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zoom RSS コードギアス二次小説 AFTER TURN23 帝都 陥落

<<   作成日時 : 2009/01/07 20:07   >>

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「ヴァルトシュタイン卿が…。」
 EU軍との戦いでビスマルクが戦死し、ブリタニア軍が敗退したと言う知ら
せは、ネオウェルズで戦っているベアトリスの元に既に届いていた。
『中華連邦の動きが不透明な以上。日本の皇帝陛下達は動けない。援軍のあ
ては無い。』
 中華連邦はプトランの会戦で、かなりの損害を被ったとはいえ、まだ動かせ
る軍が無いわけではない。
 それを考慮した場合、スザク達が動けない事は、ベアトリスにも解っていた。
『そろそろ、限界が近づいてくる頃…。』
 ビスマルク戦死の報は、ネオウェルズ守備隊の士気を明らかに下げていた。

「ヴァルトシュタイン卿が戦死…。」
 ノネットが信じられないという表情で、報告を聞く。
 ジノも一言も発しなかった。
「その後、我が軍は撤退に成功したか?」
「いえ、EU軍に降伏。現在は、EU軍に加わったとの事です。」
「何ということだ…。」
 ギルフォードが愕然とする。
「帝都の戦況は、どうですか?」
 ナナリーが報告に来た士官に、戦況を聞く。
「現在は、守備隊有利との事です。」
「スザク、この後の戦況をどうみますか?」
 士官の報告に頷いたナナリーが、スザクに今後の戦況をどう予測しているか、
尋ねる。
「フォートデトリックから出撃した部隊が、正規軍である。それが答えになる
かと。」
「詳しくお願いします。」
「帝都が陥落する可能性は、高いと見るべきでしょう。」
「帝都に裏切り者がいると、そうお考えですか?閣下。」
 コーネリアの問いに、スザクが頷く。
「フォートデトリックの部隊が帝都に侵攻した事から、ネオウェルズの守備隊
にも、シュナイゼルの手が伸びている可能性は高いと考えます。実際、それだ
けの才覚も持つ男。ラウンズの裏切りも考慮すると、可能性は高いと見るべき
でしょう。」
 そもそも、フォートデトリックに纏まった軍は配備されていない。この事か
ら、ネオウェルズに侵攻した部隊が、周辺の部隊の寄せ集めである事が解る。
 それらの部隊が水面下で集団として組織化されていた事から、ネオウェルズ
や他の部隊にもシュナイゼルの手が伸びていて、組織化されている可能性も、
スザクは高いと見ていた。
「それでは…、帝都を守っているファランクス公爵は…。」
「おそらくは…。」
 ナナリーの問いに、スザクは言い難そうに答える。

「両翼部隊は、敵を牽制。前衛はその間に、陣形を再編。後備えに攻撃の準備
を。」
 士気の差が出て、守備隊はじりじりと押されていた。
 損害が大きくなり始めた前衛部隊に、一旦陣形再編をさせる為に、両翼の部
隊に敵の牽制を命じる。
『これでもう少し、兵力があれば…。』
 ネオウェルズ守備隊の総数は15個師団。
 フォートデトリックから侵攻して来た部隊とほぼ同数であるが、ニミュエ12騎を
駆使して、数以上の力を発揮していた。
 その時、「火の手」が上がった。

「後備えの部隊が寝返りました!!」
 悲鳴のような報告が、ベアトリスの元にもたらされた。
『アーバス子爵達が…。』
 さすがにベアトリスも驚いたが、すぐに冷静さを取り戻し考え始めた。
『ラウンズの裏切り、フォードデトリックからの侵攻、ネオウェルズ守備隊からの
造反。よくもここまで周到に…。』
「全軍、9時の方向に移動。包囲される前に離脱し、陣形を立て直す。」
 ベアトリスの指示で、前面の敵と裏切った後備えの軍の間をすり抜けるよう
に移動して、陣形を再編しつつ前面の敵の後方に回り込む。
 しかし、「火の手」はこれだけではなく、ブリタニア各地の部隊が一斉に蜂起
し、ネオウェルズに向かい始めた。

「燃え上がった火は、各地に広がりました。」
 カノンが執務室で、報告を受け取る。
「そうか。これで終わりだね…。」
『父上。こうなったのは貴方の実力主義が原因ですよ。例え、氷の鎖事件で不
満を持つ者の大部分は捕縛しても、不満の火は燻っていた。それを貴方は見逃
していた。本来ならば、見えていたはずなのに…。』
 そう考えながら、シュナイゼルはコーヒーを一口飲んだ。
『もっとも、それを利用した私が言えるような立場では無いか。枢木君を手に入
れていたら、やはり彼らを蜂起させるよう仕向けていた。但し、掃除するために、
ね…。』

「もうすぐシュナイゼルが。君の息子が来るよ。このブリタニアを手に入れるため
にね。」
「別に、驚くには値しませんな。解りきっていた事。防ぐ事は出来ましたが、丁
度良い機会なので、利用させていただくとしましょう。スザクの真の力量を試す
ためにも。」
 帝都が陥落するかもしれないのに、シャルルは気にしてもいないように笑っ
た。
「やれやれ。それでも、親かい?シュナイゼルは血を分けた実の息子。枢木ス
ザクは、義理の息子。息子同士、相争うのを止めようとしないとはね。」
 V.V.はおどけたように、肩を竦める。
「それが、ブリタニアという国。まあ、今回は今までとは形が違いますがな。
そして、その際の見極め役が、貴方ではありませんか?我らが祖よ。」
「まあ、否定はしないよ。確かに、それが僕の役目であり、存在している理由
だからね。」
 シャルルが小さく笑って、謁見の間に向かう。
「じゃあ、僕は開幕のベルを鳴らす用意をしておくよ。」
 V.V.もその場を去った。

「ひるむな!帝都を、ネオウェルズと皇帝陛下をお守りしろ!!」
 後備えの部隊に続いて、本国各地の部隊が一斉に放棄したと言う知らせが
届いても、ベアトリスは部隊を率いて戦い続けていた。
 しかし、その数は9個師団にまで減り、押されている。
「右翼に、さらに敵が攻めかかります。」
「左翼、持ちません!」
 部隊からは、次々と不利を知らせる報告が来る。
「左右両翼は後退。前衛は前に。陣形を楔形にして、敵の本陣を襲う!」
 苦心しながら、陣形を再編し、各部の装甲に傷がついたモルオルトを駆りな
がら、前進を始める。

「よく持つ。さすが、嘗てのナイトオブツー。」
 20代半ばのその青年の名は、エドワード・ヒュームという。
 ヒューム子爵家の当主であり、フォートデトリックに駐屯する、1個師団を
率いる司令官であったが、シュナイゼルの内部工作で寝返り、他の周辺部隊を
率いている。
 彼自身は、今の連邦エリアに密かに反対しており、実力主義のブリタニアで
ナンバーズのスザクがラウンズに。さらに属領の副総督になった事に不満を持
っており、出世を約束され、シュナイゼル側についている。
 そして、ただ不満を持っていただけでなく、優れた軍事的才能を有していた。
 無論、ベアトリスには及ばないが、ビスマルクの戦死による士気の低下。守
備隊からの寝返りが追い風となって、戦況は有利になっている。
「楔の先端に砲火を集中、敵司令官の下にニミュエ全騎を向かわせろ。これで
勝負をつける。」
 指揮系統はシュナイゼルが事前に確立させていたので、エドワードは安心し
て指揮を取ることができた。
 すぐに、ベアトリスの部隊の楔形陣形の先端に砲火が集中し、ベアトリスの
周辺に位置するナイトメアが次々と、落とされる。
「くっ!」
 ハドロン砲を回避しながら、ニミュエと剣を交える。
 1騎のMVSを防ぐと、もう一騎のスラッシュハーケンが襲い掛かる。
 回避すると、前衛部隊を攻撃していたナイトメアの数騎が、遠距離から砲撃
を加える。
「まだ!」
 MVSを跳ね除けると、右のMVSでニミュエを斬る。
 そこで、モルオルトのMVSが砕ける。
「しまった!」
 MVSを捨て、右腕のスラッシュハーケンをメッサーモードにして、MVSを振り
下ろすニミュエの腕を斬り落とす。
 ドーチェスターのAKM低圧砲の砲撃を、左腕のブレイズルミナスで防ぎなが
ら、量産機用のヴァリスを右手に持ち替えて、撃ち落す。
 左腕でMVSを抜こうとした一瞬の隙を突かれて、ニミュエのハドロン砲が右
腕ごとヴァリスを破壊する。
 素早く右腕をパージして、エナジーの供給をカットし、左腕のみになりながら
も、ベアトリスは目の前のニミュエを斬る。
 その間に、部隊は更に数を減らしていた。
 それでも、戦おうとするファランクスのモルオルトに、ハドロン砲が命中する。
「この距離からの砲撃…。そう。貴方ね。ナイトオブイレブン。」
 モニターには、アンジェリーヌの駆るユーウェインが映っていた。
 モルオルトは左腕を肩ごと吹き飛ばされ、周辺にもダメージを受けていた。
 コックピットの中では、警告音が鳴り響いている。
「ベアトリス。降伏を。シュナイゼル議長が寛大な処遇を約束すると、仰られ
ています。」
 モルオルトのコックピットには、アンジェリーヌからの通信が入っていた。
「久しぶりね。ナイトオブイレブン。でも、私が降伏すると、本気で思っているの
かしら?生憎と、裏切り者に下げる頭は持っていないの。私は最期まで戦うだ
けよ。」
 そう言って、ベアトリスは通信を切った。
「もう少し、付き合ってもらうわよ。」
 左右から迫るニミュエの攻撃をかわして後方に回り込んで、コックピットに両腰
部のスラッシュハーケンを打ち込む。
 その時、ユーウェインのハドロンランチャーが、モルオルトのコックピットを貫い
た。
「マリアンヌ…、様…。」
 ベアトリスの肉体は、モルオルトの爆発と共に地上から消え去り、それと同
時に、ネオウェルズ守備隊も降伏した。

「ネオウェルズ守備隊に勝利したとの、報告が入りました。」
「結構。やはり、ベルリオーズ卿を向かわせて正解だったね。」
 ベアトリスの部隊の予想以上の奮戦に、シュナイゼルはアンジェリーヌを向か
わせていた。
「クルシェフスキー卿。ネオウェルズ制圧を開始しました。」
 それは事実上の帝都陥落を意味していた。

「ベアトリスが戦死…。」
 報告を聞いたノネットは、それ以外何も言葉を発しなかった。
 嘗ての士官学校の後輩である、ベアトリスの力量は良く知っているだけに、
衝撃は大きかった。
「帝都は既に…。」
 重苦しい雰囲気が、会議室に漂った。
「少し、休憩にしましょう。」
 ナナリーが提案する。
「陛下?」
「コーネリア。今のままでは、妙案は浮かびません。少し休んだ方が良いでし
ょう。」
「解りました。」
 会議は一先ず、休憩となった。

「ロシア州が?」
「そうだ。向こうも必死なのだろう。このままでは滅ぶのを待つばかり。シュナイ
ゼルを倒さねば、未来は無い。」
 荘年の尋ねに、星刻が答える。
 会議に出席している文官や武官たちも、隣同士で話している。
 そうしている間に、天子宛のラトゥール議長の親書が届く。
「ラトゥール議長は正式に、ナナリー皇帝に会談を申し込んだそうです。」
 親書に目を通した後、天子は皆にそう伝える。
「しかし、情報によると、ネオウェルズ陥落はもはや免れますまい。ナナリー
皇帝一派にそう力があるとは思えませぬが…。」
 洪古が首を傾げる。
「そうとは限るまい。仮皇宮が置かれている日本は、世界最大のサクラダイト
の生産地。そして、全ての植民エリアも押さえておろう。それを考えると、力
が無いとは言えまい。」
 賽豊が洪古に話す。
「成る程、そういう見方もあるか…。」
「だが、シュナイゼルのことだ。植民エリアに離反を促す政治工作を、行うだ
ろう。もし、成功すれば、彼我の勢力差は決定的なものになる。」
 納得した平仲に、遠見が今後の予想を話す。
「親書には続きがあります。我が国も歩調を合わせて欲しいと。」
「天子様。それは、我が国にも会談を要請するということで、ございましょう
か?」
 守国の問いに、天子は黙って頷く。
「天子様。実は、黒の騎士団から、我が国がナナリー皇帝と会談をする際、代
表を出して臨席したいとの申し出がございます。」
「枢密使。真でございますか!?」
 粛啓が驚いたように尋ねる。
「うむ。」
 星刻が頷く。
「どうなっている?彼らは、ブリタニアに敵対しているではないか。」
 安治が考え込む。
「シュナイゼル打倒に手を貸す代わりに、日本を独立させるつもりではないか?」
「しかし、黒の騎士団の規模で戦力になるか?」
「確かに。」
「となると、武力ではなく知略を貸すつもりか?」
「しかし、スザク皇配は単なる戦術家ではないぞ。必要とするとは少々考えに
くいが…。」
 議論を聞きながら、星刻も黒の騎士団の意図を考えていた。
『皆の言う事には一理ある。ブリタニア本土を奪還するに際して兵力が必要で
あっても、プトランの会戦での傷がいえていない黒の騎士団が加わったところ
で、戦力が増強されるとはとても言い難い。まして、スザク皇配にしてみれば、
嘗ての主君、ユーフェミア皇女の仇とも言える存在。その事を忘れたわけでは
なかろう。臨席したところで、何になる?』
「枢密使は、ナナリー皇帝との会談について、どう考えますか?」
 天子の声で、星刻は思考を中断した。
「やっても損にはならないと考えます。ロシア州の意図はともかく、我が国が
これからシュナイゼル一派に対してどう対応するかを考える際の判断材料とし
て、ナナリー皇帝とスザク皇配の人となりを確かめておく事も必要かと。さら
に、帝国最強のナイトオブワン率いるブリタニア軍をどう破ったか、それに関
しても情報が不足しています。それを補うにも丁度良いかと。」
「宰相の意見は?」
「枢密使に賛同いたします。私個人といたしましても、ナナリー皇帝の勢力が
どう出ようとするかを、知っておきたく存じます。」
「それでは、会談の申し出をする事と決定いたします。」
 こうして、中華連邦もロシア州と歩調を合わせ、ナナリー達との会談の申し
出をする事が決定した。
 代表は、星刻と范質。文武のトップが決定した。
 同時に、黒の騎士団の臨席も認めることが決定した。

「無理な申し出を承諾していただき、ありがたい。」
「だが、針の筵になる事は覚悟していただこう。スザク皇配にとって、貴公らは
憎んでも憎み足りないだろうからな。」
「承知している。」
「ところで、何故、会談に臨席を?」
 星刻が疑問に思っていた事を尋ねる。
「日本のことが気がかりでな。シュナイゼルの事を、よく知っているわけではない
が、危険な感じがする。それにナナリー皇帝とは交渉次第で、日本に関して譲歩
が引き出せるのではないか。という結論が出た。」
「成る程。確かに我らが知るブリタニアの皇族とは、印象が大分違うからな。」
「はかない望みかも知れぬが、賭ける価値があると判断した。」
「そうか。では、会談の日取りが決まれば、連絡しよう。代表を決めておいて
くれ。」
 通信が終わった。
『さて、どうなるか。』
 星刻は会談がどうなるかを、考えていた。

「ネオウェルズの主要施設は、ほぼ全て制圧しました。残りは、ペンドラゴン宮
だけです。」
 シュナイゼルは、ネオウェルズ制圧の任を受けた、モニカの報告を聞いてい
た。
「皇族達はどうしている?軟禁したのかい。」
「いえ、ほぼ全ての皇族の方は、自決なされました。カリーヌ殿下は、抵抗な
さいましたので、やむをえなく…。オデュッセウス殿下とギネヴィア殿下は、残
っておられます。」
「そうか…。」
「シュナイゼル。こんな事は許されないよ。今すぐ止めないと、大変な事にな
る。今なら、まだ。」
 報告を聞いているシュナイゼルの元に、オデュッセウスが来る。
「兄上、すでに大変な事になっております。それに、止める事も出来ませんよ。」
「しかしだね…。」
 その先をオデュッセウスは、言う事が出来なかった。
 ルキアーノのナイフが心臓と咽喉笛に突き刺さり、オデュッセウスは生きた噴
水と化して、倒れた。
『考えてみれば、哀れな方だ…。凡庸で見えるものが少ないばかりに…。』
 丁重に葬るよう命じた時、ペンドラゴン宮で爆発が起きた。
「まさか…、自決?」
 信じられないという表情で、カノンがペンドラゴン宮の方向を見る。
「謁見の間には、クルシェフスキー卿が、シクザール・ヴァルキュリエ隊を率いて
向かっていたはず。彼女達は無事かい?」
「通信が入りました。クルシェフスキー卿です。」
「申し訳ありません。先帝は玉座の周辺に、多数の爆発物を仕掛けられていま
した。」
「そうか。何はともあれ、無事で何よりだ。玉座の周辺に隠し通路の痕跡は無
いかい?」
「現在、調査をさせています。しばらく、お待ち下さい。」
 しかし、それらしき物は見つからなかった。
「先帝は自決という事になるのかな…。」
 イルバル宮の一室で、シュナイゼルは呟いた。
「そう考えるのが妥当かと…。」
 カノンが、調査書類をシュナイゼルに渡す。
「まあ、いい。ブリタニア本国の攻略は、これで完了したのだから。」
 そういって、カップの中のコーヒーを飲み干す。
「カノン。皇室専用チャンネルで、日本に繋いでくれ。それと、本国の攻略の情
報を、全世界にばらまいてくれ。」
 皇暦2019年4月21日、午後9:32分。
 神聖ブリタニア帝国帝都、ネオウェルズはシュナイゼル率いる、EU軍の侵攻
で陥落した。

「ナナリー、スザク、疲れてはおらぬか?」
「大丈夫です。コゥ姉様。総督になって大分会議もこなしましたから。」
「そうか。スザクはどうだ?皇族に加わってからの会議は、初めてだからな。」
「お気遣い、感謝いたします。義姉上。私は、大丈夫です。」
「そうか。」
 コーネリアが安心したように、頷く。
「ところでスザク、本国の奪還作戦に関してだが、何か考えはあるのか?」
「鍵はEUです。」
「EU?どういうことですか。あなた。」
 ナナリーがスザクに尋ねる。
「つまりはこういうことだよ。シャルンホルストの戦略を利用する形で、シュ
ナイゼルはEUを乗っ取った。これに関しては、各国首脳との間に、何らかの
密約があったはずだ。そうでもなければ、あれほど秘密裏に事は運べない。
そして、シャルンホルストがあれほどの戦略を実行に移すには、議会の承認が
どうしても必要だ。EUはそういう国だからね。」
 民主国家に関しては、コーネリアやナナリーよりも、スザクの方が理解は深
い。
 今は皇族でも、スザクは民主主義国家の水を飲んで育った、日本人だからで
ある。
「民主主義国家は、文民統制。つまり軍は議会に従わなければならない。いか
に不満があろうともね。」
「つまり、EU軍は、シュナイゼルがEUを統治する事を、歓迎してはいない。
そう言いたいのかな?スザク。」
 ジュリアスが、スザクに尋ねる。
「私は、そう考えています。更に言えば、EUをシュナイゼルが統治するに当
たり、シュナイゼルがブリタニアを手に入れた暁には、かつてのEUの姿に戻
すとの約束をしている可能性もあります。守るかどうかは別問題ですが。」
「成る程…。」
 コーネリアとジュリアスはスザクの言いたい事を理解した。
 文民統制の制度上、議会に不満があろうとも従わなければならない、軍の感
情を利用する。
 スザクは、それを考えているという事が。
「陛下、お寛ぎのところ失礼いたします。」
「ダールトン卿、どうしました?」
 ドロシーが、驚いたような表情で、ナナリーたちが休んでいる部屋に入ってく
る。
「EU軍はブリタニア本国を攻略。先帝陛下は、自決なさいました。」
 ナナリー息を飲んだ。
 コーネリア、スザク、ジュリアスの表情が険しくなる。
「シュナイゼルから通信が入っております。」
「通信だと?」
 コーネリアが眉をしかめる。
「はっ。皇室専用チャンネルを、使用しております。」
「こちらに回線を回せ。」
 皇室専用チャンネルとなると、基本的に使用を許されるのは皇室だけである。

「久しぶりだね。コーネリア、ジュリアス。それにナナリー。スザク。結婚おめで
とう。心から祝福させてもらうよ。」
 モニターにはシュナイゼル一人が映っていた。
「何のようだ?祖国を裏切り、父親を殺した男が皇室専用チャンネルを使用し
て、何を話したいというのだ?」
 コーネリアが、シュアナイゼルを睨みつける。
「もはや、私を兄とは思っていないようだね。悲しいな…。」
 モニターに映るシュナイゼルの顔は、本当に悲しそうに見えた。
「そうさせたのは、貴方だ。シュナイゼル。」
 スザクも鋭い視線でシュナイゼルを見る。
「確かにそうかもしれない…。だが、今回の行動は私にとっても苦渋の選択だ
った。それを理解した上で、お願いをしたい。」
「大量破壊兵器で艦隊や軍港を薙ぎ払うのが、何故、苦渋の選択なのです
か?」
 ナナリーが、明らかに批判する口調で、シュナイゼルに問う。
「父上に、これ以上ブリタニアを、世界を好きにさせるわけには行かないと思っ
た。それが理由だ。しかも、目的達成までかなり時間が無いと考えた。何の目
的かは私にも解らない。だが、父上が、人ならざる理で世界を治めようとしてい
る。それだけは確かだ。私は、それを防ぎたいだけだよ。そして、人の理でこの
世を治める、あるべき形に戻したい。」
「言っている意味が解らないが…。」
「君がそういうとは、思わなかったよ。父上がヴァルトシュタイン卿の次に重用し
ていた君が。君は私が知らない事を多く知っているはずだよ。何度も、重要な戦
いの前に、父上に呼ばれていた君ならば…。」
「確かに、戦いの前に亡き義父上に呼ばれていたのは、事実。しかし、それと、
貴方が言っている事は、ほとんど関わりが無い。」
 モニター越しに、シュナイゼルはじっと、スザクの目を見た。
『嘘をついている目ではないな…。彼も父の真の目的を知らないのか…。』
「まあ、いい。次の話に移ろう。ナナリー、皇位を私に譲ってくれないか?」
 その言葉に、ナナリーは息を飲み。
 スザクの視線は鋭くなり、コーネリアの表情が険しくなる。
「このままでは、多くの血が流れる。その後には、多くの傷ついた人々と、荒
れ果てた土地が残るだけだ。ナナリー、君はそんなことは望んでいないはず。
その後の地位も、生活も保障しよう。無論、スザクもだ。軍の重鎮として働い
てもらう。」
「信頼できませんね。」
 ジュリアスが、モニターのシュナイゼルに言う。
「何故だい?」
「貴方に協力した貴族は、先帝陛下の実力主義によるスザクの栄達に、不満を
持つものばかりでしょう?彼らを利用した貴方が、スザクを軍の重鎮につけれ
ば、国内が再び混乱します。その程度、解らないわけではないはず。」
「さすがだね。ジュリアス。だが、私はその程度、折込済みだよ。すでに手は
考えてある。いずれにせよ。最期の勝者は私だよ。」
「ならば仕方ない。貴方を倒すまで…。」
 スザクが、静かにそう答える。
「それは、無理。フレイヤの前には、貴方達は抗う事も出来ない…。」
 モニターには、ニーナの姿が映った。

「その声…。ニーナさんですね?」
「久しぶりね。ナナリー。スザク。」
 モニターに映るニーナの姿は、スザクにはどこか禍々しく見えた。
「そうか。軍港を吹き飛ばし、大西洋艦隊、本土駐留軍を消滅させた兵器の名
はフレイヤというのか。」
「そうよ。フレイヤの破壊力の前には、貴方の武勇はただの悪あがきでしかな
いわ。だから、シュナイゼル議長に従うのが賢明な判断よ。」
「一つ聞きたい。何故、このような馬鹿な事をしたんだ?」
 それを聞くと、ニーナの表情は一変する。
「ユーフェミア様の仇討ちよ!!ギアスに殺され、一時的とはいえ、魔女にさ
れたユーフェミア様の仇を討つ為よ!!先帝がギアスに関わる事で、世界を
治めようとするなら、私はどんな手を使ってでも、それを止める!!例え、どれ
だけの血が流れようとも!!」
「そんな事をして、ユフィが喜ぶとでも思っているのか!?」
「貴方に、私の何が解るの!?自分に自信が持てずに、ミレイやシャーリー達
みたいな明るい太陽の下で、苦しい思いをしていた私を肯定して受け入れてく
れたのは、ユーフェミア様だけだったのよ!!それを失った気持ちは貴方には
解らない!!」
 肩で息をしながら、ニーナはスザクを睨みつける。
「君の言いたい事は僕なりに、少しは解るつもりだ。僕は自分を受けれきれな
かった。父殺しの罪人である自分自身を。ユフィはそれでも、僕を受け入れて
くれた。そんなユフィを殺したゼロが心底憎かったよ。だから、この手にかけ
た。例え、ルルーシュであっても…。」
 興奮しているニーナを下がらせたシュナイゼルが、納得したように頷いた。
「スザク。君は、ユフィを殺したギアスが憎いだろう?ならば、それに関わる
何かを利用しようとしている父の行いを止めたいとは思わないのかい?」
 スザクの心を、一瞬、揺さぶる。
「私と共に進もう。君の心の傷を癒す方法を、私が示そう。その上で、人生の
再スタートを切ってもいいだろう?皇帝の位を手に入れても、ナナリーが悲し
むような政をしない事は、約束する。」
『心の傷…。ユフィを失った時の痛み…。』
 スザクの脳裏に、2年前の惨劇が蘇る。
 ルルーシュのギアスの暴走によって、日本人を虐殺した挙句に、殺されたユ
ーフェミア。
 自力でギアスを破り、最期まで行政特区の事を、日本人の事を案じながら、
永遠の眠りに着いた、ユーフェミア。
 剣となり、盾となる誓いを守れなかった事実。
 2年経っても、スザクの心に深い傷を残していた。
「まあ、今すぐには無理だろう。3日後の10:00に答えを聞きたい。良い返事
を期待しているよ。」
 モニターのシュナイゼルの顔が消えた。
 その時、皇室専用チャンネルに他の通信が入った。

「これで、舞台は整ったね。さあ、始まりだ。真の皇位継承の戦いが…。」
「V.V.!!」
 スクリーンにはV.V.が映っていた。
「この声…。」
「久しぶりだね。ナナリー。そして、結婚おめでとう。まさか、君が皇帝になると
は思わなかったよ。まあ、実質的にはスザクとシュナイゼルの戦いだけどね。ま
あ、いい。ここに、真の皇位継承の戦いが始まった事を、我が名におい
て宣言する。」
「どういうことか!?」
 コーネリアが驚いて、叫ぶように尋ねる。
「そのままだよ。コーネリア。まあ、今回は随分、形が違うけどね。」
「それ以前に、貴方は何者ですか?貴方とは初対面ですが。」
 ジュリアスが、必死に冷静さを保ちながら、問う。
「我が名は、ヴァレンタイン・ヴァン・ブリタニア。リカルド・ヴァン・ブリタニアの異
母弟にして、皇位継承の選定者である。」
 全員が、信じられないと言う表情で、モニターを見る。

「これは…、一体…。」
 カノンが息を飲む。
「ふむ。詳細は解らないが、与太話でもなさそうだ。だが、利用価値はありそ
うだね…。」
 シュナイゼルは、ナナリーが皇位を譲る確率を50%程度と見ていた。
 だが、V.V.。ヴァレンタイン・ヴァン・ブリタニアの存在を利用して、さらに確
率を上げる事を考えていた。

「さて、この機会に、神根島にスザクを連れて行くとしようか。V.V.が表舞台
に出てきたとなると、話す事もあるしな。」
 V.V.が表舞台に出てきた事を感じたC.C.は、政庁の窓から夜空を見上
げながら、スザクを神根島に連れて行く事を決めた。

後書き
かなり、間が空いた更新になってしまいましたね。
足の痛みが酷く、どうしても筆が進みませんでした。
さて、ネオウェルズはベアトリスの奮戦空しく、遂に陥落。
先帝シャルルは、自決したように見えますが、さて?
そして、最期に出てきた、V.V.こと、ヴァレンタイン・ヴァン・ブリタニア。
皇帝の選定役と名乗っていますが、さて、どうでしょう?
その中で、世界も変化の波の中で生き残ろうと、それぞれ動き出します。
そして、C.C.が神根島に行く真意とは?

次回 AFTER TURN24 ギ ア ス
ギアスと、ブリタニア家との関わり。
そして、ギアスとは何なのか?
シャルルの目的は?
謎が大部分、明らかにされます。

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コメント(2件)

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こんばんは凪です。
アニメでもあっさり消えたオデッセウス殿下。やはり、何事も 変えることなく消えられました。この方の価値は長男・・・とは限りませんが、正当性が高いように見えることぐらいでしたね。
そして、先代皇帝の自殺?
たぶんスザクもシュナイゼルも「本当に死んだ」とは思っていないのでしょう。
次に元皇帝が出てくるのはいつか?
決戦の場が一番ありえそうですね。

では、ご無理の無い範囲でのご更新お待ち申しております

2009/01/10 19:28
凪さん。
コメントありがとうございます。

>あっさり消えたオデッセウス殿下
 まあ、そうですね。
 何か、役割を与えられないか、考えてみたんで
 すが、どうしても見つからなくて、こうなりま
 した。
 もうちょっと、有能だったらなあ…。

>次に元皇帝が出てくるのはいつか?
 いつでしょうね?
 ご想像におまかせします。

>ご無理の無い範囲でのご更新お待ち申しており
 ます
 お気遣い、ありがとうございます。
CIC担当
2009/01/12 13:18

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