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zoom RSS コードギアス二次小説 AFTER TURN19 プトラン の 会戦

<<   作成日時 : 2008/10/29 22:45   >>

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「それでは、行ってまいります。」
「ご武運を。ヴァインベルグ卿もアールストレイム卿も、ご武運を祈っており
ます。」
 スザク達が出陣する日、自衛軍と共同利用している軍用空港へ、ナナリーは
ドロシーを伴って見送りに来ていた。
「もったいなきお言葉。必ず吉報をお届けします。」
 ジノが恭しく礼を述べる。
「枢木卿、私の傍に来てかがんでいただけませんか。」
「はっ。」
 ナナリーの傍に来て、屈む。
 そのスザクを、ナナリーが抱きしめキスをする。
「総督・・・。」
 スザクは驚きのあまり自分の唇に触れ、ジノは面白いと言いたげな表情にな
り、アーニャはスザクとナナリーの写真を撮っていた。
「帰ってきてください、スザクさん。私の元へ。未来の妻を置いていくような
事はしないで下さい。」
 そこにいるのは、連邦エリア日本の総督ではなく、一人の少女であった。
「はっ。必ず・・・。」
 どうにか動揺を抑え、恭しく礼をすると全軍に出撃を命じる。

「やってくれるな。総督閣下も。なあ、オニール。」
 ユリエンスの指揮官席に座ったジノは、副官のアンドレア・オニールに話しか
ける。
「正直、驚きました。ああいう事をする方には、見えませんでしたので。」
「まっ。総督だって、女性だしな。ああいうこともあるだろう。」
 笑いながらジノが言った。

「アールストレイム卿。ベンウィック以下、全艦出撃準備整っております。」
 アーニャの副官である、ニルス・ブクステフーデが報告する。
「発進・・・。」
 指揮官席でブログの記事を書きながら、アーニャが命令を出す。

「いや〜。驚いたね〜。ビックリだね〜。総督も大胆だね〜。」
 アヴァロンのブリッジで、ロイドがはしゃいでいた。
「総督にも困ったものです。公私の区別はつけていただかないと・・・。」
 溜息をつきながら、スザクが指揮官席に座る。
「でも、スザク君。貴方にも責任はあるのよ。ミレイさんから聞いたけど、許婚ら
しいこと全然してないんでしょう?」
「それは・・・、そうですが・・・。」
「いい、スザク君。もうすぐ結婚して夫婦になるのよ。冷え切った結婚生活を、
送るつもりなの?総督だって女性よ。子供を欲しいと思われるでしょうし、そう
いう時、今のままだと困るでしょう。少なくとも、総督は貴方の事を、真剣に愛
しているんだから。答えてあげなさい。」
 セシルにそう言われて、スザクが答えに窮している時、ヴァレーリアがスザ
クに全軍の出撃準備が整った事を知らせに来る。
「全軍、出撃。」
 アヴァロンを先頭に、全ての艦がブリタニア本国に向かう。
 皇暦2019年4月5日の事であった。

「そうか、ブリタニア軍が遂に出撃したか・・・。」
「はい。総司令官は、第2皇子シュナイゼル。但し、前線で指揮を取るのは、
第2皇女コーネリアです。一旦、ワルシャワで軍議を開いた後に、ロシア州に
攻め込む模様でございます。」
 香凛はディートハルトと協力して、情報収集に努めていた。
「ブリタニアの魔女が指揮を取るか・・・。それだけでも兵の士気は上がるだろう
な。ラウンズは何人いる?」
 ブリタニアの魔女と呼ばれ、騎士達からは軍神の如く崇拝されている。コー
ネリアが前線で全軍の指揮を取るとなれば、ある意味、シュナイゼルが指揮を
取るより始末が悪い。と、星刻は考えていた。
 シュナイゼルは恐るべき戦略家だが、軍からの人望という点においてはコー
ネリアには敵わないからである。
「確認された、アヴァロン級は4艦です。アヴァロン、ユリエンス、オークニー、
ベンウィック。以上になります。」
「やはり、来るか。枢木スザク。思ったよりラウンズが多い。これは予想以上
に、苦しい戦いになりそうだな。もっとも、始めから苦しい戦いになるのは解
ってはいたが・・・。軍の総数は?」
「EU戦線の軍40個師団に加え、本土の予備軍48個師団。コーネリアと枢
木の直属軍がそれぞれ18個師団。他のラウンズの直属部隊が、合計して1
個師団になります。合計125個師団。総数は137万5千。尚、主力ナイトメ
アは、全て新型のウォードとの事です。」
「軍のハイテク化を更に進めていたか・・・。」
 去年から、ブリタニアは全軍の装備を刷新して質の向上を更に進めており、
結果として、軍の総数は減っていた。
 しかし、ブリタニアきっての精鋭部隊のコーネリア軍や、対中華連邦戦略で
の重要や拠点である日本駐留軍と、駐留軍総司令官のスザクの直属軍は、
師団数を増やして、以前と変わらない規模だった。
 中華連邦も、従来の歩兵や戦車が主力の軍から、ナイトメアを主力とする軍
への改革を行い。主力ナイトメアをガン・ルゥから、ドウ・シーに更新し、戦車や
装甲車両の性能向上を進めて数を減らしていた。
「ドウ・シーはウォードには性能面において劣る。EUのパンツァーフンメルも然
り。やはり、ナイトメア部隊ではブリタニアに一日の長があるか。となれば、数
で押し切る事を念頭に、策を立てる必要がある。」
 敵より多数の兵をそろえるのは、戦術の基本である。星刻も戦う時は、相手
より多数の兵を揃えたいと思っている。だが、最終的には知略で勝つのが、
星刻の理想の戦いである。
 中華連邦きっての勇将と言われているが、星刻の本質は、勇よりは知の方
に傾いている。
 しかし、コーネリアやスザクがいる事で、知略だけで差を覆すのは、困難だ
と判断した。
「王琴と典敬の部隊を加える。これが限度だ。直属軍を全て率いるわけにもい
かぬからな。」
 天子に命じられた選りすぐりの兵とは、必ずしも言えなかったが、とにかく自
分の指示通りに動ける軍を出来る限り揃える必要があった。
「残りの軍は禁軍と連携し、洛陽と天子様を守るよう伝えよ。」
 既に、守国の軍が国境を固め、洪古も軍をいつでも動かせるようにしていた
が、洛陽を留守にする以上できる限り守りを固めたい。と、いう気持ちもあっ
た。
「これで、EU軍とあわせれば135個師団。正面での戦いで、そう遅れは取
らぬはずだ。後は、黒の騎士団の働き次第・・・。」
 翌日、皇暦2019年4月8日、星刻率いる中華連邦軍70個師団。総数9
1万はEU救援の為、洛陽を出発した。

 ワルシャワでブリタニア軍は軍議を開いていた。
「中華連邦軍、洛陽を出発。総数70個師団。枢密使黎星刻が、直接指揮を取
っています。」
 シュナイゼルも中華連邦の動向を逐一調べさせていた。
「大軍ですね。数の上ではEU軍が主力ですが、戦力の質を考慮すれば、中華
連邦軍も侮れますまい。」
 ブリタニアも星刻の麾下の軍については、折衝将軍時代から常に情報収集
をしていた。
 今の軍自体は、大将軍直属の部隊を引き継いでいたが、その後訓練で練度
を増している。
 実戦経験は少ないが、他の中華連邦軍に比べれば質は高いと本国も判断し
ていた。
 中には、星刻が育て上げた禁軍にも匹敵する精鋭がいることは、コーネリア
も聞いていた為、表情が険しくなる。
「EU軍は欧州から離脱した軍が24個師団。ロシア州の軍が40個師団。そ
れに黎星刻の軍、70個師団が加わります。数の上では我が軍を上回ります。
質において、我が軍のほうが優れているとはいっても、この数の差は無視でき
ません。」
 カノンは、EU、中華連邦の連合軍との数の差を、危惧する。
 EUは1個師団が1万5千で構成されているため、連合軍の総数は187万で
ある。
 連合軍と、ブリタニア軍の兵力差は約10:7。
「EUとの戦いが、中華連邦に時間を与えすぎました形になったと考えます。
おそらく、ナイトメアとの白兵戦も充分に訓練をしていると考えるべきでありまし
ょう。今までのようにはいかぬと考えます。」
「黒の騎士団もいる。情報ではスペイン州軍の中で、中華連邦に亡命し黒の
騎士団に加わった者も少なくない。トウドウが相当に鍛え上げただろうな。」
 エリファレットとジノが、意見を交わす。
「枢木卿は、連合軍がどう戦うと見ている?」
 シュナイゼルが、スザクに意見を聞く。
「連合軍が戦闘時に取る陣形は、おそらくこうでありましょう。」
 スザクが端末を操作し、連合軍の陣形を示す。
「鶴翼の陣か・・・。」
 鶴が翼を広げたような形をし、敵を包囲殲滅する陣形である。
 味方が敵より数が多い際に、有効な陣形である。
 攻撃的な陣形に見えるが、どちらかというと防御型に分類される。
 実際、日本の戦国時代、第四次川中島の戦いでも、上杉軍の背後を別働隊
でついた武田軍は、挟撃態勢が完成する間の陣形として、鶴翼の陣を敷いて
いる。
「防御的な陣形ですので、わが軍の侵攻を阻むのにも向いております。故に、
自分は敵がこの陣を敷くと考えております。」
「私も同感だ。」
 シュナイゼルも頷く。
「となれば、我が軍の戦法としては・・・。」
「中央突破・・・。」
 ジノとアーニャが、対抗策として中央突破を提案する。
「それしかなかろう。だが、相手もそれは承知の上だろうな。容易ではあるま
い。」
 コーネリアが腕を組んで考え込む。
「時間がかかれば、包囲態勢が完成する・・・。」
 エリファレットが、対抗策を考え始める。
「それについては、自分に考えがあります。」
 スザクが端末を操作し始めた。

「我が軍の陣形は、これがよろしいかと考えます。」
 竜胆の艦橋で、星刻が陣形を示す。
「鶴翼の陣ですか・・・。数を生かしての包囲殲滅ですな。」
「いかにも。しかし、ただぶつかり合うのではなく、先陣の攻勢を防ぎつつ両翼
でダメージを与え、弱らせたところを包囲殲滅。これで行くべきかと。シャ
ルンホルスト殿はどのようにお考えでしょうか?」
「敵の先陣は、おそらくは枢木スザク。奴の勢いさえ止められれば、この策は
成功の可能性があるかと。これでいきましょう。後はラウンズですな。」
 ブリタニア皇帝直属の帝国最強の騎士、ナイト・オブ・ラウンズがスザクを含
め、4人加わっている事は警戒させるに充分だった。
「それについては、われらにお任せいただきたい。」
 藤堂が申し出る。
「黒の騎士団が、ラウンズを止めると?」
「我らが遊撃隊となって、ラウンズの相手をします。枢木スザク以外なら、何
とかなりましょう。同時にラウンズの部隊の足止めも兼ねる事が出来ます。そ
の間に、ブリタニア軍に出来る限り出血を強いていただきたい。」
「ヘルトウドウ、貴方方を信じよう。」
「藤堂殿、ラウンズの足止めはよろしく頼む。ただ、こちらからも出来る限り、
兵を裂く。貴殿たちだけに苦労をさせる気はない。」
 その後、議論を重ねて連合軍の作戦が決定した。

「無人偵察機第1陣、帰投します。西シベリア平原に敵影なし。」
「第2陣、増槽の取り付け終了。発進できます。」
「発進させよ。」
「イエス、ユア・ハイネス。」
 無人偵察機の第2陣が、発進していく。
「枢木卿の予測が当たったな。」
 西シベリア平原は湿地帯で、いくらナイトメアといえども、運用が困難にな
る。その可能性を考慮すると、連合軍が戦場に選ぶ可能性は低いとスザクは
考えていた。
「やはり、敵は中央シベリア高原か・・・。」
 周辺に山脈や山地があり、高低差も多少あるものの、ナイトメアの運用は充
分に可能である。
「無人偵察機、連合軍と接触。フロートユニットを搭載したナイトメアです。」
 しばらくして、中央シベリア高原に向かった無人偵察機が、連合軍と接触す
る。
「黒の騎士団か?機種の特定を急げ。」
 コーネリアの命令を受けて、オペレーターが機種の特定をする。
「機種照合。中華連邦主力ナイトメア、ドウ・シー。」
「黒の騎士団から技術が流入したか。向こうがフロートユニットを搭載してい
るとなると、こちらの優位は一つ消えたか。」
 両軍が激突している際に、部隊の一部を遊撃隊にして空中からの攻撃で、
連合軍にダメージを与えたいと考えていたコーネリアだが、中華連邦がフロー
トユニットの開発に成功している以上、思ったより効果は上げられないと判断し
て、渋い顔になる。

「ブリタニア軍の無人偵察機を確認。」
「位置は何所だ?」
 ブリタニア軍が接近していると確信した星刻が、無人偵察機の位置をオペレ
ーターに尋ねる
「エニセイ川から、西へ100kmの地点。」
「斑鳩に繋げ。」
 黒の騎士団の旗艦斑鳩に、竜胆の星刻から通信が入る。
「星刻殿、ブリタニア軍を発見なされたか?」
「我が軍のナイトメアが接触した。接触地点はエニセイ川から西へ100kmの
地点だ。間もなく中央シベリア高原に、到着しよう。」
「先に迎撃態勢を整える事は、無理か。」
 藤堂としては、布陣を整えている最中のブリタニア軍に奇襲をかけて、先手
を取りたかった。が、彼我の位置から考えて、それも不可能だと悟った。
「そういう事になるな。おそらく敵はプトラン山地の麓に陣を構えるだろう。」
「枢木の事だ。おそらくこちらの布陣を読んでいるだろう。」
「とは言え、最初から陣を敷いて、敵にこちらの手の内を教える義務はあるま
い。向こうも最初から手の内を読ませるようなことはしないはずだ。」
「では、当初の予定通りの陣を構えるということで。」
「うむ。」
 通信が切れる。
「いよいよか・・・。神虎は出せるな?」
「はい・・・。ですが・・・。」
「香凛。我が軍で枢木と渡り合えるとしたら、私しかいない。お前も分かってい
るだろう。私の身を案じてくれるのはありがたいが、今は我が国の未来を案じ
てくれ。すまんが、少し休ませてもらう。何かあったら知らせてくれ。」
 星刻が自分の部屋に向かう。
「馬鹿・・・。」
 星刻の後姿に、香凛が言葉をぶつける。

 4月10日の夕刻に、両軍はプトラン山地の麓に陣を構えた。
 多少の高低差はあるが、開けた地帯があり両軍とも自然とそこを戦場に想定
していた。
「連合軍の陣形は、方円の陣でございます。」
「やはりそうか。手の内は読ませぬと考えているのは、向こうも同じか。」
 全周囲の攻撃に備える方円の陣は様々な陣形への変化が可能で、ブリタニ
ア軍、連合軍双方が、手の内を読ませぬように、同じ陣形を敷いていた。
「奇襲の心配はおそらく無いでしょう。こちらが警戒を厳重にしている事は、
向こうも承知しているはず。警戒に必要な兵以外は、休ませるのがよろしいか
と。」
「そうだな。明日からが本番だ。出来る限り兵は休ませるべきだろう。」
 コーネリアはスザクの進言を受け入れて、警戒の手配を済ませ、他の兵を休
ませるよう命令する。

「向こうも方円の陣か。やはり、手の内は読ませぬか。」
 藤堂が、確認するように言う
 連合軍は竜胆で、星刻、藤堂、シャルンホルストが集まり作戦会議を開いて
いた。
「こちらが鶴翼の陣を敷くならば、ブリタニア軍の取るべき戦法は中央突破。
先陣は間違いなく、枢木スザクでしょう。彼を止めきれるかが勝敗の分かれ道
ですな。」
 言いながら、シャルンホルストが険しい表情になる。
 ラウンズになる前のスザクに、アフリカの重要拠点セウタを陥落されられて
以降、ラウンズになったスザクに、EU軍は幾度も苦汁を舐めさせられている
のだから、無理は無い。
「中央は、私と、私自ら選んだ軍が務めます。EU軍は残りの我が軍と連携し、
ブリタニア軍の両翼を叩いて出血を強いていただきたい。」
「黎枢密使。それはあまりにも危険ではありませんかな?」
 星刻自らがスザクを抑えると聞いて、シャルンホルストが驚く。
「あの「白き死神」を止められるのは、私だけでしょう。前衛を突破されれば、
我らは壊滅するだけです。それにこの戦いは、ロシア州だけでなく我が祖国を
守る戦いでもあります。何があっても負けられぬ戦い。例え、この命を失おう
とも・・・。」
「そこまで覚悟を決められたのなら、もはや何も言いますまい。ですが、枢密使
殿。死んではなりませんぞ。天子様も貴殿をとても頼りにしておられると、聞い
ています。中華連邦の未来の為にも、貴殿は生きなければならない。それを、
お忘れなきよう。」
「お心遣い、感謝いたします。藤堂殿は、遊撃部隊としてブリタニア軍の霍乱
を、お頼みいたします。」
「承知いたしました。星刻殿。「必生は虜をさる。」と孫子が言っていますが、
「必死は殺され」と、前に記されている事をお忘れなさらぬよう。」
「承知しております。では、これで各自休みといたしましょう。」
 竜胆での会議が終了し、星刻は自室に戻る。
 休もうとした星刻は、激しく咳き込み吐血する。
「命を惜しんでは、私は戦う力すら失う。その前に、我が国の平和を得なけれ
ば・・・。」
 星刻の脳裏に、七年前の事が浮かぶ。
 死罪になる筈だった自分を助けた、天子との出会いが。
 永遠の忠誠の誓いが。
『天子様。私は命を懸けて、我が祖国を守って見せます。ですが、生きて帰っ
てくるようにとのご命令は果たせぬかもしれません。』
 懐から、紙に大事そうに包まれた、一房の雪のように白い髪を取り出し、見
つめる。
 出発の前の夜、天子に呼び出されて渡された物である。
 星刻も、髪を一房天子に渡している。
『帰ってきて、星刻・・・。』
 涙を流しながら、しがみついてきた天子の姿がどうしても、浮かんでくる。
 星刻はそれを必死に振り払い、薬を飲んで眠りにつく。

 4月11日に、両軍は方円の陣から、陣形を変える。
 中央シベリア高原において、ブリタニア軍、EU・中華連邦連合軍。合わせて
326万の軍が激突する戦いの火蓋が切って落とされた。

「星刻様、陣形が整いました。」
「うむ。」
 星刻は、既に神虎に騎乗していた。
 連合軍は両翼に61万づつ配置し、中央には星刻の選んだ精鋭部隊26万を
始め65万を配置した、鶴翼の陣を敷いている。
 前衛部隊には、ガン・ルゥのマシンガンを戦車砲に、グレネードをマシンガン
に換装して配備し、ナイトメア部隊の突撃の援護に、備えている。
「ブリタニア軍、陣形が整った模様。」
「そうか。」
 戦術パネルで、ブリタニア軍の陣形を確認する。
「飛鳥の陣か・・・。」
 自軍が敵軍より、少数の場合に使用される陣形で、先陣が敵に突撃し、後
続の軍と共に中央を突破する。
 両翼からの攻撃に配慮して左右両翼も固めるので、敵が鶴翼の陣を敷いて
いる時には、有効な陣形である。
『こちらの陣形を読んでいたか。やはり、この戦い一筋縄では行かぬな・・・。
提案したのは枢木か・・・。』
 星刻はブリタニア軍が中央突破するに際して、魚鱗の陣を敷いてくると考え
ていたが、両翼からの攻撃も考慮した飛鳥の陣を敷いたスザクの用心深さに
舌打ちをしたくなった。
 コーネリアは猪武者ではないが、用兵家としての性格は攻撃的である。
 中央突破をするならば、かなり高い確率で魚鱗の陣を敷いてきただろう。
 時には守勢にも回るが、やはり性格的に攻撃的な用兵家だからである。
 スザクも「ブリタニアの白き死神」と呼ばれる事から、攻撃的な用兵をする
ように思われがちだが、戦況によって攻勢と守勢を柔軟に使い分ける、柔軟性
という面では、コーネリアに勝る。
『枢木が率いる軍は、先陣とした直属軍を含めて44万。数において勝るとは
いえ、やはり苦しい戦いになるか・・・。』
「黎枢密使。そろそろ頃合かと思いますが。」
「そうですな。シャルンホルスト総司令。前進、ガン・ルゥは砲撃しつつ突撃。
敵の前進を阻め、その間に龍騎兵隊は敵陣に突撃せよ!」
 中央の中華連邦軍が動き出したのを切欠に、両翼も動き出す。

「敵軍、接近!」
「ナイトメア・アティラリー部隊、砲撃始め!ガン・ルゥの突撃を阻め!自走砲
部隊はドウ・シーに砲撃を集中しろ!全軍、突撃用意!」
 過剰ともいえる武装を施されたサザーランドが、砲撃を開始する。
「敵ナイトメア、砲撃を開始。我が軍の射程外です!」
「何!?」
 星刻はメインモニターに、竜胆から送られてきた映像を映す。
「あれはサザーランド。とっくに退役したと思っていたが・・・。自走砲部隊砲撃
始め!サザーランドを牽制しろ!」
「揃って、同じ事を考えていたとはな・・・。」
 両翼の部隊も、射程外からの砲撃に曝されて、急遽自走砲部隊による砲撃を
開始していた。

「旧式のサザーランドを改装した物ですが、思ったより役に立ちましたね。」
「そうだね。」
 既に、ウォードの配備も始まっているブリタニア軍では、嘗ての主力機サザ
ーランドも第5世代の旧式になっており、スクラップにするのにもコストがか
かるので、軍では他の使い道が無いかどうかの議論がなされていた。
 スザクは、ガン・ルゥをヒントに、サザーランドを完全な砲撃戦仕様にする
事により、従来の自走砲より遥かに機動力を持つ、砲撃戦用のナイトメアとし
て運用する事を考えて、改装を進めていた。
 背部に、軽量化された新型の155mm榴弾砲2門。両腕にはAKM低圧砲
とHSLライフルを装備し、ファクトスフィアを新型に換装したサザーランド
は、射程、攻撃力共にガン・ルゥを圧倒しており、その威力を遺憾なく発揮し
ていた。
 砲撃戦用に改装したサザーランドを、スザクはナイトメア・アティラリーと、
名づけた。
「突撃!敵中央部隊を撃破する!」
 ランスロットを先頭にスザクの軍が、星刻の部隊に突撃を開始する。

「後続の部隊は、両翼を固めろ。兵力において勝る連合軍が、両翼に攻めか
かって来る可能性がある。ロセッティ、ミラー、ジーンは、ゲレヒティヒカイト・ヴ
ァルキュリエ隊と共に自分に続け。」
「「「「イエス、マイ・ロード!」」」」
 両軍が激突し激しい戦いになったが、厳しい訓練と実戦を乗り越えてきた精
兵を揃たスザクの直属軍相手に、星刻の軍は、一方的に押される展開となっ
ていた。

「星刻様。第1陣、間もなく突破されます。」
「予想より遥かに早いな・・・。私が枢木を抑える。その間に王琴と典敬は後方
に下がれ。恵孝は私と共に前線を形成しろ。」
「「「はっ。」」」
 星刻は部下の一人恵孝の部隊と共に、楔状に前線を形成。王琴と典敬の軍
を再編成の為に後方に下がらせる。
『やはり、そう来たか!』
 戦術パネルを見ながら、スザクは舌打ちをした。
 全軍で先程まで戦っていた王琴と典敬の軍を下げた星刻の狙いを、スザクは
正確に読んでいた。
 このまま中央突破に成功したとしても、後方の軍の足止めを受け、コーネリ
アの軍は残りの軍に包囲され、全方位から袋叩きにされる。
 そうでない場合は、スザクの軍が袋叩きにされ、後方の軍もやがて袋叩きに
されるだろう。
『だが、第1陣に与えた損害は決して、軽微じゃない。星刻さえ抑えれば、前
衛を速やかに突破し、後方に下がった軍を叩いて。背後から襲いかかれる。』
 その間は、コーネリアも持ちこたえるだろう。
 そうスザクは判断している。
 元々、質においてはブリタニア軍のほうが勝っている。
 加えて、中軍と後備えを率いているのは、コーネリアだ。
 軍神の如く、騎士達からあがめられている彼女が指揮を取れば、連合軍より
少数とはいえ、そう遅れは取らないだろう。
「敵陣に向けて突撃!このまま蹴散らすぞ!!」
 ランスロットがスピードを上げる。

「星刻様。王琴、典敬両将軍の部隊の損害は、3割以上に達します。」
「僅か、2時間程でか・・・。」
 予想以上の損害に、スザクの部隊の精強さを星刻は思い知る。
「なればこそ、私が枢木を抑える!!全軍、続け!!」
 神虎を駆り、星刻はランスロット目掛けて突撃する。

「枢木卿、神虎を確認!敵の司令官が来ます!」
 ヴァレーリアから通信が入る。
「解った。このまま敵陣を崩す事に専念してくれ。」
「イエス、マイ・ロード。」
 通信を切った後に、ランスロットを討とうと、数騎のドウ・シーが迫ってく
る。
 全てのスラッシュハーケンで、ドウ・シーを貫くと槍状にブレイズルミナスが
展開され、ドウ・シーが爆散する。
 スラッシュ・ブレイザー。
 コンクエスターに新しく装備された武装で、使い方はスラッシュハーケンと変
わらないが、威力はスラッシュハーケンより格段に上がっている。
 一瞬で4騎を葬ったランスロットを恐れたその瞬間をスザクは見逃さず、両手
にMVSを手にして、他のドウ・シーを全て撃破する。
「おのれ!!」
 再び、ドウ・シーが数騎向かって来るが、全てMVSで両断すると、ハドロンブ
ラスターを展開し、ドウ・シーを薙ぎ払う。
「化け物め・・・。」
 額に冷や汗を滲ませながら、9騎のドウ・シーを率いる中華連邦のある中隊
長が呟いた瞬間、機体は両断され中隊は全滅した。

「くっ!」
 戦術パネルには、スザクが軍を崩し始める様が映っていた。
 楔の先端に位置する、中央の部隊はスザクとヴァレーリアに崩され始め、両
翼は、ヒルダとジーンの部隊に押さえ込まれつつ、損害が増え始めていた。
 ウォードをすれ違い様に撃破しながら、星刻はランスロットを見つけた。
「枢木スザク。中華連邦枢密使、黎星刻。お相手願おう!!」
 ランスロットに向けて、神虎が剣の切っ先を向ける。
「神聖ブリタニア帝国、ナイト・オブ・ラウンズ第7席、ナイトオブセブン、
枢木スザク、お相手仕る!!」
 ランスロットがMVSを構える。

 空中で両騎が激突する。
 神虎のスラッシュハーケンをかわしたランスロットが斬りかかるが、神虎は巧
みに受け流し、距離を取ったランスロットに斬りかかる。
 ランスロットのスラッシュ・ブレイザーを、神虎が剣で弾く。
 その隙を突いて斬りかかるランスロットと、神虎は鍔迫り合いになるがラン
スロットがパワーにおいて勝った。

「何というスピードとパワーだ。あんな化け物を、よくあそこまで乗りこな
す・・・。ぐっ!!」
 コックピット内で、星刻は激しく咳き込み吐血する。
「だが、しかし!!」
 苦痛を堪えながら、天愕覇王荷電粒子重砲を展開する。
「負けるわけにはいかん!!我が国の為にも、何より天子様の為にも!!」
 トリガーを引き、発射する。
「くっ!!」
 ランスロットはブレイズルミナスでどうにか、受け止める。
「強い・・・。ランスロットと互角に渡り合える相手が、他の国にいたとは
ね・・・。黎星刻。噂以上だ。あの神虎も・・・。」
 メインモニターに映る神虎を、スザクは睨みつける。

「そんな・・・。ランスロットと互角に戦うなんて・・・。」
 アヴァロンのブリッジで、戦況を見ていたセシルが呆然とする。
「あのナイトメアさ・・・。」
 話し始めるロイドはいつもの表情ではなく、目つきも鋭かった。
「はい?」
「ラクシャータだよ。作ったのは・・・。」
「そんな・・・。あの、ナイトメアの設計思想は・・・。」
「そう、設計思想はランスロットと同様。スペック至上主義。明らかにラクシャ
ータの考えからは外れている。でもね・・・。あれは間違いなくラクシャータが
設計したナイトメアだよ・・・。」
 眼鏡を取ったロイドの表情は、一段と鋭くなっていた。

「王琴と典敬の部隊を後備えにする。再編は終わっているか?」
 MVSを回転させたスラッシュハーケンで防ぎながら、星刻は後方に下がら
せた王琴と典敬の部隊の再編状況を、香凛に尋ねる。
「間もなくです。もう少し時間が要ります。」
「後方自走砲部隊、砲撃開始。戦車隊も出来る限り前に出て、主砲を仰角最
大にしたうえで、援護射撃。時間を稼げ!」
 ヴァリスの攻撃をかわしながら、星刻は軍に命令を出す。
「ナイトメア・アティラリー部隊は砲撃。敵自走砲部隊を狙え!相手の目的は
時間稼ぎだ。」
 ヴァリスを腰にマウントして、両手にMVSを持ったランスロットのコックピット
で、戦術パネルを見ながら、スザクも命令を出していた。
「後方の友軍の戦況は?」
「まだ、崩れは見せていないわ。敵を跳ね除け続けている。損害で言えば、
敵の方が多いわね。」
 アヴァロンに戦況を尋ねたスザクに、セシルが答える。
「そうですか・・・。」
 神虎と剣を交えながら、スザクは安堵する。
「ヴァインベルグ卿達が、黒の騎士団を食い止めているから大丈夫よ。」
 その頃、ジノはカレンと。エリファレットは藤堂と。アーニャは千葉と朝比奈を
相手に戦っていた。

「この!!」
「よっと。」
 輻射波動をかわしながら、トリスタンはMVSで紅蓮の右腕を狙う。
 しかし、特斬制動刀で防ぐ。
「やっぱ、やるねえ。そうこなくっちゃなあ!!」
「舐めるな!!」
「おっと!」
 輻射波動弾とトリスタンのビームが衝突するが、威力は伯仲しており、やが
て相殺しあう。
「まだ、こっちがあるぜ。」
 両肩のハドロンキャノンを、発射する。
「散開!!」
 カレンが命令し、それに従ってカレンの部隊は散開するが、数騎が飲み込ま
れる。
「指揮官としては、いまいちかな?」
 戦況は、ジノの部隊が親衛隊であるリッター・ヴァルキュリエ隊を中心に、
カレンの部隊を押していた。

「向こうも改装してきたか・・・。」
 エリファレットはエクターを駆り、藤堂の斬月を相手にしていた。
「機体の性能は同格・・・。だが、相手の技量が高すぎる。さすがはナイト・オ
ブ・ラウンズといったところか・・・。」
 改装されて性能が増した斬月のコックピットで、藤堂は改めてエリファレット
の技量の高さを思い知っていた。
「それに・・・、あの4騎・・・。」
 戦況は一進一退で、藤堂の直属部隊が突き崩そうとすると、エリファレット
の親衛隊である、プロテジーレン・ヴァルキュリエ隊が即座に戦線を立て直し
ていた。
「ならば、頭を潰すまで!!」
 斬月が制動刀で、エクターに斬りかかる。
 エクターはMVPで払い、逆に斬りかかる。
「ぬうっ!!」
 受け損ねた斬月は、空中で姿勢を崩す。
「終わらせる。」
 エクターの左腕にマウントされたVARIS−CB。対ナイトメア戦に特化し小型
化されたヴァリスで斬月に弾幕を浴びせる。
「まだだ!!」
 間一髪の差で、輻射障壁を展開し斬月は弾幕を防御する。
 その間、練度の差が出て藤堂の部隊が押され始めた。
「もう一押しか。」
 コックピットの戦術パネルを見ていたエリファレットが、微笑む。

「くっ!散開しろ!!的になる!!」
 千葉と朝比奈はアーニャの部隊を相手にしていたが、損害が目立ち始めてい
た。
 砲撃戦を重視して設計されたモルドレッドは、懐に飛び込まれると攻撃手段
がほとんど無いがアーニャもそれは弁えており、親衛隊のルビーン・ヴァルキ
ュリエ隊が接近戦に備えている。その他の部隊は、モルドレッドの攻撃を受け
た部分に攻撃を集中し、戦況はアーニャの部隊が有利であった。
「とにかく、あのラウンズのナイトメアを叩かなければ、どうにもならな
い・・・。」
 だが、そう簡単に行かないのは、千葉が身をもって知っている。
 スリランカでの戦いで、モルドレッドの圧倒的なパワーの前に月下はひねり
潰され、千葉は脱出を余儀なくされた。
 その意味では、モルドレッドの恐ろしさは千葉が一番知っている。
「いい加減に、しつこい・・・。」
 アーニャは兵装コンソールを操作して、全身のミサイル発射管にミサイルを
装填して、発射する。
「全騎、弾幕を張れ!!」
 朝比奈が叫ぶように命令して、全ての暁が弾幕を張るが10騎あまりが餌食
になる。
「どうする、このままじゃジリ貧だ。」
「解っている!」
『藤堂さんたちは、大丈夫か・・・?』
 藤堂とカレンの身を案じながらも、千葉は打開策を模索し続ける。

「しぶとい・・・。コーネリアがここまで防御に関して、粘り強いとは・・・。」
 シャルンホルストは、両翼の連合軍を率いて戦いながら、中央と後備えの軍
を挑発しても、それに乗らずに逆に連合軍にかなりの損害を与えている事に、
驚いていた。
 コーネリアはアフリカ戦線で戦う事も少なくなく、シャルンホルストもコーネリ
アの用兵については研究していたが、どちらかといえば攻勢に本領を発揮す
るタイプである。しかし、両翼から。しかも4割以上も兵力において勝る連合軍
から攻め立てられながら、防御に徹し陣形を崩さずにいる。
 今までのコーネリアからは考えられなかった事である。
「閣下、三次突撃の用意が整いました。」
「突撃!」

「撃て!!」
 コーネリアの命令で、自走砲部隊が砲撃を始める。
 突撃してくるパンツァーフンメルは直撃を受けたものは吹き飛ばされ、回避し
たものが尚も、突撃してくる。
 しかし、側面を固めるクリフト、エンドーヴァーらの部隊が攻撃を跳ね除ける。
「ターナー、部隊を率いてクリフトの援護に回れ。マルサスはエンドーヴァーの
援護に。」
 パンツァーフンメルを次々と撃破しながら、コーネリアは次々と命令を出す。
「「イエス、ユア・ハイネス。」」
「枢木卿の部隊の戦況はどうか?」
「枢木卿は黎星刻と剣を交えております。双方の技量はほぼ互角。ですが、戦
況は徐々に枢木卿の部隊に有利になっている様子です。」
 MVSでパンツァーフンメルを両断したギルフォードは、コーネリアに戦況を伝
える。
「枢木卿と互角だと?黎星刻、噂どおりの男であったか・・・。」
 ラウンズでも一、二を争うスザクと互角に戦う星刻の技量に、コーネリアは
驚く。
『だが、奴は枢木卿と互角に渡り合えても、兵はどうかな?』
 ハドロンランチャーで、パンツァーフンメルを薙ぎ払いながら、コーネリアはそ
う考えた。

「王琴、典敬は敵両翼の背後を狙え。それまで、何としても持ちこたえろ。」
 陣をU字型に再編しつつスザクの部隊の背後を襲い、陣の中に押し込んで
包囲体制を完全な物にしようと、星刻は命じる。
 しかし、部隊が星刻の思い通りに動かなくなり始めていた。
 選び抜いた精鋭部隊もそうだが、何より数を揃える為の部隊の動きが鈍い。
 再編した陣形も完全とはいえなかった為、星刻は予定を変更せざる終えなか
った。
 スザクと共に激戦を戦い抜いてきた部隊を中核とした直属部隊は、連邦エリ
ア設立前の1ヶ月の間、厳しい訓錬を乗り越えスザクの古参の部隊とも連携
に問題はなかったが、星刻が率いる部隊は、そういった面で問題を抱えてい
た。
 他に率いている、EU戦線の部隊も直属軍には劣るが、激戦をくぐり抜いて
来て充分以上の実戦経験を積んでいる。
 故に、スザクは直属軍を前面に出しながらも、支援や陽動にEU戦線の部隊
を使いながら、不安を覚えずに戦う事が出来ている。
 星刻も練度の差は弁えており、精鋭部隊を中心として陣を組んだが、その部
隊でさえも、スザクの直属軍には劣る。
 数の差を活かそうにも、うまく活かせず損害が蓄積していった。
 長時間の戦闘における双方の自力の差が、出ていたからである。
 それでも、ここまで戦い抜いてこられたのは星刻の指揮官としての能力が、
極めて優れたいたからである。
 戦闘が開始されてからかなりの時間が経っており、両軍の戦闘続行時間も
限界に近づいていた。

 戦場の遥か後方では、シュナイゼルが旗艦カムランの艦橋で、戦況を見てい
た。
「ほう、あの枢木君をあそこまで手こずらせるとはね。黎星刻という男、噂以上
の手錬だね。」
 艦橋で戦術パネルを見ながら、シュナイゼルが星刻を賞賛していた。
「両翼の連合軍は数の差を活かしきれていませんね。コーネリア殿下がよく持
ちこたえられておられます。」
「ああ、連合軍の方が、損害も多い。このままでは数において勝る連合軍の方
が不利になるだろうね。今日で勝負を決められなかった事は、向こうにとっては
痛いね。」
 ブリタニア軍より4割以上多い兵力を揃えながら、ブリタニア軍より損害が大
きい事は、連合軍の士気に関わる。
 特に死兵と化して戦っているEU軍は、初日の戦いで多大な犠牲を出しなが
らも、コーネリアの陣を崩せなかった事は士気が下がる可能性が高いと、シュ
ナイゼルは見ていた。
「戦闘が始まって、何時間になる?」
「既に6時間が経過しております。そろそろ両軍共に限界かと。」
 エナジーの残量、兵士の疲労を考えると、両軍共に兵を引かざるを得ない状
況にある。
「シャルンホルストも、そろそろ最後の一手を打つ頃だろう。このような状況で
打つのは不本意だろうがね。」
「確かに、その通りですわね。」
 カノンも頷く。
『その時こそ、こちらも動く時・・・。』
 シュナイゼルが、微笑む。

 カノンの予測どおり、両軍は一旦引いた。
 既に戦闘の継続が不可能になってきたからである。
「我が軍の被害は?」
 星刻が香凛に尋ねる。
「全軍のおよそ4分の1になります・・・。」
 星刻が苦い表情になる。
 ブリタニア軍は1割にも満たないだろう。
 ブリタニア軍を包囲する事が出来ず、逆にブリタニア軍を遥かに上回る損害
を出していた。
 必勝を期して臨んだ戦いであったが、連合軍の策を見抜いたスザクの策と、
スザク、コーネリアの指揮能力。
 ナイト・オブ・ラウンズ。
 両軍の兵の質。
 様々なことが重なって、多大な損害を出し初日の戦いが終わった。
「とにかく、軍を再編する事が、最優先。策はそれからですな。何より、激戦で
兵が疲れきっている。休ませねば、戦いにもなりますまい。」
 シャルンホルストが、星刻に進言する。
「ですな。黒の騎士団もラウンズを相手の戦いで、疲れきっているでしょう。と
にかく、兵を休ませ、軍の再編が終わってから、改めて策を考えるとしましょ
う。」
 軍議が終了し、星刻は自室に戻る。
 自室に入った途端、星刻は大量に吐血した。
 口を手で押さえたのにも関わらず、吐いた血が床に飛び散った。
 両膝が床に着きながらも、どうにか倒れこむのを免れた星刻は、さらに激しい
咳をしながら、血を吐き続けた。
「お休み中、失礼いたします。我が軍の詳しい状況についてですが・・・。星
刻様!!」
 吐血している星刻を見た香凛は、通信端末ですぐに軍医を呼ぶ。

「一先ずは落ち着きましたが、設備の整った病院で治療されなくては、命に関
わります。」
 星刻は自室のベッドに寝かされ、数種類の点滴を投与されていた。
「軍医、香凛。私の病状については、藤堂殿とシャルンホルスト総司令以外に
は、他言無用だ。いいな。」
「星刻様!!ご自分のお体についてお解りなのですか!?」
 香凛が咎めるように星刻に尋ねる。
「解っているさ。自分の体だからな。今は私の病状を知られるわけにはいかん。
全軍の士気に関わる。この戦いは、我が中華連邦の未来がかかっている戦い
だ。負けるわけにはいかないのだ。だから、私は戦わなければならない。」
「しかし、そのお体では・・・。」
「薬があるからな。まだ持つ。その間に、我が国のこの先の平和を勝ち取る。
その為に、私は命を使う。そういうことだ・・・。」
「解りました。この事は誰にも話しません。ですが、枢密使。このまま薬物の
対処療法だけを続ければ、長く持って1年が限度です。それをお忘れなく。」
 そう言って、軍医は片付けをして星刻の部屋を出る。

 皇暦2019年4月11日の戦闘は、終了した。
 しかし、この後、誰もが予想する事が出来ない状況になる。

後書き
ブリタニア対EU・中華連邦連合軍との戦いが始まりです。
数で優る連合軍、兵の質と装備で上回るブリタニア軍。
勝敗の行方が解らないまま戦いが始まりましたが、さすがに1日では勝負が
つかず、一旦両軍とも後退しました。
彼我の損害から、1日目の戦いでは相手の策を読んだスザクの策が功を奏し
た感じになりましたが、どうなるでしょうか。

次回AFTER TURN20 急 転
戦いは続きますが、思わぬ展開になります。

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2008/10/30 20:46
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは凪です。
今回一番気になるセリフ。
ロイドさんの「神虎はラクシャータの造ったナイトメア」
なにか、ラクシャータの造ったナイトメアには秘密あるいは共通点があるのか・・・?あのロイドさんが気にするほどですから、それは戦局を左右しかねないほどの重要さを秘めているのかも。
小生は神虎は実は初めての宇宙空間用マシンで、それゆえに地上では制動に難点があったとしてますが。
今回はジェットコースター並みの勢いで物事が展開しました。
さりげなくスザクの致命的弱点、女性を女として扱えない点も出てきましたし。スザクはあの玄武のひとり息子。母親はアニメでは書かれていない。スザクも家族という存在をはっきりイメージできない子供のような気がします。だから「大事な守るべき存在」から「将来の妻」にすでに変化したナナリーにおたおたするだけ。
ここで「あなたのために勝利を携えて帰ります。」
この程度でもいいから言えればいいのに。
後見人がロイドさんではそっちの教育は期待できませんし。
それでは次回急転をお待ち申しております。

2008/10/30 20:45
凪さん。
いつもコメントありがとうございます。

>今回一番気になるセリフ。
 これはロイドが驚いているという事です。
 乗っているのはやわな人間だと割り切って、
 ナイトメアを設計しているラクシャータが、
 スペック至上主義というランスロットと同コ
 ンセプトの神虎を設計していた事に驚いている
 んですよ。

>家族という存在をはっきりイメージできない
 子供
 父親との仲はかなり冷え切っていましたから
 ね。
 充分、考えられますね。
 ちなみに、ナナリーとの事はべつに理由があり
 ます。
CIC担当
2008/11/01 22:51

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