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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 幕間 姉と弟

<<   作成日時 : 2011/07/30 19:32   >>

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 通常は、生徒が負傷したりすれば保健室に運ばれるが、緊急に専門的な処置が必要と認められたため、大学病院以上の設備と優れたスタッフがいる医務室に、一夏は運ばれていた。
 
「酷い脱水症状と、衰弱を起こしていました。心電図の検査の結果、不整脈が認められました。幸い、不整脈は収まりました。現在は、活性化治療を行っています。今晩は絶対安静です。呼吸も、まだ正常とは言えませんから…。」
「うちの生徒が、ご迷惑をおかけしました…。」
 千冬が医務室の医師に、頭を下げる。
「いえ、そんな。それにしても、何であんな無茶を。いくら織斑君でも、こんな事をすれば…。」
 医師が目にした先には、軍で使用されている特殊なリストバンドと、アンクルバンドがあった。
 それぞれが、重量10kg。
 さらに、筋肉に負荷をかける機能が搭載されていて、実質的には、四肢にそれぞれ数倍の重量の重りをぶら下げながら、訓練を続けていた事になる。
「さらに、パワーアシスト機能を切ったISで、訓練をしていたんです。どうして、そんな無茶を…。」
 医師は首をかしげたが、千冬には理由がすぐに解った。
 さらに、己を高みに登らせる為、一夏は苦行を、自ら課したのだろう。
 守られる対象から、誰かを守れる存在になるために。
 楯無を警護の為に置いた事が、逆に一夏が己を脆弱な存在と見るきっかけとなってしまったのだ。
 常識的に言えば、入学前から特殊部隊でも充分通用する技量を身につけ、国家代表をもやぶった一夏は、充分に自分の身を守れるし、誰かを守れる。
 理由を話せなかったとはいえ、今回の件が一夏に自分と千冬を比べさせることにもつながった。
 その事を、千冬は痛感していた。

「先生。一夏さんの具合は!?」
 セシリア達が、医務室に駆け込んでくる。
「あなた達、ここは医務室ですよ!!」
「お叱りは、後でいくらでもお受けします。でも、今は…。」
「騒ぐな。織斑の事は、心配いらん!」
 セシリアの言葉を遮るように、千冬が強い口調で言う。
「う、うん…。」
 セシリア達が来て2時間ほど経った頃、一夏が目を覚ました。

「ヴァイタルは正常、呼吸も問題ないわね。念のため、血液検査をさせてもらうわ。」
 採血をして、分析機に欠ける。
「もう、大丈夫ね。でも、今晩は経過観察をしながら、絶対安静よ。明日のトレーニングは当然中止。明後日からは診察をして、結論を出すわ。不満だろうけど、守ってもらいます。運ばれた時、あなた、とても危険な状態だったのよ。幸い、ここには機材もスタッフも揃っているから大丈夫だったけど、普通の病院ならどうなっていたか解らないの。そこの所を、もう少し、認識してね。織斑君。」
 不満そうな一夏に、医師はそう言い聞かす。
「ねえ、一夏。お願いだから。今回だけは、先生の言うとおりにして。ね?後で、あたしたちがいくらでも訓練につきあってあげるから。」
 鈴が一夏の手を取って、懇願する。
「一夏さん。休みを取るのも大切な事ですわ。ですから、ね。」
「一夏。今は、休みを取るべき時なのだ。その後、体の調子が万全になってから、改めて訓練に励め。」
 セシリアと箒も、一夏に必死に言い聞かせる。

 ここまで言われると、嫌とは言えないよな。
 非は、俺にあるわけだしな。
「解った。そうするよ。」
 箒達にそう答えて、改めて皆の方を向く。
「ご心配をかけて、大変、申し訳ありませんでした。」
 俺は、深々と頭を下げた。
 自分の感情を平静に戻すためとはいえ、今回は明らかにやり過ぎた。
 反省しないとな。
「今後は、こんな事がないようにしろ。雛鳥が無理な背伸びをしても、何もならん。以後、身の程をわきまえるように。」
 皆に背を向けて、千冬は一夏にあえて厳しく言う。
「織斑先生、それはあんまりです!」
 箒が、千冬の言い方に反発する。
「まあまあ。ちょっと、外に出ていましょう。そう、10分程ね。」
 そう言って、医師は皆を医務室の外に出す。

「一夏…。」
 姉に戻った千冬は、静かに、だが、慎重に、弟の名を呼ぶ。
「御免、千冬姉。こんな事になって。」
「もう、いい。私も配慮が足りなかった。」
 千冬は、近くの椅子を引き寄せて座る。
「守られるのは、そんなに嫌か…?」
 千冬は、静かに一夏に問う。
「嫌じゃないさ。辛いんだ…。」
 その言葉の意味を、千冬はすぐに理解した。
 いや、千冬だからこそ、理解した。
「とにかく、今はまだ理由を話す事は出来ない。いや、そんな事は関係ないか。お前は私の弟だ。私はお前の姉だ。せめて、弟を守るくらい、許せ。いままで、ずっとそうしてきたんだからな。だが、いつかはそれも終る。せめてその時まではな。」
 千冬は、優しく一夏の頬を撫でる。
「お前は、色々と勘違いをしているな。確かに私から見れば、お前はまだ未熟者だ。武術、IS、どちらをとってもな。だが、それはお前に限ってじゃない。この学園の学生は、皆、未熟者だ。その未熟者を一人前にするのが、私の仕事だ。」
「千冬姉…。」
 普段ほとんど見せない表情の千冬に、一夏は戸惑う。
「未熟を恥じる必要はない。未熟なままでいいと思う心こそ、恥じるべきだと、私は思う。精進を続ければいい。ただし、無理はするなよ。今日のような事は、御免だからな。」
 そう言って、千冬は席を立つ。
「心配するな。お前は精進を続ければ、まだまだ伸びる。なんせ、私の弟だからな。」
 僅かに微笑んで、千冬は医務室を出た。

「お前は、私の弟だからな。か…。」
 俺がまだまだ伸びるのを確信しているのか、それとも期待しているのか、どっちなんだろうな。
 ただ、何か、気持ちがすっきりした。
 それだけは言える。
 理由が全く解らないけど、それだけは間違いなかった。
 とにかく、今日と明日は、大人しくしているか…。
 今になって、体中の筋肉が痛み出してきた。
 ISを展開しなくても、兵装は扱える。
 ただ、ISを展開して、パワーアシスト切っての訓練は、無理があったか。
 兵装に、ISの重量も加わるからな。
 いつかは、普通にできるようになって見せるけど、今は無理をしないで静かに休もう。
 回復してからは、生徒会長としての仕事もあるからな。
 そんな事を考えながら、俺は眠りについた。

「あら、更識さん。どうしたの?」
 夜になって、医務室を楯無が訪れた。
「いえ。気になって…。元はといえば、私が元凶ですから…。」
「でも、もう、仲直りしたって聞いてるわよ。」
「そうなんですけどね…。」
 例え和解しても、あの時の一夏の怒りようを見ていると、やはり罪悪感は完全には消えない。
 どうしても、一夏の安否を確認しなければ、気が休まらなかった。
「大丈夫。明日には、普通に学校に行けるわ。大事を取って、訓練は休んでもらうけど。」
「そうですか…。」
 楯無が、ほっとした表情になる。
 引き継ぎの準備をしている際に、一夏が訓練中に倒れたと聞いて、さすがに平静ではいられなかったが、自分の後任として生徒会長になる一夏の為にも、今、自分がやるべき事をやる。そう言い聞かせて、準備を続けた。
 後になって、事の次第を聞かされた楯無は、そこまで一夏を追い込んでしまった責任の一端が自分にある事を、嫌というほどに感じていた。

『おやすみなさい。一夏くん。ゆっくり休んでね。』
 楯無は、一夏の頬に優しくキスをする。
「今のは、見なかった事にしてあげるわ。後が大変だもの。」
 医師が、微笑みながら楯無に言う。

「虚、本音。いるわね。」
 廊下に出てから、楯無は潜んでいる誰かに呼びかける。
「はい。」
「は〜い。」
 出てきたのは、本音と、本音にどこか似た面影がある眼鏡をかけた女子生徒だった。
「学園にいるときは、私達3人で一夏くんの警護にあたります。ぬかりなきよう…。」
 更識家。
 世の暗部を処理する一族であり、楯無は当主が代々受け継いできた名である。
 今、楯無は、更識の当主として、一夏の警護の任についた。

後書き
ブログの字数制限の関係で、今回は本編と幕間に分けてあります。
タイトルの通り、一夏と千冬のお話です。
なぜ、守る側になりたいかという一夏の理由を聞いた上で語られる、千冬の一夏を大切に思う気持ち。
さて、それとは別に、楯無が更識家当主として動き出します。
その理由は?

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