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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第1話 唯一人の男子生徒

<<   作成日時 : 2011/06/25 21:31   >>

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 キツイ…。

 一言コメントを求められれば、俺はそう言うだろう。
 高校入学早々、そういう一言が出るのはどうかと思うが、それしか言えないのだから、しょうがない。
 何しろ、クラス。というか、このIS学園には男子生徒が俺しかいないのだから。
 俺、織斑一夏の高校生活は、こうして幕を開けた。

 IS学園。
 10年前、世界に登場した最強の兵器IS。
 正式名称インフィニット・ストラトスの操縦者並びに、専門技術者を育成する為の特殊な高校。
 俺は、ここに入学した。
 というか、入学させられた。
 だが、IS学園の生徒は、本来女子である。
 なぜなら、ISを動かせるのは、女性だけ。
 男性は、ISを動かす事は出来ないのである。
 加えて、ISにこれまでの兵器は、一切無力。
 国防の中心を担うのはISとなり、その抑止力は核を大きくしのぐ事から、
社会は大きく変化した。
 今までの、男尊女卑の社会が一転して、女尊男卑の社会になったのだ。
 今じゃ、通りすがりの女にパシリにされる男も珍しくも無い。
 いやはや、悲しいね。
 俺はそんなの御免だから、断固として断ってきたけどな。
 おかげで、少なからず、嫌な思いもしてきたが、まあ、それはいい。
 今は、この状態を何とかする方が先だ。

「皆さん。入学おめでとうございます。今日から、貴方達はIS。インフィニトストラトスに関する専門知識を身につける為に、3年間勉強してもらう事になります。私は、副担任の山田麻耶です。」
 小柄で眼鏡をかけた教師が、自己紹介をしている。
 中々、可愛いな。
 普通だったら、素直に喜ぶのが男というものだろう。
 だが、今は喜べない。
「それでは、出席番号順に自己紹介をして貰います。まずは…。」
 とにかく、30人のクラスの中で男は1人という状況を、何とかしないと。
 いや、考えてみれば、それは無理だ。
 何しろ、IS学園に入学できるのは、ISに適性のある生徒のみ。
 男の俺がいるだけで、奇跡だ。
 奇跡を二度も起こしてくれるほど、神様は甘くない。
「織斑君。」
 隅っこの席ってどうだ?
 いや、場所を移動しても、根本的な解決にはならない。
 没だな。
「織斑君。」
 男だけのクラス。
 要するに、俺だけのクラスを設けてもらえば。
 女尊男碑の社会で、そんな特別扱いは無いだろう。
 これも、没だな。
 と、すると…。

「織斑君!」
 耳元で大きな声を上げられて、俺は対策会議を中止した。
 目の前には、山田先生の顔が近距離に迫っている。
「あ、はい。なんでしょうか?」
「自己紹介。織斑君の番なんです。してくれませんか?駄目ですか?」
 さっきの大きな声が嘘のように、縋るように山田先生が俺に訴えかけてくる。
 プラス他の女子、つまり俺以外の生徒が注目してくる。
 って、あれって。
 ある女子に目がいったが、その女子は、頬を軽く染めてそっぽを向いた。
 なんだ?風邪か。
 早く、治せよ。
 とりあえず、自己紹介はする必要がある。
 クラス替えがあるかどうかは知らないが、1年間はこのクラスで過ごすんだからな。

「織斑一夏です。逗子市立沼間中から来ました。よろしくお願いします。」
 とりあえず、最低限の自己紹介でいいだろう。
 今は考える事が山ほどあって、気のきいた自己紹介なんて不可能だからな。
「あの、それだけですか?」
 駄目なのかよ。
「あ、はあ。」
「あの、もう少し、何かありませんか?趣味とか、好きな食べ物とか。」
「いや、そこまでやる必要は、ないんじゃないかと。」
 というか、やれない。
 今の俺は、この状況でどうするかを考えるだけで、精一杯だ。
「で、でも、皆さん、いろいろ聞きたいようですし…。」
 うっ…。
 そんなに瞳をうるうるさせられては、男として罪の意識を感じずにはいられない。
 けど、先生。
 本当に無理なんです。
 その時だった。
 天罰が下ったのは。

「馬鹿者。新学期早々、副担任を困らせる生徒がいるか。」
 頭を、何かで思いっきりはたかれた。
 しかも、材質は多分金属か、強化セラミック。
 そして、その声は…。
「ち、千冬姉!」
 驚きのあまり叫んだ俺の頭に、今度は拳骨が落ちてきた。
 間違いない。
 この破壊力のある拳骨の使い手は、俺の知る限りは2人。
 その1人が、端末(おそらく教師用だろう)を手にしている、ここにいる俺の姉。
 織斑千冬だ。

「千冬様。千冬様よ!」
「ああ、何て凛々しいの!」
「私、千冬様に会いたくて、北九州から来ました!」
「お姉さまと呼ばせて下さい!」
「私、千冬様の為なら、喜んで死ねます!」

 ISが実用化されてから、ISの運用に関する条約、通称アラスカ条約が締結され、ISの軍事利用は禁止された。
 そして、国家の威信をかけて行われるようになったのが、モンド・グロッソ。
 21の国家と地域から代表が送り込まれて、各種部門で競い合う。
 その第一回大会で、格闘部門で優勝しさらに総合優勝までしたのが、誰であろう、俺の姉である織斑千冬である。
 そんな千冬姉は、女子にとってはあこがれの存在。
 こうなるのも、無理はない。

「はあ、毎年毎年、どうしてこう、馬鹿が集まるんだ?まさか、意図的ではないだろうな。」
 当の千冬姉は、呆れて頭を抱えている。
 教師なんて、やっていたのかよ。

 俺と千冬姉には、両親がいない。
 物心ついた時には、俺の家族は千冬姉だけだった。
 はっきり言えば、俺と千冬姉は両親に捨てられた。
 8歳年上の千冬姉が、学校に通いながら働いて俺を養い、育ててくれた。
 でも、最近は、どんな仕事をしているかは聞いても教えてくれなかった。
 俺が知っているのは、日本の元国家代表だった事くらいだ。
 まさか、こんな所で会うとは、思っていなかった。

「で、自己紹介一つできないのか?お前は。」
 う…。いつもの千冬姉に戻ってる。
 威圧感たっぷりの目つきは、何年経とうともやっぱり怖い。
「だってさ、千冬姉。」
 弁解しようとしたら、俺の顔は机に押しつけられた。
「学校では、織斑先生だ。馬鹿者。」
 千冬姉がIS学園で教師をしている事に驚いたが、こんな暴力教師が先生をやっていられる事に驚いた。
 だから、文科省は体罰を禁止したんだな。納得、納得。
 そりゃ、禁止したくもなるさ。
 でも、なくならない。悲しいねえ。
「教師に対して、無礼な考えを持つな。いいな、織斑。」
 げ、バレた。
 さすがは、俺の唯一人の家族。
 これからは、注意しよう。

「さて、諸君。私が、このクラスの担任を務める織斑千冬だ。私の仕事は、諸君達ヒヨッ子を使い物にする事だ。これから実習に入るが、基本操作は半月で体に染み込ませろ。それを含めた基礎知識は、半年で覚えてもらう。解らない者には、私が解るまで教える。但し、私の指導には絶対服従だ。解ったな?解っても、解っていなくても返事をしろ。」
 うわ、こんな調子で生徒を指導する気かよ?
 よく、こんなんで生徒がついてくるよな。
 それとも、あれか?
 最近は、人の皮をかぶった悪魔が好かれる傾向にあるのか?
 真の恐ろしさを知らないって、不幸だよな。
 なまじ知っても、不幸だけどさ。
 こうして、朝のSHRは終わった。
 とりあえず、ほっと一息…。

「織斑君。かっこいいよね。」
「どんな子が来るかと思ったけど、ハンサムだよね。ラッキー。」
「ねえ。どうする?声掛ける?」
 女子生徒全てが、俺に興味津々。
 視線が、全て針のように刺さってきそうだ。
 1時間目の授業が終わってから、ずっとこうだ。
 誰か助けてくれ。いや、マジで。
 実は助けてくれそうなのがいるんだが、どういうわけだか、頬を染めたままそっぽを向いている。
 ふむ。やっぱり風邪か。
 保健室に行くように言っといた方が、いいな。
 風邪は万病のもとだし。

「ちょっと。そこのあなた、いいかしら?」
 いきなり声を掛けられた。
「俺か?」
「あなた以外に、誰がいるというのですか?まったく、下々の者はこれだから…。」
 縦ロールの金髪の、絵に描いたようなお嬢様。
 おまけに、もろに俺を見下している。
 女尊男碑の世の中になってから、こういう、男を見下す女が、増えた、増えた。
 ただでさえ、女子だらけの学園で難儀してるっていうのに、勘弁してほしいぜ。
「で、何の用だよ?」
「あなた、私に声をかけてもらったのよ。少しは、光栄に思いなさい。」
「だから、何だよ?イギリス代表候補セシリア・オルコットさん。」
 国家代表の候補として、国が選抜するのが国家代表候補。
 俺の目の前にいるのが、その1人だ。
 世間では、エリート中のエリートと見做される。
 それで、こんな高飛車な性格になったのか?
 やれやれ。
「知っているのなら、もっとありがたみを覚えなさい。全く、極東の島国の男はこうなんですの?まあ、いいですわ。私の事を知っているのなら、少しはISの事も知っているようですわね。まあ、所詮は男ですから、たかが知れていますけど。どうしても教えて欲しいのなら、土下座をして頼めば、教えて差し上げない事も無くてよ。」
 男女問わず、俺が一番嫌いなタイプがこういう奴だ。
 俺は女尊男碑の風潮は嫌いだが、男尊女卑も嫌いだ。
 性別で人を見下すなんて、最低の考え方だからな。
 さらに、自分がエリートだからと他人を見下すのは、最低以下としか言いようがない。
 こういう奴とは、お近づきにならないに限る。
「ああ、そうかよ。用がすんだら、とっとと席に戻ったらどうだ?二時間目が始まるぞ。」
 次の授業の用意をしながら、俺はオルコットにそう言う。
 これ以上、話す事は何もない。
 オルコットは何か言おうとしたが、2時間目が始まったので、席に戻った。
 入学早々、ろくな事無いな。
 本当に、やれやれだ。

『はあ、やっと自分の塒につく。今度こそ、落ち着こう…。』
 学園にいる間も、ずっと注目の的。
 寮に帰る時は、後ろにくっついてきて、ほとんど大名行列状態。
 落ち着く暇なんて、ありはしない…。
 そう思って、部屋のカードキーを取りだした時、同じ部屋の前でカードキーを取りだした奴がいた。
「一夏…。」
「箒…。」
 髪を上で結って、江戸時代の武士のように凛とした雰囲気の女子。
 篠ノ之箒。
 俺の幼なじみで、小学校4年生の頃、転校したと聞いている。
 なぜ、俺が直接知らないかは、ちょっとした理由がある。
「お前、何故、この部屋に入ろうとする?」
 箒が俺をにらみつける。
 久方ぶりの再会なのに、なんで睨みつけられるんだ?
 それより、風邪は大丈夫なのか?
「何故って、ここが俺の部屋だからだよ。ほら。」
 箒の質問に答えながら、俺はカードキーを見せる。
 俺のカードキーの番号を見て、自分のカードキーの番号と同じ事を確認した箒は、しばし固まると、いきなり木刀を振り下ろしてきた。
 って、危ねえ!
 振り下ろされる木刀を、右の人差し指と中指で掴み、振り下ろす勢いを利用するようにして、箒の手から木刀を離させる。
「お前、いきなりなんだ?危ないぞ。」
「だ、黙れ!これは、どういう事だ。何故、お前が私と同じ部屋なのだ!?」
 それは、俺が聞きたいくらいだ。
 というより、その竹刀はなんだ?
 殺気すら感じるぞ!
「何、どうしたの?あ、織斑君だ。」
 他の部屋の女子が、騒ぎを聞きつけたのか、部屋から出てくる。
 うわ。なんて、格好だよ。
 物凄くラフな格好だ。
 はっきり言って、下着と変わらないんじゃないのか?
 太ももの付け根付近からは、色とりどりの逆三角形が覗いている。
「え?織斑君て、この部屋なんだ。じゃあ、ご近所さんだね、よろしく。」
「篠ノ之さん。織斑君と、同室なの?いいなあ。」
 俺と同室が、そんなにいいのか?
 というか、男女同室はさすがにまずいだろ?色々と。
「抜け駆けしちゃ、駄目だよ。権利は平等なんだからね。」
「なっ!?」
 女子の1人がそう言うと、箒の顔が真っ赤になる。
 うん?どうした。抜け駆けって、何だ?
 どうにも、女子の会話にはついていけない。
 そう考えていると、箒が今度は竹刀を振りおろしてきた。
 またかよ。
 ボディ・ランゲージか?
 俺は振り下ろされる竹刀を、さっきと同じように箒の手から離させた。

「すごい…。」
「織斑君、強いんだ。」
「篠ノ之さんて、去年の全国大会の優勝者だよ。」
「その篠ノ之さんが、手も足も出ないなんて…。」
「やっぱり、千冬様の弟だからかな。」
 女子が何やら色々と話しているが、まずは、箒を落ち着かせる方が先だ。

「いい加減にしろ!何があったか知らないけど、お前はやたらに剣を振るう奴じゃなかっただろう!?とりあえず、落ち着け!」
 そう言うと、さすがに悪いと思ったのか、箒はしゅんとなる。
 ちょっと、言いすぎたかもしれないけど、とりあえず落ち着いたな。
「とにかく、着替えろよ。俺は、これから体を動かしてくる。久しぶりに会ったんだから、その後、思い出話でもしようぜ。」
 箒にそう言って、俺は胴着と、刀袋に入った刃引きをした日本刀を持って、外に行く。
 とりあえず、時間をおいて箒を落ち着かせないとな。
 俺も、日課の鍛錬があるからだけど。

『私は、なんて事を…。』
 部屋で着替えを済ませた箒は、ベッドに座って後悔していた。
 世界で唯一人ISを動かせる男性として、一夏の事がニュースになった時は、心臓が飛び出るほど驚いた。
 ある事情から、あちこちを転々としながらも、箒は一夏との再会を夢見ていた。
 しかし、いざ同じクラスで机を並べると、どうしても素直になれない。
 話がしたいのに、どうしても話しかけられない。
 挙句の果てには、無闇矢鱈に剣を振るってしまった。
 もし、一夏でなければ、相手が大怪我をしていた可能性も十分にあった。
『それに、一夏は…。』
 幼なじみとして2人は小学4年生までを同じ土地で過ごしたが、箒は転校。
その際、ある事情で一夏には別れを告げられなかった。
だからこそ、箒はずっと一夏に会いたがっていた。
『それにしても、私の剣をいとも簡単に…。』
 指二本で箒の剣を防ぎ、あまつさえ、剣を離させた一夏の実力は、箒の予想を遥かに超えていた。
 その様は、まるでじゃれてきた子猫をあしらうかのようだった。
「一夏…。」
 きちんと謝ろう。
 箒は、そう心に決めた。

「あ。山田先生。」
 鍛錬が終わってから部屋に戻ると、山田先生がいた。
「あ。織斑君。すいません、こちらの不首尾でこういう事になってしまって。」
 ああ。こういう事になったのは、理由があったか。
 ま、理由がなくて、こうなられちゃ堪らんしな。
 箒は大丈夫っぽいが…。
「あの。すいません。シャワー使っていいですか?さすがに部活棟のシャワーを使うわけにもいかなくって。」
 何しろ、俺以外は全員女子。
 部活棟のシャワーに、男子用なんてあるわけもない。
 だから、ここのシャワーしか使えない。
 教員用も同じ理由で、駄目。
 第一、教員用を使おうものなら、間違いなく千冬姉に殺される。
「あ、はい。じゃあ、話はシャワーの後で。」
「助かります。」
 さて、やっと汗が流せる。

「と、いう訳で、男子がIS学園に入学するというのは、あまりにイレギュラーなケースなので、こちらで部屋の都合がつかなかったんです。篠ノ之さんと織斑君には大変申し訳ないと思ったのですが、織斑先生から、2人は幼なじみだからある程度の期間なら大丈夫だろうと言われまして、同室になってもらいました。」
 犯人はヤス。じゃなくて、千冬姉だったか。
 そりゃ、幼なじみだし、昔は一緒に風呂に入った事もあったけど、今は違うんだぜ。
 勘弁してくれよ。
「で、どれくらいすれば、双方の部屋の都合がつくんですか?」
 とりあえず、聞いておこう。
 まさか、1年という事はないよな。
「そうですね。2か月くらいすれば、大丈夫だと思います。後、シャワーやお風呂の都合もつけないと、織斑君も大変ですしね。」
 そりゃそうだ。日本人として、風呂が使えないのは、勘弁してもらいたい。
 風呂の都合がつくまでは、シャワーを使うしかないな。
 西洋式のバスタブもあるから、まあ、大丈夫だろう。
「解りました。よろしくおねがいします。」
「こちらこそ、すいません。じゃあ。」
 山田先生が、部屋を出て行こうとすると、思い出したように振り向く。
「あ。大切な事を忘れてました。届け物は、明日だそうです。」
「はい。解りました。」
 明日か。
 あれが届くのは。

「一夏、届け物とは何だ?」
「ああ。悪い、明日にならないと話せないんだ。まあ、色々あってさ。」
 世界で唯一人ISを使える男ということもあり、俺に関する事は色々と面倒な事になっている。
 現に、ISの取引や条約の遵守状況を監視する国際IS委員会では、俺がどの国の所属になるかで、揉めに揉めているらしい。
 多分、俺の生体データを独り占めしたいからだな。
 たく、俺はモルモットじゃねえって。
「箒。もう、大丈夫か?」
 ばつが悪そうにしている箒に、声をかける。
「あ、ああ。済まなかった。いきなり剣を振るったりして、本当に申し訳ない。」
 箒が、深々と頭を下げる。
「もう、いいって。お前は、同じ間違えはしないだろ。反省してるみたいだから、いいさ。」
「そ、そうか。」
 箒が、ほっとしたような表情になる。
 昔から、ちょっとむきになりすぎたり、かっとなる所はあるが、同じ間違いだけはしないのが箒のいい所だ。
 だから、さっきの事は、水に流す事にした。
「とりあえず。ルールを決めようぜ。2か月とはいえ、男女が同じ部屋で暮らすんだから、決めといた方がいいだろう。」
 その日、俺たちはこの部屋のルールを決めた。
「一夏。」
「ん?何だ。」
 ベッドに入ろうとした時、箒が、心配そうに俺を見る。
「大丈夫なのか?その、私は、途中で転校してしまったから…。」
「大丈夫だ。心配するなって。」
 箒は俺に関する、ある事を知っている。
 その事を、心配したんだろう。
 実際大丈夫だし、心配させたくも無かったからそう答えて、俺はベッドに入る。
 明日からは、平穏な1日でありますように。

「織斑君。おはよう。」
「あ、おはよう。」
 食堂で朝飯を食べていると、同じフロアの部屋のクラスメイト3人がトレイを持って近づいてきた。
「隣、いい?」
「ああ。いいぜ。」
 俺の答えを聞くと、クラスメイトがガッツポーズをする。
 そんなに、嬉しいか?
 周囲は、何やら話している。
 頼むから、飯ぐらい静かに食わせてくれよ…。
「一夏、私は先に行っているぞ。」
「ああ。」
 先に食べ終わった箒が、トレイを下げに行く。
「織斑君。いっぱい、食べるね。やっぱり、男の子だからか。」
 そうか?
 ちなみに、俺の朝飯は、アジの開きに、納豆と生卵、浅漬けだ。
「ていうか。そんな少しで大丈夫か?」
 一方、クラスメイト達の食事は、パンとミニサラダ、コーヒーだ。
 朝、しっかり食べておかないと、エンジンがかからないぞ。
 朝食っていうのは、体っていう車のエンジンを回す為に重要だからな。
「え。あ、まあ。」
「お菓子、いっぱい、食べてるから。」
 おいおい、間食の食べ過ぎはよくないぞ。
 ほどほどにしておいて、きちんと食事を取れよ。
「そういえば、織斑君て、篠ノ之さんと知り合いなの?」
「ん?ああ、幼なじみだよ。途中で、箒が引っ越したけどな。」
 箒とは、昔からの付き合いだ。
 俺と千冬姉は、剣道の師範をしている箒の親父さんの下で、剣を学んでいた。
 今、思えば、懐かしいぜ。
 その後、箒は転校して、昨日、久方ぶりに再会した。
「じゃあ、付き合ってないんだ。」
 は?何でそうなるんだよ。
 幼なじみだからって、つきあってるわけじゃないって。
 漫画やラノベじゃあるまいし。
「付き合ってないって。」
 そう答えると、嬉しそうにする。
 俺と箒がつきあってないと、そんなに嬉しいのか?
 どうも、女子の思考はよく解らん。

「それでは、今日のショートルームはクラス代表を決める。選ばれた者は、学年ごとや生徒会の会議に出席してもらい、また、クラス対抗戦にも出場することになる。誰かやる者はいないか?いなければ、他薦でも、構わんぞ。尚、他薦された者には、拒否権はない。選ばれた者は、腹をくくれ。」
 拒否権がないのは、あんまりじゃないか?千冬姉。
 俺は、そういうのに興味がないから、他の奴に任せよう。
 誰かと競うのは、興味がないしな。
 俺には、自分にやるべきと課した事がある。
「はい。織斑君を推薦します。」
 て、おい。
 俺かよ?
 常識的に考えて、ISに関する勉強を前からしている女子がやるのが、普通だろう。
「そうだよね。世界で唯一人ISを動かせる男子がいるんだから、盛りたてないとね。」
 何で、そういう理屈になるんだ?
 訳が解らん。
「それに、剣道の全国大会で優勝した篠ノ之さんを、軽くあしらっちゃうんだから。」
 それと、ISと何の関係があるんだよ。
 そりゃ、ISの操縦者には武道や格闘技をやっている人間は、沢山いるけどさ。
「じゃ、そういう事で。」
 何がだよ。
「他にいないなら、織斑がクラス代表という事になるが、自薦はいないのか?」
「納得できませんわ!!」
 千冬姉が言った直後に、大声が響いた。
 やっぱり、こいつが出てきたか。

 冗談ではない。
 男がクラス代表?
 ISを使えるだけでも、分不相応だというのに。
 クラス代表。
 実力だって、あるかどうか解らないのに、のりで決められて堪るものか。
 そんなこと認めない。
 私が、なるべきだ。
 私だけが、セシリア・オルコットだけがふさわしい。

「男がクラス代表だなんて、恥さらし以外の何物でもありませんわ。ここは、私、イギリス代表候補セシリア・オルコットがなるべきです。唯でさえ、極東の島国という文化的レベルの低い土地に来ているだけでも屈辱ですのに、男がクラス代表?冗談ではありませんわ!!」
 そこまで言うかよ…。
 さすがに、黙っていられないな。

「随分、言ってくれるじゃないか。極東の島国?イギリスだって、立派な島国だろう。第一、文化に高いも低いもねえよ。随分、上から目線だな。じゃあ、一つだけ聞くけどな。その極東の島国で開発された兵器の専門技術を学ぶ為に来ているのは、どこの誰だよ?イギリス代表候補。」
 普段なら、ここまで腹立たしくなる事も無い。
 だが、オルコットの言い方は、十二分に俺を腹立たしくさせてくれた。
「言ってくれましたわね。男の分際で!!」
「そんなに男が嫌いか?男なんか、この世に必要無いのかよ?」
「必要ありませんわね!男なんて、私たち女性の奴隷で十分ですわよ。」
 虎の尾を、踏んでくれたな。
 ま、こういう奴は、今の世の中多い。
 男と女で戦争が始まろうものなら、男陣営なんてなす術も無く全滅だからな。
 何しろ、女は潜在的に全員ISを動かせるわけだ。
 世間の風潮では、男を働きアリに見立てる奴もいる。
「織斑先生、他薦の俺の他に、自薦がいる場合はどうしますか?俺は、自薦の方を優先すべきだと思います。積極的で、いいじゃないですか?奴隷と呼ばれてまで、クラス代表をやるほど俺は悪趣味じゃありませんから。」
 そう言って、俺は座った。
 古代ギリシャでも、奴隷は戦いに出なかったっていうしな。
 お偉い、女性にやってもらうさ。
 興味も、無かったしな。
「ちょっと、織斑君。私達は、そんなふうに織斑君の事思ってないって。」
「そうだよ。思ってたら、推薦しないよ。」
 クラスメイトが俺に話しかけてくるが、耳を貸すつもりはない。
「セシリア、謝りなさいよ。いくらなんでも、言い過ぎだわ。」
「私もそう思う。」
 クラスメイトの批判の矛先が、オルコットに向かい始める。
「オルコットさん。私も、さっきの貴方の言い方は度が過ぎていると思います。謝らない場合は、人間的な資質が足りないと考えて、副担任の権限で織斑君にクラス代表をしてもらいます。」
 山田先生まで、オルコットに謝るように言う。
 言ってくれるのは嬉しいですけど、謝らないと思いますよ。
 自分が、絶対的に正しいと思っているみたいですから。

「決闘ですわ!!」
 は?何で、そうなるんだよ。
 逆ギレか?
「ほう。」
 黙っていた千冬姉が、オルコットの方を見る。
 どうやら、オルコットの男嫌いの理由も知っているらしい。
 その上で、こうなる事を予測していたみたいだ。
 やれやれ。
「勝った方が、クラス代表になる。いかがかしら、織斑一夏?」
 引きそうにないな。
「クラス代表云々はともかく、決闘は受ける。正直、自分の生まれた国まで馬鹿にされて、黙っているほどお人よしじゃないからな。但し、俺が勝っても、クラス代表にはならない。さっきも言ったが、奴隷呼ばわりされてまで、クラス代表をやる気はないからな。俺はそこまで、プライド無いわけじゃない。」
 向こうが引く気はないように、俺も引く気はない。
 女尊男碑の社会であろうとも、俺にも男としての意地がある。

「よし。では、こうする。オルコットが勝利した場合は、オルコットがクラス代表に。織斑が勝った場合には、2人の和解を条件として、織斑がクラス代表になる。昨日言ったが、私には絶対服従だ。いいな。日時は、本日放課後。」
 届いた後か、ちょうどいいな。
「でも、織斑先生。専用機持ちのオルコットさんはともかく、織斑君は使えるISが。訓練機も、空きがありませんし。」
 山田先生が、千冬姉に話しかける。
「それは、心配ない。ちょうど今日、織斑の専用機が届けられると、束から政府に連絡が来ている。山田先生にも、昨日、政府から知らせが来ているはずだが。」
「あのメッセージって、そう言う事だったんですか?」
 納得した山田先生は、何か気づいたように、千冬姉を見る。
「あの、束って…、ひょっとして、篠ノ之束博士ですか?」
「そうだ。あれとは、昔からの付き合いでな。入学祝に、織斑に専用機を届けると知らせが来ていた。」
 千冬姉の答えを聞いて、クラスの全員が唖然となる。
 篠ノ之束。
 10年前、ISを独力で開発した天才科学者。
 そして、ISの心臓部であるコアを作ることのできる唯一人の人物。現在は行方不明。
 だから、現在、世界のISは総数467。
 その中でも、専用機持ちは国家代表もしくは候補、企業と契約しているテストパイロットが普通だ。
 その為に、専用機を持つISパイロットは、エリート中のエリートと言われる。
「織斑も、国際IS委員会の審議の結果待ちの間は、特殊なケースとはいえ、代表候補と同様の待遇の身。事実、この半年間は習志野のIS基地で、訓練を受けていた。大丈夫だ、織斑。政府からも、これ位は言っていいという許可を得ている。」
 なら、いいけどさ。
 訓練の事に関しては、政府の極秘事項だから、冷や冷やしたぜ。
 他にも、俺の事に関しては極秘事項扱いの事がある。
 面倒だよなあ。

「じゃあ、織斑君て、実力も代表候補クラスなんだ。」
「道理で、強いわけだ。」
「ちょっと待って、ひょっとして、篠ノ之さんて…。」
 ある事に気づいたクラスメイトの言葉に、箒は表情を硬くする。
「そうだ。束は篠ノ之の実の姉だ。」
 うわ。千冬姉、言う事無いだろう。
 ほら、箒がさらに表情硬くしてるぞ。
「とにかく、決闘は、今日の放課後。2人とも異存は無いな。」
「勿論ですわ。」
「それで構いません。」
 こうして、俺とオルコットの決闘が決まった。
 俺に、平穏な学園生活は来ないのか?

後書き
久方ぶりの二次小説です。
今年の春に放映された、インフィニット・ストラトスを素材にしてみました。
本屋で見かける事は結構ありましたが、こうしてアニメで見てみると中々面白いので、書いてみようと思い、前から少しずつ書いていました。
主な変更点は、やはり、一夏です。
思い切って、武術の達人にしてみました。
原作と同じままだと、ちょっと書きづらかったので。
さて、原作通り、セシリアと決闘です。
どうなりますかな?

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