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zoom RSS コードギアス二次小説 AFTER TURN14 出 陣

<<   作成日時 : 2008/09/11 00:42   >>

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 イルバル宮の御前会議は、重苦しい雰囲気に包まれていた。
 派遣したEU侵攻軍の前衛の指揮官が全て戦死し、損失率も3分の1を上回
るのだから無理も無いだろう
「現在我が軍は、EU軍とのにらみ合いの状態になっているとの事です。」
 総参謀長のシュピッテラー伯爵が、そう報告する。
「前衛部隊の再編は、まだ終わらぬか?」
「はっ、最低でも3日はかかるとの事です。」
 シャルルの問いに、シュピッテラーが答える。
「開始早々見事な負けっぷりよな・・・。しかもあの黒の騎士団にいいようにあし
らわれたとの報告も来ておる。シャルンホルストの事はともかく、この件につ
いては何とも情けない事よ・・・。」
 全員が恐縮したように、汗を拭いたり沈黙のまま下を向いたりしている。
「誰か、この状況を打開する策を持っているものは、居らぬか?」
 威圧感のこもった視線で、出席している一同を見渡す。
 が、一人として発言しようとする者はいない。
「誰も、居らぬか?これだけの頭数が揃って居るのに・・・。」
 シャルルが呆れたような声に、アフリカ戦線で指揮を取った経験のある、イ
プセン子爵が発言を求める。
「ほう、何か策があるか?」
「こうなれば、我が軍の切り札たる、ラウンズを戦線に投入すべきかと・・・。」
 恐る恐るといった感じで、イプソンがラウンズの投入を進言する。
「北アフリカには既に、ナイトオブテン、ナイトオブトゥエルブがおるが、そ
れでも足りぬか?それほどまでにラウンズに頼らねばならぬほど、そなたらは
惰弱で無能か?」
 シャルルの視線が、イプソンを貫くように向けられる。
「し、しかし、このままでは・・・。」
「陛下、私が参ります。」
 コーネリアが申し出る。
「ほう。そなたが参るか?策があると申すか。」
「此度の前衛部隊の敗因は、勢いに任せすぎた事にあります。前衛部隊は敵
を抑える事に専念し、他の部隊で、中央、後衛部隊を牽制。選び抜いた精鋭部
隊で、黒の騎士団を撃滅する。これが、私の策でございます。幸い、私のナイト
メア、イゾルデのテストも終わり、充分実戦で使用が可能でございます。グレン
とかいうナイトメアの新型、押さえ込む事は可能でございましょう。どうか、私に
出陣の命を。」
「成る程。確かにそなたの部隊は精鋭揃い。その策を実行するも可能であろう
な。」
 シャルルは目を閉じ、なにやら考え込んだ。
「そなたの言葉と決意は、覚えておこう。後日再び会議を開き、決定する物と
する。ご苦労であった。」

「殿下。陛下のご様子ですと、なにやら考えがあるようにも思えますが、殿下
は如何でございますか?」
「かもしれぬ。だが、今の最優先事項は、EUに遠征している軍の建て直しだ。
一先ずそれに集中すべきであろう。」
「これは、出すぎた事を。申し訳ございません。」
「よい、別に叱りつけたわけではないからな。何やら、枢木卿に似てきたぞ。」
 ギルフォードを見ながら、コーネリアは可笑しそうに笑った。
『とは言え、何を考えておられるかはやはり気になるな・・・。』
 今後、出陣を命じられた場合と、シャルルの思惑。双方を考えながらイルバ
ル宮を出て、自分が生まれ育ち本国にいる時に暮らしているジェミニの離宮に
向かった。

「ふうん。それは大変だね。使える人材が少ないというのは。」
 アーカーシャの剣で、シャルルの話を聞いたV.V.は可笑しそうに笑った。
「嘆かわしい限りですな。コーネリアの志願が、唯一の救いといったところです
よ。」
「それじゃあ、コーネリアを向かわせるのかい?」
 そう、V.V.が話しかけると、シャルルの侍従が近づいてきた。
「陛下。どうやら、スペイン州に例の物があるようでございます。さらにイギリス
州にもある可能性が、高いかと。」
 それを聞くと、シャルルは侍従の方へ視線を向ける。
「枢木を本国に呼べ。確かめさせる。」
「はっ。」
 侍従が恭しく一礼して、その場を去る。

 エリファレットは、前線から送られてきた映像に目を通していた。
『まさか、ベルクトを可変ナイトメアにするとはね。トリスタン程じゃないけ
ど、可変機構もなかなかだ。侮りすぎていたか・・・。』
 戦闘機としてのベルクトは、エリファレットも知っていた。
 ロシア州のスホーイ設計局が設計し試験機が一機だけロールアウトされた、
前進翼に先尾翼を備えた野心的な設計の多用途戦闘機として、一時ミリタリー
雑誌やブリタニアの技術者でも話題になっていたからである。
 但し、通常の戦闘機で採用されているデルタ翼等に比べて、機動性を増す事
が可能という利点があったものの、飛行時の安定性に欠ける、ステルス機には
不向き等の理由から、その後の開発は中止されていた。
『飛行時の安定性は操縦系の改良でカバーできる。だが、機動性が増した場
合、並みのパイロットでは乗りこなせないという欠点もあるけど、無人機にする
事でそれを解消するとはね・・・。盲点だったな。おまけに推力変更ノズルで、
更に機動性も増している。こちらの艦載機では歯が立たない。』
 映像では、ブリタニア軍の艦載機がベルクトの機動についてこれず、次々と
撃墜されている。
『フロートユニットを装備したナイトメアには劣るから、撃退する事は難しくはな
い。ただ、そっちに戦力を裂くと、相対的にナイトメア戦に投入できる戦力が減
る。第一、このステルス性。相当、電波吸収材の開発に、資金と人員を投入し
たみたいだね。レーダーで捉えるのは難しい。おまけにナイトメアに変形して
も、パンツァーフンメルと共同作戦を取る事が可能。機体特性を生かした一撃
離脱は厄介だな。第一、ECMがほとんど通用しない。誘導電波を妨害する事
は、ほぼ無理。シャルンホルストの指揮能力とあいまって、とにかく厄介な存
在になっている。それに・・・。』
 他の映像を再生する。
『黒の騎士団か・・・。数は多くないけど、量産型ナイトメアの性能はウォードと
ほぼ同等。この紺色のナイトメアはエース用かな。この機体の性能は侮れない。
ヴィンセントをぶつければ問題ないけど、ラウンズとまで行かなくとも、エー
ス級でかなり腕を持つパイロットをぶつける必要があるのが、この2機。』
 エリファレットが見ているのは、千葉と朝比奈の騎乗する暁直参使用だった。
『さらに、紅蓮の新型とこの黒いナイトメア。この2機はラウンズクラス。ラ
ウンズでなければ、対抗は無理か。おまけに黒いのに騎乗しているのは、情
報によれば奇跡の藤堂。指揮能力に衰えは無いか・・・。』
 溜息をつきながら、映像を消す。
『私が出陣すると仮定した場合、あの紺色の2機はアレン達、私の古参の部
下で対抗できる。けれど、紅蓮と藤堂の騎乗するナイトメアは、私が相手をする
しかない。とは言え、2機同時はさすがにかなりつらい・・・。スザクなら、大丈
夫だろうけど、副総督として今はかなり忙しいはず、無理だね。ヴァルトシュ
タイン卿は、皇帝陛下の身辺警護。やはりいけるような状態じゃない。となる
と、ラウンズ2人か・・・。』
 執務室の窓から空を見る。
「やれやれ、これからの我が軍の未来を、暗示していそうな空だね。」
 その日は曇り空だった。

「それでは、この件はそのように。」
 日本の総督府で、ナナリーが文官の報告を聞いて、指示を出した。
「はっ。では、直ちに。」
「総督。少し、お休みになられては如何ですか?」
 ミストロロープが、執務に精励するナナリーを気遣うように、そう言う。
「ありがとうございます。では、後一件片付いたらそうします。」
 ナナリーが笑顔でそう答え、点字に直された書類を読み始める。
『いつまでも、スザクさんばかり頼っていられない。私も頑張らなくては。』
 スザクは軍の視察に赴いており、総督府にはいなかった。
「ところで、EUとの戦いはどうなっていますか?」
「今のところ、睨みあいの状態になっているとの事です。」
 前衛軍の大敗は、ナナリーの耳にも勿論入っており、その後の経過を危惧し
ていた。
「スザクさん達ラウンズに、出陣の命令は下されてはいないのですか。」
「はい。今のところは。」
「そうですか。シュナイゼル兄様の事ですから大丈夫だと思いますが、大変で
しょうね・・・。」
 ナナリーがシュナイゼルと前線で戦う兵士達の心配をしている時、コーネリ
アから通信が入った。

「久しいな、ナナリー。元気にしているか。」
「コゥ姉様。はい。私は元気にしています。」
 端末のモニターに映るコーネリアは、優しく微笑みながら頷く。
「それは何よりだ。総督。しかも例を見ない連邦エリアの総督だ。苦労してい
るのではないかと思ってな。」
「他の方達もいますし、それに・・・、スザクさんもいますから。」
「うん?どうした。枢木卿と何かあったか?」
「スザクさん。私をナナリーって、呼んでくれないんです。プライベートの時でさ
え。もちろん、私に仕える地位にいる事は理解しています。それでも、公
務以外のときは、昔のようにして欲しいんです。それは、我儘でしょうか?」
 ナナリーの表情が、曇る。
「ふむ。お前は枢木卿の家に預けられて、家族同然に暮らしていたのだった
な。我儘といえばそうなのだろうが、まあ、公務の時に示しがつけられれば、
多少は良いと思うが、枢木卿はそうではないのか?」
「はい。君臣の区別はつけなければ駄目だと、そう言っています。」
「そうか。解った。後で機会があれば、私が話してみよう。笑顔になる事が出
来たとは言え、どこかお前に壁を作ったような状態が良いとは思えぬからな。
ところで、枢木卿はそちらにはいないようだが。」
「はい。軍の視察をしています。EUとの戦いで軍が大損害を被った事で、軍
が動揺していないかを、見ておきたいと。」
「そうか。今、何所にいるか解るか?」
「スザクさんに、出陣の命令が下ったのですか?」
「いや、まだだ。只、父上が、皇帝陛下が本国に来るよう命令を下されてな。
お前と話すついでに、私がその命を伝える事になっている。」
 話している時に、ミストロロープが予定を確認している。
「今は、新潟の基地の視察をしてらっしゃるはずです。」
「そうか、済まぬな。では、そちらに通信を入れるとしよう。」
 通信が切れた。
「スザクさん。やっぱり、出陣するのかしら。」
「それは、何とも言えません。」
 スザクを案じるナナリーに何か言葉を掛けようとするが、見つからなかった。

 スザクは新潟に駐留している軍の演習の、視察をしていた。
「今のところ、動揺は無いようだな。」
「はっ。ですが、兵達がやはり危惧しているようです。幸い、士気にはさほど影
響はしておりませんが。」
 東北方面軍の指揮を取る、ジョイス将軍がスザクに軍の状況を説明する。
「そうか。演習を見ても、動揺の気配は見られない。が、注意はしてくれ。中華
連邦がEUとの戦いの状況如何では、動く可能性が無いわけではないから。」
「はっ、心得ております。」
 ジョイスの言葉にスザクが頷くと、C.C.が走ってくる。
「失礼いたします。本国のコーネリア殿下より、通信が入っております。」
「解った。」

「お久しゅうございます。コーネリア殿下。」
「そうだな。2ヶ月ぶりか。日本の治世は安定しているそうだな。副総督としての
責務を、見事に果たしている証拠だ。」
「恐縮です。ところで、何の御用でしょうか?」
 スザクが本題に入る。
「EUに派遣された、我が軍の前衛部隊の大敗は知っているな?」
「存じております。駐留軍の事が気になり、今は視察に赴いているところで
す。」
「ナナリーから聞いた。それと関係があるかどうかは解らぬが、皇帝陛下が、
本国に来るように命ぜられた。私の目的はそれを伝える事だ。」
「では、すぐに本国に参ります。」
「うむ。ところで・・・。」
「他の何か?」
 まだ何か用がありそうなコーネリアの顔を見て、スザクが尋ねる。
「ナナリーから聞いたぞ。望むのにもかかわらず、貴公がプライベートでは、
昔のように接してくれないと、悲しんでいた。」
「恐れながら、自分は皇帝陛下に剣を捧げた、騎士。まして、総督は陛下のご
息女にあらせられます。そのようなお方を、名前で呼んでは他の者に示しがつ
きませぬ。君臣の区別をつけねば、規律も乱れましょう。」
 ナナリーに答えたように、コーネリアに答える。
「確かに貴公の言うとおりだ。だが、ナナリーは嘗て貴公の家に預けられて、
家族同然に育った間柄だ。はめを外しすぎない範囲で、願いをきいてやっては
くれぬか?もちろん、無理強いはしないが。」
「解りました。考えておきます。では、本国で。」
「うむ。」
 端末の画面が消えてから、スザクは自分が出陣する可能性を考えていた。
『今は、まだ五分五分か・・・。例の件であっても見つからない可能性もある。
とは言え、この際だ。僕に代わって総司令官代理を務める、人間を選んで置こ
う。』
 アヴァロンに向かいながら、スザクは人選を進めていた。

「本国行きの件は、私も聞いております。軍の総司令官代理の人事も、ロイダ
ース将軍で良いでしょう。私も面識がありますし、信頼できる人物だという事は
存じております。」
 駐留軍総司令官であるスザクは人事権も握っているが、上級指揮官の人事
については総督であるナナリーに必ず伝え、了承を得る事にしている。
「お聞き入れいただき、ありがたく存じます。統治策に関して相談する相手とし
ては、シュンペンター博士がよろしいかと。」
「そのつもりです。では、気をつけて。」
「はっ。」
 通信が切れる。
「ロイドさん、コンクエスターはいつでも戦闘可能ですか?」
「いつでも、いけるよ〜。ただ、フロートユニットは最新式になっているから、
後でシミュレーターで見といたほうが、いいかもね〜。」
「今までとは、違うのですか?」
「まあね〜。ま、後で説明するからさ。」
 アヴァロンは、本国に向けて出発した。

「枢木スザクが、本国に向かった?」
 司令部で今後の方針について協議をしていたシャルンホルストは、スザクが
本国に向かったという情報を聞いて、思わず席を立った。
『奴が、増援軍として来るというのか?』
 最初の戦いこそ勝利したとはいえ、未だに兵力ではブリタニア軍のほうが勝
っている。
「総司令官、よろしければこちらでその後の動向を調べさせますが、如何でし
ょうか?」
 黒の騎士団の総司令として参加していた藤堂が、調査を申し出た。
「頼む。奴が出てくれば、かなり厄介な事になる。」
「承知しました。」
 頷いてから、再度作戦図に視線を移す。
「イギリス州から増援の知らせはまだか?」
 作戦図から視線を外さずに、シャルンホルストはフロベールに尋ねる。
「はっ、ブリタニア軍大西洋艦隊が睨みを利かせている為、プリマスに集結し
たものの出撃が困難との事です。」
「こちらの艦隊では、大西洋艦隊は押さえられぬか・・・。」
 航空艦隊が編成されたブリタニアは、部隊の輸送を航空艦隊だけでもほとん
ど可能となっており、その分海軍には余裕が生まれ艦隊規模は拡大して、EU
の艦隊では、対抗するのが難しくなっていた。
「とにかく、増援を送るよう再度通信を送れ。艦隊もできるかぎり数をそろえさせ
ろ。」
 EU軍といっても、基本的には各州が動員可能な軍が集結した軍隊である為
に、その州の動員が不可能である場合は、軍には加わらない。
 もちろん、不参加を続けられれば相応のペナルティーはある。
 今回の場合、イギリス州が増援を送るには、ブリタニア軍大西洋艦隊をどうに
か押さえ込まなければ、増援軍の派遣は不可能だった。
『地中海沿岸の州の増援は、まず不可能。頼みの綱はイギリス州。しかし、こ
のままでは・・・。』
 ブリタニアの増援のほうが、早くなる可能性が大きくなる。
 そうなれば兵力差は更に開き、良くて苦戦の末の撤退。最悪敗戦の挙句、
殲滅されかねない。
『もはや、今手持ちの兵力で撤退させる他無いか・・・。』
 作戦図を睨みながら、シャルンホルストは今後の戦略を考え始めた。

 一方、シュナイゼルも前衛部隊の再編、重傷者を本国に移送する手配をしな
がら、今後の戦略について考えていた。
「問題はあのベルクトと、黒の騎士団だね。その2つを封じてしまえば、今のま
まなら、勝利する事は不可能ではないが・・・。」
 特に黒の騎士団をどうするかを、考えていた。
「彼らを孤立させて各個撃破するのが良いでしょうが、それは向こうも読んでい
るでしょう。正直実現させるのは、かなり難しいかと。」
「だろうね。現に先の戦いでも、藤堂もEU軍から離れすぎずに独立行動を取っ
ていた。無理と言っても良いだろう。」
 カノンの意見に頷きながらシュナイゼルは、じっと作戦図を見続けた。
「ともかく、前衛軍の再編を急がせよう。その後は、相手の戦力を削り取る事
に専念する。黒の騎士団に対しては、遠距離攻撃で牽制しつつ精鋭部隊を編
成して対処しよう。これで彼らもそう思い通りに動く事は出来ないだろう。すぐ
に取り掛かるとしよう。」
「承知しました。」
『上手くいかないね。色々と・・・。』
 カノンの言葉に頷きながら、シュナイゼルはそう考えていた。

「お召しにより、枢木スザク参上いたしました。」
「うむ。大儀である。立つがよい。」
 恭しく跪いていたスザクが立つ。
「EUとの戦いの件は、聞いたな。」
「はっ。緒戦で大敗を喫したとか・・・。」
「そうだ。先日開いた御前会議では、お前たちラウンズを投入すべきとの意見
が出た。」
「左様でございますか。」
「お前はどう思う?構わぬ思うところを申せ。」
「自分は陛下の剣。行けと言われれば何所へでも参ります。」
「ふむ。地位ゆえか、発言が慎重になったか?まあ、良い。今回呼び出したの
はその件ではない。もっとも、行く事になるやもしれんがな。」
 シャルルが地面に手を翳すと、コンソールが地面から現れる。
「感じよ。」
「イエス、ユア・マジェスティ。」
 スザクがコンソールに手を翳し、目を閉じる。

 スザクの脳裏に、風景が浮かぶ。
 それと連動してアーカーシャの剣の空に世界地図が現れ、2つの赤い点が記
される。
「ほう、スペイン州に一つ、それにイギリス州にも一つか。あれは・・・。」
 イギリス州の点の所在地を見て、シャルルは愉快そうに笑った。
「何と、エディンバラとな!!これは愉快。我らがこの地に追われるをえなくなっ
た、あの「エディンバラの屈辱」の地か!!」
 暫く笑った後、スザクのほうを向く。
「枢木、大義であった。もうよいぞ。」
 スザクがコンソールから手を放し、目を開ける。
「明後日、御前会議を開く。今回はラウンズも参加させる。但し、北アフリカの
ナイトオブテンとナイトオブトゥエルブはそのまま現地にて駐留せよ。枢木、ナ
イトオブスリーとナイトオブシックス。どちらかを本国に呼べ。一人は中華連邦
への牽制として、残すものとする。」
「イエス、ユア・マジェスティ。」
「もう下がってよい。」
「はっ。」

「あら、また陛下からのお呼び出し。随分、目を掛けていただいているのね。
ナイトオブセブン。」
 第5皇女カリーヌ・レ・ブリタニア。
 歳は15歳。ナナリーと同い年であるが、生まれたのはカリーヌのほうが早い
ので、ナナリーの腹違いの姉になる。
「これは、カリーヌ皇女殿下。」
 スザクが恭しく跪く。
「ふうん。相変わらず、跪くのが上手いわね。ま、ナンバーズだし当然か。そう
やって、陛下に取り入ってラウンズになったのかしら?きっと、そうよね。
ユーフェミア姉様をお守りする事が出来なかった、腰抜け騎士だものね。」
 「ユーフェミアを守れなかった。」
 その事は、今でもスザクにとって心に深い傷を残している。
 それを考えもせず、カリーヌは嘲笑する。
「あ、認めるんだ。そうよね〜。何年経とうが、あなたが腰抜け騎士である事に
変わりないわよね〜。だから、ナンバーズは・・・。」
「カリーヌ。よさないか。」
 そうカリーヌを窘めたのは、第1皇子オデュッセウス・ウ・ブリタニアである。
 ブリタニアの皇族には珍しく温厚な性格の持ち主で、スザクに対しても差別
意識を持たずに、接していた。
「カリーヌ。枢木卿の武勲を知らないわけではないだろう?それを認めないと
いうのは、感心できないな。」
「オデュッセウス殿下。」
「久しぶりだね。枢木卿。日本では大変だと聞いていたが、元気そうで何より
だ。」
「オデュッセウス兄様。ナイトオブセブンを庇われるのですか?」
 カリーヌが不満そうに言う。
「庇うのではない。兄上は認めていらっしゃるのだ。枢木卿の功績をな。」
「コーネリア殿下。」
「枢木卿、いつまでも跪いてないで立つがよい。」
「はっ。」
 立ち上がるスザクを微笑みながら見たコーネリアだが、カリーヌを見る視線
は厳しかった。
「カリーヌ。先ほどからお前の言う事を聞かせてもらったが、随分見事な見識
だな。枢木卿がラウンズとなったのは、自らの功績だ。その程度も解らぬほど、
お前は愚か者か?」
 コーネリアは身内には情が厚い分、厳しい面もある。それは最愛の妹のユー
フェミアに対してもそうだった。
「答えられぬか?」
「そ、それは・・・。」
 答えられず、カリーヌは俯く。
「枢木卿は私の麾下でも戦った者だ。言っておくが、腰抜け騎士を麾下に置い
てやるほど、私はできた人間ではない。お前と同じ歳で既に従軍し、国家に奉
仕もしていた。それに比べてお前は何だ?皇族という地位にありながら、高貴
な者が果たすべき義務を果たそうという意識も無く、ただ安穏に過ごしている
だけではないか。そんなお前に、枢木卿をどうこう言う資格がありはせん。恥
を知れ!!」
 激しく叱責されたカリーヌは、一礼すると走り去っていった。
「済まぬな。枢木卿。カリーヌには、後で私からよく言っておく。言いたいことも
あるだろうが、ここは収めてくれ。」
「お気になさる必要はございません。ユーフェミア殿下をお守りできなかったの
は、事実でございます。」
「だが、見事に仇を討ち、汚名も雪いだ。卑屈になる必要は無いぞ。カリーヌが
皇族だからといって、反論してはならぬというわけではない。もし、諫言を聞き
入れることが出来ないのであれば、カリーヌはそれまでの人間だと言う事だか
らな。」
「コーネリア、カリーヌはまだ子供だ。これからがある。今はまだ見捨てないで
やってくれ。」
 コーネリアのカリーヌに対する態度を、厳しすぎると感じたオデュッセウスが、
カリーヌを擁護するような口調で言った。
「無論、そのつもりです。兄上。ですが、例え相手が臣下であろうと、何を言っ
ても良いわけではございません。カリーヌはそこを理解してもよい年齢と、私は
考えております。」
「まあ、確かにそうだが。もう少し、言い方は柔らかくしてやってくれ。カリーヌ
には私からも言っておくから。」
「解りました。済まぬな。本国に戻ったばかりで、不快な思いをさせた。疲れ
ているだろう。ゆっくり休むが良い。」
「お言葉、ありがたくお受けします。」
 恭しく一礼して、スザクはその場を去り自分の屋敷に戻った。

「成る程。つまり、俺が本国に行って、アーニャは残ると。」
 屋敷に着いたスザクは、軍服のまま日本との間に通信を開いていた。
「うん。アーニャは総督と年齢も近いし、シュンペンター博士以外にも、相談でき
る人間がいたほうがいいしね。」
「まあ、そうだな。確かにそれは言えてる。しかし、急だな。御前会議に出席しろ
とは。まあいいか。出来る限り早く出発する。」
「頼む。じゃ。」
 通信が切れた後も、スザクは軍服を脱がずにいた。
『嫌な予感がする。』
 そして、それは的中した。EUの艦隊が大西洋に向けての出撃準備に入った
との報告が1時間後に入った。
『こうなると、イギリス州が援軍を差し向けるのも、そう遅くはないだろう。
そうなれば、兵力差は逆転する。そうなれば、シュナイゼル殿下の軍はこれま
で以上に、苦しくなる。』
 スザクの恐れていた事態に、なりつつあった。

「ほう。遂にイギリス州が重い腰を上げそうだな。」
「まだ、そうと決まったわけではないが、可能性が高くなっただけでもありが
たい。とにかく、兵力差が逆転すれば攻勢に転ずる事が出来るだろう。」
 朱禁城の執務室で、星刻はEU艦隊が出撃準備に入った事を藤堂から聞い
ていた。
「それで、ブリタニア側の動きはどうだろうか?このままEU艦隊と戦闘状態に
入れば、それこそEUの思う壺。黙って、手をこまねいているとも思えんが。」
「ディートハルトの情報によれば、今はまだこれといった動きは、見受けられな
いようだ。」
「何?ラウンズが出撃する気配はないと。」
 藤堂の言葉に、星刻は驚きを隠せなかった。
 緒戦の大敗で落ちた士気を高めるには、切り札たるラウンズを投入するのが、
最も有効な手だと星刻は考えていたからである。
「無論。密かに準備をしている可能性は、否定できないがな。ちょっと待ってく
れ。日本からアヴァロン級の浮遊航空艦が、ブリタニア本国に向かったそう
だ。艦はユリエンス。ナイトオブスリー、ジノ・ヴァインベルグの乗艦だ。」
「動くやも知れんな。」
「そうだな。私はこれを総司令官殿にお伝えする。では。」
 通信が切れた。
『遂に動くか。ナイト・オブ・ラウンズ。』
 何も映っていない、端末の画面を見ながら星刻は、ブリタニアが動く可能性
が高いと考えていた。

 ジノが到着した翌日、本国にいるラウンズが参加して、再び御前会議が開か
れた。
「EU艦隊。ブレスト軍港を出港。我が大西洋艦隊とにらみ合っております。」
「EU艦隊ごとき、何故ひねり潰せぬ!?」
「ブレストを出港したと同時に、ドイツ州からも艦隊が出撃。合流した為、おいそ
れと戦える状態ではないと、報告が入っております。」
「陛下。このままではイギリス州の兵が加わり、我が軍は不利な状況になりま
す。」
 EU艦隊出撃の報を受けて、御前会議は紛糾していた。
「シュナイゼルはどうしておる?」
「はっ。先程報告が入りました。本日6:00に攻撃を仕掛け、2時間後にEU軍
は後退。我が軍も進撃を停止し、陣容を立て直しました。」
「ふむ。良い結果と言うべきかな?」
「はっ。これで兵達の士気も高まりましょう。」
 喜ぶ幕僚の言葉に、シャルルは軽く頷いた。

「ふむ。まずは上々の結果だな。EU軍の動きはどうかな?」
「陣容を立て直し、さらに守りに徹しております。」
 この日シュナイゼルは、前衛には無理をさせずEU軍の攻勢に対し、ひたすら
守りに専念させ。左右両翼の軍でEU軍の兵力を削り取る事に専念し、かなり
の損害を与える事に成功した。
「黒の騎士団と例の新型がいなければ、さらに損害を与える事も可能でした
が。」
「カノン。今回の目的は軍の士気を高める事だ。余計に欲をかくと痛い目に遭
うよ。」
 ブリタニア軍の攻勢に対し、藤堂は右翼に、千葉、朝比奈の2人を向かわせ、
損害の大きい左翼にカレンと共に急行して、ブリタニア軍の攻勢を防いだ。
「しかし、奇跡の藤堂。厄介だな。兵力はさほどではないが、兵力以上に黒の
騎士団に、実力を発揮させる・・・。」
 前衛部隊の敗北後、藤堂は斑鳩に一部の部隊を残し、本隊を合流させ兵力
は増していたが、全体から見れば決して多くはない。だが、縦横無尽に黒の騎
士団を操り、ブリタニア軍の攻勢を防いでいた。
「本国から増援の知らせは?」
「未だに・・・。」
「ふむ。暫くは、兵力を削ぐ事に専念するとしよう。そうすれば、士気の低下は著
しくなる。士気を上げる為に、敵は攻勢に転ずるだろう。そこに勝機を見出す。」
「しかし、それでは我が軍の損害も、かなりのものになりますが・・・。」
「援軍が来ない場合、そうするしかないだろう。私だって、こんな手は使いたくな
いよ。」
『さて、どうする枢木君。今の我が軍の状態を放って置ける君ではないだろ
う?』
 作戦図を見ながら、何故かシュナイゼルは小さく笑っていた。

「陛下、とにかく援軍を送るべきでございましょう。仮定として、EU軍が全面攻
勢に出た場合、我が軍の損害が無視できませぬ。」
 ビスマルクが、援軍を送るよう進言する。
「ほう。で、誰が適任と思う。そなたか?我が国最強の騎士、ナイトオブワン
よ?」
 シャルルの言葉を聞いて、ビスマルクはスザクを見る。
「枢木卿。策は無いか?貴公なら何か策を持っているのではないかな。」
 皆の視線が、スザクに集中する。

「イギリス州の増援の規模は?」
「約9個師団と、諜報部から報告が入っております。」
「枢木。実を言うとな。余はこの際、イギリス州も手に入れる事は出来ぬかと、
いささか欲を持っている。それを可能にする策は無いか?」
 スザクは席を立ち、シャルルに向き合う。
「陛下。この際、大西洋艦隊を一旦退かせ、イギリス州が増援を送る環境を、
整えては如何でしょう?」
 スザクの発言に、皆がどよめく。
「馬鹿な。それではシュナイゼル殿下の軍が苦しくなるだけ。何をお考えか?」
「むしろ、兵力を増強しEU艦隊を撃滅すべきではないか?」
「一同静まれ。皇帝陛下の御前である。」
 ベアトリスの言葉で、皆が静まり返る。
「枢木、その後どうする。シュナイゼルを敗北に追い込む気か?」
 シャルルは面白そうに、スザクに尋ねる。
「援軍は、到着させませぬ。EU艦隊は大西洋艦隊にて撃滅させます。と、同
時にイギリス州を陥落させEU軍の動揺を誘い、我が軍の増援を到着させて、
撃滅します。」
「続けよ。」
「まず、大西洋艦隊を後退させ、イギリス州の部隊を派遣させます。9個師団
もの兵力を派遣したイギリス州は空も同然。一軍をもってイギリス州に奇襲を
かけます。さらに、イギリス州の増援部隊がある程度スペイン州に近づいた時
点で、航空艦隊を持って叩きます。そしてEU艦隊を、戦力を増強した大西洋
艦隊で撃滅します。その間にEUに増援を派遣します。」
 スザクが策を述べて、伝えます。
「ほう。中々、壮大な戦略よな。して、誰がその任に着く?」
「イギリス州攻略は、自分が直属軍を率いて行いたいと思います。」
 スザクが自ら志願する。
「それでは、イギリス州の増援部隊の撃滅は、私がやらせてもらおう。」
 コーネリアがイギリス州増援部隊の撃滅に、志願する。
「ほう。そなたが行くか。コーネリア。」
「はっ。その後、宰相閣下の軍とも合流したく存じます。」
 コーネリアの言葉に、会議が騒然となる。
「よかろう。増援部隊の撃滅と、EUのシュナイゼルの増援はそなたに任せよ
う。」
 シャルルがコーネリアの志願を認める。
「はっ。見事、ご期待に応えて見せます。」
「他に、加わりたい者はおるか?ラウンズも遠慮せずとも良いぞ。」
「陛下、私は枢木卿と共に、イギリス州の攻略に当たりたいと存じます。」
 ジノがイギリス州攻略に志願する。
「私もヴァインベルグ卿と共に、イギリス州の攻略に参りたく存じます。」
 エリファレットも、イギリス州攻略に志願する。
「どうだ、クローディア?久しぶりにひと暴れしないか。」
 ノネットがクローディアを誘う。
「ええ、いいわね。エリファレット達がイギリス州攻略なら、私達はコーネリ
ア殿下と共に、増援を叩くとしましょうか。」
 クローディアも同意する。
「陛下、私とガーシュイン卿は、コーネリア殿下の麾下に入りたく存じます。」
 ノネットが、コーネリアの麾下に入る事を志願する。
「よかろう。そなたらに任せる。ナイトオブワン、ナイトオブイレブンは本国
に留まれ。枢木達は、直ちに準備に入れ。これで会議は終わる。」
「「「「「「イエス、ユア・マジェスティ。」」」」」」

1週間後、ブリタニア軍大西洋艦隊が突如退き、イギリス州は増援軍9個師団
を派遣した。
「イギリス州、増援軍を派遣しました。」
「うむ。枢木卿の部隊は?」
 報告を聞いたコーネリアが、イギリス州攻略の途についているスザクの部隊
の状況を確認した。
「ステルスユニットを稼動させつつ、イギリス州に接近しております。」
「よし。ギルフォード、こちらも動くぞ。」
「はっ!!」
 皇暦2019年1月5日、EUとの戦いは新たな局面を迎えつつあった。

後書き
遂に、スザク達ラウンズが参戦します。
ブリタニア側にしてみれば、EUを降伏させる事が出来るかどうかの、天王山。
当然と言えば、当然の選択です。
壮大な戦略を練り、総数20万の軍を率いてスザクは戦場に出ます。
戦いの行方は・・・?

次回AFTER TURN15 スザク の 戦略
スザクのイギリス州攻略から、戦いは新たな局面を迎えます。

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