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zoom RSS コードギアス 二次小説 AFTER TURN25 東京 会談

<<   作成日時 : 2009/02/26 22:52   >>

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「まさか、このような形で日本に戻るとはな。」
 羽田の空港に黒の騎士団の浮遊航空艦、利根が到着し、藤堂達は2年ぶり
に日本の土を踏んだ。
「しかし、歓迎はされていないようですな。」
 ディートハルトが、取材に訪れた報道陣の空気から、そう感じた。
「仕方ない。2年前の事をそう簡単に、忘れてはくれないさ。」
 扇が溜息混じりに言う。
「日本人の報道陣も、来てる…。」
 カレンは、ブリタニア人だけでなく、日本人の報道陣も来ている事に驚いた。
「それだけ、連邦エリアでは日本人の人権が保障されていると、いう事だな。」
 アルベニスが、カレンに話しかける。

 しばらくすると、ノネットが親衛隊である、シュトルツ・ヴァルキュリエ隊
を引き連れて、藤堂達を迎える。
「神聖ブリタニア帝国、ナイト・オブ・ラウンズ、第9席。ナイトオブナイン、
ノネット・エニアグラムと申します。東京まで護衛を務めさせていただきます。」
「恐縮です。」
 2人が握手をする。
『護衛と言うより、監視か…。ナイトメアは最新鋭のヴィンセント。無理も無い
か…。』
 藤堂はスザク達が自分たちをどう考えているか、改めて理解した。
 もう一つの滑走路には、黒の騎士団の技術提供を受けて建造された浮遊航
空艦、崑崙が着陸し、中華連邦の代表として来た星刻や范質が、クローディア
の迎えを受けていた。
 ロシア州の代表も、エリファレットが出迎え、皆がリムジンに乗り込み、ヴァル
キュリエ隊に護衛されながら、東京に向かった。

「今のところ、不審な動きは見当たりません。」
 ギルフォードが、コーネリアに報告する。
「今はまだあるまいが、最後まで気を抜くなよ。中華連邦とロシア州は一応警
戒する程度でよいが、黒の騎士団からは目を離すな。何をしでかすか、解らん
からな。」
 政庁で、コーネリアは中華連邦、黒の騎士団、ロシア州の代表の護衛を指揮
していた。
 だが、黒の騎士団に関しては、護衛と言うより、監視の意味合いが強い。
 血の繋がった妹であるユーフェミアの、非業の死が原因である。
 もしこれで、ナナリーまで非業の死を遂げては、悔やんでも悔やみきれない。
『ナナリーは、守り抜いてみせる。何としてでも。』
 そう、コーネリアは心に誓っていた。

「陛下。中華連邦、ロシア州、黒の騎士団、日本自治政府。全ての代表が到着
いたしました。」
 ドロシーがナナリーに、報告する。
「ご苦労様でした。晩餐会の用意は?」
「既に済んでおります。しかし陛下、よろしいのでしょうか?」
「何がですか?」
「はっ。恐れながら申し上げます。日本自治政府の代表達は、黒の騎士団の代
表を見るなり、表情が険しくなったとの事。諍いが起きるのではないかと、心
配でなりません。」
「そうですか…。」
 コーネリア達は黒の騎士団に対し、信用など持ち合わせてはいなかったが、
日本自治政府も、黒の騎士団が会談に臨席することに、不安を持っていた。
 2年前のユーフェミアの死を考えれば、それは無理からぬことだろう。
 皇帝であるナナリーや、軍の最高司令官であるスザクを暗殺するかもしれな
い。
 もちろん、そんな事をすれば、黒の騎士団は日本人から非難され、二度と日
本の土は踏めないことは明白である。
 それを分かっていて、尚、黒の騎士団に対する不信感を募らせていた。
「その為の、晩餐会です。少しでもいい。互いに、話をする事によって、そういっ
た感情が取り除かれる事を、私は願っているのですから。」
「申し訳ありません。出すぎた事を申しました。」
 ドロシーが、恭しく頭を下げて謝罪する。
「いえ。貴方の職務上、心配するのは無理からぬ事。責める気はありません。
警備のほうを抜かりなく。」
「イエス、ユア・マジェスティ。」
 恭しく礼をして、ドロシーは警備の指揮を取りに行った。

「カレンさんたちと食事を共にするのは、やはり抵抗がありますか?あなた。」
 スザクの気持ちを案じて、ナナリーが尋ねる。
「無いと言えば、嘘になるね。ユフィの事もある…。」
 ユーフェミアが非業の死を遂げた時、スザクの中で、始めて明確な殺意が、
生まれた。
 立ちはだかる黒の騎士団のナイトメアを、全て粉砕し、薙ぎ倒し、カレンの
駆る紅蓮を追い詰めた。
 ルルーシュが来なければ、確実にカレンを仕留めていただろう。
 あの時の怒りは忘れる事が出来ずに、スザクの心の中の一角に炎のように、
存在している。
「大丈夫だよ。今回の会談は極めて重要だからね。私情は封じる。皇配として、
全軍の総司令官としての態度を崩しはしないよ。安心して。」
「では、私も皇帝として、あなたの妻として、笑われるようにないよう務めま
す。」
「肩肘を張る必要は無いよ。リラックスして。」
 スザクがナナリーの肩に、手を置く。
 その後、着替えを済ませて、晩餐会の会場へ向かった。
『私の夫としてとは、言ってくださらないのですね…。あなた…。』
 夫婦になっても、微妙に距離を置くスザクの態度を、ナナリーは悲しく思っ
ていた。

「こうして、共に食事をする機会が来るとは思っていませんでしたな。皇配殿
下。」
「私もです。奇妙な物ですね。つい最近まで、シベリアで激闘を繰り広げた相手
が貴方とは思えませんよ。黎枢密使。」
 晩餐会が終わった後、仮皇宮の庭園でスザクは星刻と話をしていた。
「できれば、戦いなど無いほうがいい。そう思っています。私が言っても説得力
は無いでしょうが…。」
 月を見上げながら、スザクが自嘲気味に呟く。
「誰もが、そう思っているでしょう。殿下も、そして、私もまた同じです…。」
 星刻も月を見上げた。

「ナナリー。遅くなったけど、結婚おめでとう。私達が言えた事じゃないけど。」
 カレンは嘗てのアッシュフォード学園の生徒会にいた時のように、ナナリーと
話していた。
 ナナリーを護衛していたドロシーは、カレンの話し方を咎めようとしたが、ナナ
リーはそれを止めた。
「ありがとうございます。カレンさん。あ、そうだ。お伝えする事があります。」
「何?」
「お母様ですが、容態は確実に回復しているそうです。いらっしゃると聞いて、
どうしてもお伝えしたかったんです。」
「ありがとう。ナナリー。」
 ふと、スザク達を見ると、藤堂達が向こうのが見えた。
「あ、ごめん。話はまた後でね。」
 今日は、騎士団の服でなく、晩餐会に相応しいドレスを着ているため、裾を持
ち上げて、走っていった。

「黒の騎士団が向かった。警戒態勢をレッドに移行。」
「イエス、マイ・ロード。」
 スザクの警護の指揮を取るヴァレーリアが、警戒を強めるよう命令する。

「久しぶりだな。スザク君。」
「藤堂さん…。」
 スザクは一瞬、驚いたような表情になる。が、すぐにやや厳しい表情になる。
「私はお邪魔なようだ。殿下、失礼いたします。」
「星刻殿、貴公もここにいてほしい。」
 星刻がスザクを見ると、スザクも頷いた。
「それで、何の御用でしょうか?」
「随分と偉そうな口の利き方ね。さすが、皇配殿下って、ところかしら。」
 カレンがスザクに厳しい視線を向ける。
「カレンか…。それでは、藤堂殿。お話を。」
「へえ、私なんて、無視の対象でしかないんだ…。」
「紅月殿。殿下にたいして、貴方の態度はあまりにも無礼が過ぎます。改めて
いただきたい!!」
 ヴァレーリアがカレンを見る。
「生憎と、私はブリタニアの軍人じゃないし、ブリタニアの国民でもないの。スザ
クにぺこぺこ頭を下げる義理は、無いわね。」
 カレンの言葉に、思わずヴァレーリアは腰の剣を抜こうとする。
「紅月!いい加減にしろ!!我々は、会談の為に来たのであって、喧嘩を売り
に来たわけではないのだぞ!!礼儀を弁えぬか!!」
 藤堂が、厳しい口調でカレンを諌める。
「ロセッティ卿。彼女の殿下に対する無礼。どうか、私に免じて赦してやってい
ただきたい。」
 藤堂が、深々と頭を下げる。
「ロセッティ。君の気持ちは嬉しいが、ここは怒りを納めて欲しい。」
「イエス、ユア・ハイネス。」
 腰の剣から手を放し、恭しく礼をしてから、警備の指揮に戻る。
「すまなかった。だが、紅月の気持ちも察して欲しい。君に聞きたい事があった
ようでな。」
「別に、怒ってはいません。ごく普通の反応ですよ。」
「そうか…。では、話を始めさせてもらおう。君はこれからどうする気だ?」
「シュナイゼルを倒し、本国を奪還します。その後は、復興に取り掛からなけれ
ば、ならないでしょう。」
「策は、あるのか?相手は、ナイトオブワンすら倒したのだぞ。」
「あります。幾つかクリアしなければならない条件はありますが、それさえクリア
すれば、大丈夫でしょう。」
「成る程…。」
 藤堂の問いに対するスザクの答えを聞いた星刻は、納得したように頷く。
「それで、その策とは何ですかな?」
 ディートハルトが尋ねる。
「今は話すわけにはいきません。会談が開かれるとは言え、味方同士ではない
のですから。」
「そうだな…。」
 藤堂が納得したように頷く。

「結局、あんたはブリタニアの為に、戦うだけじゃない!日本人でしょ!?誇り
は何処にいったの!?」
 カレンの問いを聞くと、スザク暗い笑いを浮かべる。
「死んだよ…。」
「えっ?」
 カレンはスザクの言っている意味が解らなかった。
「日本最後の首相、枢木ゲンブの息子。枢木スザクはとうの昔に死んでいるよ。
完全に死ぬまでには、随分時間がかかったけどね。」
 暗い笑顔のまま、スザクは話し続ける。
 その表情に、さすがの藤堂も表情を険しくし、星刻もどう反応していいか、解
らなかった。
「12年前、父を殺した時に僕は死んでいた。でも、しばらくして死にきれていな
い事に気づいたんだよ。父を殺してからの7年間。僕は生きた死体に過ぎなか
った。だから、僕は日本人とは決して見られる事は無い、名誉ブリタニア人にな
った。でも、それでも駄目だった。そして、本当に、日本人枢木スザクが死ぬ時
が来た。ユフィが死んだ時、ようやく死ぬ事が出来たんだよ…。」
『何?どういう事…。』
 カレンは一言も喋る事が出来なかった。
 言っている事が理解できなかった。
 そうする必要があるかどうか、判断が出来なかった。
 カレンにできる事は、呆然としている事だけだった。
「そして、僕は皇帝直属の、最強の12騎士の一人、ナイト・オブ・ラウンズとな
った。そして、今は、第99代皇帝ナナリー・ヴィ・ブリタニアの配偶者たる皇
配…。」
 暗い表情のまま、カレンたちを見る。
「日本人、枢木スザクは、もういない。いてはならなかったから、僕が殺した。
後世の歴史書に、日本人として刻ませぬ為にね…。もう、日本人にとって、僕
は日本人の枢木スザクじゃないんだよ。僕がラウンズのひとりとなった時点で、
あくまで、ブリタニアの貴族。重ねて言うけれど、もう、僕は日本人じゃない
んだよ。そして、これからも…。」
 変わらぬ暗い表情を見続ける事に、カレンは耐え切れなくなり、へたりこむ。
「あえて、己を殺してまで、嘗ての祖国を救うと言われますか?殿下。」
 星刻の問いに、スザクは静かに首を横に振った。
「そこまで、立派な人間ではありませんよ。私は只、罪を償おうとしているだけ
なのですから…。」
 スザクは、自分を嘲笑うかのような表情で答えた。
「解りました…。もうその話はやめましょう。話は変わりますが、殿下にお尋ね
したき議があります。」
「何でしょうか?」
「ギアス…。」
 星刻の言葉に、そこにいる者達の表情が一変した。

「陛下。黒の騎士団は何をするつもりでしょうか?」
 伊藤が、藤堂達と話しているスザクを横目で見ながら、ナナリーに尋ねる。
「そこまでは私も。日本の方達はどう思っておいでなのですか?」
「日本人の反応は半々といったところですな…。特区での虐殺事件の遺族は、
黒の騎士団に恨みを持っておりますし、そうでない者の一部は中華連邦の一
件以来、見方を変えているのも事実です。我々自治政府としては、彼らが陛下
に協力すると言ったとして、額面どおりに信じてよい物か、判断に迷っておりま
す。」
 伊藤が複雑な表情で、ナナリーに答える。
「そうですか…。そうでしょうね…。」
 伊藤の言う事は、ナナリーにも解る。
 顔には出さないが、黒の騎士団が会談に参加する事に、怯えを感じていた。
 伊藤自身は藤堂と面識があり、人柄も知っている事は先程聞いたが、特区で
の虐殺は2年前。
 記憶が薄れるには、あまりに経った時間が短すぎる。
 中華連邦で星刻に力を貸した事で、日本人の見方が変わったことも事実だが、
その反面、遺族の中には、いまだ黒の騎士団を憎んでいる者がいるのも事実
である。
 その状況の中で、自治政府が黒の騎士団を簡単には信用できない。
 下手をすれば、暴動が起きる可能性もある。
 自治政府としては、黒の騎士団に関する事は、慎重にも慎重を期する必要が
ある。
『あの人次第…。』
 晩餐会が終わった後、ナナリーはスザクに聞こうと決めた。

「枢密使は、ギアスの何をお聞きしたいのでしょうか?」
 スザクの鋭い視線が、星刻に突き刺さる。
「来るべき、シュナイゼルとの雌雄を決する戦いにて、殿下はギアスを利用なさ
れますかな?」
 しかし、星刻はスザクの視線を物ともせず、尋ねた。
「2年前、ギアスがきっかけで多くの命が、失われました。失われる必要の無い
多くの命が…。」
 口調こそ静かだったが、スザクは湧き上がる激情を抑えていた。
「そして、多くの人々が悲しみました。私も、失いたくない人を失い、悲しみ、怒り、
憎みました。我が義姉、コーネリアもまた然り…。」
 スザクの視線が一層鋭くなる。
「それでも、我らがギアスを利用すると、お考えですか?」
「失礼いたしました。非礼をお許し下さい。殿下が、そうお答えになる事は、私も
存じていました。ですが、どうしても尋ねておく必要があったのです。非礼は重ね
重ねお詫びいたします。」
 星刻が膝をついて、深く頭を下げる。
「お立ちになってください。理解していただければ、結構なのですから。」
 そう言って、立ち上がった星刻に、膝についた土をはらう為に、ハンカチを差し
出す。
「おそれいります。」
 膝の土を払ったハンカチを、スザクに返す。
「失礼。ロシア州の代表と話をしたく思いますので。では。」
 一礼して、スザクはラトゥール議長らの元に、歩いていった。

「罪を贖う為に、国を捨て、祖国の人間であった自分を殺すか…。藤堂殿、貴方
にはできるかな?」
 ゲンブの死の真相を聞かされていた星刻が、藤堂に尋ねる。
「できませんな。たとえいかなる罪を犯そうとも、やはり私は日本人。それを捨て
去る事など到底出来ない。」
 そう応えて、カレンを見る。
「彼女もまた、同じでしょう。」
「そうだろうな。私も我らの大地とそこで育った事を、到底捨て去れぬ。だが、ス
ザク皇配はそれをした。何と壮絶な…。」
 夜空を見上げながら、星刻は呟いた。

「あなた。お休みになられないのですか?」
 晩餐会が終わり、普通なら既に眠っている時間にもかかわらず、スザクはベ
ッドに入ってはいなかった。
「先に、寝ていていいよ。暫く、考え事をしているから…。」
 スザクは、つい先ほど届いたスパイからの情報を受けて、明日の会議の事を
考えていた。
『これで、ロシア州側の条件はクリアされた。もう、日本に構っている暇は無
い…。残るは中華連邦か…。』
 プトランの会戦において中華連邦軍は大きな損害を被ったが、それは星刻の
直属軍の話であり、他の軍は全く無傷である。
 現在は民政に重きを置いているが、その気になれば数十万の大軍を動かす
事は可能である為、スザクはこの可能性をゼロにすることで、後顧の憂いを無く
す必要があった。
『黒の騎士団が会見に参加する事から、日本独立の要求をしてくる可能性は捨
てきれない…。それに関しては、まあいい。問題はその後だ…。』
 日本が独立国家になった時、中華連邦が自国の影響下に置こうとする可能性
をスザクは考えていた。
 中華連邦にとって、日本は首に突きつけられる刃と言える。
 国防の観点から見れば、自国の影響下に置く事が最も望ましい。
 しかし、それで日本が独立国家といえるのか、スザクは懐疑的だった。
『自治政府の反応も、気になるな…。シュナイゼルとの戦いの事もあるし、考え
る事が多すぎる…。』
 スザクはやや疲れた表情で、寝室の窓から、夜空を見上げる。

「あなた…。」
 開いていない目を、ナナリーはスザクに向けていた。
「まだ、寝ていなかったのかい?早く休まないとね。明日は、かなり大変な事
になるから…。」
 ナナリーの唇に優しくキスをしながら、横にさせる。
「一緒に…。」
「え?」
 理解できずに、スザクは首を傾げる。
「あなたも一緒です。確かに、今はとても大変な時期ですけど…、私達は夫婦
なんですから、一緒に寝るのは当たり前です。それに夫であるあなたが、私が
寝た後も、明日の事を考えているのに、のうのうと眠る事はできません。まだ、
考え事があるなら、私も起きています。」
「…解った。」
 このままでは、ナナリーがいつまでも起きていそうな事を、悟ったスザクは、ガ
ウンを脱いでベッドに入った。
「あなた。藤堂さん達とは、何をお話しになったのですか?」
 ナナリーが、スザクと藤堂達との会話の内容を聞く。
「政治的なことは何も…。それは明日話すことだからね。ただ、昔話とかを少しか
な…。」
 嘘ではないが、詳細な事をスザクは話さなかった。
 自分の中にある、己に対する暗い殺意。
 聞かせる必要は無いだろう。
 そう考えたが故に…。
 やがて、2人は眠りについた。

『日本人としての、自分を捨てる…。』
 カレンは寝室の窓から、夜空を見上げながらスザクの話を考えていた。
『何で…、どうして、そんなことができるの…?』
 カレンは、ブリタニア人とのハーフだ。
 そのまま、ブリタニアの名門シュタットフェルト家で生きていくこともできた。
 それでも、カレンは日本人として生きていくことを決めた。
 日本人の血が、尊敬するナオトの存在がそうさせた。
 日本人であるという、確固たるアイデンティティを捨て去る事など、カレンには
出来なかった。
『父親の事が、そうさせたの…?でも、それはあんただけのせいじゃないでしょ
う?』
 スザクの父、ゲンブの死の真相は、藤堂から聞かされてカレンも知っていた。
 もし、自分がスザクと同じ状況だったら、カレンも似たような事になってい
た可能性は、充分あるだろう。
 だが、例えそうなったとしても、自分なら日本人として贖罪をする。
 カレンはそう考えた。
『枢木ゲンブの息子だから…?そうか、だからなんだ…。その気になれば、日
本中のレジスタンスを束ねる事も出来た。それで日本を解放すれば、あんたは
救国の英雄。でも、それが許せなかったんだ…。』
 カレンはスザクを、少し理解できたような気がした。
「どうした?何を悩んでいる。」
 ドアによっかかって、C.C.がカレンに話しかけてくる。
「C.C.…!」
 カレンの目つきが鋭くなる。
「久しぶりだな。私が黒の騎士団を追われて以来か…。」
「その原因を作ったのは、あんたでしょう?ルルーシュと、ゼロと一緒に私達を、
日本人を騙して、利用して…。挙句の果てには、スザクの副官?一体、何を企
んでいるの?」
「黒の騎士団にいた時と変わらん。私の望みを叶える為。それを条件に私とル
ルーシュは契約を結び、ギアスを与えた。が、ルルーシュはスザクに負けた。」
「そして、私達は利用されて、日本を追われる身になったわ。」
 カレンの目からは、殺意すら感じられる。
「これでは、話も出来んな。いずれ、またな…。」
 C.C.は部屋を去った。

「だから、言っただろう。今、カレンにあってもいい事など無いと。心配するのは
結構だが、善意を持っていても、受け入れてもらえる立場ではないんだぞ。私
達は…。」
 C.C.はルルーシュに愚痴をこぼしながら、宿舎に戻った。

「それでは、些か変わった形ではありますが、会談を開始させていただきます。」
 翌朝。代表として、ジュリアスが会談の開始を宣言する。
 日本自治政府は謁見を申し出た形になっていたが、協議の結果、会談に参加
する事となった。
「宰相閣下。よろしいでしょうか?」
「伊藤総理。どうぞ。」
 日本自治政府を代表して、伊藤が発言を求めた。
「中華連邦の代表団に、お尋ねしたい。これは、あくまで国家間の会談である
はず。そこに何故、黒の騎士団が代表がいるのか、お聞かせ願いたい。我らも
国家とは言えないが、この日本の自治を任されている。だが、黒の騎士団は、
あくまで只の亡命者の集団であり、その実態は傭兵組織に近いとも言える。こ
の場にいるのは、奇妙だとは思われませんか?」
 星刻と范質をじっと見据えて、伊藤が黒の騎士団がここにいる理由を尋ねる。
「確かに黒の騎士団は、インド軍区の傭兵と言えなくも無い。我が国への亡命
者の集団と言う御指摘も、その通りです。しかし、いざという時の戦力には充
分になり得る。この会談の行方にもよりますが、ここに集まる国の国益にも繋
がりましょう。総理を始め、日本の方々は2年前の事もあり、黒の騎士団に対
し、不信感を持たれるは無理からぬ事でしょう。ですが、ゼロに利用されたと
いう視点で見れば、彼らもまた被害者。無論、責任が全く無いとは申しません。
故に、贖罪の機会を与えていただきたいと、個人的にも考えて代表を選び、こ
こに来てもらうこととなりました。どうか、御理解いただきたく存じます。」
 星刻が伊藤に答える。
 伊藤ら、日本自治政府の面々は、少しの間話し合う。
「解りました。但し、彼らが2年前ゼロを首領に選び、乱を起こして多くの血を無
用に流した事実は消えません。再び、日本で暮らせると楽観的に考えるのは、
おやめいただこう。」
 伊藤の言葉に、カレンが俯きながら、唇をかむ。
「承知しております。我らとて、罪人であると言う自覚ぐらいは持っております。」
 藤堂がそう言い、伊藤は頷く。

「宰相閣下、よろしいですかな?」
 ラトゥールが挙手して、発言を求める。
「ラトゥール議長。どうぞ。」
「今回、我らが会談を申し入れた理由でありますが、貴国との間に休戦協定を
結び、またできれば我が国への協力をお願いしたいと思ったからです。」
「EU本土奪還作戦ですか…?」
 スザクが静かに言う。
『やはり。気づいていたか…。』
 スザクも情報収集をしている事は、シャルンホルストも予想しており、又、
ロシア州が本土の奪還作戦を企図している事もスザクが予想しているだろうと、
考えていた。
「我が国が入手した情報によると、EU各州の代表が全て逮捕されたとか。罪
状は国家反逆罪。」
 スザクは、ブリタニア本国に潜ませたスパイからもたらされた情報を、読み
上げる。
「その通りです。EUを手中にする際に、シュナイゼルはブリタニアを手に入れた
暁には、EU議長の地位を返還する事を約束していましたが、シュナイゼルは約
束を反故にしたのです。シュナイゼルに利用された各州の代表は、事を起こす
前に、捕縛されました。」
 情報収集の為に潜伏している咲世子が得た情報を、ラトゥールは話す。もは
や、隠しても意味が無いからである。
「しかし、協力と言っても我が国にもさほど余裕はありません。正直、お力添
えは難しいのですが…。」
 ジュリアスが、星刻をちらりと見てラトゥールにそう言った。

「話の腰を折るようで申し訳ありませんが、皇帝陛下にお聞きしたき議がござ
います。よろしいでしょうか?」
「黎枢密使。何でしょうか?」
「シュナイゼルを打倒した後、陛下はいかなる政を行われる、御所存でしょう
か?」
『それが、中華連邦側の目的か…。』
 スザクは中華連邦が会談を申し込んできた理由を、即座に理解した。
 シュナイゼルとナナリー。
 どちらと手を結ぶか、判断材料を得ようとしている。
 場合によっては、シュナイゼルと組むことも視野に入れていることも、理解し
た。
「これ以上の領土拡張は無いと、申し上げておきます。」
『対外拡張の国策を捨てるか…。』
 范質がナナリーの言葉の意味を理解した。
 そこで、あえて相手の嫌がりそうな質問をする事を決めた。
「して、今まで手に入れた領土に関しては、如何なさいますかな?」
 案の定、コーネリアが眉をしかめる。
「現在、この日本が日本人の自治で治められている、連邦エリアである事はご
存知でしょうか?」
「無論でございます。スリランカもそうですな。」
「私は、すべての属領を連邦エリアとするつもりです。そして、その先は…。」
 ナナリーはスザク達に話し、その後、正式に決定した事を話す。

「真でございますか?」
 ラトゥールが驚きを抑えながら、ナナリーに確認する。
「第99代皇帝の名にかけて、嘘は申しません。」
「但し、満たさなければならない、条件があります…。」
『我が国の出方か…。』
 星刻はじっと、スザクを見ていた。
「我が国は、この日本に侵攻する気は、毛頭ございません。日本だけでなく、
全ての属領に対してです。無論、攻められれば戦います。ですが、場合によ
っては、国を守る為に不義と誹られようとも、そうせねばならぬ場合もあると存
じます。我が国を、ブリタニア本国のような状態にするわけにはいきません。
何しろシュナイゼルは、あのナイトオブワン、ブリタニア最強の騎士をも破った
男。さらにその際、ノーフォーク、サンディエゴ軍港は消滅し、艦隊も全滅の憂
き目にあったとか…。」
『フレイヤについては情報が無い分、中華連邦はこちら以上に脅威を覚えてい
るか…。』
 フレイヤの情報は、スパイからある程度の物がスザク達の元にもたらされて
いた。
 そこまで、星刻が知っているか確証は無いが、何らかの情報を持っている事
は予想しているのだろう。
 それを成果として得るのも、星刻の目的である事を、スザクは悟った。

「もし、シュナイゼルの用いた手段を知った場合、貴国はどうなさる?抗う術無
しと見て、シュナイゼルと手を結ばれるか?」
 コーネリアが星刻に尋ねた。
「必ずしもそうはなりますまい。ですが、知らなければ何とも言えません。しか
し…。」
「しかし、何ですかな?」
「我が国とロシア州は、未だ同盟を結んでおります。それを考えて結論を出す
必要があると、申し上げておきます。」
 コーネリアを正面から見て、星刻は答えた。
「いいでしょう。入手した映像をお見せしましょう。」
「陛下?」
「宰相。ここは、危機感を共有する時です。世界に迫る危機を力をあわせて、
乗り切る時でしょう。準備を。」
「イエス、ユア・マジェスティ。」
「陛下、中華連邦に聞いておきたき議がございます。」
 コーネリアの声から、重要な事と判断したナナリーは許可する。
「何なりと。」
 星刻だけでなく、范質もコーネリアを正面に見据える。
「我らがシュナイゼルを討った後、中華連邦の領土は大きくなりますかな?」
「『鷦鷯深林に巣くうも一枝に過ぎず』。これが答えでございます。」
 荘子の言葉を引用して、范質が答える。
「貴殿の言葉。それは中華連邦の意志と見てよろしいかな?」
「今回の会談に際し、天子様から外交の全権を委ねられております。我らは天
子様の代理人。その任を帯びた身で、不義と言われる事はいたしません。」
『そこまで、天子の信頼が篤いか…。』
 今は、信頼に値すると考えたコーネリアは、頷く。
「陛下、用意が整いました。」
「始めて下さい。」
 映像が流される。

「明日の10時がタイムリミットか。」
 執務室でコーヒーを飲みながら、シュナイゼルは机にあるカレンダーを見てい
た。
「即位式の準備は整っております。原稿も2通り用意は終わりました。」
 即位式の準備の状況を、カノンが報告する。
「結構、短時間の間によく準備してくれたね。」
「殿下、ナナリー陛下は、皇位をお譲りになるでしょうか?」
「確率としては、半々だろうね。賢明な判断をして欲しいと願っているが、そうな
らないかもしれない。ニミュエ隊とジェレミアの状況は?」
 ナナリーが皇位を譲らない場合も想定して、フレイヤに次ぐ戦力であるニミュエ
隊とジェレミアの状況を、カノンに尋ねた。
「ニミュエ隊の調整に問題はありません。ジェレミアの方は、ギアスキャンセラー
の事もありますので、今しばらく掛かるかと…。」
「彼は特別だからね。どれ位掛かる。」
「1週間は…。ジークフリートは後3日程で終わると、報告されています。」
「出来る限り、急ぐよう技術陣に指示してくれ。」
「承知いたしました。」
 一礼して、カノンが執務室を出る。

『まさか。父が利用しようとしていたギアスに対抗する研究が、実を結ぶとは
ね。』
 シャルルがギアスを政治に利用しようとしている事を示唆する情報を、手に入
れた時から、シュナイゼルは密かにギアスに対抗する手段の研究を始めてい
た。
 最初にギアスについて解ったのは、何らかの催眠術らしいという事。だが、そ
こから先は思ったより解明は進まなかった。
 だが、ここでクロヴィスが進めていた、C.C.の研究。即ちコードRの研究が役
に立った。
 その中に、C.C.から微弱で特殊な波長が検出されたことが記されており、さ
らにシャルルもしくはシャルルの関係者がギアスを与えたと考えられるギアスの
使い手の少年。当時は既に、余命いくばくも無い状態だった所をシュナイゼルに
拾われたロロからも、ギアスを使用した際、同様の波長が検出されたことで、ギ
アスキャンセラーの研究が始まった。
 そして、試行錯誤の結果、ジェレミアのギアスキャンセラーが完成した。
 だが、ロロは結局手の施しようがなく、波長が検出された後、ギアスを使わせ
なかったが、息を引き取った。
『時を止めるギアスか…。おそらくは暗殺にでも使用されたのだろうが、惨い事
をしたものだ。だからこそ、私はギアスを使って目的を達成したりはしない。』
 必要悪と割り切れば、シュナイゼルもギアスを使用したりはしただろう。
 だが、シュナイゼルは人の世は、人の理で、知恵で治められるべきだとの信
念を持っていたので、使用しようとはしなかった。
「だが、私はコードRの研究成果を利用している。父をどうこう言える資格は無
いか…。」
 苦い思いで、シュナイゼルはコーヒーを飲み干した。
「だが、それも終わる…。いや、終わらせて見せる。」

 フレイヤの映像を見た星刻達は、声が出なかった。
『このような物を、躊躇なく使用したというのか…。』
 星刻は謀略を否定しない。時にはそれが必要である事を理解している。
 だが、フレイヤだけは肯定できなかった。
『周囲には、民間人もいたはず。それを理解していなかった筈は無い…。』
 戦いは、あくまで武人同士で行い。無辜の民は巻き込むべきではないという
のが、星刻の武人としての信念である。
 その信念が、星刻に語りかけてくる。
『手は結べぬ…。』
「これは戦争ではありませんな。只の虐殺行為…。」
 険しい表情をした藤堂が、言う。
「確かに…。」
 腕を組んだシャルンホルストが、藤堂に続く。
「何て事を…!」
 普段、温厚な扇が、怒りを露にしている。
「極端なマキャベリズムは、このような惨劇を起こす。そういう事でございましょ
う…。」
 星刻の言葉が、静まった会談の場所に響く。
「到底、シュナイゼルとは、手を組む事はできませぬな。我が国が悪魔の片棒
を担いだ国として、歴史に刻まれる事は耐えられませぬ。」
 范質の言葉に、星刻は静かに頷く。
「中華連邦、ロシア州、日本自治政府の代表の方々に、提案したいことがあり
ます。今後の世界の平和の為に…。」
 ナナリーがある事を、提案した。

「いかがでしょうか?」
 提案に対する答えを、ナナリーが尋ねる。
「我が国に断る理由はありませんな。何より、我が国にとっても有益です。」
 ラトゥール議長が、賛成の意を示す。
「中華連邦の方々は、如何ですか?」
 星刻と范質に尋ねる。
「確かに世界平和へ、大きく貢献できましょう。ですが…。」
 星刻がナナリーに視線を向ける。
「それでも、道は険しい。それを、陛下は御承知でしょうか?」
「勿論、これが決定的な処方箋になるとは、思っていません。仰るとおり、道は
険しいでしょう。それでも、私は茨の道の先に、目指す物があると信じたいので
す。」
「陛下の提案に、我が中華連邦は賛同いたします。」
 范質が、賛成の意を示す。
「我が自治政府も、及ばずながらお力になりましょう。」
 伊藤が続く。
「我が黒の騎士団も、加勢する事をお約束します。」
 藤堂も続く。
「受諾していただけた事、とても嬉しく思います。」
 ナナリーが、感謝の言葉を言う。
『これで、条件はクリアされた…。』
 スザクは成功の果実を得る事が出来て、満足していた。

「ヴィレッタ卿。黒の騎士団の扇副司令に会いにいっては如何ですか?」
 会談終了後、昼食会の会場に移るナナリーの傍らで警護の任についていた
ヴィレッタに、ナナリーは尋ねた。
「何故でございますか?」
「恋仲なのでしょう?貴方方は。」
 昨日の晩餐会の後、ナナリー護衛の任についていたヴィレッタは、扇とおよそ
2年ぶりに、再会した。
 その時の会話を、ナナリーは人伝いに聞いていた。
「私は、陛下を守る近衛隊の一員でございます。決してその様な事は…。」
「別に、私は責めてはいません。それに、本国を取り戻せば、誰にはばかる事
もなく、会うことも出来るかもしれません。これは、自治政府次第になりますが。
だからこそ、会いに行くべきだと、私は思います。」
「ヴィレッタ卿。少しの間なら、問題はありません。」
 迷う表情を見せるヴィレッタに、ドロシーが語りかける。
「…御配慮、感謝いたします。」
 ヴィレッタは、扇の元へ行った。

「いよいよ、明日か…。」
 仮皇宮のサロンの一室で、ジノ達はワインを飲みながら、明日に思いを巡ら
せていた。
「いまさらだけど、全員に尋ねたい。これでいいね?」
 ラウンズだけの時は、昔の通りにしようというスザクの提案があり、ジノ達は、
普段どおりにくつろいでいた。
「いまさらだぜ、スザク。今の俺達の主君はナナリー陛下だ。シュナイゼルじゃ
ない。それに俺は四男坊。今まで分家にいて、本家とはほとんど縁が切れて
いるも、同じさ。」
 ジノが肩を竦めながら言う。
「戻ったところで、体よく利用されるだけ。私は私の意思で生きていく…。」
 アーニャがブログの記事を書きながら、続く。
「叶わぬと願っていた事が、叶う。でも、シュナイゼルが認めるかどうか解らな
い。ならば、道は一つだよ。」
 そう言って、エリファレットはワインを一口飲む。
「可愛い後輩の仇に、尻尾はふれないよ。」
 空になったグラスにワインを注ぎながら、ノネットがいつもの調子で言う。
「私も、仇を取らなきゃならないのよね。」
 ワインを一口で飲み干して、クローディアが決意を表す。
「解った…。」
 スザクが静かに頷く。

「おめでと〜。太陽炉の調整終了〜。これで、ランスロットは性能をフルに発揮
できるね〜。アロンダイトも調整終了したし、これで万全だね〜。」
 ファクトリーで、太陽炉の調整が終了したランスロットを見ながら、ロイドは、は
しゃいでいた。
「でも、まさか。あれを使えるようにしておくように言われるとは、思いませんで
した。」
「試作段階で、お蔵入りした機体だからね。スザク君、何に使う気なんだろう
ね?」
 ランスロットの隣に並んでいるナイトメアを見ながら、ロイドは首を傾げる。
「クープラン中尉、もう、少佐ですね。クープラン少佐が使うと聞いています
けど。」
 セシルがナイトメアのシミュレーターのデータを、ロイドに渡す。
「あら〜。好成績だね〜。これなら問題ないか。それじゃ、急いで仕上げるよ。」
 ランスロットの調整に当たっていた整備員が、もう一体のナイトメアに群が
り作業を始める。

 皇暦2019年4月24日の朝となる。
「さて、ナナリーの返事を聞こうか…。」
 内部工作の成功の果実は、未だに手に入れてはいなかった。
『まあ、いい。焦らずにいくさ。』
 さしてシュナイゼルは気にしていなかった。
 フレイヤの映像。
 いざとなれば、これを有効活用して他国や属領エリアを取り込む算段は、既
についていた。
「失礼いたします。ナナリー皇帝が、全世界に声明を発表する模様です。」
 シュナイゼルが執務室に入った時、カノンが珍しく慌てた様子で、入ってき
た。

「神聖ブリタニア帝国第99代皇帝、ナナリー・ヴィ・ブリタニアです。本日は、こ
の世界に住まう皆様方に、お知らせしたい事があります。」
『ナナリー、何をする気だ?』
 組んだ指に顎を乗せて、シュナイゼルはモニターを見る。
「先日、我が神聖ブリタニア帝国、EU、中華連邦、そして、連邦エリア日本の
代表による協議の結果、ある事が決定されました。」
「一体何を?」
「それは、これからだね。あれは…、中華連邦の天子…!」
 モニターには、洛陽にいるはずの天子もいた。
「我がブリタニアと、EU、中華連邦は講和条約及び相互不可侵条約を締結。
さらに、連邦エリア日本の独立を承認。条約に加わりました。これがその証で
す。」
「なっ…。」
 声を上げたカノンの目に、条約の締結書が映った。

「今月21日に、EUを乗っ取ったシュナイゼルが、我がブリタニア本国に攻め入
ったことは、皆様、御存知かと思います。その際に、シュナイゼルは、ある兵器
を用いました。名はフレイヤ。これが、使用したときの映像です。」
 ノーフォーク、サンディエゴの軍港。チェサピーク会戦時の映像が流された。
『先手を取られたか…。このタイミングなら、映像に利用価値は充分ある。』
 シュナイゼルが苦い表情をする。
 ブリタニア、ロシア州のEU残党、中華連邦、これらが相互不可侵条約を締結
したという事は、少なくとも大規模な戦争が起こる可能性が低くなる事を意味す
る。
 一方、シュナイゼルは日本攻略をして、名実共にブリタニア帝国の皇帝になろ
うとしていると、世界は見ている。
 そんな状況で、シュナイゼルがフレイヤを使用した事を公表されると、シュナイ
ゼルが世界制覇の野望を持つと思われ、シュナイゼルを悪と、民衆は見るだろ
う。

「この兵器の使用によって、軍港は消滅。さらに周辺の住民にも多くの死傷者
が出ました。私は、皇帝としてではなく、人間としてこのような無差別大量殺人
を許す気はありません。」
「放送を妨害することは!?」
「無理です。ハッキング対策が堅固で、手の出しようがありません!」
 カノンが放送を妨害しようとするが、それも叶わなかった。
「この放送を見ていらっしゃる方々の中には、こう考えていらっしゃる方々もおい
でになるでしょう。『ブリタニアは、一般人をも犠牲にして、侵略行為をして来た
だろう。』と。それについては、反論する気はありません。しかし、私はここにお
約束いたします。本土を奪還した後には、領土の拡張をする事は無いと…。」
「なっ…。」
「そう来たか…。」
 カノンとシュナイゼルが、放送を見続けながら呟く。
「さらに、現在の我が国の属領は、連邦エリアに移行後、独立を承認いたしま
す。その後、無理やりに我が国の陣営に取り込む事はありません。そこに住む
方々が、未来を決めます。その意志を尊重した上で、我がブリタニアは、各国
との友好関係を、築きたいと思っております。」
 小さく深呼吸したナナリーが、呼びかける。
「未だ、どちらの陣営につくか決めかねている国々の方々。歴史において、武
器が平和を生んできたことは、事実として存在します。しかし、このような残酷な
兵器が平和を生み出すのでしょうか?何より、武器で平和を生むことを、少なく
するべきでは無いでしょうか?理想、夢物語と笑われる方々もいらっしゃるでし
ょう。しかし、今、この場に集まっている私達は、その理想を叶えたいと思い、手
を携えました。願わくば、この中に加わっていただける事を切に、願います。」
 放送は終わった。
「カノン。パターンBで対応する。」
「承知しました。」
 2人は執務室から出た。

「どうだった?ディートハルト。」
「やはり、シュナイゼル側からのハッキングが複数確認されました。向こうとして
も、陛下御自らの世界への呼びかけは、勘弁願いたいといったところのようで
す。」
 藤堂に尋ねられたディートハルトが、放送に対するシュナイゼル側からのハ
ッキングの報告をする。
「皇帝陛下。放送の効果はかなりの物と見てよいと考えます。しかし、問題は
シュナイゼルの反応でございましょう。」
「承知しています。ご協力感謝いたします。」
 今回の放送に対し、シュナイゼル側からの妨害への対応を、黒の騎士団が志
願した。
 藤堂としては、せめて自分以外の団員が再び日本で暮らせるように出来るた
めの方策を、講じておきたかったからである。
「ブリタニア本土からの放送が、始まった様子です。」
「映してしてください。」
 ディートハルトが団員に指示をすると、モニターにシュナイゼルの姿が映る。

「神聖ブリタニア連合帝国皇帝、シュナイゼル一世たる余は、ここに宣言する。
本日を持って、新皇暦に年号を改め、旧EU各国の承認を経て併合。神聖ブリ
タニア連合帝国の建国が成される事を。また、神聖ブリタニア帝国皇帝ナナリ
ー・ヴィ・ブリタニアが各国との同盟を結び、我が国に刃を向けるのならば、
実力を持ってこれを排除する。建国宣言の前に、平和的解決が図られなかった
事は誠に残念ではあるが、世界の対立を無くすにはどちらかが倒れるしかない
事を、肝に銘じよ。」
 皇帝としての礼服に着替えたシュナイゼルが、建国宣言書を読み上げる。

 シュナイゼルの建国宣言に、ナナリーもさすがに顔色が少し青くなり、ラトゥー
ルとシャルンホルストは緊張した表情になる。
「結局、こうなったか。だが、向こうとて行政機構や軍を整えるにはまだ時間が
必要なはず。」
「いかに、迅速に行動し、先手を取るかか…。」
 星刻とスザクが、モニターのシュナイゼルを睨む。
「幸い、私の直属部隊の再編成は終了しています。今から、攻略作戦の準備に
取り掛かれば、先手を取れます。」
「同感です。直ちに、準備にかかりましょう。陛下、お許しを頂きたく存じま
す。」
「頼みます。」

「さて、ここに我が騎士を紹介しよう。」
「あれは…。」
 ヴィレッタが声を上げる。
「我が直属の騎士。ジェレミア・ゴットバルト。先の戦いで、ビスマルク・ヴァルト
シュタインを討ち取った者である。」
「ジェレミア卿…。」
「オレンジかよ…。」
 スザクとジノが驚きながら、ジェレミアを見る。
「この事実を知って尚、戦いを挑むのなら、その者達は冥府へ旅立つ準備を始
めたと考えよ。」
 放送が終了し、モニターからシュナイゼルの顔が消えた。

「各国に選択を迫るか…。」
「はっ。」
 コーネリアとギルフォードは、何も映っていないモニターを見つめる。
「つまり、未だにシュナイゼルについた国もエリアもないという事か…。」
 ジュリアスが、現在の情勢を分析する。
「ディートハルト、千葉と朝比奈に連絡を。部隊の状況を確認。急げ。」
「御史大夫に連絡を。国元に戻り次第、直ちに御前会議を開く。」
「香凛に連絡を。耶律信と耶律閃に出陣の用意をするようにと。守国には、国
境の守りを固めるよう伝えよ。」
「モスクワに連絡。軍の出撃準備に入れ。」
 皇暦2019年。新皇暦1年。
 戦いの火蓋は切って落とされようとしていた。

後書き
ようやく見直しが終わり、25話のUPです。
今回で、ブリタニア、EU、中華連邦の三国連合と、シュナイゼルの対決の構図
ができたわけですが、人物の絡み等見直しに、随分時間がかかってしまいまし
た。
ロロに関しては、何処で出そうか以前から随分悩んでいましたが、あまりギアス
によって、話が動くという展開にしたくはなかったので、あえてこのような形にして
あります。
そして、スザクの目的。
歴史から、自分の存在を抹消する事。
その為に、名誉ブリタニア人になった。
日本人と見られないようにする為に…。
これも、ある意味、死と考えております。
世界を内側から変えながらも、生きた証を残さない、生き方をする。
これが、この話でのスザクの抱える闇の正体です。

次回AFTER TURN26 二本 の 矢
シュナイゼルとの決戦を前に、スザクは策を講じます。

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星刻にもギアスを
パーフェクト・ターン・ファンブックの95ページ目によると、『ギアスの素質とは強い願望を持っていること』 それなら、星刻にもギアスの素質は十分にある。 天子様を守りたい。自分の余命が限られているならなお彼女が泣く事の無い世界を造っておきたい。しかし、世界はいつまでも不安定だ。 それならば、自分亡き後をた託せる人物がいれば。しかし、天子様を愛し守り、間違いなく幸福にできる、そんな人物がいるだろうか? たぶんいっときはゼロにその可能性を求めていたのでは。しかし、結果的にゼロは自分より先に逝ってしまった... ...続きを見る
金属中毒
2009/03/01 14:21

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
おはようございます。
後の世に月下の議と伝えられる一幕といったところでしょうか。
太陽は全てに光を与えるが、月は望んだ者にしか見えない。だから、月が立ち会った会議には意味がある。
多くの場合国際会議はその前のお茶会で、話は決まってるんですよね。そういう意味で、今回一番ぞくっときたせりふが、星刻の「おそれいります」形式的な言葉なのにこの一言で、世界の方向が決まった気がします。
それでは決戦の章を慌てずお待ちいたしております。

2009/03/02 04:39
凪さん。
コメントありがとうございます。

>太陽は全てに光を与えるが、月は望んだ者にし
 か見えない。
 なるほど、そういう見方もありますね。
 東京での会談に集った各国の代表が望む月は、
 自国の平和ですね。

>形式的な言葉なのにこの一言で、世界の方向が
 決まった気がします。
 私の中では、決め手はフレイヤの映像なんです
 けど、成る程…。
 晩餐会や昼食会は、ただ食事をする場所ではな
 く、立派な外交の場でもありますしね。
CIC担当
2009/03/06 01:04

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