくトップですね。」
 うわ、こりゃ、ヤバイな。
 全力を出しても、負ける可能性高いかな?
 でも、俺はそういう状況が、妙に好きなんだよな。
 互いに、純粋に力を出し合って戦う。
 大会とかは出る気ないけど、こういうのは本当に好きだ。
「うふふ。織斑君、頑張って下さいね。」
 そう言って、山田先生は去って行った。

「ここが、IS学園ね。」
 小柄で、サイドアップテールの髪型の少女が、正門からIS学園を見上げる。
 そして浮かべた笑顔は、本当に楽しそうだった。
「あなたが、新入生の方ね。お待ちしていましたわ。ご案内します。」
「よろしくお願いします。」
 事務員が、少女を学園に案内する。
 歩きながら、学園の注意事項を説明するが、少女は右から左に聞き流していた。
 その辺りは、とっくに目を通している。
 それよりも、少女には大切な事があった。
 あいつ、元気にしてるかな?
 ま、元気なんだろうけど。
 そう考えていると、目の前を幾人かの生徒が走り去っていく。

「それ、本当なの?」
「本当だって、今、3年のケイシー先輩が、織斑君と手合わせしてるんだから、急がないと。」
 生徒達の話を聞くと、少女は肩に掛けていたバッグを落とした。
 そして、右の手首につけている黒のブレスレットに意識を集中する。
「だ、駄目ですよ。こんな所でISを展開したら、国際問題に発展するんですから。」
 事務員は、慌てて制止する。
「すいません。あたし、急用が出来ました。」
 そう言って、少女は走っていく。

「今度こそ、当てるぜ!」
 専用機ヘルハウンドVer2.5を展開したケイシー先輩が、一対の大型プラズマナイフ「ハウンドクロー」を手に、襲いかかってくる。
 さすがに、3年生。
 攻め方が、鋭い。
 力強いが、勢いだけじゃない。
 計算され尽くした、攻め方だ。
 滅茶苦茶にナイフを振り回すだけだったら、やりようはいくらでもあるけど、こうなると話は別だ。
 俺は、ケイシー先輩の攻めの勢いと流れを読み、態勢を崩して、パワーを乗せた一撃を加える。
「くそっ!」
 シールドを一気に削られたケイシー先輩は、背部の大型ショットカノン「ファイアーレイン」を撃つ。
 散弾となると、通常とは対処の仕方が違う。
 炸裂して、周囲に内部の小型弾を飛び散らせるので範囲をある程度想定しないと、下手をすれば弾丸の雨の中に自分から突っ込む事になる。
 ハイパーセンサーが、発射音から先輩の射撃のデータを俺に示す。
 それを元に、俺は回避機動を取りながら、先輩に迫る。
 ショットカノンの攻撃は、これが初めてじゃない。
 既に、俺はこの兵装の特性を掴んでいる。
 だから、回避するのは難しくない。

「かかったな!かわされるのは、織り込み済みなんだよ!」
 既に先輩は、ハウンドクローで俺に攻撃を加える用意を、終えていた。
 やっぱりな。
 さっきの射撃が、あれで終わりだったら楽だったのにな。
 俺たちは、互いの距離を縮め続ける。
「もらったぜ!」
 ケイシー先輩が、ハウンドクローを振り上げる。
「そうはいかないですよ。」
 イグニッションブーストで急上昇し上を取ると、俺は零落白夜を発動させて、急降下からの斬撃でヘルハウンドのシールドを0にする。

「凄い…。織斑君。勝っちゃった…。3年生に勝っちゃった。」
「凄い、凄い!」
 1年生の生徒は最初こそ呆然としていたが、その内、喜びのあまり飛び跳ねる。

 少女は途中から、その様を見ていた。
「嘘…。」
 信じられなかった。
 アイツが、上級生に勝った?
 相手の方が、経験豊富なのに?
 ISについて学び始めたのは、そんなに昔じゃないはず。
 でも、現実に勝った。
「一夏!」
 堪らず、少女は叫んだ。

 やっぱり、上級生は強い。
 経験の蓄積がある分、動きは鋭いし、戦術に円熟さがある。
 なんだか、入学前の訓練を思い出すぜ。
 戦術の流れに沿った攻撃と、そうでない攻撃の違いを、嫌というほど体に叩きこまれた日々が、妙に懐かしい。

「一夏!」
 ふと、俺を呼ぶ声が聞こえる。
 ん?
 どこかで、聞いた声だな。
 待てよ?この声は。
 思いだそうとしていると、俺を呼んだ声の主が走って来る。
 嘘だろ?あいつ、入学するのかよ。
「一夏〜っ!」
 思いっきりジャンプをして、俺に抱きついてきた。
 おいおい!お前、自分がスカート履いてるって、忘れてないか!?
 俺の目に飛び込んできた、水色と白のストライプの柄の、三角形の布の事を思い出しながら、その子を抱きとめる。
「鈴?やっぱり、鈴か?」
「そうよ。鳳鈴音よ。久しぶりね。一夏。」
 心から嬉しそうな笑顔で、鈴は答える。
 こいつ、IS学園に入学してきたのか。
 箒といい鈴といい、まさかこんな所で会う事になるなんてな。
 世の中、広いんだか、狭いんだか。

「おい…。」
「何ですの?」
「どうして、一夏が他の女子生徒と、抱き合っているのだ?」
「どうしてでしょうね…。」
「ふふふふふ…。」
「おほほほほ…。」
 暗い笑いを浮かべながら、箒とセシリアがピットに向かう。

「うええ、怖いよお…。」
 本音は恐怖のあまり、谷本に抱きつく。
「だ、大丈夫かな…?織斑君。」
「ケイシー先輩に勝ったぐらいだから、大丈夫だと思うけど…。」
「ていうか、思いたい…。」
 他の生徒も、顔を真っ青にしていた。

「それにしても、凄いじゃない。上級生に勝つなんて。しかも、シールド残量を見る限りは、一方的なワンサイドゲームよ。」
「紙一重さ。場合によっては、逆だった可能性も高いからな。」
 心から、そう思う。
 3年生で専用機持ちとなると、その実力はさすがに凄い。
 一見すると、俺の圧勝に見えるが、紙一重で俺が勝っていた部分が、山ほどある。
 剣術でも達人同士の戦いになると、紙一重の差が勝敗を大きく左右する。
 今回は、俺が勝ったけど、これからもそうとは限らない。
 浮かれている場合じゃ、ないな。
 さらに、稽古に励まないと。
 できれば、ケイシー先輩とはもっと手合わせがしたいな。
 後で、頼みに行ってみるか。

「ほほう。楽しそうにしているな、一夏…。」
「ええ、本当に…。」
 背後から凄まじい寒気を感じて、振り向いた俺の目に映ったのは、尋常じゃない雰囲気の箒とセシリアだった。
 お二方〜。何やら、空気が寒いですよ〜?
 今日は、結構、暖かかったはずなんだけどな〜。
 誰か、クーラーでも入れたのかな〜。

「いや。それほどでもないと、思うけどな…。」
 あまりの寒気に、俺は、一歩後ずさる。
 おい。ちょっと待て。
 何がどうなってるのかよく解らんが、とりあえず、落ちつこう。な?
「謙遜しなくていいぞ。」
「ええ。本当に楽しそうでしたもの…。」
 うわ、なんて瞳だ。
 目茶目茶、虚ろだぞ。
 かの有名な、伝説の空○の時の瞳もこんな感じか!?
 いやいや、そんなこと考えている場合じゃない!
 どうにかしないと、俺の命の危機に…!

「ちょっと。あんたたち、なんなの?」
 セシリアと箒の前に、鈴が立ちふさがる。
「お前こそ、誰だ!?これは、一夏と私たちの問題だ!」
「そうですのよ!部外者は黙っていて下さらない!?」
 しかし、鈴がそう簡単に引くような性格じゃない事は、俺がよく知っている。
 なんせ…。

「関係あるわよ。あたし、一夏の幼なじみだもん。あんたらこそ、引っ込んでなさいよ。」
 そう、この女の子。
 凰鈴音。俺は、鈴と呼んでいるが、俺の幼なじみである。

「おい。」
 そうしていると、後ろから恐怖の大王の声が聞こえてくる。
「何よ。あたし、今、取り込み中なのよ。後にしてよね。」
 うわ。やめろって、鈴。
 次の瞬間、鈴の頭に拳骨が炸裂する。
「いったあ〜。誰よ。って、千冬さん…。」
 泣く子も黙るIS学園の鬼教師にして、俺の姉、織斑千冬の登場である。
 さすがの鈴も、千冬姉の前では勢いをなくす。
 て、言うか、昔からどういうわけか、鈴は千冬姉が苦手だ。
「織斑先生と呼べ。こんな所で、油を売っている場合か。手続きが残っている。さっさと来ないか。」
 千冬姉に首根っこを掴まれて、鈴はその場から退場していく。
 何か、親猫に叱られた子猫だな。
「お前たちも、さっさと寮に帰れ。」
 箒もセシリアも何か言いたそうだが、さすがに千冬姉に逆らうだけの度胸は持ち合わせてはいない。
 黙って、寮に戻った。
 2人の後ろ姿が視界から消えるのを待って、安堵の息を吐いた。

「で、どういうわけよ?何で、ISを動かせるわけ?しかも、あの篠ノ之博士が自ら開発した最新鋭機って話じゃない。」
「まあ。いろいろあってさ。あんまり、くわしくは話せないんだけどな。」
「聞いてるわ。あんたの事に関しては、国際IS委員が極秘事項に指定しているんでしょ。でも、動かせるって解った切っ掛けくらいなら、いいでしょ?」
 俺は、生姜焼き定食。
 鈴は、豚バラ飯とかき玉スープを選んで、一緒のテーブルに座って食べていると、鈴が、俺がISを動かせると解った経緯を聞いてくる。
 う〜ん。
 ま、これくらいなら、大丈夫だろう。
 この事に関しては、極秘事項に指定されてないしな。

 そもそもの切っ掛けは、友達から倉庫整理の一日限りのアルバイトを頼まれた事だ。
 急な用事が出来て、行けなくなったそいつの代わりに、俺が行く事になった。
 受験生だったが、たまの気晴らしにいいだろうと思って、俺は引き受けた。
 そして、そこに、どういうわけか、ISが紛れこんでいた。
 動かせるのは女性のみ。
 男の俺には、関係ないと思っていたが、ふと、動かせるような気がして機体に触れると、反応した。
 ISが展開されている最中に、俺の頭の中に知りもしない情報が飛び込んでくる。
 全てが、手に取るように分かる。
 操縦する為に必要な理論の全て、スラスター推力、最高速度、稼働時間制限、レーダーレンジ。その他諸々が、俺の血肉になっていくような、そんな感じだった。
 おっと、最後の辺りは、秘密だな。

「なんで、ISが倉庫にあったわけ?そんな、いい加減な管理をしていいわけ、ないでしょう。」
「なんでも、手続きの間違いだと。」
 そんなわけで、国際IS委員会と日本政府から担当者が来て、俺は習志野の陸自の基地で訓練を受けた後に、IS学園に入学したわけだ。
 訓練に関しても、あまり口外はできない。
 ある程度、機密指定が解除されるまでは、喋る事は固く禁じられている。
 今更ながら、面倒くさいよなあ。
 ま、幸い、代表候補待遇で、給料は出る。
 しかも、代表候補としても、額は破格。
 救いと言えば、これくらいだ。

 一夏と鈴が楽しそうに食事をしている様を、箒達はずっと見ていた。
『なんなのだ?あいつは。一夏も一夏だ。何で、あんなに楽しそうに!』
 楽しそうに話しながら食事をする一夏と鈴を見ながら、箒は苛立っていた。
『私以外に、幼なじみ。一夏め。私には、一言も言わなかったではないか。』
 煮魚定食が、手をつけられずに冷めていく。
 割り箸を握る箒の手に力が入り続け、割りばしが真っ二つに折れる。
 そして、それでは収まらずに、あちこちが折れてボロボロになり、ただの木の欠片になり果てた。
 一夏はそれに気づかずに、鈴と楽しそうに話をしている。
 少しは、私にも話しかけたらどうだ?
 自分を全く気に掛けない一夏の態度が、箒をさらに苛立たせる。

『なんなんですの?あの方は!』
 春野菜のスープパスタが冷めていくのを気にもせずに、セシリアは一夏と凛を見ていた。
『幼なじみ?どうして、箒さん以外に幼なじみが現れるんですの!?』
 当面のライバルは、一夏の幼少の頃を知る幼なじみの箒のみ。
 そう考えていたセシリアにとっては、これは非常に問題である。
 なにしろ、セシリア自身は一夏と知り合って一カ月も経っていないのである。
 箒と鈴に対抗しようにも、武器がない。
『何か、何か手を考えないと…。』
 対抗策を考えようにも、男を取りあう事自体、セシリアは初めてなのでどうしていいか解らない。
『何で、一夏さんは、こんな思いをしている、私に気づいてくださらないの!?』
 手の中のフォークが、次第に歪んでいき、やがて親指に籠った力で曲がる。

『もう、我慢ならん!』
『このままでは、いられませんわ!』
 箒とセシリアが、全く同じタイミングで席を立ち一夏達の元に行く。
 後に残ったのは、粉々になった割りばしと歪み曲がったフォークだった。

「一夏!いつになったら、説明するのだ!?」
「一夏さん!説明していただけますわね!?」
 箒とセシリアが、苛立たしそうに言ってくる。
 何、怒ってるんだ!?
 カルシウム不足か?
 小魚、食べろよ。
 カ○ボーンは、もう、売ってないんだからな。
「ちょっと!さっきといい、あんたたち、なんなわけ!?今は、あたしが一夏と話てんの!」
 うわ。またかよ。
 鈴は、決して短気な方ではないが、勝気な部分があるので、こういう状況は、はなはだまずい。

「箒。こいつは凰鈴音。もう1人の、俺の幼なじみだ。」
 まずは、箒に鈴を紹介する。
 頼むから、睨みあうな。寒くなって仕方ない。
「鈴。こいつは篠ノ之箒。前に話した事あっただろ?俺が凄くお世話になった、神社の家族の娘さんで、俺の幼なじみ。」
「ほう。」
「へえ。」
 だから、睨みあうなって。
「セシリア・オルコット。俺のクラスメイトで、イギリスの代表候補だ。」
「ふうん。クラスメイトか。そうなんだ。」
「な、何ですの?」
 セシリアを紹介された凛が、何故だか優越感に満ちた笑みを浮かべる。
 セシリアはそれが気に入らなくなって、鈴を睨みつける。
「まあ。言うなれば、箒はファースト幼なじみで、鈴はセカンド幼なじみだな。」
 気づかないふりをして、紹介を続ける。
「そういう事だ。これからもよろしくな。」
「こちらこそ。」
 今度は、箒が優越感に満ちた笑みを浮かべて、鈴が不機嫌そうになる。
「そうですわ。一夏さん。明日、手合わせをお願いできまして?私みたいに、専用機持ちの代表候補ともなりますと、練習相手の確保も苦労してしまいますの…。クラスメイトですし、専用機持ちで上級生にも勝利するほどの実力者であれば、私も助かりますわ。それに、一夏さんもやはり専用機持ちの方が、練習相手にもいいとおもいますの。」
 どういうわけか、セシリアが勝ち誇った笑みを浮かべて、俺の横に来る。
 すると、箒がみるみる不機嫌になる。
 だから、やめてくれって…。
 俺の周囲から感じられるどこか恐ろしげな雰囲気で、周囲がどん引きしている。
 うん。解るぞ、その気持ち。
 俺なんて、できれば、どっかに逃げたいくらいだからな。

「だったら、あたしが一夏の練習相手になるわ。」
「あら?私の話を、聞いていらっしゃいませんでしたの?一夏さんも私も、共に専用機持ち。専用機持ちの練習相手は、やはり専用機持ちがするのがベストというもの。あなたは、お呼びじゃありません事よ。」
 いや、セシリア。あのな…。
「だから、あたしも専用機持ちなの。ついでにいうと、あなたと同じ、代表候補よ。」
「な?どういうことですの!?」
「私は、中国代表候補凰鈴音。専用機持ちで、一夏の幼なじみ。つまり、そういう事。」
 そういう事なのである。

 幼なじみという点では、箒と同じ。
 代表候補の専用機持ちという点では、セシリアと同じ。
 しかし、箒は専用機持ちではない。
 セシリアは、一夏の幼なじみではない。
 一夏の幼なじみにして、専用機持ちの代表候補である凛は、三人の中では、最も有効なカードが多いという事になる。

「おい。いい加減に、夕食をとっとと済ませろ。就寝時間があるのも、忘れるなよ。」
 一年の寮の寮監である千冬姉が、手を叩く。
 さすがに千冬姉に逆らうだけの度胸は無いので、箒とセシリアは不味そうに夕飯を再開する。
 飯は温かいうちが、うまいんだぞ。
 冷めたら、味が落ちるのは当然だぜ。
 ちなみに、俺たちの飯も冷めていた。
 はあ、やれやれ。

「はあ。」
 箒が風呂に行っている間に、俺は風呂を済ませて、鈴の事で気になる事があったので考えていた。
 引っ越す前は、鈴の実家は俺の家の近くで中華料理屋をやっていた。
 俺がその事を話すと、鈴の表情が微妙に変化した。
 しかも、よくない方向にだ。
 あまり話すとまずいと考えて、俺は話題を変えたが、どうも気になっていた。
『元気にしてるのかな?おじさんとおばさん。』
 千冬姉がIS操縦者として活躍するようになってから、1人での食事が多くなった。
 極端な話、1人分ならカップ麺でもいい。
 第一、作りがいがない。
 その頃から、俺はよく鈴の実家の中華料理屋にいくようになった。
 はあ。なんだか、その時が懐かしくなってくるぜ。
『やめるか…。』
 考えてると鈴に聞きそうになるから、俺は考えるのをやめた。

「一夏、いる?」
「鈴か?いるぞ。」
 タッパーを手に、鈴が部屋に入って来る。
 ん?なんか、いい匂いがするな。
「これ。」
 鈴が、タッパーを開ける。
 お、芝麻球(チーマーカオ)か。
 胡麻餡を生地で包んで、胡麻をまぶして揚げた中華料理のデザート。
 俺の好物の一つだ。
「うん。うまい。」
 熱々の芝麻球を、俺は口に入れた。
「よかった。」
 鈴が嬉しそうに、微笑む。
 小学校5年に転校してきてから、中学2年の終りに引っ越した鈴だが、その間は、あんまり女の子らしさは感じなかった。
 けど、今の鈴ははっきり言って、可愛い。
 1年離れていただけで、こんなに変わるのか?
 箒も鈴も一目見てすぐに解ったのに、女の子ってこんなに変わるものか?
 箒も、昔は小さな侍ってかんじだったのに、なんか女の子らしくなってるし。
 ううん…、解らん…。

「一夏、何をしている…?」
「どういうことですか?一夏さん…。」
 部屋に入ってきた箒とセシリアが、地の底から聞こえてくるような低い声で聞いてくる。
 しまった…。
 俺と箒は、同じ部屋だったんだ…。
 今の今まで、完全に忘れていた…。
「いやあ。鈴が、芝麻球作ってきてくれてさ…。」
 とりあえず、真実を言っておくに限る。
 嘘を言っておくと、ろくな事にならないからな。

「あんたたちこそ、毎度、毎度、なんなわけ!?第一、ここは一夏の部屋でしょ!?何、勝手に、入って来るのよ。」
 うわ、鈴が爆発した。
「ここは、私の部屋でもある!いや、私と一夏の部屋だ!!」
 おい、箒、落ちつこうな。
「一夏…、どういう事…?」
 鈴の声が、物凄く低くなる。
 なんか、やばいかも…。

「なるほど…、一夏の入学があまりにもイレギュラー過ぎて、篠ノ之さんと同室…。へえ…、そうなんだ…。あたし、ちっとも知らなかったな…。」
 とりあえず、俺はみんなにお茶を入れて落ち着いてもらおうとしたが、まるで効果がない。
 箒から、事の次第を聞いた鈴は、下を向いたままだ。
 すげえ、怖い…。
 てか、何で、こうなってるんだ…?
「あの、鈴。俺と箒は来月には、部屋は分かれるんだぞ。つまり一時的なわけで…。」
「でも、その間は、一緒の部屋で寝食を共にするのよね…。」
 駄目だ。何を言っても、鈴が怖くなるだけだ…。
「で、どうして、お前が鳳に揚げ団子を作ってもらっていたんだ?」
「そうですわね。そう言えば、それを聞いていませんでしたわね…。」
 うわ、こっちもか…。
 やましい事は、ないんだぞ。
「いや。よく、鈴の家で飯を食うようになった時から、鈴が偶に何か作ってくれてたんだよ。」
 鈴は中華料理屋の看板娘だったが、それだけでなく、親父さんから、いろいろと料理を教わって、よく、俺に作ってくれた。
 特に、点心が得意で、親父さんも感心してたくらいだ。
「ほう…、鳳の家で食事か…。」
「随分、親しかったのですね…。」
「いや、あのな。鈴の家は中華料理屋をしていてだな。それで、よく食べに行ってたんだ。そういう事なんだ。」
 俺は、事の経緯を箒とセシリアに話す。
 というか、それしかできない。
「そ、そうか。それなら、納得できるな。」
「お店なら、そういう事もありますわよね。」
 2人は何やら、ほっとしたようだ。
 とりあえず、危険は去った。

「そうだ、一夏。来月の頭のクラス代表代行戦に出るんでしょ?あたしも出るけど、幼なじみのよしみで練習相手してあげる。」
 おう、それは…。
 ん?あれ。
「あなたは、2組でしょう。敵の施しは受けませんわ!一夏さんのお相手は、私、セシリア・オルコットが務めますから、ご心配なく。」
 何故かよく解らんが、余裕を取り戻したセシリアが、あからさまに必要ないと言う。
「ていうか、鈴。2組のクラス代表は、もう決まってるぞ。」
 そう。
 クラス代表は、入学してからすぐに決まる為に、もう、どのクラスでも決まってる。
 今更、鈴がなるなんて、不可能だ。
「大丈夫。これから、なるから。」
 鈴が、自信たっぷりに言う。
 何だよ?その、根拠のない自信は。
 絶対に、無理だって。
「それはそうと、一夏。」
「うん?なんだ。」
「今日の芝麻球、美味しかった?」
 何だ、何を聞いてくるかと思ったら、それか。
「おう。うまかったぞ。」
 鈴の点心は久しぶりだけど、美味かったな。
 また、腕上げたんじゃないのか?
「ありがと。今度は、何がいい?」
「そうだな…。桃包(タオバオ)なんかがいいかな。」
 桃包とは白い豆餡を生地で包んで、外見を桃の形にしたいわゆる桃饅だ。
 饅頭の類は他にもあるけど、俺はこれが一番好きだったりする。
「じゃあ、今度、作って来るね。」

「お待ちになって。幼なじみだからといって、やりすぎではありませんこと?」
 沈静化したと思ったら、セシリアが爆発した。
「何よ!あたしが一夏に、何、作ってこようが自由じゃない?それとも、何?あんたが何か、一夏に作ってくるって言うの?世界最高の不味さを誇る、イギリス料理を?何の、ジョークよ。」
 おい、鈴。
 それを言っては、駄目じゃないのか?
「い、言ってくれましたわね。わがイギリスの、優雅なティータイムを、侮っていらっしゃいません?」
 うん。不味さでは世界でも5本の指に入るイギリス料理でも、ティータイムのお菓子はうまいと聞いたことがある。
 これなら、って、あれ…。
 ふんと、鼻を鳴らした鈴が、セシリアの手を取る。
「この手で、作るの?どう見ても、料理なんてろくにした事のない、手じゃない。」
 そう。俺も、セシリアの手を見て、家事労働をろくにした事がない手である事は、すぐに解った。
 何しろ、お嬢様育ちだ。
 人に食事を作ってもらった事はあっても、作った事なんてないんだろうな。
「やってみなければ、解りませんわ。私だって、その気になれば、料理くらい。」
 意気込みは買うがな、セシリア。
 料理ってのは、奥が深いぞ。
 そう簡単に、できるもんじゃない。
 言い争いをしている2人を見ていると、背後から冷たい感覚が漂って来る。
 振り向くと、木刀を手にした箒がいた。

「一夏…。お前、私が転校した後に、すっかり餌づけされていたらしいな。」
 箒がゆっくりと、正眼の構えを取る。
「おい。箒、落ち着け。今はもう夜だ。」
「黙れ。今宵は、お前を料理してくれる…。」
 しかし、振り上げた木刀は振り下ろされなかった。

「まもなく、就寝時間なのに、ここまで馬鹿騒ぎをするとはいい度胸だな…。」
 喧嘩の場から、閻魔様の御前に変わっていた。
 そして、俺たちの前には千冬姉がいた。
「さて、どうする?これ以上、馬鹿騒ぎをして、一晩中、グランドを走り回るか?それとも、黙って自分の部屋に帰るか?」
「「帰ります。」」
 見事に、鈴とセシリアの声がハモる。
 そして、2人は脱兎のごとく、部屋に帰った。
「揚げ団子を食べるのもいいが、就寝時間は守れ。いいな。」
 鈴の作った点心は、千冬姉も幾度か食べている。
 だから、匂いですぐ解る。
 少しして、千冬姉は俺たちの部屋を去る。
 多分、見回りの途中だったんだろう。
 さて、後は、箒に着替えてもらってと。
 あれ?

「一夏、就寝時間まで、多少、時間がある。ゆっくり、話を聞こうか。話してくれると、信じているぞ…。」
 こ、怖え…。

 こうして、俺は就寝時間まで、箒から鈴との事を問い詰められた・
 勘弁してくれよ。
 マジで…。

『一夏、美味しそうに食べてくれた。』
 タッパーを洗いながら、鈴は嬉しそうに笑っていた。
『それに、大丈夫そうだったみたいだし…。』
 箒と鈴。
 接点がなさそうに見える二人だが、一夏に関するある事を互いに知っていた。
 生徒で知っているのは、箒と鈴だけである。
『今度は、桃包か。好み、変わってないなあ。』
 いつも、美味しそうに頬張っていた一夏を思い出して、鈴は微笑んだ。

後書き
遂に、鈴が登場です。
原作の流れに沿ってはいますが、そのままではつまらないので、細かい部分をいじっています。
特に、原作の最新刊で登場したダリルやフォルテは、活かして見たいと思ったので、今回はダリルを登場させてみました。
さて、ここで今後の重要なキーになる事を、鈴も知っていることが明らかになります。
それが何なのかは、もうしばらく後になって分かります。
さて、既にクラス代表が決まっている2組。
鈴はどうするのでしょうね?

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