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zoom RSS コードギアス二次小説 LAST TURN 選 択

<<   作成日時 : 2010/10/06 21:02   >>

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「あなた?」
 ふと目覚めたナナリーは、自分の横に眠っているはずのスザクがいない事に
気づく。
 既に公務を終えて、寝ている時間だ。
「あなた?どこにいらっしゃるんですか。」
 侍女を呼ぶ時間が惜しくて、自分の力で車椅子に移り外に出る。
 そこにいたのは、C.C.だった。

「どうした?こんな夜遅くに。」
「C.C.さんこそ、どうなさったんですか?」
 カトリーヌ・クープランとして軍に所属しているC.C.は、ナナリーと2人きりに
なると、嘗てのようにC.C.と呼ばれている。
「月を見たくなってな…。」
 つい最近まで、目が見えなかったナナリーは、人より感覚が鋭敏である。
 C.C.の言葉に、どこか偽りを感じていた。
「知っているんでしょう?教えてください。」
「何の事だ?」
 はぐらかそうとするC.C.を、ナナリーは見つめ続ける。
「解った。案内する。詳しい話もする。」
 折れたC.C.が、ナナリーを案内する。
『まったく。ルルーシュといい、ナナリーといい。本当に頑固だな。お前の血を
引いているのが頷けるよ。マリアンヌ。』

「どうにも、言っている事が理解できません。ワイアードの一族である事は、C.
C.から聞いていました。しかし、剣の一族とはどういう意味ですか?義父上。」
「ほう、それを知らぬのか…。では、何故ここに来た?」
 尋ねるシャルルに、スザクはシュナイゼルからの通信文を突きつける。
「確認の為です。もし本当なら、捨て置けません。」
 シュナイゼルからの通信文の内容は、シャルルの生存の可能性とシャルルの
行動の阻止を求めるものだった。
「成る程、確認か。シュナイゼルめ、敗れ去って死んだにしてはやってくれる。
手に入れられなかったとしても、お前に望みを託したか。あれがそこまで、お前
に執着するとは意外だったな。」
 シャルルは、どこか感心するように呟いた。
「シュナイゼルはどこまでもリアリスト。対して、スザクは理想主義者。普通な
ら、シュナイゼルがスザクに執着するとは考えにくいね。駒にするなら納得もい
くけど。まあ、どこまでも不器用に理想を追い求めるスザクが眩しく見えて、欲
しくなったのかな?あるいは、意外に理想を持っていたのかもしれないよ。」
 V.V.がクスクスと笑いながら、シャルルに話す。
「貴方方の論評を聞きに来たのではない。答えていただこう。シュナイゼルの
通信文に記されている事は、正しいのか、正しくないのか?」
 スザクが強い調子で訊く。
「人の世の方法でないやり方を用いるは、確か。しかし…。」
「しかし?」
「それは、人の及ばぬ業による人の世に対する介入を無くす為。後の世はふさ
わしき者が治めればよい。」
 シャルルが今まで掲げてきた国是。
 パックス・ブリタニカを自ら否定するように、言い放った。
「ブリタニアによる世界の統治では、ないのですね?そこまで、C.C.の死に
固執する理由が理解できない。それによるリスク、どうなさるおつもりか?」
「ほう。C.C.の言葉を鵜呑みにするか?」
「それも確かめる為に、私はここに来ました。もし、C.C.が言った事が事実な
ら…。」
「事実なら、どうする?スザクよ。」
 スザクを試すかのように、シャルルが尋ねる。
「斬る!」
 スザクは、腰の剣を抜き放つ。

「それでは、夫は…。」
「ああ。今頃、シャルルの元にいるだろう。全ての決着をつける為に。」
 C.C.は嘗て神根島での話の内容を聞かせながら、謁見の間に向かってい
た。
「夫は死ぬのですか…?」
「それは私にも解らん。」
 実際にC.C.には、スザクが生きるか死ぬか本当に判らなかった。
「あなた…。」
 そう呟いたナナリーは、下腹部にそっと手を当てた。

「ほう。斬るか。再び父を手に掛けるか?それが、お前の選択か。」
「世に混乱を巻き起こすのならば、放って置くわけには行かない。私はそれを
断ち切る。この命に掛けて。それが、私の選択だ。」
 剣を持ったまま、スザクはシャルルに近づく。
「C.C.を放置しておいて、混乱を断ち切るも何もないだろう。結局は、混乱は
起きるよ。君のやる事は無駄なんじゃないかな?」
 V.V.がやれやれと言いたそうな表情で、スザクに尋ねる。
「それは問題ない。C.C.は間もなく来るだろう。」
「己が願いを、叶えるためにな。」
 スザクの声に、ある人物の声が重なる。
「来たか。我が愚息、ルルーシュよ。」
 黒髪にアメジストの瞳。
 端正でそれでいて、強い意志を感じさせる表情。
 嘗ての神聖ブリタニア帝国の皇子、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
 スザクに殺されたルルーシュが、確かにそこに居た。

「お前は、ここで待っていろ。ここからは、私達の問題だ。」
 謁見の間に入ったC.C.は、ナナリーを置いて先に進む。
「いえ。私も行きます。」
 ついていこうとするナナリーを見て、C.C.は首を横に振りながらナナリーの
下腹部に優しく手を置く。
「無茶をするな。もう、お前だけの体ではないのだろう?さっき解ったよ。一応、
私は女だからな。お前の兄や夫のような朴念仁よりも、早く理解できる。」
 そう言って、C.C.は先に進む。

「ルルーシュ…。何故、君がここにいる?いくら君がブリタニアの元皇子でも、
関わりのない事だ。部外者が首を突っ込むのはやめろ。」
「もう俺は部外者か。いや、違うな。お前は自分の手で、決着を着けるつもりな
のだろう?贖罪の為に…。」
「何の事だ…?」
 そう言うも、スザクはわずかに視線を反らした。
「相変わらず、嘘をつくのは上手くないな。昔だったら、上手くやっただろうが、
今のお前では無理な話だな。」
 後から現れたのはC.C.だった。
「いずれにせよ、ルルーシュ。お前の計算どおりになったな。いや、お前の信
じた通りというべきか。」
「ほう。お前まで来たか…。C.C.。」
 シャルルが、僅かに意外そうな表情になる。

「そもそも、事の発端は私だ。知らぬ存ぜぬを、決め込みはしないさ。」
「確かに、発端は君だね。Cの世界で大人しくしてくれれば、世の中はこうはな
っていなかったと思うよ。僕も数百年もの間、君を殺す為の同志を探し続ける事
もなかった。まあ、君がここに来てくれたおかげで、ようやく終わるけどね。」
 V.V.が肩を竦める。
「全て終わるさ。その為に、スザクがここにいる。それが、剣を司る枢木の当主
としての役目。何しろ、スザクにしか出来ぬ事だからな。だからこそ、お前はス
ザクが権力の階を昇るのを、容認していたのだろう?ブリタニアの国法など、所
詮は口実に利用したに過ぎないのだからな。」
「まあ、君になら、ばれて当然だね。国法もパックス・ブリタニカも、とどのつまり
は、遺跡を手に入れるため。そして、このアーカーシャの剣を使って目的を達成
する為の口実だからね。」
『そういう事か…。』
 C.C.とV.V.の会話を聞いて、スザクは概要を把握した。

 如何なる時代であろうとも、戦争をするには大義名分の類が必要不可欠であ
る。
 それにより、敵を作り、国民に見せつけ君主の求心力を高めて、戦いで勝利
をもぎ取る。
 いかなる政治体制であろうとも、上に立つ者の求心力が低い国が、戦争に勝
つ事は殆ど無い。
 国民にブリタニア人の優越性を叩き込み、自分達が中心となって世界を治め
る、パックス・ブリタニカという大義名分を掲げて他国との戦争を繰り返し、領土
を拡張してきた。
 シャルルは各国の遺跡を手に入れるにあたり、古典的だが確実な方法を用い
たのである。

「有効な手である事は認めよう。俺とて、黒の騎士団を結成するにあたりブリタ
ニアという明確な敵を与えた。今までブリタニア人への憎悪だけで、国からすれ
ば嫌がらせ程度の事しかできなかった日本のレジスタンスは、それまでとは別
の組織へと生まれ変わった。」
 ルルーシュも扇達を中心に黒の騎士団を結成するにあたり、シャルルとほぼ
同様の手法を用いていた。

「まさか、お前まで、儂と同じような手口を、使うとはな。皇位継承権を剥奪して
も、やはり血の繋がった親子ということか…。」
「そうだね。君の多くの子供の中でもルルーシュは最も君の血を濃く引いてい
るよ。唯1人、ギアスの素養を引いていたのは、ひょっとしたら運命かもね。」
 シャルルとV.V.の会話を聞く、ルーシュは、怒りのあまり目を見開いた。
「親だと!?子だと!?俺とナナリーを捨て、母さんの思いを知っていて尚、計
画を実行に移したお前が、言えた言葉か!?俺はお前の子だった頃は、全て
捨て去った!!もはや、お前は倒すべき対象でしかない!!」
 激昂し、一歩足を踏み出したルルーシュを、スザクが制する。

「義父上、C.C.を殺した後に起こる事は、真実ですか?」
「今更、偽りを申す必要も、無いか…。真実だとも。」
 スザクの問いに、シャルルは静かに答えた。
「それで尚、C.C.を殺す事にこだわる理由とは、何ですか?今まで見てきた
貴方からは、随分考えづらい。」
「多分、君には理解できないと、思うよ。盾の一族として世を見守り続けてきた、
ブリタニア家にとっては、C.C.は殺すべき対象でしかない。その後の事なん
て、薬の副作用みたいにしか感じないね。」
「盾の一族?C.C.が僕を剣の一族と言ったのと、何か関係があるのか?」
 V.V.の答えの意味が解らず、朱雀は再度訊ねる。
「やれやれ。本当に、忘れ去っているんだね。まあ、長の力を持つ者が現れた
のは、ひどく久しぶりだから、やむを得ないけどね。シャルル、説明してあげな
よ。君の、義理の息子に。」

「各地の遺跡については、C.C.から聞いているな?」
「ええ、遠い昔に存在した、宗教の跡とか。」
 シャルルは、まず遺跡について知っているかを問う。
「遺跡を残した宗教において、特別な役割を持つ一族が2つあった。盾の役割
を持つ後のブリタニア家。剣の役割を持つ後の枢木家。盾は守護を。剣は敵を
討つ事を司る。そして、神器アーカーシャの剣。ようやく揃った。朽ちたアー
カーシャの剣を再現するには手間取ったがな。何より、スザク。剣の一族の長
よ。お前を手に入れることが出来た。これで計画は万全の物となる。ラグナロ
クの接続が始まるぞ。」

「一つ聞きたい。」
「何だい?まあ、事が成就する半歩手前だから、答えてあげなよ。シャルル。」
「して、何を聞きたいのだ?」
 シャルルを見据えて、スザクが訊ねる。
「ルルーシュとナナリーを、日本に送った理由。僕以外に何か目的があったよ
うに思える。」
「理由はなんだ?」
「僕が目的にしては、あきらめがよすぎる。何故、ルルーシュ達がアッシュフ
ォード家に引き取られるのを黙認したのですか?あなたなら、アッシュフォー
ド家の動きも思惑も解っていたはずだ。」
 スザクは、C.C.の方を振り返る。
「君は知っていそうだね。子どもの頃の僕たちを、見守っていたのだから。」
「ああ、知っているとも。おそらく、それこそがシャルルの真の目的。」
「C.C.。それは、何だ?」
 ルルーシュがC.C.に聞く。
「ルルーシュとナナリーに、強さを身につけさせるためだ。そうだろう?シャ
ルル。」
 予想もしていなかったC.C.の言葉に、ルルーシュはしばらく茫然として
いたが、やがて鋭い視線をシャルルに向ける。

「ほう。それほど、怒るか…?お前は弱いままでよかったと、言うか?」
「ふざけるな!!敵地も同然の日本に俺とナナリーを向かわせる事を、正当化
させる為の、詭弁だろう!!親の務めを放棄した、お前が何を言う!!まして、
ナナリーは目も見えず、歩くことすらできなかったんだぞ!」
 常人ならば顔が青ざめていただろう勢いで、ルルーシュは、シャルルを糾弾
する。

「ルルーシュが怒っている事。私も理由を聞きたい。何故、日本に送り込む事
が、強さを得ることにつながるのですか?本国であろうとも、それは不可能で
はなかったはず。」
「ぬるま湯につかって、人は強くなれるか?他人に守られたまま身につけたの
が、真の強さか?真の強さとはな、過酷な環境を生き抜いてこそ身につくもの。
日本最後の首相のただ一人の忘れ形見であったにもかかわらず、あえて過酷
な道を選び、歩んできたお前ならば解ると思うが。違うか?スザクよ。」
 スザクの問いにシャルルは答えたが、それを聞いてルルーシュは、更に激昂
した。
「ふざけるな!!では、ナナリーの事は、どう答える?目も見えず、歩くこと
すら適わなかったナナリーも、人質同然の身で日本に送った理由になると、言
うのか!?」
「いつまでも、守られる事を、ナナリーが望むとでも思ったか?自分でしたい事
も出来ずにただ何かをしてもらう、そうせざるをえなかった、ナナリーの気持ち
を、お前は考えもしなかったのか?食事の世話をしてもらい、汚れた自らの体
や、身につけている物を、洗ってもらう事に耐えていたナナリーの気持ちを。何
故、閉じたままだったナナリーの目が、開いたと思う?前に進みだしたからで、
あろう?自ら戦場を目にしようと、戦の光景を目と心に焼きつけようと、その上
で責務を果たそうとしたからこそ、己が心が、閉ざした目を開く事が出来た。違
うか?」
 シャルルの言葉に、ルルーシュは反論できなかった。
 体の不自由なナナリーを、ルルーシュはほとんど誰に頼る事も無く、守り続
けてきたのは、誰であろうルルーシュだが、当のナナリーの気持ちを、考えて
いなかったのは、事実だからだ。
 マリアンヌが暗殺された時に、脊髄損傷で下半身不随となったが、目が見え
なくなった理由は心因性と判断された。
 つまり、ナナリーの目から光を奪ったのは、他ならぬナナリー自身であった。
 治療にあたった医師は、ナナリーが光を取り戻すには、ナナリーの無意識が
目を開かせない限り、どうしようもないと診断した。
 スザクも感情ではルルーシュに賛同したが、理性はシャルルの言葉を理解し
ていた。

「さて、私はまだ聞きたい事がある。アーカーシャの剣を使う、貴方個人の理由
だ。」
 怒りに震えるルルーシュを落ち着かせて、スザクはシャルルに訊く。
「何故だと思う?」
 シャルルは答えずに、スザクに考えるよう促す。
「貴方のギアスが、何らかの関係があるようですね。おそらく貴方のギアスは、
他人の認識、もしくは記憶の改竄。違いますか?貴方は、ブリタニアの皇帝の
地位に関係なく、世界を変えたがっている。私はそう考えます。」
 しばらく考えてから、スザクは結論を言った。
「ほう。見抜いたか?さすがに、ユーフェミアとナナリーが愛し、コーネリアが見
込み、シュナイゼルが欲した男よ。」
 シャルルの両目に、ギアスの刻印が現れた。
「君の考えは正解。シャルルのギアスは記憶を改竄するギアス。これで、シュ
ナイゼル達を欺いたんだよ。」
 V.V.が小さく拍手しながら、スザクに説明する。

「儂は幼いころに両親を失った。母は儂を生んですぐに病死。儂が10歳の頃
に父もやはり病死。そして、儂の周りは儂の命を狙う者ばかりだった。兄や姉
達は全て殺され、先帝である父の実子は儂だけ。ギアスを持つ者もおったが、
持て余して、身を守れなかった。残った親戚筋の者達は、儂を亡き者にして、
帝位を得ようとした。その時、儂のギアスが目覚めた。何故だと思う?」
「そうか。お前の両親も殺されたのだな?殺されかけたお前は、その時に真相
を知った。そして、頃合いと見たV.V.が、お前のギアスが目覚めさせた。」
「敗れた身なれど、そこそこに、知恵はあるようだな。そうだ。そして窮地を逃れ
た儂は、世界を変えようと決意した。」
 真相を理解したルルーシュに、シャルルはそう答えた。
「貴方が世界を変えた後、この世はどうなるのですか?C.C.を殺した後の世
界は多くの人々に、多大な試練を課す。それが貴方の望みか?」
「その試練に打ち勝ち、己にとって大切な全てを守れる者が、頂点に立つ世界。
そうでなければ、悲劇は減らぬ。」
「どんなに綺麗事を並べても、結局は強さがなければ、守ることなんてできない
んだよ。それが世界の有様だからね。ルルーシュ。君の強さは、スザクに及ば
なかった。故にナナリーを守りきることができずに、僕に連れ去られるはめにな
り、自分すら守れなかった。シャルルは、結構、君に期待していたんだよ。だか
ら、あえて過酷な試練を、与えたんだ。気づいていないだろうけどね。」
 スザクの問いにシャルルは答え、V.V.はルルーシュにそう話した。

「義父上。貴方のやり方では、世界が変わっても悲劇は減るどころか、逆に増
えるだけだ。」
 スザクが一歩前に出る。
「何故、そう思う。」
「貴方の言う事に一理あるのは認める。大事な物を守りたくても、守れる強さが
なければ守れない。けれども、貴方が変えた後の世界は、結局、今までと変り
がない。力があるが故に、支配者が頂点に立つ世界という点では、今までと変
わらない。貴方にとっては力無き者は弱いからというだけで支配されるのが、当
然の世界では、ありませんか?結局は変わらぬ弱肉強食の世界。見え方が変
わるだけで、本質的には、何の変りもない」
「何も守れぬ者は、他に生きる道はなかろう?だが、それを生きると言うのか?
それは、生かされているにすぎぬ。人は生かされるのではなく、自らの足で立
ち、生きていくが、本来の姿と思うがな。それがかなわぬとあらば、誰かの庇
護の下で、生きる以外にあるまい?支配される事を対価とし、守られる資格を
得る。」
 スザクの反論に、シャルルが応える。
「力を持ち、守れる強さを持つ者が生きていると考えているようですね。なら
ば、貴方も生かされていると言わないまでも、生きているとは言えない。」
「へえ。その理由は、何だい?」
 V.V.が興味深そうに、スザクに訊く。
「貴方達は、誰を、何を守ってきた?国と思いますか。指揮官として兵を率いて
戦っていく中で、私は悟った。真に国を守り続けて来たのは、末端の兵士達。
中には、貴方がたの論理では、弱者と言える者もいたかもしれない。でも、そん
な彼らこそが、国を守ってきた。貴方達が生かされていると定義した者たちこそ
が、本当に生きていると言える。上にいる者たちこそ、彼らによって生かされて
いるのです。貴方達も、そして私も。それが理由です。何より…。」
「何より?」
「貴方達は、守りたいと思う者もいないままに、世界を変えようとしている。
守るべき者がない貴方がたが世界を変えることなどできない。」
「ふうん。じゃあ、聞くけど。スザク。君は誰を守りたいんだい?」
 V.V.がやや鋭い目つきで、スザクに訊く。
「妻のナナリー、今まで肩を並べて戦ってきた戦友達。私達を信じて、従ってき
た兵士達とその家族。そして、幼いころから胸に秘めていた誓い。この世界を、
変える誓いだ。」
「して、お前はどのように、世界を変える?」
 シャルルが訊ねる。
「弱い事が罪でない世界。たとえその時は弱くとも、周囲の差し伸べた手と自
らの力で、立ち上がり強く生きていける世界。強者が弱者を踏みにじる事の無
き世界。それが私の答えだ。」
「おやおや。綺麗事と妄想の、カクテルだね。弱さが罪でない世界?弱さは罪
だよ。特に王族はね。強さがなければ、国も民も自分の家族も守れないよ。事
実、ブリタニアはその証拠とも言えるし。だからこそ、シャルルはルルーシュ達
に強さを身に着けさせようとしたんだから。」
 V.V.が馬鹿馬鹿しいと言いたげな表情で、肩をすくめる。
「必ずしもそうとは言えない。強さに負けた人間こそが弱い。力の誘惑に負けた
人間は、他人を踏みにじる。歴史はその例を数え切れないほど示している。本
当に弱いというのは、貴方達の言う事とは違う。力の誘惑に負けずに前に進め
る人間が本当に強い。私はそう思う。それに、貴方がたの言う弱者でも、手を取
り合う事が出来れば互いに助け合い、守りあう事が出来る。それが、今の世界。
この現状を維持し続ける事が出来るか。という問題は残る。それでも、私はそれ
が可能だと信じている。」

「その点に関しては、いつまで議論を続けようと意味があるまい。儂とお前、先
に見ようとしている世界に違いがあり過ぎる故な。さて、長話はこれで終わりに
するとしよう。始めるぞ。ラグナロクの接続を。」
 シャルルがコンソールに手をかざす。
『何だ?この感覚は。』
 スザクの頭の中に、様々な光景が飛び込んでくる。
『記憶なのか?誰の…。』
「間もなく、この馬鹿馬鹿しい歴史に、終止符が打たれる。最後に教えてあげ
るよ。ブリタニア皇帝は盾の一族の長であると同時に、弟のアルウィンがこの
目的の為だけに作り上げた地位。その後、誰も実行しようとしなかったけどね。
ようやく、その時が来た。僕はそれを見届けさせてもらおう。」
 V.V.の言葉を聞いたルルーシュが、小さく笑う。
「いいや。そんな時は、永久に来ない。」
 V.V.の視線の先には、普段の自分を取り戻したルルーシュがいた。

「ほう?何故、そう言える。」
「俺は既に死んだ身。肉体は滅び、精神のみでCの世界に存在する。故に、お
前達より、理解している事がある。故に、俺は断言できる。お前達の望む、世
界の変革は無いと。」
 シャルルの問いに、ルルーシュはそう答える。
「己に、そしてギアスに負け、儂をこれ以上ないほど呆れさせた者に、何が解
ると、言える?」
 ルルーシュがギアスを暴走させた事を感じた時、シャルルの心中は失望、呆
れ、その他諸々の感情が吹き荒れた。しかし、怒りをぶちまけることなく、ひ
たすら、笑い続けていた。
「望まぬ者たちがいる。まずは、Cの世界の意識。ここは隔ての無い無意識の
世界、互いの本当の心が解る世界。故に俺は悟った。お前達の変革を、無意
識達は望まないと。」
「そんな事は問題にもならぬ。その為の、アーカーシャの剣。Cの世界の無意
識が、いかに抗おうと、無駄な事。」
 シャルルは、ルルーシュの言葉を、鼻で笑った。
「さらにもう一人、剣の一族たるスザクだ。」
 Cの世界に異変が生じた。

 Cの世界の無意識達が、共鳴を始めていた。
「ば、馬鹿な。何故、このような事が…。」
「一体、何が…。スザクか…。」
 シャルルとV.V.は、ホログラフィック映像のような姿になりつつあった。
「条件は全てクリアされた。スザクがお前達の駒のままでいると、本気で考えて
いたのか?ナナリーと夫婦にし、守る対象にして、お前達のシナリオ通りに事が
進むと思っていたのか?お前達は、スザクを知らなさすぎる。例え、ブリタニア側
の人間になっても、スザクの決意は変わらない。行動にいかなる矛盾が生じよう
ともだ。俺は、それをよく理解している。ありがたいことに、お前たちのおかげだ。
その点については、感謝しているよ。スザクを利用しようとした時から、お前達の
敗北は決定していた。アーカーシャの剣に刻まれた、アカシックレコードを見せた
事で、スザクはお前たちを討つ為に、無意識をどう利用すればいいかを、知った。
もう少し、うまくやるべきだったな。ここにスザクが来た時から、お前たちの命運は
尽きていた。」
 アカシックレコード。
 宇宙の過去から未来の全ての記憶を、指す概念である。
 朽ちたアーカーシャの剣の最も重要な部分が、残っていたからこそ、シャルル
達の計画は可能だった。
 様々な記録を基に、複製が試みられたが、この部分だけは手がつけられなか
った。
 アカシックレコードを中核として、利用する方法は解ったが、その仕組みをシャ
ルル達は知る事が出来なかった。
 アカシックレコードを見る事が出来るのは、剣の一族の長のみ。
 当然、それを活かす事が出来るのも、剣の一族の長のみ。
 その事が、今、シャルル達の計画を、崩壊させる要因になっていた。

「義父上、そしてV.V.。無意識達も、誰かを守る力を欲している。だが、それ
だけで、人間が差別されるような世界は、望んでいない。弱さと強さの、合わせ
鏡。それが人間なのだから。貴方達の変革は、最初から無理があった。それを
知っている人は、義父上のそばに、嘗ていたでしょう?」
 アーカーシャの剣の基部から、棺が現れる。
「マリアンヌか…。」
 ルルーシュとナナリーの母。
 嘗ての、ナイトオブラウンズであり、自分の妻。
 何より、生前、シャルルの計画を知る、ごく限られた人間の一人であり、シャ
ルルの考えに、真っ向から反対していた。
「世界を変えなくても、人は何かを守る為なら、周囲の想像以上に強くなれるの
よ。人が弱い事は否定しないわ。でも、弱い存在でありながらも強さを併せ持つ
のが、人間よ。だから、世界を変える必要なんてない。誰も望まないと思うの。
あなた。世界を変えるより、あなたの子供たちに「人とはどういう存在か。」それ
を教えてあげて。勿論、これから生まれる私達の子供にもね。」
 アリエスの離宮で、生まれくる命が宿った、下腹部に愛おしげに手を重ねて、
マリアンヌは嘗てそう言った。

「シャルル・ジ・ブリタニア。そして、ヴァレンタイン・ヴァン・ブリタニア。お前達の
負けだ。駒が常にプレイヤーに使われるがままと考えた、お前達のな。最後に
一つ言っておこう。以前、お前は俺に言ったな。自分を殺した相手をどうしてそ
こまで信じるのか?と。俺はこうなる事を知っていた。それだけだ。」
「ルルーシュ。あまり口を差し挟まないでもらおう。」
 そうルルーシュに言って、スザクはシャルルとV.V.に向き合う。
「もはや、これまで。無意識達は、貴方達の世界を否定した。このままの世界
であろうとも、未来に望みをかけた。そして、私は私なりにベストと言えないまで
も、より、ベターな道を見つけ、その方向に世界が歩むように努力をしてきた。こ
の世界は我々のような一握りの人間によってではなく、この世界に住まう、多く
の人々の意思によって、変わっていく。」
 シャルルはスザクの目をしばし見ると、小さく笑った。
「ふっ。成程。シュナイゼルが欲した理由がよく解る。あやつはお前のように理
想を持つ事は、叶わぬ。故に、内心お前のような人間を羨んでおったのだろう
よ。理想を現実にしようとする志を持つ。お前はマリアンヌに良く似ている。シュ
ナイゼルも、マリアンヌを敬愛していた。それもあったのかもしれん。いずれにせ
よ。我等の敗北。それは認めよう。」
 シャルルはどこかすっきりした表情をして、消えていった。
「まったく。こういう形で終わるとはね。僕としては計画を完遂できなかった事は
悔しくないわけじゃないけど、これが結果なら仕方ないね。後は、君達がどこま
でやれるか、か。ま、精々頑張りなよ。」
 V.V.。
 ブリタニア皇室の祖も、シャルルの消滅を見届けて消えていった。

「終わったな。さて、スザク。私の願いを叶えてもらいたい。そして、早く、ナナリ
ーの元に戻ってやれ。」
「ナナリー?そうか…、話したんだね。」
「全てな…。」
 C.C.が全てをナナリーに話した事を知ったスザクは、小さく「そうか。」と呟い
た。
「叶えよう。但し、僕はナナリーの元には戻らない。やるべき事がある。」
「やるべき事?」
 スザクの言葉に不穏な物を感じた、ルルーシュは、それを確認するために尋
ねる。
「この黄昏の間ごと、アーカーシャの剣を破壊する。これができるのは、僕だけ
だ。これを後世に残すのは危険だよ。だから、破壊する。それが、剣の長たる
者の務め。」
「ナナリーをどうする?未亡人にするつもりか。」
「C.C.。これは、皇族としての務めでもあるんだよ。ようやく世界は新しい道
を歩もうとしている。その為にも、アーカーシャの剣を破壊する。王族としても、
これを残すべきではないと、判断したからね。じゃあ、始めるよ。C.C.。まず
は、君の願いをかなえよう。」
 糸を切るような音が、黄昏の間に、谺する。
「これで、君が他人の意識に影響を与える事はない。代償は孤独だけれど、そ
れも、君が望んだ事だ。じゃあ、僕はこの世で僕がなす最後の務めを果たすと
しよう。」
 黄昏の間の空に、ガラスが割れるような罅が入り始める。

『これが、お前の選んだ道か…。世界の方向性が決まったのなら、父殺しと国
を裏切った罪を背負い、この世に大きな災厄をもたらしかねない黄昏の間と、
アーカーシャの剣を破壊し、死という裁きを下す。』
「残念だが、スザク。俺はお前の思い通りに事を運ばせる気はない。お前には
さらに苦しんで貰うつもりだからな。何しろ、俺を殺した相手だ。そう簡単に楽に
させるか。」
「だが、どうする気だい?君のギアスは、僕には通用しない。C.C.もだ。君に
僕のやる事を阻む事は出来ないよ。」
 そうしている間にも、空は崩れ落ち、何もない真っ白な空間だけになりつつあ
った。
 アーカーシャの剣にも、罅が入り始めている。
「いいや。俺に出来る事が一つだけある。確かに、お前に対して俺のギアスは
通用しない。お前にはな…。」
 ルルーシュの右目のギアスの紋章が、輝き始める。
『まさか…。』
 スザクは、ルルーシュがしようとする事を悟った気がした。
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命ずる。無意識たちよ。スザクの行く手を阻
め!」
 崩れずに残った空にギアスの紋章が輝き、スザクの意識が消える。

「ここは?」
 スザクが目覚めた時、周囲には何もなかった。
 ただ、真っ白の空間の世界。
「無意識の世界よ。」
 そこにいたのは、艶やかな黒髪の活発そうな女性だった。
「こうして会うのは、初めてね。私は、マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア。ルルーシュと
ナナリーの母親。あなたはナナリーと結婚したから、一応、あなたの義理の母
親でもあるわね。」
「ですね。で、何の御用でしょうか?義母上。」
 これといった感銘を受けずに、スザクはマリアンヌに用件を尋ねる。
「あなたと話がしたい。それが用件よ。」
 そこにいたのは、スザクが初めて愛した女性だった。
「ユフィ…。」
「久しぶりね。スザク。」

「どうなると思う?ルルーシュ。」
「こればかりは、どうなるかは俺にも解らん。文字通り天に祈るしかないな…。」
 一時崩壊が止まった黄昏の間で、柱に寄りかかりながらルルーシュが答える。
「全ては、スザク次第か…。」
 C.C.は、空を見上げる。

「で、何の御用でしょうか?私には、やる事があります。できれば、向こうに帰し
てほしいのですが。」
 マリアンヌにそう言うスザクを、ユーフェミアは悲しそうな表情で見ていた。
「そんなに死にたいの?あなたは。娘が生涯のパートナーに選んだ相手が、自
殺願望の持ち主だなんて、私はごめんよ。」
「別にそういうわけではありません。ただ、なすべき事をなすだけ。終着点が、
死であるだけです。」
 スザクは、淡々とマリアンヌに答える。
「ユフィ。君は相変わらずだね。言いたい事がすぐ顔に出る。別に君の死が原
因では、ないよ。言っただろう?今回、自分がなす事の終着点が、死であるだ
けだよ。」
 ユーフェミアの言いたい事を察して、スザクがそれを否定する。
「結局。あなたは死にたがっているだけよ。気づいていないのかも、しれない
けど。」
 マリアンヌの言葉に、スザクが僅かに眉をしかめる。
「あなたも、言いたい事が顔に出るタイプよ。だから解るの。あなたが、あれこ
れ理由をつけて、死を求めている事が。」
 ユーフェミアの悲しそうな目から、スザクは目を逸らす事が出来なかった。

「スザク。あなたの死を望んでいないのは、私とユフィだけではないわ。多くの
無意識達が、あなたに生きて欲しいと願っている。ただ、それと同じくらいの無
意識が、あなたの死を望んでいるけど。」
『僕に従って戦った多くの兵士達は、僕の生を望むかな?僕が殺した者たちは
死を望んでいるか。考えてみれば、当然だね。』
 マリアンヌの言葉の意味を、スザクはすぐに理解する。
 さらに、その先にあるマリアンヌの真意を、理解する。
「選べというのですね?どちらの願いを受け入れるか。」
「そういうことよ。」
 マリアンヌは静かにうなずいた。
「意外だな。僕を止めると思っていたのですが。」
「止めたところで、あなたは自分の道を歩むでしょうね。まったく、血は争えない
わ。私も、ナナリーも、選んだ相手は、どうしようもない頑固者。でも、愚かでは
ないと思っているわ。」
「義父は愚かではないと?」
 スザクは、意地の悪い質問をする。
「あなたから見れば愚かね。いいえ、他の大多数から見れば、愚かな人間よ。
私は、悲しい人に見えたわ。強さに、いえ、守ることに取り憑かれた、悲しい
人。」
 そう言うと、マリアンヌは小さく笑う。
「いえ、これはきっと、贔屓が過ぎる見方ね。あの人を、シャルルを愛してい
るが、故の…。」
 苦笑すると、マリアンヌはスザクを見る。
「あなたに対しても、贔屓目に見ているのかもしれないわね。ベターな選択を
してくれると。」
 スザクは、ここにマリアンヌがいる理由を、理解した。
 シャルルが愛した相手だけあって、凡人ではない。
 従わせるというよりは、導く力とでも言うべきか。
『だが、僕の決断はすでに決まっている…。』
 スザクの考えは、揺るぎはしなかった。
 そんなスザクを見ていたのが、ユフィだった。

「まだ、自分が嫌い?」
 澤崎の乱の際に、ユフィはスザクに願った。
 自分を嫌いにならないでと。
 無論、スザクもそれを忘れたことは無かった。
「言っただろう?やるべき事をやるだけだよ。実際、そうでもしないと、黄昏の間
も、アーカーシャの剣も破壊できない。僕がやらなければ、ならないんだ。」
 スザクははっきりそう言うが、ユフィの視線はスザクに向けられたままだった。
「まだ、嫌いなままなのね…。だから、死のうとしている。生きようとしていな
い。」
 ユーフェミアは、悲しそうに俯く。
 スザクは、黙ってそれを見ていた。

 最後に死ぬ事は、とうの昔に決めていた。
 枢木スザクは、どこまでもそういう人間であった。
 生きてこの世界を変えたとしても、それで罪が償われるとはどうしても考えら
れなかった。
 生き続け、この世界の為に身を削り続ける限り、どこかで必ず自分は賞賛さ
れる。
 スザクは、それが耐えられなかった。

「自分を嫌いにならないでほしい。でもね、スザク。私はそれ以上に、あなたに
生きてほしい。どんなにつらくとも、それに耐えて生きてほしい。」
 切実に願うユフィの瞳が、遠き日の事をスザクに思い出させた。

『君は、僕に生きて欲しいと願っていた。義姉上の仰った事は、本当だったとい
う事だね。でも、生きてどうなる…。』
 ユフィが死に、真相をV.V.から聞いたスザクは、神根島でルルーシュを殺
害。
 その後の、東シナ海会戦の後、自害しようとしたがシュナイゼルらに止めら
れ、コーネリアからある命令を受けた。
「勝手に死ぬ事は許さぬ。生きよ。」と。
 それが、ユーフェミアの願いだからと。
 そして、ある誓いを立てて、スザクは戦い続けてきた。
『ああ、そうか。僕は己の誓いの為にも、まだ死ねない…。』
 己が立てた誓いを思い出したスザクは、どうするかを改めて決断した。

「義母上。僕は戻ります。」
 その言葉を、マリアンヌは静かに聞いていた。
「まだ、死ぬわけにはいかない事を、思い出しました。」
「そう…。」
 マリアンヌは優しく微笑みながら、頷く。
「でも、スザク。」
「解ってるよ。ユフィ。確かに、僕がやろうとしている事は、とても危険だけど。き
っと、どこかに生きる可能性はある。僕は、それに賭けるよ。ここまの事が出来
たんだ。何とかなる。」
「信じてあげなさい。あなたが愛した男でしょ。大丈夫。」
「解りました。スザク、あなたを信じるわ。」
 スザクはユーフェミアの言葉に、力強く頷く。
「じゃあ、戻りなさい。あなたのいるべき場所へ。」
 スザクの姿が、徐々に消えていく。
「さようなら。スザク。」
「さようなら。ユフィ。」
 スザクとユーフェミア。
 互いに、かつて愛した相手との別れだったが、二人は笑顔だった。

「戻ったか。意外に遅かったな。」
「そうかい?再開するよ。僕が生き残る可能性も、無いわけじゃないだろうか
ら。」
 再び、アーカーシャの剣の前に立つ。

 その時、崩壊が爆発的に加速した。
「何だ?何が、起こった。」
 崩れゆく黄昏の間には、轟音が響く。
「無意識達が、俺のギアスでここを破壊している。」
「行く手を阻め。それは僕の死への行く手か?ルルーシュ。」
 スザクの言葉に、ルルーシュがにやりと笑う。
「俺はゼロ。奇跡を起こす男だ。そして、お前の敵。言った筈だ。苦しませと
な。」
『まったく、お前はつくづく面白い男だ。素直になればいいのに、どうして、そこ
までひねくれる。スザクの前だからか。』
 幼き日。
 二人の仲は、始めは険悪だった。
 ナナリーが鎹になって、徐々に距離は縮まったがルルーシュはややひねくれ
たような口調のままだった。
 嘗て、自分が見守っていた、幼い二人を思い出して、C.C.はくすりと笑
う。

「礼は言わない。君は自分の都合でやっている事だからね。ただ、こちらにとっ
ても、負担が少なくなって助かるよ。アーカーシャの剣は僕が破壊する。」
 スザクがコンソールに手をかざすと、アーカーシャの剣に大きな亀裂が入り、
砕け散る。

「これで終わりだな。」
 ほとんどが崩壊した黄昏の間で、ルルーシュが言う。
「ああ。終わりだ。」
 スザクが、その言葉にうなずく。
 その時、ルルーシュの瞳からギアスの紋章が消え、姿は光の粒子となって消
え始める。
「これで、俺とお前の戦いも終わりだ。ゼロはもうすぐ死ぬ。黄昏の間の崩壊と
共に。」
 ルルーシュの表情が、柔らかいものになる。
「ありがとう。ルルーシュ。面倒を掛けたね。」
 スザクも柔らかい表情になって、礼を言う。
「気にするなよ。友達だろう。俺達は。」
「ああ。友達だ。」
 スザクとルルーシュ。
 嘗ては敵同士であった二人は、最後の時に親友に戻った。

「じゃあ。行くよ。」
「ああ。頑張れよ。お前なら、ナナリーやユフィの願った世界を作れる。だか
ら…。」
 ルルーシュは、右手を差し出す。
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアでもなく、ルルーシュ・ランペルージでもなく、ルル
ーシュとして願う。お前は、生きろ!」
 一歩前に踏み出したスザクは、ルルーシュの手を握る。
「その願い。確かに受け取った。」
 手を離すと、スザクは黄昏の間を去る。
 ルルーシュは、その姿が消えるまで、スザクが去っていくのを見ていた。
『私は、この世界を見続けるとしよう。もはや、何かに影響する身でもない。
一人になったが時間はたっぷりある。見物させてもらうぞ。この世界の行く末
を。』
 C.C.もルルーシュの後を追うように、消え去った。

「ナナリー。ここにいたのか…。」
 謁見の間に戻ったスザクの目に映ったのは、ナナリーだった。
「終わったのですね…?」
「ああ。終わったよ…。」
『許しを乞えるような、立場じゃないね…。』
 そう思いながら、スザクはナナリーの前に立つ。
 急に、ナナリーが、スザクを力いっぱい抱き寄せる。
「あなた…。良かった…。もし、死んでしまったら、私は…。」
 抱き寄せるナナリーの腕は、小さく震えていた。
「ごめん、ナナリー。」
 スザクは気づかぬうちに、ナナリーを抱きしめていた。
「一緒なんですよ。私達は、家族なんですから…。」
 スザクの頭を、下腹部に当てる。
『そうか…。僕は…、父親になったんだ…。』
 スザクは、心の中が暖かくなるのを感じた。
「ナナリー…、愛しているよ…。」
「はい。私も…、あなたを愛しています。」
 スザクは、ナナリーの唇に、自分のそれを優しく重ね合わせた。

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