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zoom RSS コードギアス二次小説 AFTER TURN26 二本 の 矢

<<   作成日時 : 2009/04/01 23:01   >>

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「目標地点まで、あと2時間です。」
「ナイトメア部隊に出撃用意をさせろ。アルビオンの用意は?」
「いつでも、出られます。」
 アヴァロンの艦橋で、スザクが作戦行動の準備をさせる。
「敵軍。未だに動きはありません。」
「隠密行動、上手く行っているみたいですね〜。」
「改修が、ぎりぎり間に合いましたね。」
『この一手、何としても成功させて見せる…。』
 ロイドとセシルの会話を聞きながら、スザクは作戦の事に意識を集中させて
いた。
「格納庫で待機している。目標に到着した後は、指示したとおりに。」
「イエス、ユア・ハイネス。」
 セシルの声に、スザクが静かに頷く。

「殿下。よろしいでしょうか?」
「何だい?」
 ゲレヒティヒカイト・ヴァルキュリエ隊の隊長である、ヴァレンティーネから通信
が入る。
「本当に信用できるのでしょうか?」
「彼らは信頼を勝ち取る為に、志願してきたんだ。そう見ていいのだろう。もっと
も、私とて完全に信頼しているわけではないがね。だが、戦力を2分している彼
らなら、いくらでもやりようはある。噂の聖天八極式とやらを考慮しても大丈夫だ
ろう。こちらには、アルビオンに加えて、コンクエスター、ガヘリス、ロヴェルがあ
る。いざ戦いになっても負ける事はない。今は作戦を成功させる事に、専念して
くれ。」
「申し訳ありません。出すぎた事を申しました。」
「構わないよ。君は、私の親衛隊隊長。心配するのは無理も無いからね。」
 ヴァレンティーネとの通信が切れた後、スザクはある機体に通信を入れた。
「どうだ?いけるか。」
「問題ない。ガヘリスの操縦系は単座式になったのを除けば、ガウェインとほと
んど変わらんからな。」
 IFX−V303 ガヘリス。
 キャメロットで開発された、ガウェインの量産型の試作機であるが、コストの問
題から採用はされなかった。
 これを、スザクは昇進させたC.C.に与えていた。
「ならいい。戦果を期待させてもらおう。」
「心配するな。命令には従うさ。それをルルーシュも望んでいるからな。」
 出撃前のチェックをしながら、C.C.はスザクに答えた。
「目標地点まで、20分です。これより、各艦はミサイル発射可能深度まで、無
音浮上。攻撃に備えます。各ナイトメアは、発進前の最終チェックを行って
ください。」
 アヴァロン艦内に、セシルの声で作戦開始が近い事が放送される。
「クルーミー中佐。予定通り、私が先陣となる。その後のナイトメア部隊はツヴァ
イク中佐が指揮を取れ。」
「「イエス、ユア・ハイネス。」」
『向こうも、そろそろか…。』

「いよいよか…。」
 斬月のコックピット内で、藤堂は最終チェックを行っていた。
「ラクシャータ。聖天八極式の状態は?」
「問題ないよ。いつでも出れる。カレンもしっかりマニュアルを読み込んでいるか
らね。」
 ラクシャータが、改修した紅蓮の整備状況を藤堂に答える。
「紅月。最終チェックはどうだ?」
「間もなく終わります。」
 カレンはコックピットで最終チェックをしながら、答えた。
「よし。こちらは合図があり次第。目標を制圧する。スピード勝負だ。忘れる
な。」
「はい。零番隊は速やかに、機体の最終チェックを終えろ。」
 今回の作戦には、黒の騎士団が加わっていた。

 ブリタニア、中華連邦、ロシア州。そして、独立した日本が事実上の同盟関
係となってから、簡素なパーティーが開かれた後、直ちに作戦会議が開かれ
た。
「御存知のように、シュナイゼルはフレイヤを持ち、その威力は絶大です。しか
し、それを除く通常戦力においては、我らが有利。さらに、出撃準備が直ちに開
始できる点も、さらに我らを有利にするでしょう。」
 作戦会議では、ブリタニア軍の最高司令官であり、ナイトオブワンでもある、ス
ザクが会議を取り仕切っていた。
「相手の態勢が整う前にこちらから攻め、一気に勝負を着けるご所存ですか?
殿下。」
「枢密使の仰るとおりです。但し、我が国といたしましてはこれ以上本国を傷つ
けたくはありません。」
「どのような策をお持ちですかな?」
 シャルンホルストが尋ねる。
「二つの乱を、ほぼ同時に起こします。但し、一方は、起こしたままにし、もう一
つで、シュナイゼルを本国から出撃させます。これが、基本戦略です。」
「二つの乱?」
 扇が理解できないと言うような顔で、尋ねる。
「一つの乱は、欧州です。もう一つは、ハワイ。」
 それを聞くと、藤堂とシャルンホルスト、星刻が理解したと言う顔をする。
「つまり、啄木鳥の戦法の応用という事ですな。殿下。」
「藤堂殿の仰るとおりです。まず、ロシア州には、シュナイゼルの支配体制に不
満を持つ軍人を調略し、EU奪還を成し遂げていただきたい。シュナイゼルの目
が一旦そちらに向いた隙を突いて、我がブリタニア軍がハワイを攻略します。現
在シュナイゼルの元にある兵は我らに比して、そう多くはありません。
二正面作戦を取るのは不可能。この場合、EUを重視すれば、我が軍が本土を
奪還し、後背をつきます。シュナイゼルはその事を承知しているでしょう。
我が軍との決戦に勝利した後、返す刀でEUという戦略で臨むはず。」
「確かに。」
 シャルンホルストが頷く。
「それにより、シュナイゼルは本国とEUのつながりを遮断されます。そこに、我
が軍が襲来したとなれば、いかがでしょうか?」
「急ぎ準備を整え、出撃せざるをえますまい。軍及び行政機構の再編成プラン
を白紙に戻してでも。」
「私もそう考えます。EU奪還、ハワイ侵攻。この二本の矢をもって、シュナイゼ
ルを討ちます。」
「しかし、相手にはフレイヤがあります。殿下は、どうなさるおつもりですか?」
 カレンの初めての発言は、フレイヤ対策に関することだった。
「それについては、私に考えがあります。アスプルンド伯爵。例の改修は、あと、
どれ程で終わる?」
「突貫工事で、10日ってところですかね〜。あとナイトメアの件は12日と
いったところですよ〜。」
 ロイドが書類を見ながら、答える。
「紅月隊長。シュナイゼルとの戦いは、どのような戦いになるとお考えです
か?」
「もちろん、ナイトメアを主戦力とした戦いになると考えます。」
「その通り。して、戦場は地上となりましょうか?」
「両軍共に、ナイトメアにはフロートユニットを、装備させていますから…。
あっ…。」
 カレンは、スザクがやろうとしていることの概要を察した。
「そういう事です。ロシア州にお尋ねします。調略にはどの程度かかるでしょう
か?」
「水面下で既に開始しておりますが、そうですな。蜂起の準備も含めて、2週間
ほどあれば…。」
「タイミングが合いますね。では、この作戦に異論のある方は、御遠慮なく。」

「殿下、この度のシュナイゼルとの直接対決。我ら、黒の騎士団も陣列にお加
えいただけませんでしょうか?」
 藤堂が、シュナイゼルとの戦いに志願する。
「貴方方は、指揮系統から見た場合、中華連邦の指揮下に入ります。私の一
存では、決めかねます。それに、非礼を承知で申し上げるが、総数3個連隊で
は、一翼を担う事も出来ますまい。さらに言えば、半分程度を占める、EU出身
の団員の士気を考慮した場合、戦力としては些か…。」
『団員だけでも、日本に住めるようにする為の布石か…。』
 さらに、勝利への貢献によっては、藤堂達も日本に住めるようにする為の布石
ともいえる。
「では、私が率いる零番隊だけでも、加わる事をお許し下さい。その際には、殿
下の思うままに、私達をお使いいただいて結構です。」
 カレンが、自分が率いる零番隊の参加を志願する。
「私は、貴方方が敵とするブリタニアの皇族。それをお解りでしょうか?」
「個人的には、少なくとも、殿下は私の敵といえるお方ではありません。」
 コーネリアが驚いて、カレンを見る。
「戦力の方は、保証するよ。改修した紅蓮。紅蓮聖天八極式は、強力だから
ね〜。」
 会議に出席する為、日本を訪れたラクシャータが助け舟を出す。
「練度は、私が保証します。さらに、私もお加え下さい。」
 藤堂が零番隊の練度を保証し、自らも志願する。
「ふむ…。」
 スザクは考える表情になった。
 遊撃部隊として麾下におけるのなら、黒の騎士団の戦力は魅力的だ。
 しかし、加えた際の他の部隊の反応を考慮すると、スザクはそう簡単に了承
するわけにはいかなかった。
「藤堂殿、一つ聞いてもよろしいか?」
 コーネリアが、藤堂に尋ねる。
「何なりと、コーネリア殿下。」
「貴公の申し出は、総司令官が死ねと言われれば、死ぬと受け取ってよいのか
な?」
「先程、紅月はスザク殿下の思うままにお使いくださるよう、申し上げました。
それは私も同じ。戦いにおいて、我らが犠牲になりそれによって、平和が訪れ
るのなら、喜んで死んで見せましょう。」
 コーネリアを真っ直ぐ見て、藤堂は答えた。
「成る程…。総司令官、黒の騎士団を加えられては如何でしょうか?私は、直
属となされるなら、さほど問題ないと考えます。」
「解りました。黒の騎士団の参加。受け入れたいと思います。ただ、枢密使との
話し合いはなさっておいて下さい。」
「申し出を受け入れてくださり、感謝いたします。」
 藤堂がスザクに、頭を下げる。
「では、ハワイ攻略に関してですが、私の旗艦アヴァロンに、黒の騎士団の斑
鳩。ログレス級のツェーリング。カールレオン級のビューリーとクーンズベリー。
この5艦で攻略部隊を編成します。他の部隊は、その後、ハワイを制圧し
た際に到着するように発進することとします。」
 スザクの直属軍を動員するかと思っていた会議の出席者は、一斉にどよめく。

「お待ち下さい。そのような寡兵で、ハワイを攻略すると仰られますか?」
 ヴァレーリアが、慌てて尋ねる。
「そうだ、今回の作戦の意義は早期制圧にある。その後、本隊と合流。シュナ
イゼルとの決戦に臨む。兵力の損耗は極力避けたい。」
「しかし、ハワイがどのようなところか、御存知のはず…。」
 ハワイは太平洋にあるブリタニアの重要拠点であり、第二次極東事変でもか
なりの部隊がハワイを母港にして、日本に侵攻している。
 それだけに守りも堅く、対応し切れなかった場合を想定して、通信設備も非常
に充実している。
 少しのタイムロスが、命取りになりかねない。
 まして、スザクはブリタニア軍の最高司令官である。
 もし戦死した場合、軍の士気の低下は計り知れない。
 その事をヴァレーリアは考慮して欲しいと、スザクに訴える。
「無論、その事は承知している。だが、通信網と指揮系統をこちらが先に破壊す
れば、どうかな?」
「そうなれば、敵には抗う術がありませんが、そんな策が…。」
「ある。あれの調整が完全に終了し、以前お蔵入りしたが、今回の作戦にうって
つけの機体がある。それに、サンディエゴから苦労して持ってきてくれた、
例の機体も役に立つ。問題はない。」
「あれをお使いになられるのですか?」
「せっかく、苦労して持ってきてくれた機体だ。ならば、有効に使用してこそ、彼
らの苦労に報いる事になるだろう。」
「確かに、そうではありますが。せめて、私だけでもお供する事をお許し下さ
い。」
「いや、君には私の直属軍を率いて、ハワイまで陛下をお守りしてもらいたい。」
「…イエス、ユア・ハイネス。」
「次に、各方面軍の編成についての議論に進みたいと思います…。」
『ふふふ…。何だかんだ言って、お前とスザクは息がぴったりだな。ルルーシ
ュ。』
 ハワイ攻略作戦は、スザクの原案にルルーシュの意見で変更を加えた物だっ
た。

「殿下、暗号通信が入りました。連合軍EU方面部隊、フィンランド州コイテレ湖
畔に到着。シュナイゼル軍とのにらみ合いに入りました。他の部隊は当初の予
定通りに。また、潜入していた篠崎咲世子からも、準備が完了。合図が入り次
第。始まるとのことです。」
「よし、こちらもそろそろか…。」
『開始まで、あと10分。』
 スザクが放った一の矢が、シュナイゼルの背後に放たれた。

「やはり来たか…。」
「はっ、ロシア州軍に加え、中華連邦軍に、日本駐留軍の一部も加わっている
ようです。現在は、アイブリンガー大将率いる軍と、コイテレ湖畔においてにら
み合いに入っております。」
「それ以外に、報告は?」
 執務室で、カノンからシュナイゼルは報告を聞いていた。
「各州の首都に不穏な動きはありません。」
「しかし、これでは終わらないだろう。あのシャルンホルストの事だ。何か、
手を打ってくるはず。」
 ラウンズの一人を派遣したいが、軍の再編成の作業を急いでいる状態では、
向かわせる事は不可能だった。
「本土の各方面軍に命令を、大西洋を監視。異常が有り次第、報告を。」
「イエス、ユア・マジェスティ。」
 命令を伝えようと、執務室を出ようとしたカノンだったが、さらに凶報が舞い込
んできた。
「陛下。黒の騎士団が、突如、パリ上空に!!」
「軍はどうしている!?」
 カノンが珍しく、大きな声を出す。
「黒の騎士団に呼応。議会を占拠しております。さらに、各州でも同様の事態
が起きております。」
「アイブリンガー大将の軍は?」
「ロシア州の軍と合流しております…。」
「やられたね…。こちらが国内整備に重点を置き、日本の動向に目を光らせて
いる時に、見事に隙を突かれたよ。おそらく以前から、準備をしていたのだろ
う…。」
『まさか、自分が考案した策に、嵌るとはね…。』
 シュナイゼルが、苦い表情になった。

 その頃、旧EUの州では、現体制に不満を持つ軍人達が蜂起。
 シュナイゼルが指名した、首相を拘束していた。
 ロシア州の調略で寝返ったアイブリンガーは、戦うふりをしていたが、咲世子
からの暗号通信が入った時、シャルンホルスト率いるロシア州軍と合流。
 パリを目指していた。
「各州の状況は?」
 利根の艦橋で、シャルンホルストは報告を聞いていた。
「東欧諸州は、全て議会を占拠。計画通り、新しい首相が組閣を終えようとして
います。フランス州への道も、霧島の別働隊が確保いたしました。他の州も軍が
蜂起。」
 今回の作戦には、密かに建造されていた斑鳩の量産試作艦である、霧島も加
わっていた。
「よし、パリに向かう。」
「了解。」
『これで、メインディッシュまでいけたな。後はデザートを残すのみ…。だが、ここま
でうまく事が運んだのも、今だからこそ…。最後まで気を抜くわけにはいかな
い…。』
 EUがシュナイゼルによって乗っ取られて、1ヵ月も経っていない。
 国内を完全に掌握しきっていない今だからこそ成功した事を、シャルンホル
スト自体よく理解していた。

「意外に簡単にすんだね。」
「もともと、まだ国内整備も終えていない上に、軍人達はシュナイゼルに不満
を持っている。それを利用したシャルンホルスト司令官も大した物だがな…。」
 パリの国会議事堂占拠の指揮を取った、千葉と朝比奈は周囲を警戒しつつ、
話していた。
「後は、向うか…。」

「殿下。欧州では作戦行動は順調にいっている模様です。」
「よし、こちらも始める。各部隊は予定通りに、行動。」
「イエス、ユア・ハイネス。」
「ランスロット・アルビオン起動。」
 調整が完全に終了したランスロットが、起動する。

「ランスロット・アルビオン起動確認。太陽炉稼動開始。」
「人工太陽光、炉心部への到達を確認。エナジー生成開始。」
「各部、問題ありません。出力臨界まで、5、4、3、2、1。出力臨界到達確認。
異常認められません。」
「ユグドラシルドライブ臨界到達を確認。ランスロット・アルビオン、出撃準備完
了。」
「発艦する。」
 水中行動の為の改装をされたアヴァロンから、ランスロットが発進していく。
 今回、作戦に参加している艦は、全て水中での作戦行動が可能なように、
改修を受けている。
「全艦、ミサイル装填。発射後にナイトメア部隊を出動させてください。」
 セシルが各艦に指示を出す。
 ハワイ攻略作戦が、開始された。

「ミサイル多数接近します。さらに、未確認飛行物体。接近します。は、速
い…!」
「ミサイルを迎撃!状況を報告しろ!!」
 司令官のオルドリッジが、オペレーターに報告を求める。
 その瞬間、ハドロンモードのスーパーヴァリスから発射されたハドロン砲で、
レーダー、通信施設等が、薙ぎ払われる。
 そこに止めとばかりに、ミサイルが着弾する。
「レーダー、全損!通信施設が破壊され、他の基地との通信が出来ません!」
 オペレーターの悲鳴のような報告がもたらされる。
「非常用回線を使用しろ。他の基地に緊急連絡。」
「ハワイの各基地。応じません!!」
「くっ!!」
 歯噛みをしている間に、各基地は襲撃を受けていた。

「通信設備、レーダーを集中的に狙え。目と耳、口を潰す。」
 C.C.はガヘリスの胸部に装備されている二門のハドロン砲を、拡散モード
で発射し、レーダーを薙ぎ払う。
 随伴しているのはヴィンセントに、ガヘリスにフォルムの似た大型のナイトメア
であった。
 ヴィンセントには追加装甲と、コンクエスターユニットが装備されていた。
 RPI−212/D ヴィンセント・コンクエスター。
 決戦に備えて、改修されたヴィンセントである。
 ハドロンブラスターを展開して、通信施設を叩く。
 最後に大型のナイトメアが、両腕にマウントされているハドロンキャノンを、発
射する。
 IF−P101 ロヴェル。
 ガヘリスを基にさらに量産向きに設計され、サンディエゴの工場で生産され
ていた、砲撃型のナイトメアである。
 シュナイゼル軍の別働隊が来る前に、責任者であるオルグレンの判断で輸
送用潜水艦に搭載されて、日本に届けられていた。
「少佐。敵が降伏の意志を示しています。」
「よし、降下して完全に制圧しろ。最後まで油断するな。」
「イエス、マイ・ロード。」

 一方、黒の騎士団も目標の基地を攻略していた。
「喰らいな!!」
 紅蓮の胸部にある拡散構造相転移砲が、プリズム状に凝固した液体金属で
乱反射して、基地全体を薙ぎ払う。
「突撃!!」
 藤堂の斬月が、制動刀を構えて基地に降下していく。
 紅蓮も続くが、今までとはまるでちがうフォルムをしていた。
 X型の飛翔滑走翼はなく、円に8つのユニットで構成されていて、後光を背負
ったように見える。
 TYPE−02EE 紅蓮聖天八極式。
 ラクシャータによって改装が施された、紅蓮の最終形態ともいえるナイトメアで
ある。
 最大の特徴は、円状のヒッグス場の発生ユニットと、8つの増幅ユニットで構
成される、独特のフロートシステムである。
 消費エナジーのかなりの軽減に成功し、速力、機動力、航続距離。全ての点
において、従来の飛翔滑走翼を大きく凌駕している。
 それに伴い、機体も改装され性能も向上している。
 藤堂が、基地周辺の施設を制圧する中、カレンは司令部の制圧に当たってい
た。
「この!!」
 ワイドレンジで発射された輻射波動で、防衛施設は次々と沈黙していく。
「観念しな!!あんたらの、負けだよ。」
 輻射波動を備えた、禍々しい右腕を司令官に突きつける。

「何としても、連絡を取れ!増援が来れば、少数の敵など…。」
 何とか状況を打開しようとするオルドリッジの目に飛び込んできたのは、彼ら
が良く知るカラーリングのナイトメアだった。
「まさか…。ランスロット…。白き…、死神…。」
 今まで、頼もしき味方であった「白き死神」が自分達の敵となり、どれほど
恐ろしい存在かを、身にしみて理解していた。
 たった数分で、司令部は目と耳を封じられ、助けを求めることも出来なくな
っていた。
 しかも、相手はたった一騎のナイトメアである。
「白旗を掲げよ。降伏する…。」
 各基地も攻略が完了し、ハワイは陥落した。

「ハワイより入電。全ての基地の制圧を完了。損害はありません。」
「EUの放送が、間もなく開始されます。」
 総旗艦エセックスの艦橋で、報告を聞いていたナナリーは胸を撫で下ろした。
「よし。放送開始と同時に、ハワイ攻略の情報を全世界にばら撒け。」
 コーネリアが指示を出す。
「恐ろしい方ですな。スザク殿下は。ガヘリスやロヴェルなどがあるにしても、
あの寡兵でハワイを攻略なさるのですから…。」
「ああ。我々にとっては頼もしい限りだが、敵にとっては厄介極まりない相手
だろうな。ハワイまではあとどれくらいかかる?」
「約3時間です。」
『ここまでくれば、向こうも黙ってはおるまい…。決戦は近いな。』
 コーネリアは、無意識に拳を握り締めていた。

「EU議会議長、シモン・ド・ラトゥールです。本日5月7日、我がEUはシュナイ
ゼルの支配から脱し、自由を取り戻した事をここに宣言いたします。また、4月
24日の神聖ブリタニア帝国、ナナリー皇帝陛下の宣言通り、我が国とブリタニ
アとの戦争を終了させるため、講和条約を締結。中華連邦との間にも、相互不
可侵条約を締結いたしました。我が国の敵はブリタニアにあらず、皇帝を僭称す
る侵略者、シュナイゼルです。彼の侵略を許さぬためにも、我らは手を携えて戦
わねばなりません。その後、努力と互いの歩み寄りによって、平和が作られ維
持されましょう。争いのなき穏やかな日々が、間もなく来ようとしているので
す。」
 パリのEU議会議事堂は割れんばかりの拍手と歓声に、包まれた。
「大西洋の状況は?」
「侵攻する気配はありませんが、既に軍が展開されております。」
「攻守双方に既に万全を期しているか。シャルンホルストらしいね…。」
 口調こそ穏やかだが、シュナイゼルの視線は鋭かった。
「陛下、一大事でございます。」
「報告を。」
「ハワイが、占領されました。指揮官は枢木スザク。既に世界中に情報が発信
されている、模様です。」
『やられたね…。これで属領と、他の国がこちらの陣営に加わる事は無い
か…。』
 フレイヤは確かに恐るべき兵器だが、まだその実感があまり湧いていない。
 だが、「白き死神」と言われたスザクの武勲は、属領エリアや各国がよく知っ
ている。
 彼らとしては、頭上に死神が舞い降りる事は、考えたくも無いだろう。
 その恐怖の方が、フレイヤより実感できる。
 スザクがブリタニアの要衝ハワイを攻略した情報は、属領や他国の迷いを吹
き飛ばし、シュナイゼルにつく意志を喪失させた。
 それが、スザクが指揮を取ってハワイを攻略した、真の狙いだった。
「事、ここに至ってはやむをえぬ。出撃可能な軍を総動員し、枢木スザクを討
つ。彼を倒せば、ナナリー一派は恐れるに足らず。直ちに準備を。」
「イエス、ユア・マジェスティ。」
『ここまでやられるとは、私も焼きが回ったかな…。』
 シュナイゼルの口の中に、苦い味が広がった。

 エセックスを総旗艦とするブリタニア軍本隊が到着して、仮帝都を東京からハ
ワイに移し、迎賓館を仮皇宮にしてナナリーが入った。
「そうか。ブリタニア軍がハワイを取ったか。」
『これで、デザートに手をつけた状態になったか。後は、平らげる事が出来るか
だな…。何しろ、デザートと呼ぶには、食べ応えがありすぎる。』
 執務室からシャルンホルストは、ブリタニア本土の方向に目を向けた。

「通信、レーダーの復旧状況はどうか?」
 ナナリーが仮皇宮に入ってまもなく、会議が開かれていた。
「輸送艦に搭載してあった機器の組み立ては順調に進んでおります。本日中
に、終了します。」
 コーネリアの問いに、ギルフォードが答える。
 本隊は攻略作戦の中で破壊した、レーダー及び通信施設の本格復旧までの
つなぎとなる機器を予め用意しており、工兵を総動員して組み立てにかかってい
た。
「完成すれば、本格復旧までの代替施設としての機能は充分果たせましょう。」
「シュナイゼルに動きは?」
「スパイから情報が入りました。現在、軍の編成に当たっているとのことです。」
「とすると、出撃まで早くとも5日はかかるか。」
 情報から、スザクはシュナイゼルが軍を率いて出撃するまでの時間を、はじ
き出す。
「中華連邦軍旗艦七星、到着まで、後1時間。」
「飛行場は?」
「着艦に問題はありません。周囲の残骸の除去も終了しております。」
「では、私が迎えに行くとしよう。」
「殿下自らでございますか?」
 ギルフォードが驚いて尋ねる。
「指揮を執られるのは、天子様の配偶者である太宰子殿だ。私も陛下の配偶者
である皇配。別に問題はないと思うが。」
 笑って、スザクが軍用飛行場に赴く。

「間もなく、ハワイに到着いたします。」
「うむ。」
 星刻が着ているのは、今までとは違う天子の血族が着ている服である。
 反抗作戦の準備の間、洛陽で会議を開く際に裏で手を回され、星刻と天子の
結婚式が行なわれ正式に夫婦となり、星刻は太宰子と呼ばれるようになった。
『まさか、こんな事になろうとはな。』
「周囲を警戒。制圧が完了していても、シュナイゼルの置き土産がないとも限
らん。気を抜くな。」
「はっ。」
 もちろん、そんな物があるはずもなく、七星は無事に到着した。

「しかし、スザク殿がお迎えに来られるとは、思いませんでしたな。」
「星刻殿は、天子様の配偶者。私が行っても、なんら不思議はないと思います
が。」
「そうですな。では、今度我が国に来られる際には、私がお迎えに上がりまし
ょう。」
 しばらく談笑が続く。

 星刻率いる中華連邦軍が到着して、軍議が開かれた。
「さて、これで全軍が到着したわけですが。太宰子殿、軍の状態は如何でしょ
うか?」
「私の直属部隊から、選び抜いた精兵を率いてきました。数だけいても仕方ない
と考え、数は15個師団。搭乗するナイトメアは全て新型の白虎。これは私の騎
乗する機体、神虎を量産機向けに再設計した物です。以前から精鋭部隊用に生
産していましたが、ようやく数が揃いました。」
「私とコーネリアの直属軍が、それぞれ18個師団。かつてのEU方面軍が4
0個師団。日本駐留軍の残り全て。そして、中華連邦軍と黒の騎士団。合わせ
て111個師団。数の上ではシュナイゼルを上回る事が出来るでしょう。」
「すると、後はフレイヤ対策ですな。」
 藤堂が、腕を組む。
「そちらに関しては、問題ありません。すでに準備は整っております。」
 セシルが、フレイヤ対策は終了した事を報告します。
「それを封じたとして、そう簡単にシュナイゼルの軍が崩壊するとは限りますま
い。この一戦で敗北すれば、シュナイゼルと付き従う者は、破滅いたしましょう。
向こうも負けられぬ戦い。シュナイゼルも知略の限りを尽くして、戦いに臨む
筈。」
 星刻が、通常戦闘においての、シュナイゼルの力量の高さを注意するよう、
喚起する。
「仰る通りです。私もフレイヤを封じれば勝てるなどとは、思っておりません。
シュナイゼルも兵力において劣る場合の、通常戦闘で勝つ手段は模索してい
ましょう。」
「殿下は来る決戦において、いかにして戦う所存でおられますか?」
 ヴァレーリアが、スザクにシュナイゼルとの直接対決における戦術を尋ねる。

「以上が、私の考えた作戦です。」
 スザクの作戦案を聞いた幕僚達が、一斉に騒ぎ始める。
「確かにそれは有効でしょうが、あまりにリスクが大きすぎます。」
 ヴァレーリアが再考を促すように、発言する。
「それは、私も承知している。だが、通常戦闘における最大のカードを封じるの
に正攻法では犠牲が大きい。それならば、敢えて死中に活を求めるべきだと判
断した。心配はいらない。私は必ず生きて帰る。そう簡単には死ねない。やるべ
き事があるからね。」
「陛下のお考えは?」
 コーネリアが尋ねる。
「私は軍事に関しては残念ながら素人ですが、今回は、危険を冒す必要がある
程度は、解ります。スザク、必ず生きて帰ってきますね?」
「誓って必ず。」
「約束ですよ。私をおいて、逝かないで下さい。」
「イエス、ユア・マジェスティ。」
 その時、文官の一人が軍議が開かれている部屋に入ってくる。
「今は、軍議の途中であるぞ!」
 ギルフォードが文官に注意する。
「解っております。ですが、どうしてもお伝えしたき事がございます。」
「何事か?」
「日本軍が、1個師団の増援を派遣して来ました。明後日に到着いたします。」
「日本が?」
 スザクが驚く。
 駐留軍を総動員してきた今、日本を守るのは連邦エリア時代に編成させた自
衛軍が核となった日本軍だけである。
 数は5個師団のままで、決して多くはない。
 そこから援軍を編成する事は、スザクの想像を超えていた。
 何より軍を派遣するには、様々な物資を調達せねばならない。
 それをこれだけ短期間に用意するのは、ほとんど不可能に近い。
「さらに、メッセージが届いております。」
 記録してあるメモリーカードを、恭しく渡す。

「此度の戦いは、世界のこれからの趨勢を決める大事な戦いであることは、私
が言葉にせぬとも、ご承知と考えます。にも関わらず、我が日本が援軍を派遣
できぬ事は、日本人として大変心苦しく思い、政府と相談の上、我が皇コンツ
ェルンが必要な物資を手配する事で、増援軍を派遣する事が決まりました。数
は決して多くありませんが、私達日本人全ての誠意として、受け入れていただ
きたく存じます。武運をお祈り申し上げます。」
 メモリーカードには神楽那のメッセージが記録されていた。
『神楽那…。』
 スザクは、メッセージを見ながら、神楽那の意図を考えていた。
「殿下、これは一体どういう事でしょうか?」
 ヴァレーリアが、困惑しながら尋ねる。
「去年の事になるが、私は皇殿との会談に臨んだ事がある、その席で2年前の
悲劇の贖罪がしたいと言われていた。皇殿はそうお考えなのだろう。伊藤総理
も、独立直後でこの戦いに際し何の手助けも出来ず申し訳ないとの書簡を、ハ
ワイ攻略前に受け取っていた。手助けが出来るようになったから、させてもらい
たい。そうお考えだろう。信用できる。今は、ご好意をありがたく受け取ろう。」
「そうですな。して、どこに配置なさいますか?殿下。」
 神楽那や伊藤総理を信用に値すると考えたコーネリアは、日本軍の配置につ
いてスザクに尋ねる。
「此度の戦いは作戦通りにいったとしても、激しい戦いになるは必定。陛下の
守りに当たらせるつもりだ。」
「私もそれがよろしいかと。」
 コーネリアが頷く。

「そろそろ、メッセージが届いている事でしょうね。」
 物資の手配が一段落したところで、神楽那は休憩を取っていた。
「こちらの方は、もう少しで終わりますな。」
 サポートを買って出た桐原が、茶を飲みながら報告する。
「スザクは、本当にこの戦いで決着を着け、世界に平和をもたらす覚悟。なら
ば、従兄妹として、嘗ての許婚として、出来る限りの事をしたい。そう思って
います。後は、武運がある事を祈るばかりです。」
「ブリタニアの死神と呼ばれたほどの男。不運や災厄くらいは撥ね退けるでし
ょう。後は、シュナイゼルより知略が優れているか否か。それが勝敗を分ける
でしょう。」
『この戦いで、刃を収めるか。』
 嘗ての光景を桐原は思い出していた。
 日本を売り地位を得ようとした、父ゲンブをスザクがその手で殺めた光景が。
 その時、桐原は抜いた刃をどう収めるか考えよと言った。
『見事に、見つけおったか…。』
 感慨深い思いで、再び茶を飲んだ。

「こちらの出撃準備は?」
「予定通り、4日後には出撃可能です。」
「出来る限り急がせてくれ。向こうは既に全軍が集結しているはず。こちらに不
利な状態の開戦は、避けたい。」
「イエス、ユア・マジェスティ。」
 カノンが、シュナイゼルの執務室から出る。

「失礼します。陛下。」
「ニーナ君か。ジェレミアと、ブリガンティアナイツの状態はどうかな?」
「ブリガンティアナイツの方は、問題ありません。ジェレミア卿は刷り込みの準備
が整いました。明日を予定しております。」
 ニーナから資料を受け取る。
「ふむ。成る程、彼が純血派を結成した理由を、利用するか。」
「はい。これなら、枢木スザクに対する憎悪を極限まで高める事ができるでし
ょう。」
「よし、これで頼む。今は、ジェレミアとブリガンティアナイツが、通常戦闘におけ
る切り札だからね。ハワイを襲ったのは、おそらくプトランの時の新型ナイトメア。
だが、詳細が解らない。この調整が勝敗を左右すると言っても過言ではない。ぬ
かりのないように。」
「イエス、ユア・マジェスティ。」
 ニーナが執務室を出る。
『恐ろしい物だな。人の憎悪と言う物は…。』

「全軍、出撃準備完了しました。」
 最前列のアヴァロンに、総旗艦エセックスのコーネリアから通信が入る。
「こちらも準備は整った。陛下、ご命令を。」
「全軍、出撃。」
 ナナリーの命令で、連合軍が出撃していく。
 ハワイ攻略から4日後の5月11日の事である。

 嘗ての神聖ブリタニア帝国帝都。
 現在は神聖ブリタニア連合帝国帝都ネオウェルズの軍用空港では、遠征軍
の出撃準備が進められていた。
「陛下、出撃まで後1時間です。」
『どうにか、出撃準備が完了したね。』
 カノンの報告を聞きながら、シュナイゼルは予定通り出撃できる事に、安堵し
ていた。
『残りのフレイヤは2発。これで勝利を収められればよいが…。』
 スザクの策によりEUが奪還され、重要な軍事拠点であるハワイを攻略され
たことから、珍しくシュナイゼルはやや悲観的になっていた。
「陛下?いかがなさいましたか。」
 長年仕えてきたカノンが、シュナイゼルが見せた事がない表情をしている事
に、気がつく。
「いや、何。思い通りにいかない時もあるのだなと思ってね。それだけだよ。」
 誤魔化すように、シュナイゼルが肩を竦める。

「マリアンヌ様…。」
 皇族専用墓地にある、マリアンヌの墓の前にジェレミアは立っていた。
「ナナリー様と事を構える事、どうかお許しください。されど、ここで戦わなくては、
さらにギアスの悲劇が増えます。マリアンヌ様のように…。このジェレミア・ゴット
バルト。それだけは防がなくてはなりませぬ。此度の出陣、その為ならば、この
命を投げ出す覚悟にございます。シュナイゼル陛下は、ナナリー様にむごい事
はなさらぬ筈…。どうか…、どうか…。」
 振り絞るような声を出すジェレミアの瞳からは、血涙が滴っていた。
 墓碑に落ちた血涙を、ジェレミアは丁寧にハンカチで拭き取った。
「それでは、行ってまいります…。」
 恭しく礼をして、ジェレミアは墓地を去る。
『枢木スザク。ルルーシュ様を殺め、ギアスの悲劇を増やす者よ!!この命に
代えても、討ち取ってみせる!!』
 1時間後、シュナイゼル軍も出撃していった。

「緊急暗号通信。シュナイゼル軍、ネオウェルズを出発。」
 その頃、連合軍の指揮官達は、作戦の最終確認の為エセックスに集まってい
た。
「ほぼ、予測どおりですな。殿下。」
「シュナイゼル軍が戦場に選ぶのは、ここ、グアダルーペ島付近でしょう。我が
軍の侵攻を防ぐのは、ここがギリギリの線のはず。」
 藤堂の意見に頷きながら、コーネリアが指し棒で地図にあるグアダルーペ島
を指す。
「だろうな。我らとしても、本土での戦闘は避けたい。勝利の後に余計に苦労
を背負うだけだからな。例の物は?」
「状況に問題はありません。後は指示を待つだけです。」
 スザクにセシルが答える。
「グアダルーペ島からのレーダー波は?」
「一切確認できません。」
「無人偵察機は?」
「間もなく情報が送られてきます。」
 オペレーターからの報告を聞きながら、スザクは地図を睨む。
「殿下。敵も我が軍の進攻ルートは予測しているはず。であればグアダルーペ
島に兵を割いては、却って貴重な兵を失うと考えるのではないでしょうか?」
 クレインがスザクに意見を言う。
「その意見は正しいと私も思う。が、戦場では何が起こるか解らない。用心は
しておくべきだろう。だから、こうして警戒をしている。少々神経質かもしれ
ないがね。」
「申し訳ありません。出すぎた事を申しました。」
「構わない。おそらく、貴公の意見が正しいだろうからな。ただ、あくまで念の為
だ。」
 スザクがクレインと話していると、オペレーターからの報告が入る。
「無人偵察機からの情報入りました。グアダルーペ島に軍は配置されておりませ
ん。」
「ご苦労。」
 オペレーターからの報告に、スザクは頷く。
「僅かではありますが、こちらの方が早く陣を敷けますな。その分、シュナイゼル
軍は我が軍より陣を敷く時間が短い。ですが、その点は対処済みでしょう。
通常戦闘におけるこちらの優位な点は兵力と、指揮系統ですな。」
「太宰子殿の仰る通りです。敵の陣形は、さほど奇をてらったものではあります
まい。降伏させた軍を加えたとはいえ、日が浅く指揮系統も完璧とは言えない
でしょう。」
 スザクが星刻の意見に頷く。
「とは言え、相手はあのシュナイゼル。何か策を用意しているでしょう。」
「でしょうね。だからこそ、こちらの策に先に乗せねばなりますまい。その為
の餌も用意は出来ています。後は、向こうを喰いつかせるのみ。」
 スザクの目が鋭くなる。
『どうして耳は言葉を聞き取れるのに、この目は皆の表情を見ることが出来な
いの?』
 ナナリーは、目が見えない事に歯噛みをしていた。
 戦いが始まっても、その模様を見る事はできない。
 誰よりも、戦いを見ていなければならない皇帝の身であるのに、盲目である
という事実がナナリーには重かった。
『見なければ…。戦いを見なければ…!』
 その思いが、一秒ごとにナナリーの心の中で大きくなっていった。

「決戦はグアダルーペ島付近になるだろう。我が軍としても、これ以上敵を進軍
させるわけにはいかない。」
 カムランでは、シュナイゼルが主だった幕僚を集めて軍議を開いていた。
「問題は、兵力差ですな。恐らく中華連邦も加わっているかと。この兵力差は無
視できぬ物がありましょう。」
「確かに、敵の兵力は我が軍に勝るだろう。だが、それほど悲観的になる事は
ないと、余は思っている。」
 ジェレミアの意見に頷きながらも、シュナイゼルは兵力に大きな開きはない
と自論を説く。
「プトランの開戦において、中華連邦は91万もの軍を動員したが、練度の差で
損害はかなりの物になった。向こうもそれを忘れてはいないだろう。今度は少数
精鋭で軍を編成しているはず。」
「なるほど、確かにそうでございますな。」
 ジェレミア自身各地を転戦し、自軍と中華連邦やEUとのナイトメア戦の練度の
差はよく感じていた。
「しかし、それでも敵を侮る事は出来ないと考えます。」
 総参謀長となったカノンが、意見を言う。
「だろうな。先鋒は間違いなく枢木スザク。白き死神が率いる直属軍。まともに
ぶつかれば、損害は計り知れない。だが、この軍が敗れた際の敵に与える動
揺は大きいだろう。一番の狙い目はそこだ。成功すれば、その後の戦いは随分
楽な物になるだろう。」
 カノンの言葉に頷いたシュナイゼルは、第一の目標を定めた。
「しかし、敵もそれは予想しているでしょう。何より、敵のほうが態勢を整えるの
が僅かではありますが、早いでしょう。陣を整えきらぬ内に開戦となれば、我が
軍の不利は明らかです。」
「其の通りだ。故に、今回の布陣は奇をてらわぬ。だが、それだけでは終わらな
い。」
 シュナイゼルが各部隊の指揮官に指示を伝える。

「無人偵察機、敵軍発見!」
 エセックスの艦橋に、シュナイゼル軍を発見したオペレーターの声が響き渡
る。
 其の暫く前に、連合軍は布陣を完了していた。
「敵軍と接触するまで、後どれ位かかる?」
「およそ、1時間半。」
「全軍、前進。シュナイゼル軍の陣形が整いきらない内に、仕掛ける。」
「イエス、ユア・ハイネス。」
 スザクの指示で、連合軍は前進する。

「敵軍、接近してきます。」
 カムランのオペレーターが、連合軍を補足した事を伝える。
「こちらの、陣形が整いきらない内に…!」
 カノンが唇を噛み締める。
「やむをえないな。戦いながら、整える。」
 シュナイゼルが、鋭い表情で戦術パネルに視線を移す。

「陛下、私はこれよりアヴァロンに戻り、前線の指揮を取ります。」
「スザク。こちらへ。」
「は?」
 戸惑いながらも、スザクはナナリーの元に来て身をかがめる。
 そして、ナナリーはスザクを思い切り抱きしめて、キスをする。
「帰ってきて…。スザク。私がこの世で最も愛する人。どうか私を、あなたの妻を
おいて先に逝かないで…。お願い…。」
 ナナリーの手も声も、震えていた。
「陛下、御安心下さい。そう簡単に敵に討たれるつもりはございません。私は勝
つために、戦いに赴くのです。御安心を…。」
 ナナリーを安心させるように言って、スザクはアヴァロンに戻ってランスロットで
発進していく。
「ブリタニア軍、ランスロットの発進を確認。」
 七星の艦橋で、ランスロットの発進した事を星刻は聞いた。
「よし、私も神虎で出る。香凛、後を頼む。」
「はっ。お任せ下さい。」
 星刻も神虎で発進していく。

「敵軍より、通信が入っております。」
 エセックスにカムランからの通信が入る。
「繋いでください。」
「イエス、ユア・マジェスティ。」
 スクリーンに、シュナイゼルの顔が映る。
「久しぶりだね。ナナリー。」
「そうですね。で、何の御用ですか。シュナイゼル一世。」
 ナナリーは、シュナイゼルを兄と呼ぶ気は微塵もなかった。
「皇位を譲って、戦いを回避する気はないのだね?」
「私は、第99代ブリタニア皇帝ナナリー一世。その名に掛けて、本国を奪還す
る義務があります。何より、あのようなおぞましい兵器を使用して、虐殺を繰り
返した者に、皇位を譲る気はありません。」
 ナナリーは毅然とした態度で、拒否の意を示す。
「それは、君の瞳に何も映らないからそう言える。このままでは多くの血が流れ
る。それは避けるべきではないかな?」
 その時、開くはずのないナナリーの目が開いた。
「ならば、この目に焼きつけましょう。この戦いを。自分が始めた戦いで何が起
きるかを…。私にはその義務があります。」
『そう、焼きつけなければ…。戦いの悲惨な光景を、命が散っていく様を…。平
和と命の尊さを知り、それを守りゆく事を始める為にも…。』
 ナナリーの目を開かせたのは、「見なければならない。」という、ナナリーの
強い意志だった。
『ナナリー…。』
 ランスロットのコックピットで、スザクは驚きながらモニターを見ていた。

「天子様。間もなく、戦闘が始まる模様です。」
 朱禁城で、麗華は連合軍の状況を聞いていた。
「これから、私は霊廟に入ります。戦闘が終わった時以外に、入るのを禁じま
す。」
 そう言って、歴代の天子が祭られている霊廟に入る。
「星刻。私の愛しい人…。どうか、無事に帰ってきて…。」
 麗華は、夫である星刻の無事を祈っていた。

「そうか…。残念だよ…。」
 スクリーンからシュナイゼルの顔が消えた。
 まるで、それが合図だったように、両軍で全く同じ指示が下された。

「「全軍、前進せよ!」」

後書き
随分、遅くなっていしまいました。
遂に、スザク達の反撃が始まります。
まず最初に、EUを奪還。
EUの支配が確立しきっていない事、軍部が不安を持っていることを利用して、
シャルンホルストが、調略を仕掛けました。
二の矢は、ブリタニア重要な軍事拠点である、ハワイを奇襲で攻略。
これで、シュナイゼルは咽喉元に刃を突きつけられた事に。
そして、スザクとの決戦が始まります。
最後にナナリーの目が、遂に開きます。
R2の24話にそっくりになってしまったのが、ちょっと残念です。
ただ、最終的には自分自身の強い意志で、ナナリーの目を開かせようと思って
いたので、これはこれで満足しています。
私のブログに、よくきてくださっている方は御存知かと思いますが、私自身、3
年前に病気で「もう、歩けない。」と医師に宣告された経験がある身です。
それでも、「もう一度、歩きたい。」
ひたすら、そう思って医療改革でリハビリが受けられなくなっても、自分なりに
トレーニングを続けて、今は杖をつきながら歩けるようになりました。
全てに当てはまるわけではありませんが、人の意志は思いもよらぬ奇跡を起こ
すのではないか。そういう風に考えております。

次回AFTER TURN27 激闘 の 空
兵力は劣るが、フレイヤを持つシュナイゼル。
それに対する秘策を用意して、決戦を挑むスザク。
皇帝として、皆で手を取り合い平和を維持していく世界を望み、戦場に身を置く
ナナリー。
戦いの行方は?

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プロポーズ小作戦19
プロポーズ小作戦19 「本当に星刻はそんなことを言ったの」 「は、はい。あの天子様、星刻様、黎大司馬は出撃のご用意もありますのでとてもお忙しいかと」 瞳を大きく見開いてそれでも詰問長にならないように気をつけて、天子は女官に尋ねた。 「そう、そうね。星刻はいつもとても忙しいもの。子供のわがままに付き合う時間は無いわね」 一瞬女官は天子が泣いているかと思った。以前ならすぐ涙が落ちた場面である。 ...続きを見る
金属中毒
2009/04/02 17:17
ハンスキン
ハンスキン「BBクリーム」の購入はこちら。 ...続きを見る
ハンスキン
2009/07/03 12:16

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは凪です。久しぶりという気はしませんが、ちょくちょく見に来ていましたので。
えっ ともかく誤植お知らせから。

 コーネリアは、無意識に拳を握り締めていた。

あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
「EU議会議長、シモン・ド・ラトゥールです。本日5月7日、我がEUはシュナイ


たぶんワードで文字キーが当たってしまったんですね。よく私もやります。

今回はやられたと叫びました。たぶん星刻が。
きっとお城の女官達が走り回って結婚式の用意してくれたんですね。あぁ、できるなら式も見たかったです。
外伝期待していいですか。

2009/04/02 17:15
凪さん。
遅くなりました。
コメントありがとうございます。

>誤植お知らせ
 ありがとうございます。
 いつも注意して最終チェックをしているのです
 が、たまにどうしても出てくるんですよね。
 さらに注意しないと。

>外伝期待していいですか。
 書く予定ですよ。
 恋愛物は苦手ですけど、星刻と天子は結ばれて
 欲しいですしね。
CIC担当
2009/04/06 09:59

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