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zoom RSS GUNSLINGER GIRL −FLAMMENTO− 第2話 フラテッロ

<<   作成日時 : 2008/11/15 12:56   >>

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 シューティングレンジで、銃声が響き渡る。
 公社の他の職員に混じって、キャロルが射撃の訓練をしていた。
 手にしているのはシグザウアー P226。
 各国の特殊部隊も採用している、性能は折紙つきの銃だ。
 義体の使用する銃の選別も担当官に一任される。
 アルフは、信頼性と取りまわりを優先して装備を選んでいた。

「アルフさん。終わりました。」
 15発の9mmパラベラム弾を撃ち終って、キャロルはアルフのところに歩いて
くる。
「じゃあ、見せてもらおうか?」
 アルフが的を見る。
「ふうん。」
 弾は全て的の中に命中している。
 命中箇所を見ても、キャロルの銃の腕前は水準以上といっていいだろう。
『でもなあ、ちょっと難ありか。水準以上の技量を持っていて当たり前だから
な・・・。』
 訓練が始まって、今日で4日目になる。
『体を使うのに、どうも戸惑っている感じなんだよなあ・・・。』
 銃を撃っている時に、動作がどこかギクシャクしているのを、アルフは気に
していた。
 緊張が原因かと思ったが、撃っている時の表情は冷静その物だった。
『訓練のメニューを、少し考え直した方がいいかもしれないな。』
 再び、訓練を続けるキャロルを見ながら、アルフはそう考えていた。

「どうした。訓練メニューで悩んでいるのかい?」
 食堂で、手帳に書き込んだ訓練メニューを睨んでいるアルフを見て、ジョゼが
話しかけてくる。
「悩んでいるって言えば、悩んでいるかな・・・。今ひとつ、体を使いきれていな
いんだよ。そっちをどうしようかと思っていてね。」
 コーヒーを飲みながら、ジョゼに悩んでいる事を話す。
「義体は確かに身体能力は高い。けど、条件付けの影響で過去の記憶を喪失
している。いわば赤ん坊の状態だ。赤ん坊は立って歩けるようになるまで時間
がかかるだろう?今のキャロルはそういう状態なんだよ。体をうまく動かせるよ
うになるには、少し時間がかかる。」
 エスプレッソを飲みながら、ジョゼがアルフにそう話す。
「それは、解ってるんだ。ただ、それをどう解決するかなんだよな・・・。うん?
待てよ。」
 アルフが何かを思いついたように、考え始める。
『赤ん坊ってのは、日常生活の中で立って歩くのを覚えるんだよな。と、する
と・・・。』
 時計の針は、夕方の4時を指していた。
「ジョゼ、アドバイス。ありがとうな。」
 コーヒーを飲み干して、アルフが席を立つ。
「どういたしまして。で、どうしたんだい?」
「ちょっと、町に出てくる。いいこと、思いついたんでね。」
 そう言って、食堂を出た。

「外出、ですか?」
「ああ、偶には気晴らしも大事だからな・・・。」
 外出許可の申請書にサインをしながら、アルフはキャロルと話していた。
「外出かい?」
 トリエラを連れた、ヒルシャーが通りがかる。
「ああ、ちょっとな。」
「随分、変わった所に行きますね。アルフさんの、趣味ですか?」
 申請書を覗き込んだトリエラが尋ねてくる。
「まあ、そんなところだな。」
 手続きが終わった、アルフはキャロルを連れて町に出た。

「ここって?」
「見ての通り、パズルの専門店だ。息抜きになればと思ってな。好きなのを選
んでいいぞ。」
「いいんですか?」
「ああ、その為に連れてきたんだからな。」
 嬉しそうな顔で、キャロルがパズルを選び始める。
『資料で読んでおいたのが、役に立ったな。』
 義体に関する資料を読んでいて、体をうまく使いこなせない義体には、楽器
演奏等の一見すると訓練には関係ないことが、有効だと書いていた事を思い出
して、アルフはここに来た。
『ついでに、頭を使う訓練にもなりそうだしな。』
 アルフ自身もパズルを幾つか買った。

「そうか。気分転換に買ってくれたんだ。」
 トリエラとクラエス部屋で、義体たちがお茶会を開いていた。
「うん。訓練が終わった後、リラックスできるようにって。」
 キャロルは、早速知恵の輪で遊んでいた。
「トリエラの気分転換は、ぬいぐるみ?」
「まあ、そうね。どの子も違っていて個性があるから、見ていて飽きないのよ。」
 部屋にあるぬいぐるみを見回しながら、キャロルに答える。
「ヘンリエッタは、写真だよね。リコは?」
「私は、特に無いよ。毎日、楽しいもん。」
「リコのそういうとこ、羨ましいなあ。」
 ヘンリエッタが、微笑みながら言う。

「考えてみれば、不思議な人よね。」
 本を読んでいたクラエスが、言い出す。
「どうしたの?クラエス。いきなり。」
 トリエラが不思議に思って、尋ねる。
「あの人、多分、日本人のハーフよ。ひょっとしたら、元は日本に住んでいたか
もしれない。そんな人が、何故ここに来た事が、何か不思議なのよ。」
 トリエラにそう答えて、クラエスは本のページを捲る。
「ねえ、キャロル。訓練ではアルフさんて、どんな感じ?」
 クラエスがキャロルに尋ねる。
「クラエス。キャロルは訓練が始まって、まだ4日目だよ。どんな感じってい
われても、答えるの大変だって。」
 どう答えようか、考え込むキャロルをフォローするように、トリエラがクラ
エスに言う。
「特に厳しいってわけでもないかな。訓練中は後で見ているだけだし。あ、偶に
射撃の実演もしてくれる。けど。」
「けど?」
 クラエスが興味深そうに、キャロルを見る。
「何か、暖かいの。後ろから見ているアルフさんの視線が暖かいの。優しく見
守っていてくれている感じで。」
 胸元でそっと手を握りながら、頬を染めてクラエスに答える。
「そう。良かったじゃない。いい人とペアを組めて。」
 そう言って、再び視線を本に戻す。
「ジョゼさんに似ているのかも。」
 ヘンリエッタがそうキャロルに言った。

「珍しいわね。」
「何が?」
 皆が部屋に戻ってから、トリエラとクラエスはお茶会の片付けをしていた。
「貴方が、誰かを気にする事よ。どうしたの?」
「別に気にしているわけじゃないわ。不思議に思っただけ。」
 トリエラにクラエスが答える。
「ふうん。」
「貴方こそ。ヒルシャーさんとはどうなのよ?」
「ど、どうって、私達はフラテッロ。ヒルシャーは担当官で私は義体。それだ
けよ。」
 慌てたように言って、トリエラがかすかに頬を染める。

『とりあえず、暫く様子見だな。それでも不足なら、先に格闘術を教えるのを早
くするか。』
 スライディングパズルをしながら、アルフは今後の事を考えていた。
 その時、ノックの音が聞こえた。
「どうぞ。」
 扉を開けたのは、ヒルシャーだった。
「ヒルシャーか。どうした?」
「ちょっと、話がしたくなってね。」

「順調か?キャロルの訓練は。」
「正直、ちょっとな。射撃や格闘技の技量云々以前に、まず体をうまく使える
ようにならないとな。もう少し、様子を見て場合によったら、格闘技の訓練を
先にやらせようと思っている。」
 コーヒーを淹れながら、ヒルシャーに現状を話す。
「格闘技か。それはいいかもしれない。けど、相手をどうするかだな。条件付
けがあるから、担当官や公社の人間相手じゃ本気は出せないぞ。」
 いかに条件付けが弱いといっても、担当官に対する忠誠心の刷り込みは強
力である。
 そこをヒルシャーは指摘した。
「いいんだよ。どの道、本当に経験を積むのは現場に出てからだしな。あ、タ
バコいいか?」
「ああ。」
 アルフはタバコに火を点ける。
「とにかく、1ヶ月で基礎を教え込む。後は、現場で任務をクリアしながら、
経験値を上げさせて、訓練のランクを上げていく。ただ、格闘技の件は悩みの
種になるな。まあ、いつも格闘戦をするとは限らないが、いざという時の為に
学ばせる必要がある。」
「よければ、紹介しようか?GISに達人がいるのを知っている。」
「軍警察の特殊部隊に?どうやって知り合ったんだ?」
 公社も任務上、特殊部隊と言えなくも無いが、あくまで裏の組織の為に、表
の部隊と関わりになる事はあまり無いと考えていたアルフは、驚く。
「以前、トリエラが世話になったんだよ。」
 そう言って、ピノッキオとの一件の話をする。
「あのトリエラをねえ。俺が見た限り、義体の中では一番戦闘スキルは高いが、
負かした奴がいるのか。」
「正直、僕も驚いたけどね。まあ、とにかくどうする?」
「ああ、その内頼む事になる。」
 新しいタバコに火を点ける。

「ところでいいかい?」
「何がだ?」
「何で、公社に?君は見たところ日本人とのハーフみたいだけど。」
「ああ。本当の国籍は日本だ。お袋はイタリア人だけど、親父は日本人。日本
で育った。まあ、不思議って言えば、不思議か。」
 その時、またノックの音が聞こえた。
「どうぞ。」
「失礼します。」
 入ってきたのは、パジャマを着てカーディガンをかけた、キャロルだった。

「どうした。キャロル?眠れないのか。」
「いえ、あの、聞いてもいいですか?」
「何だ?」
 言い難そうにしていたが、キャロルは思い切って口にした。
「どうして、公社に入ったんですか?」
 アルフが軽く目を見開く。
『聞いちゃいけなかったかな?でも、知りたい・・・。』
「ヒルシャーと同じ事聞くな。まあ、いい。簡単に言えばだ。そこにいる意味が
実感できる所にいたかった。と、いうことだな。」
「よく解らないが・・・。」
 ヒルシャーが首を傾げる。
「俺は、元々、陸上自衛隊にいたんだよ。レンジャーの資格も持ってて空挺部
隊にいたんだ。」
「おいおい、空挺部隊って言えば、軍の精鋭だろう?」
 ヒルシャーが意外そうに尋ねた。
「まあな。結構、将来も期待されていたけど、いる気がなくなってな。気がつ
いたら除隊していたよ。」
 そう言って、アルフはコーヒーを啜った。
「なんで、いる気がなくなったんですか?」
 キャロルが尋ねる。
「日本は憲法で、軍事力の使用には、かなり制限がある事は知っているか?」
「ああ、そうだったな。」
 憲法9条をヒルシャーは、思い出した。
「国家と国民を守るために軍隊がある。そこに所属する軍人は国を守る事に誇
りを持つ。だが、日本は自衛隊に風当たりが冷たくてな。最初は気にしてなか
ったけど、気がついたら耐えられなくなったんだよ。憲法で軍隊の所持が禁止
されているから自衛隊を持つ。実質的には軍隊だが、憲法の手前、軍隊じゃな
いと政府はいう。それに対して、「自衛隊は憲法違反だ。」そう言って、「自衛隊
はあってはいけない。」そういう風に考える国民も少ないわけじゃない。国会議
員にもそういうのがいる。挙句の果てに、新型の艦艇や戦闘機を装備しようと
すれば、中国や韓国に「軍国主義復活」なんて言われる。自分達はせっせと軍
備を拡張して、他国に軍隊を派遣している連中がだぜ。なのに、政府は弱腰。
「外交上の配慮」なんて言ってそこに触れないようにしている。入隊してから、
テレビの国会中継やニュースを腹立たしく見ていたよ。暫くして、レンジャー
の厳しい訓練まで受けてきた意味がわからなくなったんだ。で、気がついたら
俺は除隊していた。ただ、やってきた事を無駄にするのは嫌だったんだ。で、
外人部隊に入って、その後、他の戦場に行ったり、PMCと契約したりしてい
た。別に外人部隊に居続けてもよかったけど、どういうわけだか、所定の期間
が過ぎたら辞めちまった。で、PMCとの契約が切れて、イラクから引き上げ
た後に公社からスカウトされて、ここに来たってわけさ。いる意味が感じられ
る場所を求めてな。少なくとも、パダーニャを叩く事には意味があるだろ?」
 そう言って、カップに残ったコーヒーを飲み干した。
「そうだったんですか・・・。」
 キャロルが、渡されたコーヒーカップの中のコーヒーに、視線を落としなが
ら言った。
「そういう事だ。さて、そろそろ寝ろ。明日に疲れを残すなよ。しばらくは訓
練だ。覚える事は一杯あるんだからな。」
「あ、はい。おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ。」
 キャロルが自分の部屋に戻った。
「さて、そろそろ帰るか。そういや、ヒルシャーはどうして公社に来たんだ?」
「元々はユーロポールにいたんだが、いろいろあってな・・・。」
 複雑そうな表情で、ヒルシャーは答えた。
「そうか。そっちもいろいろあったんだな。」
 部屋から出て、鍵を閉める。
「じゃ、また、明日な。」
 そう言って、駐車場に向かった。

『アルフさん。いる意味を失ったら、公社も辞めるのかな?』
 ベッドに横になりながら、キャロルは考えていた。
『何で、こんなに気になるのかな?条件付けかな?』
 理由が解らないまま、キャロルは眠りについた。

後書き
公社での日常が始まる話です。
今回は、訓練と、アルフの過去をキャロルが聞くのが、メインですね。
アルフには、1話でも書いていますが、月村悠という本名があります。
その後、表面は偽名で通しています。
キャロルがアルフの事をもっと知るのは、後になります。

次回第3話 存在意義
2人の初任務の話です。

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