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zoom RSS GUNSLINGER GIRL −FLAMMENTO− 第1話 担い手

<<   作成日時 : 2008/11/07 23:58   >>

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「兄さん。これからかい?」
「ああ、ローマで会う事になっている。」
「ローマ?つい最近掃除はしたけど、埃ぐらいは残っている。会うにしても、もっ
と他の場所でも良かったんじゃないかい?」
「埃ぐらい、払えなくては問題外だ。行くぞ、リコ。」
 ジャン・クローチェは弟のジョゼッフォ・クローチェ。通称ジョゼにそう言って、傍
らの少女を伴って出入り口に向かっていく。
 少女は只の少女ではない。
 義体と呼ばれる、手術と薬物で戦闘力を強化された少女である。

「ふむ。イタリア人と日本人のハーフの傭兵か。陸上自衛隊に入隊後、フラン
ス外人部隊へ入隊。所属は、第2外人落下傘連隊か。優秀だな。その後はあ
ちこちを点々か。能力的には問題なしだな。しかし、こちらの誘いに応じるか?
なかなか癖のありそうな男だが。」
 数日前、社会福祉公社作戦2課の課長を務める、ロレンツォがジャンに尋ね
る。
「癖があるという点は、それほど問題ないと考えます。私もそうですから。2
期生の担当官候補にも癖のある人間は少なくありません。問題ないかと。」
「応じない場合はどうする?いかに軍警察出身のお前といえどもそう簡単に、
勝てる相手ではないぞ?」
 用心深い性格の彼らしく、ロレンツォはそうジャンに尋ねる。
「その為に、リコを連れて行きます。」
「解った。万一の時は確実に仕留めろ。」
「無論です。」
 ジャンはリコを連れて、ローマに向かった。

 社会福祉公社。
 表向きは、障害者支援事業を行う公益法人だが、その実態は暗殺などの「汚
い仕事」を行う組織である。
 義体と呼ばれる少女達は担当官とペアになって仕事を行い、担当官と義体は
「フラテッロ」と呼ばれる。
 無論、それを知る者はごく僅かである。
 ジャンは、新たな担当官の候補と会うためにローマに向かう事になっていた。

 ローマの観光名所の一つ、ナボーナ広場にその男はいた。
 ブラウンがかった黒髪に、青い目。顔立ちは日本人のようだが、イタリア人に
も見える。
 男の名は、アルフレード・ベリーニ。
 日本人の父親とイタリア人の母親を持つ、いわゆるハーフだ。
「そろそろのはずだがな。まさか、実は詐欺だったなんてのは御免だぜ。そう
したら一から仕事を探さなきゃならん。」
 最近まで、イギリスのPMCと契約してイラクにいた。
 どういうルートで彼を知ったのか解らないが、イタリアで雇いたいとの申し
出を受けて、とりあえず話を聞きに来ていた。

「アルフレード・ベリーニだな?」
「そうだが、あんたは?」
 いつでも戦えるように精神のスイッチを切り替えて、目の前にいる男に尋ね
る。
「ジャン・ルイ・バタイユ。君を雇いたいと思っている者だ。」
『とりあえず来たか。さて、どんな仕事やら。』
 偽名を使ったジャンに連れられて、アルフレードは何故か自分が宿泊してい
るホテルに連れられていた。

「どこで嗅ぎつけたんだ?俺が泊まっている部屋を?」
 案内された部屋は、アルフレードが宿泊している部屋の隣だった。
「それはまだ話せんな。」
 聞きながら、途中から合流したリコを見ていた。
『まさか、子供のお守りか?傭兵の俺に。』
 だが、リコからガンオイルのかすかな匂いを感じて、只の子供ではないと考
えを改めた。

「で、何で俺を雇いたいんだ?仕事は?」
 部屋に入ると、アルフレードが、話を切り出す。
「この国のゴミ共を片付ける。それが仕事だ。」
「マフィア退治か?あんた警察の人間か?最近は、人手不足かい?」
 ジャンの答えに、アルフレードは怪訝そうな顔をした。
「政府側の人間ではあるが、警察ではない。マフィアを相手にする事もあるが、
本来の相手は別だ。」
「それは?」
「パダーニャ。知っているか?」
「一応の知識はな。」

 パダーニャ。イタリアの経済格差に伴い、北部と中部の一部を独立させよう
とする極右テロリスト集団である。
 主に爆破テロ、要人の誘拐・暗殺を行っている。
 外人部隊やPMCにはイタリア人もいた為に、アルフレードも一応の知識は
持っていた。
「で、そいつらの掃除を俺にしろと?」
「そうだ。正確には君ともう一人だ。そっちの面倒も見てもらうがな。」
『それで、そっちのお嬢ちゃんか・・・。』
「あんたが面倒を見ているのは、そのお嬢ちゃんか?」
 サングラスに隠れたジャンの目が鋭くなる。
「どうして解った?」
「気づかれたくないんなら、ガンオイルの匂いぐらい誤魔化すんだな。かすか
だが匂うぞ。」
「なるほど、調べたとおり優秀だな。」
 ベッドにおいてあるトランクから書類を取り出し、アルフレードの経歴を読
み上げる。
『大した情報収集能力だ。政府側の人間というのも本当と見ていいかな。ん、
待てよ。』
 PMCに居た時の噂を思い出した。
「そういえば、ほとんど専門にパダーニャを狩る連中がいたって聞いたことが
あるな。子供を連れてるって噂を聞いたことがある。その組織の人間か?」
「そうだ。で、どうする?」
「ここまで知ってたら、断ったら殺すつもりなんじゃないのか。ま、黙って殺
される趣味は無いがな。それに、テロリストとは馬が合いそうにない。話に乗
る。」
「そうか。俺はジャン。こいつは、俺の義体のリコだ。公社にいったら、お前
にも義体の担当官になってもらう。そして、パダーニャを潰してもらう。」
「解った。ところで、戦うからには武器が必要なわけだが、俺の武器はどうやっ
てそちらに届ければいい?」
「金は持っているか?」
「車を買うくらいならな。」
「すぐに買って来い。戸籍関係や諸々の手配をさせる。」
 ジャンは携帯を取り出し、ローマ支部に連絡を入れた。
 こうして、アルフレード・ベリーニ。
 本名月村悠は、社会福祉公社の一員となった。

「今日は、公社の中を案内する。お前の義体との対面は1ヶ月後だ。それと、
今日中に自分が担当する義体の名前を決めておけ。」
「名前?最初から決まっているんじゃないのか。」
「義体の名前を決めるのが、担当官の最初の仕事だからな。」
 ジョゼが歩いてくる。
「兄さん。彼かい?」
「ああ、新しい担当官だ。弟のジョゼッフォだ。」
 ジャンがアルフレードにジョゼを紹介する。
「ジョゼッフォ・クローチェだ。ここではジョゼと呼ばれているよ。こっちはヘンリエ
ッタ。僕の義体だ。」
 手を出して握手を求めてくる。
「アルフレード・ベリーニだ。アルフでいい。よろしくな、ヘンリエッタ。」
 ジョゼと握手しながら、ヘンリエッタにも挨拶する。
「あ、はい。よろしくおねがいします。」
 ヘンリエッタがペコリとお辞儀をする。
「これから、ミーティングのついでにお前を他の担当官や職員に紹介する。今
日中に顔を覚えておけ。」
「解った。」

 ミーティングが終わり、ジャンはアルフに公社の中の案内を再開していた。
「ここが、シューティングレンジだ。」
「へえ、なかなか立派だな。」
 他の職員が射撃訓練をしていて、銃声が響き渡る。
「ちょうどいいから、お前の腕前も見せてもらう。」
 ジャンはアルフをレンジの一つに立たせる。
「いいぜ。」
 懐から愛銃のH&K P2000を取り出す。
「弾は何を使っている?」
「.40S&W弾。」
 シューティンググラスを着けてマガジンを装着し、セーフティーを外す。
「9mmパラベラムじゃないのか?」
「外人部隊を除隊した後、ボディーアーマーを着けているのとやりあう機会が
多かったんでね。俺は威力重視なんだよ。その分扱いにくくはなるが、それは
体に覚えさせた。」
 的を狙って、撃ち始めた。

「ここがお前の部屋だ。これは各種資料になる。今日中に読んでおけ。お前の
アパートはもう手配して家具も運び込んである。場所はここだ。」
 ジャンは、資料とアパートまでの地図が書いてあるメモを渡す。
「1ヵ月後、お前の義体と会わせる。さっきも言ったが、名前を今日中に技術部
のベリサリオに知らせておけ。」
「解ってる。」
「じゃあ、明日。」
 ジャンはロレンツォの部屋に向かい、アルフは自分の部屋で資料を読み始め
た。

「資料どおり、優秀な男でした。射撃、格闘術、狙撃。戦闘に関しては問題な
いでしょう。後は、義体に会ってからでしょう。」
 ジャンはアルフに対する評価を話していた。
「そこの所は、必要に応じて、それとなくサポートしろ。彼が担当する義体は、
2期生の試作だ。データ収集の為にも、うまくやってもらわんと困る。」
「解りました。」

「ふうん。成る程ねえ。身体能力は高いな。」
 アルフは義体に関する資料に目を通していた。
「だからといって、戦闘スキルの高さに必ずしも繋がらないんだよな。」
 今まで戦った相手で、身体能力においてアルフを上回っていた相手は決して
少なくなかった。
 しかし、それを相手は活かしきれておらず、アルフは勝って生き延びてきた。
「ま、とりあえず。ちょっとスキルを見させてもらってそれから、訓練に入る
か。」
 デスクにある電話で、技術部で義体の条件付けを担当しているベリサリオに
連絡を入れた。

 1ヵ月後、ベリサリオに連れられて、アルフは自分が担当する義体の元に向
かった。
「生活訓練は終わっている。条件付けは今のところは注文どおり最小限に留め
てある。どの義体よりも軽い。これから、お前の希望に沿って追加する事にな
る。」
 ベリサリオが、義体の状況を説明する。
「あまり条件付けはする気は無いね。薬漬けにして忠誠を強要するのは、性分
じゃない。」
 アルフは条件付けに、あまり好感を持ってはいない。
『俺が義体に期待するのは、互いの信頼関係だからな。』
「どのような状況下でも、仲間を見捨てない。」というスローガンの下、厳しい訓
練を行い、固い団結力を培っていくのがフランス外人部隊だ。
 アルフ自体、その考え方が体に染み付いており、また自身が好んでいた為
に、フラテッロの関係もそうしようと考えていた。
「まあ、とにかく、うまくやってくれ。」
 ベリサリオが部屋のロックを解除する。
 部屋に入ると、長い金髪の美しい顔立ちの13歳位の少女が寝かされていた。
 下着もつけていないのだろう。
 掛けられたシーツの上から、ボディラインが見事に解り、膨らみ始めた乳房の
部分は、乳首の形すらわかる。
 周囲を見渡すと、無造作に下着と服が置かれていた。
『いくら義体だからって、相手は女の子だろうが・・・。もうちょっとデリカシー持て
って・・・。」
 溜息をついていると、少女が目を覚ます。
「お目覚めか、お姫様。俺の事は解るか?」
「えと、アルフレード・ベリーニさんですよね?」
「そうだ。ここは何処だ?」
「社会福祉公社です。」
「お前の名前は?」
「キャロル・マッケンジー。貴方の義体です。」
『とりあえず、コミュニケーションは問題なさそうだな。』
 意思疎通がきちんとできる事に、アルフは安心した。
「さてと、お前の身体能力を見させてもらう。銃の扱いはわかるか?」
「はい。一通りは。」
「よし、じゃあ着替えて外に出るぞ。」
「解りました。」
 立ち上がって、服を着ようとする。
「と、その前に。約束事だ。」
「何でしょうか?」
 不思議そうにキャロルが首を傾げる。
「医者に診てもらう時とかは仕方ないが、それ以外では異性に下着姿や裸は
みだりに見せないこと。スカートの時は下にスパッツをはいて、下着が見えな
いようにすること。義体とはいえ女の子だからな。慎みを持ってくれ。」
「解りました。」
「よろしい。じゃあ、俺は外にいる。着替え終わったら出てきてくれ。それと、俺
の事はアルフでいい。フルネームは呼びにくいだろ。」
「解りました。アルフさん。」
 頷くと、アルフは外に出た。
『やれやれ、知識はあるが本当に生まれたての赤ん坊だな・・・。』
 壁によっかかってアルフは溜息をついていた。
「どうしたんだ?義体と喧嘩でもしたのかい?」
 義体のカウンセリングをしているビアンキが、アルフに話しかけてくる。
「なあ、ビアンキ。」
「何だい?」
「その、義体の生活訓練には女の子としての慎み深さを覚えさせるってのはな
いのか?」
 それを聞いたビアンキは、驚いたように目を開いたり閉じたりしていたが、
暫くすると笑い始めた。
「君みたいのは初めてだよ。成る程、思いつかなかったな。ベリサリオに言っ
ておこうか?」
「ああ。くれぐれも生活訓練に組み入れてもらってくれ。条件付けにされたら
気分が悪い。」
「君は、たしかフランス外人部隊出身だったね。条件付けは嫌いかい?」
「必要な事は理屈では解る。だからといって、好きにはなれないね。」
「そうか。じゃあ、彼女、ええっと名前は・・・。」
「キャロルだ。キャロル・マッケンジー。」
「キャロルの場合、条件付けの軽さを考慮してカウンセリングするよ。」
「頼む。」
 頷くとビアンキは、カウンセリング室に向かう。
「着替え終わりました。」
 スウェットの上下に着替えたキャロルが、部屋から出てきた。
「よし、じゃあ、身体能力の測定と、銃の腕前を一通り見せてもらう。行くぞ。」
「はい。」
 アルフとキャロル。
 新しく公社に加わったフラテッロは、公社の運動場に歩いていった。

後書き
GUNSLINGER GIRLの二次創作、GUNSLINGER GIRL −FLAMME
NTO−の第1話です。
好きな作品だったので、ギアスの二次小説を書いている時、気分転換をしてい
る際に、ふと頭に浮かんだ構想を元に書いてみました。
今のところは、ギアスの二次小説が主なので、こちらのペースはゆったりした
物になると思います。
1話はオリジナルキャラの担当官のアルフと、義体のキャロルの顔合わせのお
話です。
2人がフラテッロとして任務につくのは、これからです。
次回 第2話フラテッロ。
社会福祉公社での、2人の日々が始まります。

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第三話 女、そして少女
ベリサリオはベットに横たわっている3人の少年と少女を見下ろしながら昔を思い出していた。 イタリアの社会福祉公社。 福祉のためにとうたいながら、身寄りがなかったり家族などから見放された子供を引き取り対テロ戦闘用サイボーグに改造していた。 彼はその主要なスタッ… ...続きを見る
銃を持った天使たち
2011/05/22 22:53

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは。
始めてコメントします。

ハーフのフランス外人部隊経験者、面白そうですね。
ガンオイルの匂いでリコの正体に気がつくところなど細かな部分が気に入りました。
今後の展開を楽しみにしています。

記録技師アルファ
URL
2011/05/22 22:55
記録技師アルファさん。
コメントありがとうございます。

>ガンオイルの匂いでリコの正体に気がつく
>ところなど細かな部分が気に入りました。
 始めから経歴等、異色な登場人物にする事
 は、決めておりましたので、そこらのプロ
 以上に用心深い人物にしようと思って、頭
 に思い浮かんだのが、これです。
 嗅覚で得る情報って、人間にとって、結構
 重要だとも、思うんですよ。

>今後の展開を楽しみにしています。
 ありがとうございます。
 随分、お休みしてましたけど、続きを書き
 ますかな?
CIC担当
URL
2011/05/23 09:51

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