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zoom RSS コードギアス二次小説 AFTER TURN16 勝利 と その後

<<   作成日時 : 2008/09/25 01:12   >>

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「全軍、フォーメーションC。突撃しつつ、敵部隊を蹴散らせ!」
「「「イエス、マイ・ロード!」」」
 スザクが先陣を率い、右翼をヴァレーリア。左翼をヒルダ。後備えをジーン
が率いる。
 ジノとエリファレットは遊撃部隊となる。
「ランスロット!やはり、来たか!!」
「藤堂さん。陣が崩れ始めました!」
 態勢を立て直したコーネリアが、再び攻撃を開始。更に、ノネットとクロー
ディアを含む部隊がEU軍前衛の左翼を突いた事で、EU軍の陣形が崩れ始め
た。
『あれは将棋頭の陣。そういうことか!』
 陣形を見て、藤堂はスザクの意図をすぐに察した。
 自分が来れば、ブリタニア軍が間髪入れずに新たな部隊を繰り出す事によっ
て、EU軍が崩れ始める事も、スザクは計算に入れていた。
 それゆえに、敵軍が崩れ始めてすぐさま追撃に入る際に威力を発揮する、将
棋頭の陣を採用していたのである。
「撃て!」
 AKM低圧砲を装備した、砲撃戦使用のドーチェスター部隊が一斉に砲撃を
開始し、突入口を開く。
「突撃!!」
 ランスロットが先頭となり、そのままEU軍の右翼の部隊を蹴散らし始める。
「朝比奈。千葉と共に左翼の加勢に回れ!紅月。右翼の加勢に回るぞ!」
「「承知!」」
「はい!」
『支えきれるか!?』
 弱気になりそうな自分を叱咤して、藤堂は右翼の加勢に急いだ。

「正面、ベルクト隊です。」
「ジノ、頼む。」
「任せとけって。」
 フォートレスモードに変形したトリスタンが、部隊を率いてベルクト隊を迎え撃
つ。
「枢木卿。正面、敵砲撃型ナイトメアです。数18。」
「私が9機引き受ける。スザクは残りを。」
「解った。頼む。」
 答えながらスザクは兵装コンソールを、操作する。
 展開するハドロンブラスターの砲身とヴァリスを合体させて、照準を定め、トリ
ガーを引く。
 発射されたハドロンブラスターで、極光9機を薙ぎ払う。
「さて、こちらもいくか。」
 エクターは本国で、ハドロンキャノン装備する等の改修を行っている。
 NRL−001L エクター・ライトニング。
 改修後のエクターの新たな名である。
 エクターのハドロンキャノンは、威力よりも単位時間当たりの発射数を重視
していて、速射砲のように撃つ事が可能である。
 立て続けに発射したハドロンキャノンで、エクターも極光9機を仕留めた。
「極光部隊全滅!ランスロットの他にもラウンズのナイトメアがおり、両機共
ハドロン砲を装備しています!!」
「改修で武装を強化したか・・・。何所まで対抗できるか・・・。」
「藤堂さん。ランスロットは私が相手をします。残り1騎をお願いします。」
 紅蓮が出力を強化した、強化型飛翔滑走翼の出力を最大にしてランスロット
に向かう。
「やむをえん、か・・・。」
 藤堂も斬月を駆り、エクターに向かう。

「スザク!!」
「カレンか・・・。君では僕に勝つ事は出来ない。解っているだろう?」
「うるさい!!」
 紅蓮が輻射波動弾を発射するが、出力を強化されたランスロットのブレイズ
ルミナスが防ぎ、MVSを手にしたランスロットが紅蓮を迎え撃つ。

「奇跡の藤堂か。相手にとって、不足は無い!」
 エクターも、MVPを手にして斬月を迎え撃つ。
 繰り出された制動刀を払い、鋭い突きを繰り出す。
「速い!」
 かわし損ねた突きが、斬月の装甲を僅かに削る。
「くっ!」
 位置を換え仕切りなおして、斬月の制動刀がエクターを襲う。
 またも、斬撃を防がれて突きを繰り出されるが、今度は輻射障壁で防ぐ。
「機動性は向こうが上か・・・。」
 エクターのMVPの一撃を防ぎながら、機動性はエクターのほうが優れている
事を藤堂は認めていた。
「それに、この槍さばき、日本の槍術にかなり似ている・・・。何故、ラウンズ
が?」
 エクターの槍さばきが、日本の槍術に似ている部分があるのを感じ、藤堂は
奇妙に思っていた。

 ベルクト隊は、機動力を活かしアウトレンジからの一撃離脱のミサイル攻撃
を、ジノの部隊に対して繰り返していた。
「いつまでも、通用しないって。」
 ジノは改修されたトリスタンの機動力を生かして、ベルクト隊の真っ只中に突
っ込む。
「いかに高い機動性を誇ろうと、このトリスタンには勝てないぜ。さて、改修
の成果を見せるとするか。」
 ナイトメアに変形したトリスタンはベルクトの攻撃を軽々とかわし、腕のスラッシ
ュハーケンで次々と撃破し、MVSで機体を両断する。そして、肩に新たに装備さ
れた、ハドロンキャノンでベルクト隊を薙ぎ払う。
「よし、そろそろだな。殲滅しろ。」
 ジノは苦戦していると見せかけつつ、少しずつ包囲態勢を整えていた。
 そして、完全に包囲した時を頃合と見て、麾下の部隊に指示を出した。
「ステルスは確かにレーダーで捉えるのは難しいけどな。正攻法で運用して有
視界戦闘になったら、フロートユニット付のナイトメアには勝てないぜ。」
 ベルクトが性能を最大限に発揮するのは、レーダーで補足しにくいステルス
機の特徴を最大限に生かした奇襲である。
 その点を弁えて即応体制を整えて有視界戦闘に持ち込めば、勝機は充分に
あるとジノは判断していた。
 MVSを手にしたトリスタンが、周囲のベルクトを容赦なく餌食にしていき、麾
下の部隊もベルクトに機体の特性を生かす戦いをさせずに、容赦なく撃破して
いく。

「ええい!」
 千葉の駆る暁が、ウォードを撃破する。
「強い・・・。さすがにラウンズの直属部隊。」
 クローディアたちに攻め立てられる左翼を、千葉と朝比奈は懸命に支えてい
た。
「まずい、また新手だ。」
 朝比奈はブリタニア軍の新手を見て、舌打ちする。
 クローディア達は部隊を幾つかに分けて、ある程度戦わせたら後退させ他の
部隊を戦線に参加させて、戦っていた部隊は後方で補給を受けさせてから、再
び戦線に送る手で、EU軍前衛の左翼に確実に損害を与えていた。
「紅月達は!?」
「ランスロットと他のラウンズを相手にしている。でも向こうは攻め込まれてか
ら、大分損害を出している。このままじゃ・・・。」
 通信をしていると、ノネットの駆るパロミデスが、朝比奈の暁に迫る。
「ラウンズか!」
「指揮官はお前か?」
 パロミデスのショットランサーをかろうじて受け流して、朝比奈は空に一旦逃
れる。
「やるね。中々・・・。」
「次はかわしきれるかどうか・・・。」
 余裕の表情のノネットとは違い、朝比奈は額に汗が滲んでいた。

「左翼、崩れます!」
「右翼も被害は甚大です。敵先陣は左右両翼と連動し、さらに進みます。この
ままでは右翼が分断され、各個撃破されます!」
「ベルクト隊、壊滅!」
「前衛も支えきれません!!」
「後備えを出せ!!敵軍を押し戻して戦線を再構築する!」
『ここで押しもどせなければ、壊走しかない。後退する為にも、戦線の再構築
は必要だ・・・。』
 焦る自分を必死に落ち着かせながら、シャルンホルストは指示を出す。
「全軍に伝達。最悪の場合、オペレーションΩに基づき行動せよ。と。」
「閣下・・・。」
「デューラー、この戦いで敗れようとも、まだ挽回の余地はある。その為の策
だ。」
「パリより入電。EU決議第223号可決されました。」
 オペレーターの報告に、シャルンホルストは静かに頷いた。
「そうか、これで策を実行に移せる。」
「右翼、分断されます。その後、敵は前衛の背後を突こうとしています。」
「右翼、残存部隊。オペレーションΩに基づき、壊走を始めます。」
「黒の騎士団、なおも戦闘中。枢木の部隊の遊撃部隊と思われる、部隊と交
戦中の模様。」

「貴公に問う!その槍さばき、何ゆえ日本の槍術に似るか!?」
 藤堂はエリファレットの前に、劣勢に追い込まれていた。
 斬月はあちこちの装甲が削られて、左足のランドスピナーを貫通されている。
「答えよう。彼の地で学んだが故。これ以上の話、この場では無用!」
 エクターがMVPで斬りかかろうとする。
「藤堂将軍、逃げてください!」
 集まってきた暁が、エクターに攻撃する。
「包囲してしまえばシールドなんて。何!?」
 エクターは無傷だった。
「追加されたのは、ハドロン砲だけではなくてね。」
 すでに全軍に装備されていた、反応型ブレイズルミナスに代わり、エリファ
レットは、エクターに機体の全周囲に展開するブレイズルミナスを装備してい
た。
「ならば、刺し違えてでも!」
「無駄だよ・・・。」

「この!!」
 輻射波動弾を放つが、急接近したランスロットの蹴りをもろに喰らい、紅蓮は
弾き飛ばされ、頭部が吹き飛ぶ。
 ランスロットの脚部に追加装備されたブレイズルミナスを利用して、頭部を切
り落としたのである。
「まだまだ、こんなところで負けられない!!」
 特斬刀を強化した、特斬制動刀でランスロットに斬りかかる。
「無駄だと言っている・・・。」
 機体をそらして軽くかわし、逆に紅蓮の左腕を斬り裂く。
『カレン。君は剣術を知らなすぎる。それでは僕には勝てない。』
「枢木卿、敵右翼を切り離しました。現在壊走中。」
 ヴァレーリアから通信が入る。
「よし、前衛部隊の後背を突け。ヴァインベルグ卿は?」
「ベルクト隊を撃破。」
「ヴァインベルグ卿に連絡。そのまま、敵右翼残存部隊を追撃。必要であれば、
後備えのモーゼス卿の軍も参戦させろ。判断は任せる。」
「イエス、マイロード。」

「まだ、右腕が。輻射波動がある!!」
 カレンは片腕のみになった紅蓮を駆り、輻射波動でランスロットを撃破しようと
する。
「無駄だと言っている。」
 後退して、かわす。
「かかった!!」
 右腕の一部が、スラッシュハーケンのように射出される。
 徹甲砲撃右腕部には射出機構が備えられており、アウトレンジの敵に奇襲を
かけることが出来る。
「そんな子供だましは、僕には通じない。」
 ランスロットの腰部のスラッシュハーケンが発射され、射出された右腕を弾き
飛ばす。
 接近して、紅蓮を両断しようとするが、カレンは咄嗟の判断で後退する。
 しかし、装甲はランスロットの剣の軌跡にそって切り裂かれていた。
「そろそろ終わりだ。」
 ランスロットが紅蓮に迫るが、暁が数騎立ち塞がる。
「行くぞ!!六角吶喊陣!!」
 6騎の暁が一斉にランスロットを囲もうとする。
「遅い・・・。」
 エナジーウィングでさらに高い機動性を得たランスロットは、すぐさま全て
の暁を撃破する。
「紅月隊長・・・。逃げて・・・。」
 囲もうとした暁の最後の1騎に乗っていた、黒の騎士団のパイロットがカレン
に通信を入れた。
「黒の騎士団、全軍に告げる。オペレーションΩに基づき行動せよ!」
 斬月の藤堂が、指示を出す。
「了解・・・。」
 ランスロットに立ち塞がった最後の暁が、爆散した時にカレンは後退する。

「敵軍、壊走していきます。」
「本陣も、後退していきます。」
 カムランのオペレーターの報告が相次ぐ。
「殿下、敵本陣を叩かれますか?」
「いや、それには陣形を再編する必要がある。だが、その間に追撃が不可能に
なるだろう。この戦い。我が軍の勝利だ。それでいい。」
『それに、彼には逃げてもらうほうが、都合がいい・・・。』
 小さな笑みを浮かべながら、シュナイゼルはそう考えていた。
『それにしても、必要とはいえ下手な戦をしてしまったよ。』

「では、良いのだな?ナナリー。」
「はい。私は、異存も不満もありません。」
「解った。では、先程の話どおりにするとしよう。」
 シャルルは、ナナリーとの通信を終える。
 その足で、アーカーシャの剣へと向かう。
 しばらくすると、侍従が来る。
「陛下。スペイン州での戦闘が終了いたしました。」
「勝ったか?」
「はっ。枢木卿が敵側面から奇襲をかけたのを切欠に、敵軍は戦線が崩壊。E
U軍は壊走いたしました。尚、例の物も封印が解けている事、確認いたしまし
た。」
「ご苦労。下がってよい。」
 侍従が恭しく下がる。
 シャルルは執務室に戻ると、祝勝パーティーの用意を言い渡した。

 EU軍に勝利した後、スザクはジノ達と共に、シュナイゼルの旗艦カムラン
を訪れていた。
「さすがだね。枢木卿。君がはせ参じてからあっという間に戦局が変わったよ。
イギリス州攻略の手並みといい、実に見事だ。それにしても大胆で壮大な戦略
を立てたものだ。お蔭で我が軍はスペイン州だけでなく、イギリス州をも手中
に収める事が出来た。ヴァインベルグ卿、ナイチンゲール卿もご苦労だった。」
「恐縮です。殿下。」
 スザクが恭しく礼をする。
「間もなく、本国から条約調印の使節がくる。それが終われば、本国へ凱旋
だ。勲一等は間違いなく君だろう。」
「まさか、そのような事が・・・。」
「枢木卿。どの面から見ても、此度の戦いで最も功績を挙げたのは、貴公だ。
胸を張れ。まったく、そういう部分は変わらぬな。」
 コーネリアが微笑して、スザクに言う。

EU軍はフランス国境周辺で、集結していた。
「損害は、全軍のほぼ6割に及びます。」
「大敗か・・・。」
 デューラーから報告を聞きながら、シャルンホルストは溜息をついた。
 スペイン州での戦いが始まる時、EU軍は37個師団を数えた。
 計算上、22個師団を失った結果になる。
 ブリタニア軍は、当初の戦力は40個師団。途中からコーネリア、スザクの
部隊が加わり、約66個師団となる。
 その内、損害は4個師団と2個連隊である。
「黒の騎士団はどうか?」
「現在、藤堂司令官がこられます。」
 話しているうちに、藤堂が来た。
「軍の集結は完了したようですな。こちらもどうにか残存戦力を纏め上げまし
た。」
 黒の騎士団は当初8個大隊を数えていたが、半数を失っていた。
 特に、左翼の救援に向かった千葉と朝比奈の隊の損害は大きく、朝比奈も重
症とまではいかなくとも、暫く療養が必要だった。
 藤堂とカレンは負傷とまではいかなかったが、紅蓮は頭部と左腕を失い、あ
ちこち損傷していた。
「お互い、どうにか生き延びましな。ヘル藤堂。」
「そうですな。しばらくはブリタニア軍も攻めては来ますまい。その間に軍の建
て直しを出来ましょう。」
 藤堂の言葉に、シャルンホルストは頷く。
「デューラー、人払いを。君もだ。2人だけで話がしたいのでな。」
 そう言われて、デューラーは部屋を出る。
「ヘルトウドウ、貴方方は一旦ここを離れていただきたい。その際、亡命を希
望するスペイン州軍の兵を引きつれて。」
「彼らを鍛えろと?」
「そうです。それを持って黒の騎士団の、兵員の補充をしていただきたい。既
に話はついています。また、これは彼らの意思です。来るべき戦いに備えて。」
 シャルンホルストは、自分の策を話す。
「お話は良く解りました。しかし、そううまく、ことが運びますかな?」
「既に、政府から承認を得ています。それを受けて、中華連邦との話し合いも
始まります。それにこのままでは、いずれ中華連邦にもブリタニア軍が侵攻す
る。これまで以上の大兵力で。その時は、シュナイゼルも今回のような戦いは
しますまい。」
「シュナイゼルが、手を抜いていたと?」
「そこまでいくかは解りませんが、私の知るシュナイゼルの戦い方ではありま
せんな。向こうは向こうで、スペイン州を落とす以外に何か狙いがあったのか
もしれません。もし、この仮説が正しければ、残りのEU軍を全て纏めても、
また中華連邦一国だけでも、やがて滅ぼされるでしょう。一致団結しなくては、
勝てますまい。まして、敵にはあの「白き死神」がいる。あれが現れた途端、
形勢が一気に逆転した。それを計算に入れて戦っていたのだろう。それを考え
ると、その時に備えて、中華連邦との連携が欠かせない。その際、交渉の助け
になってもらえればありがたい。聞けば、禁軍を率いる黎星刻殿とは親しいそ
うですな。その縁を利用して、貴方からも説得に当たっていただきたい。」
 藤堂はしばらく考えていた。
「解りました。どこまでやれるか解りませんが。やってみましょう。」
「ありがたい。ご苦労をお掛けする。」
 2人は硬く握手をした。
 そして、黒の騎士団は残存兵力と、亡命を希望するスペイン州軍の兵と共に、
インド軍区へ帰って行った。

 3日後、ブリタニア、スペイン州の間に、講和条約として「マドリード条約」が
締結され、スペイン州はEUを離脱した。
 条約締結と駐屯軍の配備を確認したシュナイゼル達は、軍を率いて帝都ネオ
ウェルズに凱旋した。

「皆の者。今回の戦い、誠に大儀であった。今宵は存分に楽しむが良い。」
 シャルルが臨席して、戦勝祝賀パーティーが開かれた。
「よっ、スザク。楽しんでいるか?」
 シャンパングラスを片手に、ジノがスザクに声を掛ける。
「うん。今回は大変だったからね。喜びもひとしおだよ。」
 シャンパンを一口飲んで、スザクは笑顔で答える。
「そうだ。ナナリー総督もいらっしゃるんだよな。挨拶ぐらいしてこいよ。」
「後でね。じゃあ。」
 そう言って、スザクはテラスに出る。
「ジノ、スザクはどうした?」
「これはヴァルトシュタイン卿。今、テラスに行きましたよ。」
「ふむ。また何やら、考え事か?」
「かもしれません。」
「ふむ。」
 シャンパンを一息に飲んだビスマルクは、新しいグラスを2人分持ってテラ
スに行った。
「ジノ。上手そうな料理を見繕っておいてくれ。連れてくる。」
 そう言って、スザクの元に行った。

『今回の戦いは、こちらの勝ち。EU軍は撤退した。だが、これでEUとの戦
いは本当に、終わるのだろうか?』
 スザクは、戦場に到着した際に、EU軍が流形の陣を敷いていた事が、頭に
引っ掛かっていた。
『EUといっても、諸国の連合体。現在でこそ、フランス州に首都がおかれて
いるけど、別に何所の州でも首都はおける。まして、ポルトガル州、イギリス
州、そしてスペイン州がEUから離脱したとなれば、却って危険だ。他の地に
移すほうがよほどいいはず。何所におく?』
 スザクはEUが首都を移す可能性。その際に首都を置く地を考えていた。

「こんなところで、何をしている?せっかくのパーティーだ。皇帝陛下もご臨席
なさっている。少しは楽しめ。」
「ヴァルトシュタイン卿。いえ、自分は充分に楽しみました。これからの事を考
えたいと思いまして・・・。」
「EUの今後の動向か?まあ、私とて気にしていないわけではない。だが、今
宵は頭から追い出し、楽しめ。ある意味、主役はお前だ。」
「しかし、あくまで遠征軍の総指揮を取られたのは、シュナイゼル殿下。何故、
自分が主役なのでしょうか?」
「来れば解る。」
 スザクに新しいシャンパンのグラスを渡し、自分も持って中に入る。
 スザクも後を追った。

「枢木卿、何所へ行っていたのですか?探しましたよ。」
 ナナリーがスザクのところに、車椅子を移動させて来る。
「お久しゅうございます。ナナリー殿下。」
 ヴァルトシュタインが、恭しく膝を突く。
「その声は・・・。ヴァルトシュタイン卿ですね。お元気でしたか。」
「はっ。ナナリー殿下がご立派に成長なさった事、とても嬉しく思います。」
 ビスマルクは、幼き日のナナリーの子守をした事もあり、ナナリーもその事
を良く覚えていた。
 その時、シャッター音が聞こえる。
「アーニャ、ご苦労様。留守中、何かあったかい?」
「何もなかった。退屈だった・・・。」
「そう。なら、いいんだ。戻っても、しばらく総督のお傍に居て欲しい。」
「総督の騎士の代わり?」
「まあ、そうだね。」
 話していると、シャルルが立ち上がる。

「さて、今回の戦いにおいては我が騎士たる、ナイトオブセブン枢木スザクの
働きが大きかった事は、周知の事と思う。その功に対し、余は褒美を与える。
ベアトリス。」
「はっ。」
 ベアトリスが書類を読み上げる。
「此度の功績により、枢木スザクに、アルウィン勲章を授与する。また、大将
に任じ爵位を侯爵とする。」
 パーティー会場がどよめく。
 アルウィン勲章は、ブリタニア帝国で授与される勲章の中でも、最高の物で
ある。
 故に、この勲章を授与される時は昇進する事が、慣習となっている。
 しかし、ナンバーズが授与される事自体が前代未聞である。
 まして、爵位が侯爵となれば、皇族に準ずる貴族と言える。
 中には、認めぬ人間も大勢居るだろう。
 実際、ギネヴィアやカリーヌはシャルルの手前、露骨な表情はしていないが、
不快そうな顔をしている。
「枢木。前に出よ。」
「イエス、ユア・マジェスティ。」
 スザクが前に出て、その胸にシャルルがアルウィン勲章をつける。
「今後も、余に忠誠を誓い、励め。」
「はっ。我が剣と、陛下への誓いにかけて必ず・・・。」
 シャルルが小さく頷く。
「さて、もう一つ発表がある。ナナリー。」
「はい。」
 ナナリーがシャルルの元に来る。

「我が娘で第87位皇位継承者たる、ナナリー・ヴィ・ブリタニアを、余は枢木
スザクに嫁がせる事に決めた。婚儀は誕生日である、10月25日とする。」
 この発表は、帝国だけでなく。EUや中華連邦をも驚かせることとなった。

「枢木スザクが、皇女を妻とするか・・・。」
 既に、インド軍区に戻った藤堂と、上海のホテルで会談をしていた星刻は、
ディートハルトのもたらした情報から知った。
「確かに、スペイン州での戦いの功績は彼が最も大きいが、それだけが理由で
はあるまい。」
 藤堂が腕を組みながら言う。
「おそらく、より皇族に近い身分にする事が狙いだ。枢木スザクは皇帝に対す
る忠誠心篤い騎士である事は間違いないだろうからな。これで、皇帝を裏切る
可能性はもはやマイナス領域か・・・。ラウンズは筆頭たるナイトオブワンを除け
ば、序列は無いとはいえ、今回の功績による勲章と昇進を考えれば、実質的に
は次席。加えて、直属部隊だけでも10個師団。さらに日本に駐留している22
個師団も指揮下に収めている。臣下の中では最大の軍事力を持つ武人。」
「ですが、それは諸刃の剣でもありましょう。連邦エリア設立によって、日本
人はブリタニア人と同等の権利を有するに至ったとは言え、所詮ナンバーズと
見る風潮は強い。今回の結婚で却ってブリタニアは中に火種を作ったともいえ
ます。」
 ディートハルトが意見を言う。
「確かに。不満を持つ貴族や軍人が徒党を組み、何かしないとは限るまい。」
「そうだな。少しブリタニアは騒がしくなるかもしれん。その分、EUは時間
が与えられる。それは我が国とてそうだがな。ロシア州の件、明日、天子様も
ご臨席なさる。いずれ、我が国もブリタニアと戦う事になろう。その時に備え
てな・・・。」
「では、私もその時に備えて、黒の騎士団の再建に取り掛かろう。星刻殿、亡
命の件、心から感謝する。」
「何、気にするな。こちらとしても戦力が増えるのはありがたいからな。」
「では、期待に答えるよう努力しよう。天子様によろしくお伝えしておいてく
れ。」
 藤堂はディートハルトと共に、部屋を出た。

「香凛、今度の戦いで枢木スザクをどう見た?」
「正直、恐ろしい男としか言いようがありません。スペイン州だけでなく、イギリ
ス州まで手中に収める戦略を立て、自らはイギリス州を攻略し、さらにEU軍の
側面を突いて、崩壊の切欠を作ったのですから。」
 香凛の感想を聞きながら、星刻も頷いた。
「直属軍も、相当に鍛え上げているな。まともにぶつかれば、私とてどうなる
か・・・。」
 星刻が突如咳き込む。口を押さえた手からは血が零れ落ちた。
「星刻様!」
「心配するな。まだ、暫くはもつ。」
 薬を服用して、星刻はソファーに座る。
「星刻様。ブリタニアとの戦いでは、後方で総指揮をお取りになってください。
前線での指揮は、私にお任せくださいますよう。」
 星刻の病気は、全身の動脈が壊死性の血管炎を起こし、酷い時には心臓や
肺などの臓器にも影響を与える。
 重度のチャーグ・ストラウス症候群。
 それが、星刻の体を蝕む病である。
 星刻の病状は、臓器がかなり影響を受けており、時折こうして吐血する。
「枢木スザクが前線に出てくるだろう。そうなれば、私と神虎が相手をする以
外あるまい。紅蓮でさえ軽くあしらわれたのだからな。」
 紅蓮の損傷を見たラクシャータは、よく生きて帰ってこれたと、カレンに言
った。
「しかし、強化された神虎は、さらに星刻様のお体に負担をかけます。今の状
態で前線に出れば、星刻様は・・・。」
 神虎は、朱剣の変の後、ラクシャータによって改修されてさらに性能が向上
していた。
「ランスロットも改修されている。ドウ・シーでは手も足も出まい。だからこそ、私
が出る必要がある。」
 星刻の決意が固い事を感じた香凛は、何も言えなくなった。

 スザク達ラウンズは、本国で集まる部屋にいた。
「それにしても、見事と言うか、大胆と言うか・・・。」
 スザクの今回の戦略の感想をノネットが、ワインを飲みながら言う。
「陛下がイギリス州を取れないかと仰られただろう?それで、自分ならこうす
るという考えを、言ったに過ぎないよ。」
 スザクが苦笑しながら、ワインを飲む。
「それにしても、大胆な手を思いついたよな。俺ならああいうことは考えない
よ。」
「まあ、確かに。」
 ジノの言葉に、エリファレットも頷く。
「見た目はまじめなのに、やる事は大胆よね。中東でもそうだったけど。」
 スザクを見ながら、クローディアがくすりと笑う。
「ところで、どうするつもり?スザク。」
 アーニャがブログの更新をしながら、スザクに尋ねる。
「どうするとは、どういうことだい?アーニャ。」
 そういったスザクを正面から見ながら、ビスマルクが話しかける。
「決まっているだろう。ナナリー殿下との結婚の事だ。」
 それを聞くと、スザクは視線を外す。
「臣下にあるまじき行為と重々承知しておりますが、陛下に思いとどまってい
ただくつもりです。アルウィン勲章授与に伴っての大将昇進だけでも、宮中が
騒がしくなるかもしれません。この上、自分が皇女殿下と結婚するなどという
事になれば、陛下の身辺が危うくなります。」
「しかし、陛下がもうお決めになった事だ。ナナリー殿下も承諾なされている。
いまさら、白紙に戻ると思うか?それが解らぬお前でもあるまい。」
「しかし・・・。」
「まあ、ヴァルトシュタイン卿。スザクも突然の事ですので戸惑っているので
す。婚儀までまだ9ヶ月あります。その間に心の整理もつきましょう。スザク、
とにかく、少し前向きに考えてみろ。お前だけではない、ナナリー殿下にとっ
ても良い事とも言えるからな。」
 ノネットがそう言っても、スザクは表情を変えなかった。

「つくづくやってくれるね。父上は・・・。」
 ライブラの離宮のテラスで白ワインを飲みながら、シュナイゼルは珍しく苦
い表情をしている。
「連邦エリア設立の際といい、殿下のなさろうとなさる事を先に実行されてし
まいましたから・・・。」
 カノンの言葉を聞きながら、シュナイゼルは決断を下した。
「EU攻略を早めよう。もっとも、向こうも色々と手を打ってくるはずだが、
予測はついている。中華連邦を巻き込むことが出来れば、こちらにも自ずと
機会はあるだろう。」
「計画を前倒しなさるのですね。」
「そういう事だ。これから起きるであろう、騒動も利用させてもらう。フォート
デトリックも必要になるかもしれない。準備をさせておいてくれ。」
「承知いたしました。」
 カノンが去る。
『さて、機会が来れば君には選択の時が来る。もし、私の手を跳ね除けるの
ならば、その時は・・・。』
 凄みのある表情で、シュナイゼルは白ワインを飲み干す。

「失礼いたします。閣下、ロシア州の申し出に関して、中華連邦は天子が臨席
する会議で、検討するという報告が入りました。」
「そうか。ご苦労だった。」
 報告を終えてデューラーが退出した後、シャルンホルストは世界地図を見な
がら、今後の戦略をさらに練っていた。
「後は、中華連邦が動けば、前提条件は全て整う。動いて欲しい物だ。まあ、
最低、ブリタニアと手を組まなければ、それでも充分ではあるが・・・。」
 皇暦2019年1月。世界を覆う戦雲は、今だ晴れる気配はなかった。

後書き
EUとの戦いは、ブリタニア軍の勝利に終わりました。
圧勝に見えますが、スザク達が来るまでの損害を見ると、決して誇れる勝利で
はありません。
軍事の世界では、犠牲が全軍の1割を超えると、誇れる勝利ではないと言いま
す。
シュナイゼルは3個師団と2個連隊の犠牲を出しています。
当初の兵力が、40個師団ですからもうすぐ1割に達するところまで来てていた
のです。
シュナイゼルがあえて、思考に柔軟性が無い将軍を先陣にしたことも原因です
が、シャルンホルストの指揮能力も原因ではあったのです。
そのシャルンホルストも、中華連邦に接触して、再戦の準備もしています。
ブリタニア側では、スザクの昇進とナナリーの結婚が発表された事が、何やら
不穏な動きがある様子。
そして、シュナイゼルも水面下で、さらに激しく動いています。
しかし、これからの世界情勢に大きな影響を与える中華連邦では、星刻は重い
病に、体を蝕まれています。
これからの星刻の戦いは、文字通り命を懸けた戦いになるでしょう。

次回AFTER TURN17 戦と 戦の 間
黒の騎士団、中華連邦、ブリタニア。
EU戦線が膠着している間の、双方の情勢がメインになります。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
星天祭り用
わたしは、すきです ...続きを見る
金属中毒
2008/09/25 21:00

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
アップされている!と知って飛んで参りました。
星刻 そう来ましたか。うーん、公式の症状からしてむしろcic様の設定の方が正しい気がしてきました。うちは、『自分の体が自分の身体を壊していく』。自分の状態を「まるでわが国そのものだ」と自嘲させたかったので。
さて、皇帝陛下はスザクの意思は無視ですか。ナナリーはいいと言っているから問題なしとはいえ。
この話を聞いたときのルルーシュの反応がとても楽しみです。
ブリタニアは世界の3分の1を占める大国・・・逆から見れば、まだ6割以上残っている。そのうちの一番大物が中華。
中華も星刻と並び立てる指導者がいないのが最大の悩みですね。軍を率いて遠征すれば国内が乱れる。幼い天子に象徴以上の期待は持てないし。
さりとてうかつな人物に国内を任すわけにも、大宦官たちの2の舞になりかねない。

ふと気になるのがもし星刻がブリタニアでなら、治療できる・・・そういう可能性が出てきたとき、天子様が早まって。
そんなことになったら星刻、生きるも許されず、死ぬも許されずになってしまう。
それでは無理の無い範囲での次回アップをお待ち申しております。

2008/09/25 20:59
凪さん。
コメントありがとうございます。

>自分の状態を「まるでわが国そのものだ」と
自嘲させたかったので。
中々、強烈な事を考えいらっしゃったんです
ね。
個人的には、大宦官が当時の中華連邦の象徴
に見えたんですよね。

>この話を聞いたときのルルーシュの反応がと
ても楽しみです。
ルルーシュは、登場予定です。
但し、死んでいるので現世ではありません。
この結婚には、シャルルのある思惑がありま
す。

>中華も星刻と並び立てる指導者がいないの
が最大の悩みですね。
次のお話で、中華連邦の上層部の現状が書か
れます。
宰相が頑張っていますけど、笑えない状態で
す。
CIC担当
2008/09/28 16:13

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