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zoom RSS コードギアス二次小説 AFTER TURN22 チェサピーク 会戦

<<   作成日時 : 2008/12/10 20:40   >>

驚いた ブログ気持玉 1 / トラックバック 2 / コメント 5

「EU議長。シュナイゼル・エル・ブリタニアです。本日は、我が国の重大な発表
を知らせたく、こうして全世界に放送させていただいております。」
 会議場には、ナナリーを始め、宰相のジュリアス。それに、コーネリア、スザク
らがモニターに映るシュナイゼルを見ていた。
「来るかな…。」
「はっ。おそらく。」
 コーネリアもギルフォードも、この発表が何かを解っていた。無論、スザク達も
同様である。
「他国を不当に攻め、国土を蹂躙し、民衆を虐殺し、際限の無い戦いを続ける
ブリタニアに対し、我が国はこれ以上の武力侵攻を認めません。そしてこの意
志を宣戦布告という形にさせていただきます。」
 シュナイゼルは、あからさまにブリタニアを批判し、宣戦布告をした。
「その計画を立てたのはシュナイゼル。実際に軍を指揮した我らも、いわば共
犯者だがな。全てを棚に挙げて、我が国を公然と批判しようとは…。」
 コーネリアが腰の剣の柄を、震える手で握り締める。

「ぬけぬけと!!」
 モスクワに設けた司令部で、総参謀長のフロベールが床を蹴る。
「落ち着け。今、奴に腹を立てている暇は無い。」
「閣下。これからシュナイゼルはどう動きましょうか。」
「本国に侵攻するのは解りきっている事だ。このまま黙っていては、逆に反逆
者として討伐されるだけだからな。」
 副官のデューラーの疑問に、シャルンホルストは答える。
「シュナイゼルは勝ちましょうか?」
「勝たねばなるまい。負ければ、身の破滅だ。それに、我らの祖国がどうなる
か…。」
 もし、シュナイゼルが敗れた場合、EUは道連れになるだろう。
 シュナイゼルが反旗を翻すまでは、一応同盟国として国家の主権は保たれ
ていたが、それをシャルンホルストは危惧していた。
 シュナイゼルによって国を追われたにも関わらず、ロシア州にいるEUの旧首
脳陣と軍司令官達は、シュナイゼルの勝利を望まなければならない立場にい
た。
「閣下。まもなく会議の時間です。お仕度を。」
「解った。」
『提案してみるか…。』
 ある案を胸に、シャルンホルストは会議に向かった。

「随分、面の皮の厚い男だ。非難した国で侵攻計画を立てていた男とは、思え
ん。」
 洪古が呆れながら言った。
「だが、これではっきりしたな。EUはブリタニア本国に侵攻する。」
 守国の表情が、険しくなる。
「後はロシア州がどう出るかですな。遠見殿、礼部省に何か情報は入っていま
せんかな?」
 兵部尚書の平仲が、礼部尚書の遠見に尋ねる。
「今のところは、何もありませんな。」
「いずれにせよ。シュナイゼルが本国を落とした際、我が国がどちらを支持する
か、ですな。」
 御史大夫の荘年が、考え込む。
「問題は、シュナイゼルがブリタニア皇帝即位を宣言した時だ。その時、どちらの
皇帝を正統として承認するかだな。」
 刑部尚書の安治がそう言ったのをきっかけに、各尚書たちが考え込む。
「枢密使は、どう考えますか。」
 天子が星刻の意見を求める。
「ナナリー皇帝は、先帝シャルルの意思で国璽を委ねられ国法に則り、即位して
おります。正統性で言えば、ナナリー皇帝でございましょう。ですが…。」
「2日前の会議で宰相が言った、「シュナイゼルが新しい王朝を成立させた。」
場合。ですね。」
「はっ。そうなれば、ナナリー皇帝の正統性が全く問題にならぬ。とは、申しませ
んが。気にする必要性が縮小するのも事実でございます。」
 天子の尋ねに、星刻が答えます。
「むしろ、EUの議長としてブリタニア本国を手にした場合は、面倒になろう。
我が国との同盟を理由に、派兵を要求してくるやもしれぬ。」
 遠見が渋い顔になる。
『結局の所、今は様子見しかないか…。』
 星刻は、中華連邦の将来の平和の為に、どちらかと同盟を組むか。あくまで
中立的立場を取るか。を考えている。
 ただ、それには両陣営の首脳の人となりを見極める事が絶対条件であった。

『シュナイゼルは、いわばマキャベリスト。必要とあらば、おそらく手段にはこだ
わるまい。自分達の為に我が国を潰す必要を考えたら、容赦なく潰そうとする
だろう。問題は、ナナリー皇帝やスザク皇配か…。』
 シュナイゼルの人となりは、星刻は大体予想できたが、ナナリーやスザクに関
しては、予想がしにくかった。
 ナナリーは皇族として世に知られて、半年程度。
 スザクに関しては、武人の範疇でしかほとんど情報が入ってこない。
 日本の副総督としては、誠実な人柄で自治政府ともうまくやっているとは聞い
ていたが、それだけを判断材料にするのは、少々不安があった。
『せめて、人となりを確かめる機会があれば…。』
 星刻はそう考えながら、一向に結論が出ない議論に、耳を傾けていた。

「では、これらの親書を届けてください。」
 シュナイゼルの演説が終了した後、ナナリーは秘書官に任命されたミストロ
ロープに代筆させて、EU、ブリタニア双方の陣営に組していないオセアニア
の国々の支持をとりつける為の親書と、各エリアの総督の任命書をしたためて
いた。
 無論、全ての親書や任命書には、国璽が押されている。
 スザクは、日本に駐留する軍の司令官を招集して、会議を開いていた。
 宰相に就任したジュリアスも、執務に追われていた。
「失礼いたします。陛下、各エリアの総督から、誓約書が届いております。」
「誓約書ですか?こんなに早く。」
「早期に陛下が即位なさり、それを内外にアピールしたのが、効いているので
はないでしょうか。各エリアも今の状況には戸惑っているのでしょうが、それ
でもシュナイゼルに我がブリタニアが負けるとは思っていないのでしょう。」
 ミストロロープが言った事は、ほぼ正解だった。
 実際に、ナナリーは正統に皇位を継承しており、各エリアの総督達も、精神
に叩き込まれた皇室への忠誠を振り切ってまで、シュナイゼルに走る気には、
ならなかった。
 また、未だにブリタニアとEUは戦争状態に入ってはいない為、現時点では、
ブリタニアが敗北すると考えている総督はいなかった。
「陛下、EU軍が侵攻してまいりました。」
 スザクがヴァレーリアを伴い、焦った表情で、ナナリーの執務室に入ってき
た。
「スザク。戦況は?」
 夫婦ではあるが、公式の場ではナナリーが皇帝である事を、常に印象付ける
必要があるとスザクは考え、ナナリーを「陛下」と呼び、ナナリーもスザクの
妻であっても、あくまで自分が皇帝である事を常に自覚する必要があるとスザ
クに説得され、スザクを名で呼ぶようにしていた。
「どうか、落ち着いてお聞きになってください。ロセッティ。」
「はっ。本日、13:00時。大西洋艦隊が警戒配備している際に、コルチェ
スターを旗艦とするEU軍が来襲。戦闘に突入。瞬時に、艦隊は消滅。同時刻、
別働隊がサンディエゴ軍港を奇襲。これも瞬時に消滅。以上です。」
「消滅…。艦隊だけでなく、軍港も消滅したというのですか…?」
 ナナリーの顔色が一瞬で蒼白になる。
「はっ。間違いございません…。」
 スザクも必死に自分を落ち着かせながら、答える。
「本国より、さらに戦況報告であります。」
「読め。」
「はっ!ノーフォーク軍港、敵の攻撃により瞬時に消滅。現在、ヴァルトシュタイ
ン卿が総指揮を取り、EU軍と交戦中。敵の進撃は食い止められているとの事
です。ノーフォーク軍港消滅時の映像が届きました。尚、大西洋艦隊、サンディ
エゴ軍港を消滅させたのは、ノーフォーク軍港を消滅させた兵器と同じと考えら
れます。」
 ヴァレーリアに促されて報告を読み上げた士官の顔色も、蒼白になっていた。
「緊急会議です。武官と文官を集めてください。」
「「「イエス、ユア・マジェスティ。」」」
 スザク達が、会議の準備を命じに執務室を去った。

 ノーフォークに近いチェサピーク湾上空で、両軍は激突していた。
「キーツ隊、全滅。シスレー隊が前に出ます。」
「敵右翼、さらに攻勢を強めます。」
「うろたえるな。兵力においては、わが方が有利。敵を押し返せ。例の兵器が
使われる前兆は無いか?」
 乗艦であるモルゴースの艦橋で、ビスマルクが軍の指揮を取っていた。
「不明であります。正体すらつかめておりませんので…。」
「やむを得ぬ。私が出る。使われる前に旗艦を沈める。」
 ビスマルクが、マントを脱ぎ捨て格納庫に向かう。

「ふむ。兵力差もあるが、さすがナイトオブワン。重厚な布陣だね。ちょっとやそ
っとじゃ崩れそうに無い。」
 ビスマルクは隙の無い鶴翼の陣を敷き、シュナイゼルはこれを崩すべく飛鳥
の陣を敷いていた。
「このままでいきますと、我が軍の被害も無視できません。」
「そうだね、彼らに連絡を。それとフォートデトリックにもだ。」
 後方に控えていた、ジェレミアが通信を聞いてナイトメア12騎を率いて、
前線に出る。

「ブランドリー卿、ベルリオーズ卿、クルシェフスキー卿。前に出ます。」
「ラウンズが3人前線に出て、ヴァルトシュタイン卿が加われば、この戦、我らの
勝利でございましょう。」
「油断をするな。大西洋艦隊と主要軍港を消滅させた相手だ。」
「敵軍、新たな部隊を前線に投入した模様。」
 報告を聞いたビスマルクが、素早くナイトメアを起動させる。
 大型ナイトメアフレーム、ギャラハッド。
 ナイトオブワン、ビスマルク・ヴァルトシュタインが騎乗する機体である。
 背中に背負う巨大な剣、皇帝シャルルに名づけられたエクスカリバーを、主
武装とする。
「ギャラハッド出るぞ。」
「ギャラハッド発進します。続いてケーニヒ・ヴァルキュリエ隊、発進します。」
 ギャラハッドが発進し、最前線に向かう。

 それはナイトメアと呼ぶには異形な姿だった。
 巨大な機体に、巨大なスラッシュハーケン。
 他にも武装があるのかもしれない。
ナイトギガフォートレス、ジークフリート。
 シュナイゼルが、カンボジアにあるトロモ機関に命じて、建造させた機体であ
る。
 2年前のブラックリベリオンの際、沈んだ機体のデータを基に再度設計され
た機体で、巨大なスラッシュハーケンの他にも強力な武装を施されている。
 さらに後方には、12騎の見慣れぬナイトメアが続いていた
「雑魚共が!私の行方を阻むな!!」
 多数のミサイルが発射される。
「さすがに本土直属軍。簡単にはいかぬか…。」
 ジェレミアの目に映るのは、ブレイズルミナスでミサイルを防いだウォードやド
ーチェスターだった。とはいえ、撃破された機体は少なくない。
「だが、これは防げまい!」
 前面の装甲が開き、砲口が現れる。
 シュタルケハドロン砲。
 モルドレッドが装備する、ナイトメアクラスでは最強の威力を誇るハドロン砲で
ある。
 出力を強化されたそれが、4門装備されていた。
「消えろ…。」
 解き放たれた、巨大な光の矢は多数のナイトメアを飲み込む。
「む…?」
 周囲を取り囲んだドーチェスターが、ハードポイントに装備された、AKM低圧砲
や多用途ミサイルランチャーを一斉に発射する。
「止めろ!何としても、あの化け物を止めろ!!」
 本土直属軍の司令官の一人、カーター男爵が座乗艦レッシングの指揮官席か
ら、麾下の部隊に指令を出す。
 しばらくして、砲撃がやむ。
「あの化け物といえども、これだけの攻撃を受ければ…。」
 それが、彼のこの世の最後の言葉だった。
 撃破したと思ったジークフリートが、シュタルケハドロン砲を拡散モードで使用。
 ナイトメア部隊を蹴散らし、レッシングに肉薄していた。
「名は知らぬが、貴公の奮戦には敬意を表そう…。」
 スラッシュハーケンが、艦橋とフロートユニットを貫通し、レッシングは墜
落していった。

「レッシング撃沈。カーター将軍戦死。」
「その機体は私が相手をする。続くナイトメアを囲んで叩け。」
 指示を出している間にビスマルクは戦術パネルに目を通した。
「よし、ルキアーノ達は後方に回れ。背後から旗艦を落とすのだ。」
 前進していたルキアーノ達に、指示を出す。
「ヴァルトシュタイン卿。何か、勘違いをしていませんかね?」
 笑いながら、ルキアーノがビスマルクに通信を入れる。
 ふと、戦術パネルを見ると、ルキアーノ達が率いる部隊は、EU軍と合流して
いた。
「裏切るのか?陛下直属たるラウンズの誇りは、何処に消えうせた!?」
「いいえ、新たな皇帝陛下にお仕えするだけですよ。あのお姫様の下では、戦
いも少なくなりそうですからね。」
 ルキアーノ、アンジェリーヌ、モニカの部隊がその矛先をブリタニア軍に、向け
てきた。

「敵軍に動揺が見られます。」
「よし、ルキアーノとモニカは敵右翼を攻撃。アンジェリーヌは敵左翼へのアウト
レンジ攻撃に専念。こちらも今までの苦労が実を結んだね。」
 シュナイゼルが指示を出す。
 アンジェリーヌがラウンズに加わった後に、シュナイゼルは2人に内応を促す
べく、説得を続けていた。
「両翼は守りを固めろ!!突き崩されるな!!」
 3人のラウンズが、シュナイゼルに寝返った事で、ビスマルクが焦りを覚え
始めた。

「ラウンズ達が寝返った?」
「はっ。すでに我が軍を攻撃しております。ヴァルトシュタイン卿は、敵軍の巨大
な機体の相手をするのに手一杯の様子…。」
「そう。ご苦労。下がりなさい…。」
 士官が下がった後、ベアトリスは着替えを済ませた。
 白いラウンズ専用の軍服と真紅のマント。
 かつて、ラウンズの一人であった頃、身につけていた自分の軍服である。
「まさか、再びこれを着る事になるとは、思わなかったわね。」
 既に、イゾルデの予備パーツを元に組み上げていたナイトメアも、戦闘可能状
態にあった。
「マリアンヌ様。間もなく、私もそちらに行く事になりそうです。」
 そう呟いて、ベアトリスはシャルルの元に歩いていった。

「くっ。さすがはナイトオブワン。手強い…。」
 今まで、虫を払うかのようにブリタニア軍を蹴散らしていたジェレミアも、ビスマ
ルクを相手に苦戦していた。
「これ以上、好き勝手はさせぬ!!」
 エクスカリバーを構えて、ジークフリードに斬りかかる。
「くっ!」
 ジークフリートからミサイルが発射されるが、ギャラハッドはその大きさに似合
わぬ機動性でかわし、エクスカリバーで払う。
 スラッシュハーケンも軽々とかわし、ジークフリードに斬りかかる。
 神経電位接続という、特殊なインターフェースのレスポンスに助けられ、機体
への直撃は免れたが、左側のスラッシュハーケンの一本を斬り落とされてい
た。
「ほう。よくぞかわした。」
 ジェレミアを賞賛するビスマルクの目は赤く輝いており、ある紋章が浮かん
でいた。
 ギアスの紋章が。
 ジェレミアが不利と感じたのか、12騎のナイトメアが一斉に、ギャラハッドに
襲い掛かる。
 ナイトメアフレーム、ニミュエ。
 ジークフリートと並行して、開発されていたナイトメアで、ラウンズ専用機には
劣るもののヴィンセントを上回る性能を持つ。
 12人の女性が騎乗しており、ジェレミアと同じく、神経電位接続で機体を操っ
ていた。
「邪魔者共め!!」
 ギャラハッドのエクスカリバーが、小口径のハドロン砲を撃ちながら突撃してく
るニミュエ3騎を、すれ違い様に両断する。
「あの動き、読んでいるのか!?」
 ジェレミアの目に映ったギャラハッドの動きは、まるで相手の動きを読んでい
るかのようだった。
 後方から援護射撃を受けながら、MVSを手にギャラハッドに挑むニミュエ3騎
を、ギャラハッドはまたもすれ違い様に、両断する。
「生憎だな。我がギアスは未来を予測する。このギアスと、私の武勇が合わさ
れば、負けはせぬ。」
 コックピットの中で、ビスマルクが不敵な笑みを浮かべる。

「ジェレミア達が苦戦するとはね…。」
 ビスマルクの参戦に鼓舞されて、浮き足立っていたブリタニア軍が態勢を立
て直して、反撃を開始していた。
「ニミュエも、半数が撃破されたとのことです。このまま損害が増え続けるのは、
今後の事を考えましても好ましくありません。」
 カノンが、シュナイゼルに意見を言う。
「やむをえないね。ここで使う気はなかったんだが…。」
 シュナイゼルが小さな溜息をつく。
「全軍、後退。フレイヤ発射準備。目標、敵右翼部隊。範囲設定は慎重に。」
「フレイヤ発射準備。」
『これで4発目か…。残りは2発。』
 オペレーターの声を聞きながら、シュナイゼルはフレイヤの残弾数をカウント
していた。
 ダラスで完成したフレイヤは6発。
 半分はブリタニア攻略で使用して、半分で相手を威嚇しながら増産する。と、
いうシュナイゼルの戦略が、僅かにほころびを見せた。

「敵が下がる?陣形の再編か…。いや、まて…。」
 ビスマルクはある確信に至った。
「全軍、全速後退!!」
 シュナイゼルの意図を悟ったビスマルクは、全軍に後退を命じる。
「発射準備完了。全軍、所定の位置まで後退しました。」
「発射。」
 コルチェスターから、女神の名を冠せられた恐るべき兵器が、ブリタニア軍右
翼を襲い、消滅させた。

「核を使用した、広域大量破壊兵器!?」
「私どもの予想が正しければ、そうであると考えます。破壊力は、ミサイルや砲
撃の比ではありません。」
 キャメロットを代表して、セシルが発言する。
 それを聞いたナナリーは、顔色が蒼白になりそうになるのを必死で喰い止め
る。
 ノーフォーク軍港が、フレイヤで消滅する映像を見て、会議に参加した幕僚達
も、言葉を発することが出来なかった。
「インヴォークで核を使用した、これまでの戦争を一変させる兵器を開発してい
るとの噂は聞いていたが、それが実戦使用されたか…。」
 エリファレットが、険しい表情になる。
 核物理学に精通しているわけではないが、技術者として持っていた相応の知
識と映像から、その後、言葉を発しなかった。
『ニーナ…。』
 ブラックリベリオンの際、ニーナがユーフェミアの仇を討とうと、核爆弾を製作し
た事はスザクも聞いていた。
 かつての生徒会メンバーであるニーナが、強力な大量破壊兵器を作り出した
事を想像すると、スザクは胃が重くなる感覚に襲われた。
『落ち着け。今の僕は、落ち着いていなければならない…。』
 皇配になった事で、ラウンズから抜けたスザクが着ている軍服は、白を基調
とした、皇族に相応しいデザインの軍服である。
 それ自体が、皇族として、軍の最高司令官としての責務の重さを、常にスザ
クに感じさせていた。
「現在の戦況はどうなっているか?」
 総参謀長のベルワルドに尋ねる。
「申し訳ございません。新しい戦況報告は、未だに…。」
 EUでの戦いの堅実な実績から、スザクが総参謀長に選んだベルワルドが、
額の汗を拭くという、普段の落ち着いた態度からは予想出来ない態度で、スザ
クに報告する。
「いや、君を攻めているわけではない。となると、現在の状況は、今ある情報で
推測するしかないか…。」
 その時、最新のそして予想もしない戦況報告が入った。
「ラウンズが寝返り、右翼部隊が敵の新兵器で消滅…。」
 さすがのコーネリアも呆然とした。
「ルキアーノ達が…。」
 クローディアが唖然とする。
「まさか、アンジェリーヌとモニカまで裏切るとは…。」
 ノネットが腕を組んで、険しい表情になる。
「我が軍の被害は?」
 ジノが損害を確認しようとする。
「全軍の3割近い損害が出た模様。ヴァルトシュタイン卿は、後備えで右翼を
固めようとなさっていますが、ラウンズが加わり勢いを増したEU軍の相次ぐ
攻撃で、思うようにいってはいない模様です。」
 報告に来た士官が答える。
「ご苦労だった。下がっていい。」
「イエス、ユア・ハイネス。」
 士官が会議室を出る。
「このままじゃ、本国が危ない…。」
 アーニャの言葉に、スザクが頷く。
「実行しないに越した事は無いが…。本土奪還作戦の立案に入る。」
「殿下、まだ本国は陥落してはおりません。」
「解っている。だが、現在の状況から鑑みて、立案の必要はある。もちろん、私
としても、立案のみで終わる事を祈りたいが、最悪の事態は想定しておくべき
だろう。」
「総司令官閣下。その場合、日本に駐屯する部隊も動員なさいますか?」
「できれば、半数は動員したい。だが、それには絶対に必要な条件がある。」
「それは…?」
「中華連邦、ロシア州が日本に攻め込まないという確約だ。もし、出陣した際
に、この地を落とされれば我らは補給を遮断される。」
 スザクがコーネリアの質問に答える。

「ナナリー皇帝と会談を?」
「既に、首脳部の承認は取り付けてあります。使者は議長の親書を携えて、日
本に向かっています。天子様宛の親書も間もなく届きましょう。貴国には貴国
の都合があるでしょうが、できれば歩調をあわせていただきたい。」
 休憩時間に、星刻はシャルンホルストから、日本での会談を持ち出されてい
た。
「ロシア州は、ナナリー皇帝と手を組むと申されますか?」
「それは、向こう次第ですな。ただ、このままでは形はどうあれ、滅ぼされるだ
けでしょう。」
 ロシア州に駐屯する軍は、プトランの会戦の64個師団から、既に40個師
団を割り込んでいる。
 このまま、EUと戦っても勝算が無いのは、誰の目にも明らかだった。
『よい機会かも知れぬ。人となりを確かめるのにも、丁度よいか…。』
「解りました。私からも、天子様に申し上げてみましょう。」
「頼みます。それでは。」
 端末に映っている、シャルンホルストの顔が消えた。
「星刻様。藤堂殿から書状が届きました。」
 香凛から受け取って、目を通した星刻はしばらく考え込んだ。
 そこには、ナナリー達と会談があれば、黒の騎士団からも代表を出して、参
加させて欲しいと書かれていた。

「ひゃはははははは!!」
 パーシヴァルの右腕の爪がブレイズルミナスを纏って、ランスとなる。
 そのまま、近くのカールレオン級を、貫通する。
 爆発しながら落ちてゆく航空艦には目もくれずに、HSLライフルを撃ちまくるド
ーチェスターの集団を、次々と撃破していく。
「やれやれ、これが本土直属軍か。思ったよりつまらんな。うん?」
 コックピットのメインモニターに映ったのは、ナイトメアと共にパーシヴァルを落と
そうとするログレス級であった。
「ほお、そこそこの獲物だな…。」
 攻撃を全てかわしながら、大腿部に装備されているハドロン砲でログレス級を
火達磨にする。
「裏切り者が!!」
 三方から、ウォードが突っ込んでくる。
「ふん。」
 頭部、両肩についているスラッシュハーケンで、まとめてコックピットを貫く。
「つまらんなあ。もっと歯ごたえのある奴はいないのか。」
「ブランドリー卿、我々の任務は敵の右翼を引きちぎり、本陣を攻める事。貴方
が遊ぶ事ではありませんよ。」
 ミサイルとヴァリスで、的確にナイトメアを落としながらモニカが通信を入れる。
「言われなくても解っている。俺は後備えの後方へ回り込む。お前は牽制して
くれ。」
「了解。」
 ラモラックはハドロンライフルで、航空艦にも確実にダメージを与え、シクザー
ル・ヴァルキュリエ隊と麾下の部隊が止めを刺す。
 その間に、ルキアーノは後備えの部隊の戦力を削り取っていた。

「右翼。これ以上持ちません!!」
「ヴォルテール撃沈。ジェームズ将軍戦死!」
「後備えの部隊。このままでは、戦線が崩壊します!」
「左翼、押されています!!」
 ジェレミアを相手にする、ビスマルクの元には凶報ばかり届く。
「くっ!このままでは!!」
 前衛もニミュエを中心とする部隊に、押され続けている。ビスマルクの親衛
隊、ケーニヒ・ヴァルキュリエ隊の奮戦でどうにか崩れずにすんでいるという
有様だった。
「ネオウェルズ守備隊より、緊急入電!フォートデトリックより、ナイトメア部隊が
襲来!現在、ファランクス卿の指揮の元、交戦中の模様!!」
「何!!」

「フォートデトリックより、彼女達の残りが出撃しました。予定通り、ネオウ
ェルズの守備隊と交戦中の模様。」
「うん。これで、一気にチェックメイトと行こうか。」
 カノンの報告を聞いて、シュナイゼルは満足そうに答える。

 ネオウェルズでは、フォートデトリックから出撃した、ニミュエ12騎を中心にし
た部隊と戦闘が繰り広げられていた。
「ひるむな。死守せよ!」
 イゾルデの予備パーツを元に組み上げたナイトメア、モルオルトを駆ってベア
トリスは部隊の先頭に立って戦っていた。
 しかし、12騎のニミュエの性能を駆使した戦いに、苦戦を強いられていた。
 1騎のニミュエがモルオルトに挑んでくる。
「頭を潰しにきたのね…。」
 量産機用のヴァリスで仕留めようとするが、悉くかわされる。
「この動き…。一体…。」
 機体性能もそうだが、パイロットの反応速度も尋常ではない。
「それでも…。」
 すれ違い様にMVSで、ニミュエを両断する。
「まだ、私には及ばない…。」
 スラッシュハーケンで、ニミュエを倒した隙を狙っていたドーチェスターを
仕留める。
『今のところは、まだこちらが、有利…。けれど、それも何処まで持つか…。』
 チェサピークでの戦況を聞いてから、ベアトリスは事態を楽観視していなか
った。
 むしろ、自分達が敗者の列に加わる運命の足音が、聞こえてくるように感じ
ていた。

「ぬう!!」
 ジークフリードの右のスラッシュハーケンが、切断される。
「またも、かわされた。やはり、こちらの動きを読んでいるというのか?もし
や…。」
 ジェレミアの左目が青く光る。
 瞳には逆さにしたギアスの紋章が、浮かんでいた。
「何!?」
 今まで見えていた、ジークフリードの未来の機動が見えなくなっていた。
 ジークフリードのスラッシュハーケンを、辛うじてかわしたが、肩の装甲を削ら
れていた。
「やはり、ギアス。呪われし力を宿していたか!マリアンヌ様を死に追いやった
忌むべき力を宿していたか!!」
 ジークフリードがスピードを上げて、ギャラハッドに迫る。
「未来が見えぬとしても、私はナイトオブワン。その名に掛けて、負けるわけ
にはゆかぬ!!」
 エクスカリバーを上段に構え、ジークフリードを両断せんと、ギャラハッド
はジークフリードに迫る。
 スラッシュハーケン2基でエクスカリバーの斬撃を防ぎながら、後方に装備
されている、スラッシュハーケンが蠍の毒針の如くギャラハッドに襲い掛かり、
コックピットを貫通する。
「ば、馬鹿な…。」
 信じられないような表情で、ビスマルクは吐血する。
「だが…、貴様達はいずれ敗れる。あの男がいる限り…。」
 ナナリーとスザクの婚約が発表された際、ビスマルクはスザクにある物を見
せていた。
「無にするなよ…。そして、ナナリー様を…、頼む…。」
 ギャラハッドは爆散し、ビスマルクの肉体がこの世から消える。
 帝国最強の騎士であるビスマルクの戦死で、ブリタニア軍は戦意を喪失し、
次々と降伏した。

「ブリタニア軍、降伏。」
 オペレーターの報告を聞いて。シュナイゼルは黙って頷いた。
「カノン。降伏した軍を加えて軍の再編を。終了次第、ネオウェルズに向かう。」
「承知しました。」
「ネオウェルズの状況は?」
「未だに決着は着いておりません。ファランクス公爵が、粘り続けているよう
です。」
「さすがに、嘗てのナイトオブツー。そう簡単には、勝たせてくれないか。だ
が…。」
 シュナイゼルは微笑む。
「間もなく、火の手は上がる。それで、終わる…。」

後書き
遂に、シュナイゼルがブリタニア本国に侵攻してくる、話です。
とはいえ、まともに戦えば敗北は必定。
ならば、どうするか。
内部工作による、敵の切り崩し。
関ヶ原の戦いと同じです。
それにフレイヤを使用する。
これが、シュナイゼルが立てた策でした。
そして、それはブリタニア本国の部隊にまで及び、いまや本国の運命は、風前
の灯火の如くです。

次回 AFTER TURN23 帝都 陥落
ある人物が登場し、戦いは別の意味を持ちます。

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2008/12/10 21:19
R2小説版
さて、とっくに話題になっていると思ったのに意外にでていない角川スニーカー文庫R2第3巻。 小説版全般に言えることですが、アニメででたエピソードはストーリーに必要最低限だけでさらりと流し(それでもあの密度のアニメですから相当の量です)なるべく別の視点から、例えばナナリーの視点、あるいは中華の視点から、物語を再構築しています。 第3巻では中華ファンは132ページから137ページ、146ページから155ページをお読みください。アニメには無かった政治家としての星刻が読めます。 132ページでは星刻と藤堂... ...続きを見る
金属中毒
2008/12/10 22:34

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは凪です。その後、足の調子はいかがですか。

さて、洪古さん言うところの面の皮の厚い男、シュナイゼルが世界を揺らしています。彼には彼の正義がありそうですけど、正義にすりつぶされる立場におかれたものには、「誰かの正義など己の利益にならなければ無い方がいい」と言いたくなります。
星刻は本当は自分から動きたいタイプに見えます。それが巨大すぎる中華を背負ってしまったゆえに、様子見しかできない。ストレス溜め込みそうですね。
そして、あの男、ゼロの可能性は無いとして、何者なのか?
次回更新どんでん返しもお待ち申しております。

2008/12/11 19:24
凪さん。
コメントありがとうございます。

足の具合は、今は耐えるしかないというのが、主
治医の先生のお話だそうです。

>正義にすりつぶされる立場におかれたもの
 正義は、時によって、はた迷惑極まりない
 物になりますからね。
 それに巻き込まれる人たちは、堪った物で
 はないでしょうね。

>星刻は本当は自分から動きたいタイプ
 重臣として、国家を背負って立つ才能
 がありますが、性格的には前線の将で
 ありたいというのが、本音だと私は思
 っています。
 仰るとおり、ストレスと溜め込みそう
 ですね。
CIC担当
2008/12/14 22:49
うおおぉぉぉっ!ジェレミア卿強えぇぇぇ!
R2では見られなかったサザーランドに乗り、しかもカワイ子ちゃん12人もつれてビスマルクと渡り合うなんて…すげぇカッコいいっす!
あとナナリー皇女の即位やスザクとの結婚が、おたらしたブリタニア国内の亀裂やフレイアを用いたシュナイゼルの戦略も大変見ごたえがありました


ただひとつ疑問があるのですが、ギアスキャンセラーについてなんですがあれは本編でV.V.のいたギアス嚮団での調整で「偶然」手に入れたものであって、この作品でのシュナイゼル+バトレーのコードR計画では手に入れるのは無理だと思うですがどうなんでしょうか? 
私はあのコードR計画はC.C.の不老不死と神経電位操縦についての研究だと思っているのでギアス能力自体はあまり関係ないと思うのですが…どうなのでしょうか?
(もしV.V.が絡んでくるのなら話は別なんですけどね)
もしこのコメントが今後のネタバレに繋がるようでしたら削除して構いません

長文失礼しました。A.T23楽しみにしています
フロッガー
2008/12/15 00:50
〜スザクとの結婚が、おたらしたブリタニア国内の〜
           ↓
〜スザクとの結婚がもたらしたブリタニア国内の〜

失礼しました
フロッガー
2008/12/15 00:53
フロッガーさん。
コメントありがとうございます。

>うおおぉぉぉっ!ジェレミア卿強えぇぇぇ!
 元々、優秀なパイロットでしたからね。
 改造されれば、強くなりますよね。

>シュナイゼルの戦略
 ブリタニアのような保守的な国で、シャルルの
 実力主義というのは、ある意味、諸刃の剣なん
 ですよね。
 シュナイゼルは、そこにつけこんだわけです。

>ギアスキャンセラー
 コードRだけでは、勿論無理です。
 これ以上は、ネタバレになりますので、コメン
 トできませんが、これをジェレミアが使えるの
 にも、勿論、理由があります。
CIC担当
2008/12/18 22:14

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