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zoom RSS コードギアス二次小説 AFTER TURN17 戦と 戦の 間

<<   作成日時 : 2008/10/04 23:23   >>

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「いつまでも、結論を出すのを先には出来まい。出来うる限り早く、出さねば
なるまい。」
 宰相の張范質が発言する。
 中華連邦の紫禁城内の会議室では、天子が臨席しての会議が開かれてい
た。
 1月にスペイン州がブリタニアの手に落ち、スザクの大将昇進に続いて、皇
女であるナナリーの結婚が発表されてから、ブリタニア国内では不平貴族や、
軍人達によるクーデターが相次いでいた。
 その為、EUの首都が置かれているフランス州への侵攻作戦は実施されてい
ない。
 その間、EUはシャルンホルストの戦略に基づき様々な準備が行われており、
それに関係して、ロシア州と中華連邦との間に会談がセットされ、その席上で
依頼された件に関して、受け入れるか否か、中華連邦は連日会議をしていた。
「しかし、宰相。向こうの申し出を受ければ、我が国は嫌でも、ブリタニアと
の戦争に巻き込まれます。」
 兵部尚書の洪平仲が、反対意見を述べる。
「受けなくとも、いずれ戦いの時は来る。その際、我が国だけで対抗するのは、
ほぼ無理と言ってもよいぞ。」
 礼部尚書の李遠見が、申し出を受け入れるべきと発言する。
「幸い、財政と民政はほぼ立ち直った。戦いになろうとも、国家の基盤はそう
簡単には揺ぎはしない。これは好機だ。手を結び共同でブリタニアに対抗すべ
きだ。」
 戸部尚書の張賽豊が、遠見の意見に賛成の意を示す。
「刑部尚書、国内の治安状況はどうかな?」
「宰相、それについては問題ありません。軍事演習の模様が中継された事によ
って、民心は安定しております。ブリタニアの侵攻の事は話題にはなっている
ようですが、それに伴う過激派の行動はほぼゼロです。」
 刑部尚書の凌安治が、国内の治安状況を報告する。
「一同、落ち着け。その前に各将軍たちの意見も、聞くべきであろう。
 文官のトップに位置する三公の一人、御史大夫の王壮年が尚書達を落ち着か
せる。

「大将軍、今の我が軍でブリタニアに勝利できますか?」
「今の我が軍なら、戦ってもそう簡単には負けますまい。但し、ラウンズが出て
こないとの条件つきでございます。」
 将軍の最高位たる大将軍曹驍騎が、天子の問いに恭しく答える。
「確かに、侵攻の先兵にラウンズが、特にあの枢木スザクが出てきては、どこ
まで対抗できるか・・・。」
 国境警備の最高責任者である驃騎将軍衛守国が、腕を組んで考え込む。
「例え奴の軍が精鋭揃いでも、数は20万。国境警備の軍は数倍。その様な弱
気でどうする!?」
 遠見が守国を咎めるように言う。
「礼部尚書。私は決して弱気にはなっておりませんぞ。今年のイギリス攻略戦
を思い出されるが、よろしいでしょう。イギリス州軍の大部分はスペイン州へ
の増援に裂かれていたとはいえ、一国をほとんど損害を出す事なく陥落させ、
あまつさえEU軍の崩壊の切欠を作り出した男。そこをお考え頂きたい。それ
にブリタニアの魔女、コーネリアも居る。ブリタニアでも屈指の精鋭である軍
に、先鋒となって攻め込まれれば、国境警備の軍とて只では済まぬ。その事
を申し上げているのです。」
 ややヒステリックになっている平仲に、守国が落ち着いて意見を言う。
「いざとなれば、中央の軍も動員できるが、動員数が多ければ洛陽周辺が手薄
になる。枢木ならば、奇策でそこをついてくるやもしれんな・・・。」
 中央部の軍の司令官の車騎将軍である、洪古も考え込む。
 軍もブリタニアとの戦いはそう遠くないと考えているが、兵力差はともかく練度
においては無視できぬ差があると考えており、開戦は今しばらく待つべきだとの
考えが一般である。
 一方文官は、大部分が迫り来るブリタニアの脅威に敏感すぎるほど敏感にな
っており、軍との間には溝もできて、会議では対立していた。

「凡そ戦いは正を以って合い、奇を以って制す。か・・・。」
 天子の親衛隊である禁軍の司令官である折衝将軍の地位にある星刻が、孫
子の一節を口にする。
「孫子ですね?」
 天子も勉学の傍ら、孫子を読んでいた。
「はっ。奴の恐ろしい所はそこです。正攻法で相手を抑え、状況に応じ様々な
奇策を用いて勝つ。加えてそれを可能にする精兵を揃えております。確かに枢
木の麾下の兵は、我が軍の総数に比べれば、少のうございます。しかし、策に
よって数の劣勢を補い勝利を収めた例は、歴史には多くございます。数だけを
頼みにするのは危険かと・・・。」
「では戦うなと言うのか?我が国きっての勇将である、貴公ほどの男が。」
 賽豊が星刻に批判じみた視線を浴びせながら、問いかける。
「そうではございません。戦略を整えないまま、開戦を決めてはブリタニアの
術中にはまり、敗北するだけだと申し上げています。申し出を受けるにも、そ
れ相応の準備が必要です。」
 視線を正面から受け止めながら、申し出を受ける際の必要条件を言う。
「枢木を迎え撃つならば、貴公の禁軍がよかろう。我が軍きっての精鋭揃い。
どうかな?」
 吏部尚書の徐粛啓が、星刻をけしかけるように言う。
「何を申される。そもそも禁軍は天子様をお守りする為の軍。その軍を最初か
ら当てにするとはいかなる所存か?そうさせない為に、私や守国殿の軍があ
る。今は申し出を受けるか否かを、考えるべきであろう!」
 強敵には精兵をぶつける。
 その考えには間違いは無いが、安易に星刻の禁軍を前線にだそうとする粛
啓の考えを、洪古は批判する。
「しかし、貴公らは戦おうとせぬではないか!」
「一同静まれ、天子様の御前なるぞ。」
 口論を始めようとする、洪古と遠見を范質が一喝する。

「太尉はどう考えますか?」
 天子は軍事の最高責任者である、太尉の霍退敵に尋ねる。
「はっ。ブリタニアとの戦いにおける戦略は、練るべきでありましょう。戦う
事ばかりを先行させては、我が国が危ういと考えます。確固とした戦略を定め
ずに戦う事を選んでは、亡国の切欠にもなりかねましょう。」
 退敵が戦略なき開戦の危うさを、述べる。
「しかし、太尉・・・。」
 賽豊が意見を言おうとする。
「礼部尚書。浮き足立ったままでは勝利はおぼつかんぞ。」
 大宦官によって一時左遷されられていたが、嘗ては名将として名を馳せ、兵
部尚書を務めた経験もある退敵にそう言われては、賽豊は何も言えなかった。

「禁軍を最初から前線に出せと?正気ですか。」
 折衝校尉となって星刻の副官を務め、時には軍を率いる事もある香凛は、信
じられないと言う表情になった。
「吏部尚書は、正気のご様子だ。」
 会議が終わり執務室に戻った星刻は、香凛にそう言った。
「確かに、我が国の歴史でも禁軍が侵攻軍と戦った事は幾度もあります。しか
し、他の軍を最初から用いる事無く、禁軍を前線に出した例はございません。」
「天子様をお守りするのなら、侵攻軍たるブリタニア軍を叩くべきだと、言いたい
のだろう。」
 薬を飲みながら、星刻は香凛を落ち着かせるように粛啓の考えているであろ
う事を、聞かせた。
「会議の結果は出ず、戦略も定まらない。これで戦うなど、最初から敗北が決
まったも同然です。尚書達は何をお考えですか?」
 不満を吐き出すように香凛が、星刻に尋ねる。
「落ち着け。文官たちがあの様子なのは、解っていた事だ。幸い兵部尚書は落
ち着いていらっしゃる。今は落ち着け、香凛。」
 窓から外の風景を見上げる。
「雪か・・・。2月なのだから不思議ではないが、何と美しい事か・・・。」
 欲の渦巻く人の世と比べて、星刻は呟いた。
『枢木スザク。ブリタニアの白き死神がどう動くか・・・。』

「そうか。陛下はご無事か。」
「ベアトリスやヴァルトシュタイン卿が、目を光らせているからね。確かに相変わ
らず不穏な空気は漂っているけど、さほど心配する必要はないと思うよ。
憲兵もベアトリスの指揮の下、あらかた不穏分子は洗い出しているし、来月に
は収まるだろうね。」
 帝都ネオウェルズで相次ぐクーデターについて、スザクはエリファレットから様
子を聞いていた。
「ありがとう。安心したよ。」
「この程度、どうという事は無いよ。スザクも心配しているだろうから、安心させて
やれと、陛下も仰っていたしね。」
「陛下が?」
「心配性な奴だと、笑っておられたよ。」
「見透かされていたか。」
 スザクが苦笑する。
「まあ、そういう事だよ。私やクローディア、ノネットにアンジェリーヌもいる。必ず
陛下をお守りするから安心していい。」
「そうだね。じゃあ、僕は僕でやるべき事をするよ。」
「ああ、それがいい。じゃ。」
 通信が切れると、デスクの上のリストに目を通し始める。
 日本に戻ってから、スザクはナナリーの専属騎士をつけたいと考えていた。
 皇帝であるシャルルに狙いをつけるのは無謀だと考えたら、矛先はスザクか
ナナリーに向けられる可能性が高い。
 スザクは自分で自分の身を守れるし、親衛隊であるゲレヒティヒカイト・ヴァル
キュリエ隊がいる。
 しかし、ナナリーには専属の親衛隊がいない。
 現在こそ、アーニャとアーニャの親衛隊であるルビーン・ヴァルキュリエ隊が
ついているが、ラウンズであるアーニャはシャルルの命令で、日本を離れる
可能性は常にあるため、専属の騎士と親衛隊を一刻も早くつける必要がある
と考えていた。
「ドロシー・F・ダールトン。亡きダールトン将軍の養女か。グラストンナイツを始
めとして、男子が多く軍人になっていたのは知っていたけど、女子にも軍人に
なっていた者がいたとは驚いたな。」
 スザクは、経歴に目を通し始めた。
 皇暦2014年、名門ボワルセル士官学校を、首席で卒業。卒業と同時に少
尉としてナイトメアを駆り、その後も各地で戦功を立てている。
「24歳で中佐か。麾下の戦力はナイトメア1個大隊。かなりのエリートだね。」
 柔らかい表情で、長い髪を2つに分けて束ねた、女性騎士の写真が経歴書に
貼られている。
「性格は温厚か。ナナリーのよき相談役にもなれそうだ。現在の所属は・・・、
鳥取か。日本にいたとはね。会ってみるべきかな。」
 他にも何人かの経歴書を読み、彼女以外にも候補を定めて騎士候補の選別
を終えた。
「騎士候補の選別は終わりましたか?」
「ああ。終わったよ中尉。これから自分はシュンペンター博士と、ミストロロープ
の所に行って来る。何かあったら呼んでくれ。」
 スザクが執務室を出る。
「ああ、間違いない。シャルルがナナリーをスザクと結婚させる理由は、お前の
予測どおりだよ。マリアンヌ。ルルーシュも機嫌を直せ。スザクをナナリーの騎
士にするのはお前も望んでいただろう。例え専任騎士をつけたとしても、スザク
は命をかけてナナリーを守るよ。」
 C.C.は、マリアンヌとルルーシュと話をしていた。
「ああ、勿論だ。お前と話す機会は作る。私のとっても必要な事だしな・・・。」
 会話を終えて、C.C.は執務に戻った。

「藤堂中佐。ブリタニアでまたクーデターが起きた模様です。」
「何?前のクーデターから。まだ一週間とたっていないのにか?」
 インド軍区に戻ってから、新たに黒の騎士団に入団したスペイン州の兵を加
えての再建に、藤堂は取り組んでいたが、この1ヶ月の間、耳にするのは、ブ
リタニアでのクーデターの話が多かった。
「今回も含めて、既に6回クーデターが起きた計算になります。逮捕、処刑さ
れた高級軍人、貴族の数もかなりの物になります。」
「枢木スザクと、ナナリー皇女の結婚がこれ程、影響を及ぼすとはな・・・。」
 訓練の状況を藤堂に報告に来た千葉も、考え込む。
「正直、私の予想を超えています。ここまでとは思いませんでした。」
 ディートハルトが千葉にそう話す。
「で、ブリタニア皇帝はどうしているんだい?手をこまねいているようなタイプじゃ
ないだろう?」
 朝比奈も話に加わる。
「首席秘書官のファランクス公爵が、不平貴族や軍人の洗い出しをしているよ
うです。切れ者と名高い人物。そう長い時間をかけずに、リストアップされる
でしょう。粛清の嵐が吹き荒れるかもしれませんな。」
「でも、それだとブリタニア軍も人材が不足するかもしれないねえ。こっちに
とっては、いいことかも。」
 ラクシャータが、自分の意見を言う。
「そうこちらに上手く事は運びはすまい。あのシュナイゼルが、対応策を考え
ていないとも思えん。」
 藤堂が訓練の視察をしに行く。
「それじゃ、私はやる事があるから。」
 ラクシャータは、藤堂たちのナイトメアの改修準備をしていた。
「ディートハルト、クーデターを起こした貴族や軍人について調べてくれ。特に
強硬派か穏健派かどちらに属するかをな。」
「すでに調査を開始しています。終了次第、報告いたします。」
「うむ。ところで篠崎からの連絡は?」
「EUは着々と準備を進めている模様です。」
 藤堂は頷いて、歩き始めた。
『シャルンホルスト殿は順調のようだな。問題はブリタニアだ。ディートハル
トの調査結果次第で、向こうの動きも解る。その時までに、出来る限り兵を鍛
えねば・・・。』
 表情を引き締めて、専用ナイトメア斬月に騎乗する。

「私どもは軍事の専門家ではありませんから、専任騎士の優劣はそれほど解る
わけではありませんが、この人物がいちばん適任かと・・・。」
 シュンペンターとミストロロープが適任者として選んだのは、ドロシー・F・ダー
ルトンだった。
「やはり、彼女ですか。シュンペンター博士。」
 会議の時こそ、副総督としての立場から部下として見ているが、連邦エリア
発足の際に文官たちの取り纏めとして白羽の矢を立て、直接就任を依頼した
人物である。その為、スザクは敬意を払っている。
「女性でもありますからな。いざと言う時には寝所に入っても問題はありますま
い。」
「他の候補と比べても、功績を立てていますし、何よりあのダールトン将軍の
養女。士官学校に入学する前に、騎士としての心得もそれなりに教えられてい
ると、考えてもよいでしょう。」
 ミストロロープも賛成する。
「2人がそういうなら、ダールトン中佐を第一候補としよう。彼女については、自
分が直接本国に居るグラストンナイツに聞いてみます。」
「後は、ナナリー総督に承諾していただけるかで、ございますな。」
「それについては、博士達にも協力していただきたいのですが。」
「それは構いません。私も総督は専任騎士を持つべきだと、考えておりました
からな。」
 シュンペンターが快く承諾する。
「それでは参りましょうか。博士、副総督。」
 ミストロロープが声を掛ける。

「専任騎士ですか?」
「はっ。この1ヶ月、ネオウェルズでクーデターが多発しておりますのは、ご存
知かと。」
「つまり、私が狙われるかもしれない。故に、専任騎士を選んで欲しい。そう
いうことですね。シュンペンター博士。」
「左様でございます。」
「候補はお決めなのでしょう?」
「はい。ですが、最終的には総督がお決めになられる事で、ございます。」
「副総督、それは理解しています。しかし、私は目が見えません。候補の騎士
たちに手合わせをさせて、それを見る事はできません。よって、プロフィール
を見させていただいた上で、通信を使用して私が話をして決めたいと思います。
それでよろしいですか?」
「はっ。勿論でございます。」
「では、その様にいたします。ご苦労様でした。執務に戻ってください。副総
督は残ってください。話があります。」
 シュンペンターとミストロロープは執務に戻る。

「で、何の用だい?ナナリー。」
 正式に結婚が決まってからは、二人きりの時は、スザクは昔と同じ口調にな
る。
「スザクさん。何故、自分で一人に決めなかったのですか?」
「何故って、専任騎士を決めるのは皇族の自由意志。それは誰であろうとも侵
すことのできない権利だ。それに、一つ一つ自分で物事を決めていくのは、ナ
ナリーのこれからについても大事だよ。」
「日本に住む方々の為にもですか?」
「そうだね。そして、ナナリーの頑張り次第で、連邦エリアがまた増えるかも
しれない。ナナリーが総督としての責務を見事に果たせば、他の貴族や皇族の
方々も無視できない。そうやって、少しずつこの世界を、ナナリーが望む優し
い世界に変えていける。僕はそう思っているよ。その為に、僕は君を精一杯支
える。でも、最後にはナナリーに頑張ってもらわないとね。その為にも、いろいろ
学んでもらわないと困る。」
 政治には完全に素人のナナリーに、総督に相応しい政治的判断力を養わせる
為には、まず決断をする意志が必要だとスザクは考えていた。
 まだ、実質的に総督府を統率しているのはスザクである為、現在の状況が続
くとなれば、ナナリーはこれからも「お飾りの総督」と見られ続けるだろう。
それはまずいと、スザクは考えていた。
 あくまで日本の総督は、ナナリーなのだから。
「失礼いたします。専任騎士候補者のプロフィールを、お持ちしました。」
 文官がナナリー用に点字に直された、候補者のプロフィールを持ってきた。
「ご苦労様です。」
 ナナリーがそれを受け取ると、文官はナナリーの執務室を出た。
「じゃあ、僕は執務に戻る。」
「はい。私は候補者のプロフィールを、読んでおきます。」
「うん。頑張って。」
 スザクは自分の執務室に戻った。

「へえ、総督の専任騎士ね〜。」
 総督府の地下にある、ファクトリーで新しいナイトメアの開発に勤しんでいるロ
イドが、興味を示した。
「ここの所、ネオウェルズで陛下を狙ったテロが多発していますから・・・。スザク
君も総督が狙われる可能性を想定して、以前から候補者を絞っていたみたいで
す。」
「アールストレイム卿やヴァインベルグ卿は、いつ本国に戻るかわからないから
ね。そうなると、専属の護衛はいなくなってしまう。ま、スザク君が心配するのも、
無理は無いか。」
 話しながら、ロイドはコンソールを操作して、データをロードする。
「う〜ん。エナジーウィングはもう少し、出力が欲しいねえ〜。」
「でも、ロイドさん。今のままでもかなりの機動性を機体に与える事が出来ます
が。」
「その通りなんだけどね。セシル君。この機体はスザク君でさえも、暴れ馬と
言うくらいじゃないと意味無いんだよ。副総督になっても、相変わらず異常な
ほどに厳しい訓練をして実力を増している。今のままだと、スザク君の要求に
ついてこれない可能性だってあるんだ。それだと、スザク君の足かせになっち
ゃうからね。」
 ロイドの視線の先には、メインフレームが組みあがり、装甲を取りつけられ
始めているナイトメアフレームがある。
「解りました。エナジーウィングは再検討します。でも、ロイドさん。そうする
と機体のフレームが耐えられなくなる可能性もありますけど、いいんです
か?」
「残念でした〜。この機体のフレームはね、これでもかというほど、乱暴に扱
っても弱音ははきませんよ〜。だから、エナジーウィングの件、よろしくね〜。
僕は、新型ヴァリスの最終調整に入るからさ。」
 そうセシルに言いながら、ロイドは傍らにあるサンドイッチを口に運んだ。
「あの、セシル君・・・。これって・・・。」
「ライ麦に朝鮮人参と冬中夏草を練りこんだパンに、スッポンのスープを混ぜ
たレバーペーストとブルーベリージャムを塗って、中にレタスと紫蘇の葉とオ
クラを刻んだ物と、生ハムを挟んだんです。栄養満点で仕事もはかどります
よ。」
 セシルはお手製の特製サンドイッチについて、笑顔で語る。
 口の中に広がる表現しがたい味に、ロイドは目を白黒させる。
「そ、そうだね。じゃあ、ぼくはヴァリスの調整に行って来るよ。」
 ヴァリスの調整中にロイドが、ミネラルウォーターを大量に飲んだのは言う
までも無い。

「そうか。やはり、士官学校に入学する前に、ダールトン将軍に騎士の心構え
と、剣術はみっちりと仕込まれたか。」
 スザクは、本国に居るアルフレッドから、ドロシーについて聞いていた。
「ドロシーに限らず、私たちを含めて軍人の道を志した者は、父から剣と騎士
としての心構えを叩き込まれました。」
「なるほど、よく解った。ありがとう。」
「いえ、お礼を言われるほどではありません。それにして、お忙しいようです
ね。本国に居る私どもの耳にも伝わってきます。」
「やる事が多くてね。それでは。」
 通信を切った後、スザクは専任騎士候補リストのドロシーのページを開い
た。
「やはり、彼女が筆頭格か・・・。最終的にはナナリーが決める事になるけれ
ど・・・。」
 その頃、雪が降り始めた。
『本国があの様子となれば、ベアトリスが黙っているとは思えない。遠からず、
本国は粛清の荒らしが吹き荒れるだろうな。いや、冬だけに吹雪かな・・・。』
 枢木スザク。
 黎星刻。
 ブリタニアの白き死神と中華連邦きっての勇将は、雪が降るさまを見ながら、
今後の事を考えていた。
 無論、双方は知らなかったが。

 中華連邦の最高権力者たる天子は、2人の人物を前に困惑していた。
 大将軍の驍騎。
 太尉の退敵。
 2人が職を辞する意向を天子に伝えた為である。
「どういうことですか?」
 天子が説明を求める。
「これから降りかかる国難には対応しきれませぬ。それが理由でございます。相
応しき人物が他におりましょう。」
 太尉の退敵が、まず理由を述べる。
「私も同様でございます。国の建て直しもほぼ終わり、軍も再編成を終え、以前
に比べ、精強になっております。もはや、我々は必要ないと考えます。新しい軍
の司令官には、相応しい人物を登用なさるべきでございます。」
 大将軍の驍騎が、続いて理由を述べる。
「貴公らが考えている相応しい人物は、折衝将軍黎星刻ではないかな?」
「左様でございます。」
 范質の問いに、退敵が答える。
「張宰相、黎将軍は折衝将軍ではありますが、軍の建て直しにおいての最大の
功労者。さらに、天子様を大宦官からお救いしたのも星刻殿でございます。本
来ならば、我らの地位にあるのは星刻殿のはず、若輩という理由で拒んだ為に、
我らがこの地位におります。軍の再編成が終了した今となっては、そろそろ我
らも退くころと考えました。どうか、お聞き届け下さい。」
 驍騎が星刻の太尉及び大将軍の職に就くべきだと、意見を言う。
「宰相。星刻は太尉と大将軍の任、務まると思いますか?」
 天子が范質に尋ねる。
「黎将軍ならば、務まりましょう。後は、本人次第でございます。私自身、黎将
軍が、太尉と大将軍の任につく事に、異論はございません。」
 范質の答えを聞いて、天子は静かに頷く。
「では、折衝将軍黎星刻を太尉、大将軍に任じ、枢密使の地位を与えます。」
 枢密使は中華連邦建国以前に、兵部尚書、太尉の上の地位にあり軍事の最
高責任者が与えられた地位であるが、300年近く任命されていない。
「既に廃止された地位ではありますが、今回の場合は、黎将軍に相応しい地位
でありましょう。」
 中華連邦においても、大将軍と太尉を兼任した人物の数は片手の指を出な
い。
 故に、非常時の地位としてなら良いだろうと、范質は暗に天子に伝えていた。
「今回の場合はですね。それにこの先、枢密使に相応しい人物はそう出ないの
ではないかと、私も思っています。」
 常設するつもりはないと、天子が3人に語る。

 数日後、星刻の元に一人の文官が訪れた。
「星刻様。天子様がお呼びとのことです。」
「何かあったか?」
 地図を見たまま、香凛に尋ねる。
「そこまでは聞いておりません。とにかく天子様が至急来るようにとのことで
す。」
「解った。」
 服装を整えた、星刻は天子の元に行った。

「これは一体・・・。」
 宰相、太尉、御史大夫の三公、六部の尚書らに、大将軍、驃騎将軍、車騎将
軍ら、文武の重職にある者が全て揃っていた。
 天子に恭しく礼をして、星刻が列に加わる。
「霍太尉、曹大将軍。前に。」
「「はっ。」」
 退敵、驍騎が、天子の前で恭しく跪く。
「望みどおり、職を辞する事を許す。今までご苦労でした。」
『何?』
 天子の言葉に、星刻は耳を疑う。
「黎折衝将軍。前に。」
「はっ。」
 星刻が天子の前に、跪く。
「そなたを新たに、太尉、大将軍に任じ、さらに枢密使に任じます。以後、この
国を守る為に、力を尽くしてください。」
「枢密使・・・。」
 約300年、誰も任命されなかった枢密使に任命されたのだから、星刻が驚
くのも無理は無い。
「黎将軍、いや枢密使殿。そろそろ貴殿が上に立つ頃でございましょう。我ら武
官は喜んで貴殿に従いましょうぞ。」
 洪古が星刻に言う。
「しかし・・・。」
「黎枢密使。天子様の勅命である。」
 范質が星刻の言葉を遮る。
『尚書を始めとする、文官たちには根回し済みか・・・。』
「若輩の身ではありますが、身命を賭して励みます。」
「後任の折衝将軍の人選は、任せます。また、折衝校尉周香凛を、枢密校尉に
任じ、そなたの補佐に当たらせます。」
「はっ。」
 こうして、星刻は太尉と大将軍を兼任し、枢密使となり紫禁城の一角に枢密
院を開く。
 香凛も、枢密校尉となって変わらず、星刻の補佐役を続ける事となった。
 後任の折衝将軍には、折衝朗将の趙文遠が就任する事となる。

 ブリタニアでは、粛清の吹雪が吹き荒れていた。
 ベアトリスが指揮を取り、クーデターを企図している軍人や貴族を一人残らず
突き止め、全て逮捕した。
 皇暦1995年に起きた、最大の宮廷闘争「血の紋章事件」には及ばない物
の、それでも数百名に昇り、2月中旬から末にかけての粛清は、後世「氷の鎖
事件」と呼ばれるようになる。
「まさか、ここまでとはね・・・。自分で指揮を取っておいて言うのも何だけど、
少しうんざりするわね・・・。」
 執務室で誰に聞かせるでもなく、ベアトリスはそう言った。
「起きた事を言っても、仕方あるまい。」
 ビスマルクが執務室に入ってきた。
「血の紋章事件を経験している貴方なら、落ち着いていられるでしょうけど、
私はそうもいきません。多少はうんざりします。」
 ベアトリスはコーネリアの士官学校の後輩で、かつてはマリアンヌに剣の稽
古をつけてもらっていた。その頃から、ビスマルクとは面識があった。
「仕方あるまい。変化を受け入れられぬ者は、こうなるものだ。」
「それはそうですが・・・。」
 皇帝の首席秘書官であるベアトリスは、基本的にラウンズをナンバーで呼ぶ
が、ノネット、コーネリアが同席時や、ビスマルクと2人だけの時には、昔の口
調に戻る。
「まあ、ラウンズに皇女が嫁いだ例は、無いわけではないが。スザクはナンバ
ーズ出身。受け入れられぬのも無理はあるまい。」
「ヴァルトシュタイン卿は、どう思っていらっしゃいますか?」
「私が口を挟む事ではないが、そうだな・・・。私が見る限り、私を超える騎士が
いるとしたら、スザク位だろうな。人柄、陛下に対する忠誠心、騎士としての
武勇。指揮官としての才覚。どれも申し分ない。それに既に爵位は侯爵。実力、
地位、双方共に問題はあるまい。」
「でしたら、私が口を挟む事ではないですね。」
「評価を口にしようとしないのは、お前らしいな。まあ、いい。私はそろそろ
行くぞ。留守を頼む。」
 ビスマルクは、明後日のナナリーの専任騎士の就任式に、出席する事になっ
ており、これから出発する。
 ビスマルクがシャルルに許可を求め、嘗てはナナリーの子守をしていた事も
あり、許可が下りていた。
 ビスマルクが執務室を出た後、ベアトリスの表情はすでにいつもの彼女に戻
っていた。

「ふむ。これ程いたとはね。」
「EU戦線の軍人も数多くいます。」
 シュナイゼルは、粛清された軍人や貴族のリストに目を通していた。
「だが、これは好機でもある。利用させてもらおう。そろそろ、EUとの戦いも始ま
る頃だしね。」
 シュナイゼルは、微笑しながらコーヒーを飲む。
 その後、粛清された軍人の後任には、かねてよりシュナイゼルが目をつけて
いた者が着任した。

「粛清された者達は全てが強硬派で、連邦エリアにも不満を持つ者たちばかり
でした。」
 ディートハルトが報告書を藤堂に渡す。
「やはりな。しかし、凄い数だな。14年前の血の紋章事件には及ばとはいえ。」
 藤堂は当時25歳で、事件の事をよく覚えていた。
「粛清された軍人の後任は、シュナイゼルの息がかかった者達で占められてお
ります。」
「この期を逃さず、軍への影響力を高めたか。抜け目の無いことだ。」
 読んでいた報告書を閉じた。
「そろそろ、EUとの戦いも再開されるだろう。後は、シャルンホルスト殿次第
か・・・。」
「中佐が、星刻殿に送った書簡を、相手はどう思うでしょうか。」
「それは星刻殿しだいだな。とにかく、私にできる事はした。結果は神のみぞ
知る。だ。」
『EUの事、無視は出来ぬはず。さて、どう出るか・・・。』
 藤堂は星刻がEUとの連合について、どう考えるかを考えていた。

「ふむ。ブリタニアの粛清の吹雪は収まったか。後釜はシュナイゼルの息がか
かった者達ばかり。これでシュナイゼルは戦いがやりやすくなったはず。そろ
そろ、戦火が燃え上がるだろう。」
「星刻様、藤堂殿からの書簡をどうお考えになりますか?」
「それについて、明日会議を開こうと思う。私はこれから天子様に御前会議を
開いていただくよう、お願いにあがる。」
 星刻は天子の元に向かった。

「ドロシー・F・ダールトン。汝、ここに騎士の誓約を立て、ブリタニアの騎士して
戦う事を願うか。」
「イエス、ユア・ハイネス。」
 煌びやかな騎士の正装を纏ったドロシーが、恭しく跪いている。
「汝、我欲を捨て、大いなる正義のため、剣となり盾となる事を望むか。」
「イエス、ユア・ハイネス。」
 ドロシーが儀礼用の剣を抜いて、恭しく差し出す。
 注意しながら、それを受けとったナナリーは、剣で肩を軽く打つ「首打ちの
儀式」を終える。
「私、ナナリー・ヴィ・ブリタニアは、汝、ドロシー・F・ダールトンを騎士として認
めます。」
 ナナリーから剣を受け取り鞘に収め、振り返る。

 最初に拍手をしたのは、グラストンナイツの代表として来たアレックス。
 その次には、ビスマルク。
 それに続いて、盛大な拍手が続いた。

 皇暦2019年3月。
 再び、戦いが始まろうとしていた。


後書き
スペイン州での戦い後の、ブリタニアと中華連邦のお話です。
まあ、どっちも救いが無いのですが・・・。
ブリタニアはスザクの出世と、ナナリーの結婚に不満を持つ貴族や軍人達が
クーデターを起こし続け。
中華連邦は、ブリタニアの脅威に文官が過敏になりすぎて、満足に対策が立
てられない有様・・・。
結局、中華連邦は星刻を軍事の最高責任者にして、国家の重鎮にする事で、
これを乗り切ろうとします。
ブリタニアは、クーデターを防ぎつつ不平分子の洗い出しと逮捕で、国内の争
いを収めて、とりあえずは安心といったところです。
しかし、結婚間近のスザクとナナリーですが、スザクはナナリーを余り婚約者
とは見ていません。
ナナリーを総督としてしっかりさせる事に専念し、専任騎士を選んで身を守らせ
ようとするなど、どこか距離を置いています。
そして、シュナイゼルは逮捕された高級軍人のポストを、自分の影響力が強い
者で固めています。
何を企んでいるかは、これからより鮮明になってきます。
和み成分として、一度は出してみたかったセシルのとんでも料理を登場させて
見ました。
感想などいただけると嬉しいです。
私は食べませんけどね(笑)。

次回AFTER TURN18 東への 誘い
EUでの戦いが再開されます。
中華連邦も動き出し、EU軍の総司令官シャルンホルストも策を実行に移して
いきます。
それに対して、ブリタニアはどう動くでしょうか?

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タイトル (本文) ブログ名/日時
25話後その4
死について ...続きを見る
金属中毒
2008/10/05 04:38

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは凪です。

「敵より、味方と称し足をひっばるやつらが・・・」。
どこの国の軍人が口にしても違和感のない言葉ですが、さすがに大者皇帝は違います。
スザクという異分子を取り込むことにより皇帝派の戦力を増大させ、なおかつ虫退治まで行なうとは。
現場で指揮をとるベアトリスに言わせれば「夕食に鴨肉の骨髄ソースがけは当分欲しくない」(似たようなものを見すぎた)。
無様な死に様は、覚悟も無く剣を振り回す愚か者への不快感を増す。(早くまともな戦場に戻りたい)と仕事のうちとわかっていても、思うときもあるでしょう。
一方の中華連邦では星刻が名実共にトップに立った。
老将たちに身を引く分別があるのは見上げたもの。
時代的に言えば、彼ら老将達が全盛期だったころはナイトメアなど存在しない。戦車の導入が陸軍のあり方を変えたように、今また戦争のあり方が変わってしまった。
日本でも、藤堂より上の世代はうまく適応していないのでは?生きのこっていればの話ですが。

2008/10/05 11:04
さて、ロシアが、中華に接触。
星刻としてはなるべく短期間にブリタニアを叩けるだけ叩いて何らかの条約なりを結んで50年の平和を求めたいところですね。長期戦が下策なのは軍事の常識ですが、星刻にはそれ以外の理由もある。
短期に勝負を付けるためにも反ブリタニア陣営の同盟は必須。ブリタニアと戦争しているとき第3国から攻め込まれては困りますし。
いま、妙な事を考えました。同盟の一環として天子の婿をわが国の王族から・・・どこかの国がそんなたわごとを言い出したら、星刻は言ったいどうするのか。
個人感情では絶対いやでしょうけど、もうそんなことだけで動ける立場ではない。さらに、その相手が天子にとって有利になる存在でけっこうお似合いだったら。
先の無い己よりあの男の方が、天子様の隣に立つにふさわしい。理性がそう判断し、感情が身を焼く。
スザクもですが、有能で不器用な男達です。
では次回アップもお待ち申しております。
凪2
2008/10/05 11:05
凪さん。
コメントありがとうございます。

>なおかつ虫退治まで行なうとは。
 皇帝は相当呆れていますよ。
 文句があるなら、スザク以上の実力を示して
みろという考え方ですから。

>星刻が名実共にトップに立った。
 中華連邦では、宰相の范質に次ぐ地位。
 ブリタニアとの戦いで、星刻が表に出る日も
近いです。
 当然、ランスロット対神虎の戦いも、ありま
す。

>スザクもですが、有能で不器用な男達です。
 そうですね。なまじ武人として有能だから、
そうなるんでしょうね。
 おまけに、2人とも性格は超がつくほど、
まじめですから。
CIC担当
2008/10/08 21:48

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