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zoom RSS コードギアス二次小説 AFTER TURN12 開戦 の 前

<<   作成日時 : 2008/08/27 00:22   >>

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「以上が、自治政府首脳との会議の結果になります。今のところ、内政は安定
しています。自衛軍の規模は総数5個師団。こちらで内密に調べさせましたが、
これを超える軍事力の整備は確認されておりません。」
 スザクが、ナナリーも臨席する会議で、昨日の会議の結果を報告する。
「財政状況は如何でしょうか?医療福祉や教育に、充分な予算が配分されてい
なくては、やがて不満となりましょう。」
 文官を取りまとめる、イグナーツ・シュンペーター博士がスザクに質問をす
る。
「それについては、問題ない。保持している軍備は極東事変前の半分に過ぎな
い。余剰の半分が、我が軍の駐留費として支払われている。財政状況は、8年
前までとさして変わっていない。」
 日本が、ブリタニアの属僚となる切欠となった極東事変前、日本の軍事費は、
GDPの1%程度であった。それでも、ブリタニアを除けば、世界有数の軍事
力を誇る国であった。そういった側面を持ちつつも、国内経済が安定していた
のは、世界有数の経済大国であったからである。現在、各国の軍事費がGDP
に占める割合は2〜4%程度である。日本は嘗ての軍事費の半分をブリタニア
軍の駐留費に支払いその上で税が徴収されても、経済的に困窮するという事は
無かった。
「治安の方はどうでしょうか。民間のブリアニア人や警察官、軍人が、日本人
に乱暴な事をしたり、不公平な事をしていたりはしませんか?」
 ナナリーが心配そうに、口を開いた。
 ナナリーが知っているエリア11の警察や軍は、名誉ブリタニア人やイレブ
ンに不当な捜査をしたり、無実の罪を着せたりする事も少なくなかった。実際
クロヴィスが暗殺された時も、罪をでっち上げ、スザクは処刑される寸前まで
いったのだ。
 もし、そのままの状況が続いていたなら、ブリタニア人と同等の権利が与え
られる連邦エリア制に対する信頼は無くなり、内乱となる可能性がある。
 一年前の黒の騎士団による反乱、“ブラックリベリオン”のように。
 ナナリーはそれを危惧していた。
「連邦エリア日本が設立されてから、日も浅いので、警察機関に完全にないと
は言い切れません。日本人にもブリタニア人を良く思っていない人間もいます
から、それによる諍いもあります。司法機関に対しては査察機関によって、ほ
とんどが摘発され違反者は厳しく罰せされております。軍のほうでは地方にそ
れが見受けられますが、自分が視察をしてから激減しました。また、憲兵に監
視を厳しくするように、命令をしております。」
 スザクはラウンズの中でも、民間人に対する略奪暴行を最も固く禁じている。
 事実、アフリカ戦線では、通達を破って現地の女性の金品を強奪した挙句に、
暴行を加えた騎士の首を、その場で斬り飛ばした事もある。
 その事はブリタニア軍でも知られており、視察の効果は覿面であった。
「では、そのままの体制を維持してください。治安維持や司法においては、ブ
リタニア人にも日本人にも、公正でなければなりません。それと、日本人の司
法機関への採用の件はどうなっていますか?」

「正直、中々うまくいっていません。以前に警察官や裁判官、弁護士等の職務
についていた者が思ったよりも少なく、どうしてもブリアニア人が多くなって
しまいます。」
 現在、ナナリーの指示で総督府は警察や裁判所等の司法機関においての、
日本人の採用を進めていた。ブリタニア軍が駐留しているので、自衛軍のほう
は焦眉の急というわけではなかったが、治安を維持する警察等の司法機関は、
出来る限り早く、日本人に任せた方が対外的にも良いと言う判断からその為の
作業を進めてきたが、極東事変から8年の間に、予想以上に職務の経験者が
少なくなっており、うまくいっていなかった。
「警察学校、大学の法学部、司法研修所等での人材の養成に、力を入れるよう
に言い渡してはいかがでしょうか?」
「しかし、言い方を考えなければ、自治政府が自治の権限を奪われるという不
安に取りつかれかねんぞ。まだ連邦エリアが設立されて、2ヶ月も経っておら
んのだからな。」
 文官たちが、議論を始める。
「とにかく、そちらは息の長い作業になる。旧日本での警察学校の教育機関は、
最終学歴によって異なるが、およそ1年。警察の人間が、全て日本人になるま
で3、4年はかかるだろう。」
 スザクの言葉に、全員が納得した。

「枢木副総督。次回の自治政府との会議は1週間後でしたね?」
「はっ。左様でございますが、それが何か?」
「その際に、司法機関の件に関して、私から直接申し入れます。」
「総督自らでございますか。」
 スザクを始め、皆が驚いた。
「そうです。総督である私自ら申し入れれば、司法機関は出来る限り早く日本
人の手に完全に委ねるという、総督府の姿勢を示すのには良いと考えます。そ
の前に事前に親書をお出ししましょう。そうすれば、相手も不安に思う事はな
いと思いますから。」
「確かに、相手に礼を尽くせば、不安に思う事はないでしょうが・・・。」
 出席者達が、互いに話し始める。表情から、あまり好意的には見ていないよ
うであるのが解る。
 日本は基本的には日本人の自治だが、監督権は総督府にある。
 その頂点の地位にある総督が、親書を出した上での会議に出席すると言う形
は、第三者的に問題がある。
 武官も、文官も、そう見ていた。

「副総督は、どう思われますか?」
 考え込むスザクに、ナナリーが問いかける。
「総督が、そうお決めになられるのであれば、自分は従うだけです。後は、我
らにお任せ下さり、親書の方をお願いいたします。」
「解りました。」
 その後、いくつかの議題が話し合われて、会議は終了した。

 執務室に戻ったスザクは、疲労を覚えてデスクの椅子に深く腰掛けため息を
ついた。
「副総督。少し、お休みになられた方が。」
 ラウンズの部隊拡張の後、シャルルの命によってヴァルキュリエ隊と呼ばれ
る、ラウンズの親衛隊が編成されていた。
 その中の一つでスザクの親衛隊、ゲレヒティヒカイト・ヴァルキュリエ隊の隊
長である、ヴァレンティーネ・ツヴァイクが心配して、スザクに休息を勧める。
「ありがとう。けれど、そうもいかないよ。片付けなければならない仕事が、
まだあるからね。クープラン、ちょっと。」
 C.C.を呼んで、指示を出す。

「どうだった?副総督は。」
「かなり、お疲れのようです。お休みになるよう、お勧めしたのですが。」
「そうか・・・。」
 ヴァレーリアが腕を組んで、考え込んだ。

 連邦エリア設立前からスザクは多忙を極めていたが、設立後も変わらず多忙
を極めていた。
 文官達も良くやってくれているが、ナナリーが政治に素人であるのにも加え、
極東事変以降の、日本人達のレジスタンスとしての活動が、日本の自治に必
要な人材を多く死なせる結果になっていた為に、スザクも思うように事を進めな
いでいるのが原因である。
 これは自治政府も同じ事で、本当に自分達の自治が完全に実現するのか、
当初は懐疑的だったために、スザクは幾度も総督府の人間と会議を重ね、対
応策を講じなければならず、その間に、駐留軍総司令官としての責務も重なり、
休暇をとる暇などほとんど無かったのである。

「では、次の会議の資料はこのような形で、作成すればよろしいのですね。」
「頼む。自分はこれから、シュンペーター博士と話し合いをしてくるから、後
を頼む。」
 そう言って、スザクは会議室の一つに向かう。
 それを横目で見ながら、C.C.は資料の作成を始める。
「全く、この私を部下として使い、あまつさえ敬語で話させるなど、お前でもし
なかった事だぞ。ルルーシュ、まさかこれが目的でこの地に来させたわけで
はないだろうな。」
 キーボードを叩きながら、C.C.はルルーシュに愚痴をこぼす。
「何?散々、ピザを食べまくったのだから、これぐらいの労働はするべきだと?
あのピザは、お前への協力の対価だ。あれでも足りないぐらいだぞ。」
 ルルーシュの冷笑交じりの意見に、C.C.が反論している内に、別の人物
が意見を言ってきた。
「解った、解った。解ったよ、マリアンヌ。親子揃って言うな。ところで、どうする
つもりだ?あの様子では、お前の策を私が代わりに述べても、スザクは聞く耳
を持たんぞ。それでは、来た意味が無い。どうするつもりだ?言っておくが、私
ではどうにもならんぞ。神根島に行けばどうにかなるかもしれんが・・・。行く口
実が無いからな。」
 話しつつも、手は休めずにC.C.は資料作成を進めていた。

「お勤めご苦労さん。」
 休憩室ではジノとアーニャがいた。
「本当に疲れたよ。」
 ソファに座り、従卒にたっぷりクリームと砂糖を入れたコーヒーを持ってくるよう
に言う。
「冗談抜きで、少しは休めよ。その調子だとほとんど休んでないだろう。」
 ジノが真剣な顔をして言う。
「休めるのなら休みたい。でも、そういうわけにもいかないよ。」
「それは解る。けど、これからの事を考えると、やはり休むべきだ。さっきエリファ
レットから連絡が入ってきたけどな、本国で大規模な遠征軍の編成の準備に入
りつつあるらしい。」
「開戦かい?」
 ジノの話を聞いて、スザクの表情が鋭くなる。
「まだそこまでは解らないけどな。多分、あるだろうとエリファレットは見てい
る。」
 そういっている間に、休憩室にある端末から呼び出し音が鳴る。
「どうした?」
「お寛ぎのところ、申し訳ありません。ナイトオブイレブン、アンジェリーヌ・ベル
リオーズ卿から、通信が入っております。」
「繋いでくれ。」
 そう言うと、アンジェリーヌの顔が端末に映る。
「スザク。お元気ですか?いえ、お元気ではないようですわね・・・。」
「久しぶりだね。アンジェリーヌ。ちょっと、忙しくてね。で、どうしたんだい。今は
ポルトガルにいるはずの君が、通信なんて珍しいね。」
「え、まあ、そうなんですが・・・。ちょっと、気になる事を耳にしまして、これは本
国にも伝えたのですが、EU軍の総司令官にシャルンホルストが就任したそう
なんです。」
「何?」
 ジノやアーニャの表情にも、鋭さが増す。

 ラウンズや高級軍人の中で、シャルンホルストの名前を知らぬ者はいない。
北アフリカのエルアラメイン戦線で、ブリタニア軍を退け続けたのは彼だから
である。その後、本国の意向でドイツ州軍の総参謀長に就任し、北アフリカを
離れた際に、試験運用中のドーチェスター隊を駆り、要衝アレキサンドリアを
落としたのは、ラウンズになる前のエリファレットであった。
「そりゃ、かなり笑えないな・・・。確かなのか?アンジェリーヌ。」
 ジノが確認をする。
「はい。9割方。」
「やれやれ・・・。」
 シャルンホルストが総参謀長に就任してから、ドイツ州軍全体のレベルが上
がった事をジノも感じていた為、苦い表情になる。
「他に、何かEU軍に動きは・・・?」
「未確認情報ですが、EU軍全体の動きが慌しくなってきているようです。」
 それを聞いて、スザクは腕を組んだ。
『と、なると。やはり開戦か・・・。しかし、時期が悪すぎる・・・。』
 日本の副総督として、総督のナナリーを助けながらの自治の監督や、日本に
駐留する、総数64万のブリタニア軍を統率し、中華連邦に備える重責を担って
いるスザクとしては、日本の安定が磐石となるまでEUとの戦いは起きて欲しく
なかった。

「そう難しい顔するなって。別に俺達に出撃命令が下ったわけじゃないんだか
らさ。それに、他の地域に駐留している軍だって、無能じゃない。俺達にお呼
びがかからない内に、戦いは終わっている可能性だってあるだろう?」
 ジノがスザクを励ますように、肩を叩く。
「そうですね。仮に、私達ラウンズの出番が来ても、ポルトガルには私がいま
すし、北アフリカには、ブランドリー卿とクルシェフスキー卿もいます。それで問
題はないでしょう。確かに、シャルンホルストは手強い相手ですが、我が軍の
総指揮を執るのはシュナイゼル殿下。遅れを取る事はないと思いますよ。」
「そうだね。僕が悲観的過ぎたかな。ありがとう、アンジェリーヌ。」
「どういたしまして、ところでスザク。」
「何だい?」
「変わりましたね。初めて貴方にあった頃は、とても冷徹な感じしかしません
でしたが、今は笑顔でいる。」
 アンジェリーヌは、嬉しそうな顔になる。
「いろいろあってね。それじゃ。」
「はい。」
 通信を切った。

「少し肩の力を抜けよ。開戦になったって、お前が行くとは限らないだろう。いざ
となれば、俺とアーニャが何とかしてやるよ。本国には、エリファレット達もい
る。」
 ジノがスザクを気遣うように言う。
「そうだね。皇帝陛下からのご命令が来てもいないのに、力んでいても仕方な
いか・・・。今は、日本の事を最優先に考えるとするよ。副総督として、やるべき
事をやる。」
 そう言って、執務室に戻ろうとする。
「スザク、今日はきちんと帰るの?」
 アーニャがスザクにそう聞く。
「どうかな。仮眠室もあるから、そこで寝ると思うけど。」
「今日は帰って、きちんと食べて、きちんと寝る。それが、貴方のやる事。」
 携帯でブログの記事を書きながら、アーニャはスザクに言った。
「失礼いたします。ナイトオブワン、ビスマルク・ヴァルトシュタイン卿から、
通信が入っております。」
「繋いでくれ。」
「今度は何だ?」
 ジノが呟いた。

「久しぶりだな。スザク。ふむ。随分と疲れているようだが、きちんと休んでいる
だろうな?」
「全然・・・。」
 スザクが答えようとすると、アーニャが変わりに答える。
「やはりな。執務を熱心にこなすのは立派だが、戦いに備えて体を休めるのも、
我らの仕事だぞ。多忙なのは理解しているが、きちんと休め。」
「はい。」
 ラウンズの中で唯一スザクが勝てない相手であり、ラウンズの筆頭であるビ
スマルクにそう言われては、スザクも聞かざるを得ない。
「とにかく、休んでおいてくれ。どうも、EUの動きが妙だ。ロシア州が独自に中
華連邦と接触したという情報が入っている。」
「EUではなくですか?確かに、EUの各州の総領事館が置かれていますが、
あくまで形式的な物。EUとしての申し入れは、EUの総領事からのはずです
が。」
「だから、妙だと言っている。シャルンホルストの策か、EUが分裂し始めている
のか。今はまだ判断がつきかねる。だからこそ、今後に備えて体調を万全にし
ておいて欲しい。」
「解りました。」
「うむ。それではな。」
 通信が切れる。

「どうも、妙な事になっているな・・・。」
 ジノが考え込みながら、言う。
「確かに、変・・・。」
 アーニャも不審に思う。
『分裂は充分にあり得る。だが、シャルンホルストが総司令官となったなら、貴
重な無傷のロシア州の軍を手放すとも思えない。と、すると・・・。』
 スザクの頭に一つ回答が浮かぶ。
「考えすぎだね。ぼくはちょっと執務をしてくるよ。」
 そう言って、スザクは執務室に戻る。
「ちゃんと、帰って、食って、寝ろよ。」
「解ってるよ。ジノ。」

 スザクが再び執務に戻った頃、ブリタニアでは会議が開かれていた。
「残念ではあるが、もはや開戦は避けられないだろう。EU軍は死力を尽くして
戦いに臨んでくるはず。これまでに無い、厳しい戦いになる事は間違いない。
皆、覚悟して欲しい。」
 イルバル宮の会議室で、出席している将軍達を見回してシュナイゼルが、開
戦の決意を述べる。
「「「「イエス、ユア・ハイネス。」」」」
 その声に頷きながら、軍の派遣や陣容について説明を始める。
「前衛は、アプソン、カラレス、バンヤンの3人の将軍に務めてもらう。事実
上の先陣だ。この先陣の戦いぶりが雌雄を決すると言っても過言ではない。敵
の守りは堅く、攻勢に転じた時の勢いも並々ならぬ物だろうが、それを粉砕し
てもらいたい。」
「先陣の栄誉を賜り、ありがたき幸せ。必ずやご期待に応えましょうぞ。」
 バンヤンが、そう宣言する。
「次に、中央及び左右。それに後衛の部隊についてだが・・・。」
 布陣が決定し、会議が終了する。

「よろしいのですか?あの3人に前衛を任せて。」
「構わないよ。掃除の必要もあるしね。」
 カノンが淹れたコーヒーの香りを楽しみながら、シュナイゼルは答える。
「確かに掃除は必要ですが、相手はあのシャルンホルスト。掃除が全軍崩壊の
切欠になる事も考えられます。やはり、フォートデトリックの彼らを前線に投入す
べきでは?幸い、実戦には耐えられますし。」
「いや、まだ早い。時期ではないよ。それに露見すれば、少々厄介な事になる。
今回はやめておこう。」
 コーヒーカップを手にしながら、シュナイゼルは執務室から外を眺める。
「とにかく、白の騎士を前線に出す必要がある。そうすれば、条件は整う。そ
うじゃないかい?カノン。」
「そうですわね。ですが、白の騎士をどう前線に出すつもりですか?」
「苦戦すればいい。そうすれば、自ずと出ざるを得なくなる。」
 微笑みながら、カノンに答える。

「うむ。さすがに実戦を経験しているだけはある。暁にも慣れたみたいだな。」
 ポルトガル州から亡命してきた、ナイトメアのパイロット達は最初こそ戸惑
ったものの、中華連邦のパイロットに比べて実戦経験も豊富で、1週間の訓練
の中で暁を見事に操縦して見せた。
 集団戦の演習においても、お荷物になる事もなく、藤堂を満足させた。
「大丈夫みたいですね。」
 扇が演習を見ながら、藤堂に話しかける。
「副司令か。輸送の手配は?」
「もう、ついています。問題ありませんよ。向こうから依頼が来れば、いつで
も出れます。」
 この1週間、斑鳩以外にナイトメアを運ぶ船を手配する為、扇は奔走してい
た。
「そうか。では、今日の演習が終わったら、皆を休ませるようにしよう。」
「それがいいですね。じゃ、念のための最後の確認がありますので。」
「ああ、頼む。」
 扇は、その場を去った。
「ディートハルト、副司令の様子をどう見る?どうもスリランカでの戦い以来、
おかしい気がするが・・・。」
「同感です。念のため、それとなく監視をさせていますが、今の所、裏切りや
サボタージュの類は無いようですな。」
「そうか、それならいい。」

「千草・・・。」
 スリランカでの戦いの一瞬の邂逅。
 立ち止まり、嘗て、共に暮らしていた一人のブリタニア人の名前を口にして、
扇は再び歩き始めた。

「軍の編成状況はどうか?」
「はっ。スペイン州への増援軍は、すでに編成を完了しております。どうにか3
0個師団を集められました。」
「すまんな。無理をさせた。」
 パリのEU軍総司令部で、シャルンホルストはスペイン州に派遣する増援軍
の編成に関する最終確認を行っていた。
「せめて、イタリア州やギリシア州らの兵も動員できれば・・・。」
 副官のデューラー少佐がぼやく。
「北アフリカ戦線に展開している、ブリタニア軍のこともある。今、そちらから戦
力を割くわけにはいかん。ベルクト隊はどうか?」
「はっ。現在8個大隊。216機がロールアウトし、訓練も順調に進んでおりま
す。」
「うむ。ポルトガル州との交渉の間に、向こうもナイトメアに装備する飛行ユ
ニットの配備はほぼ完了したと見てよいだろう。数は足りんが、策によって補
うしかあるまい。今後の事に関しては、すでに準備に入っているが、何とか、
ここで勝ちたい。例の策は、できれば使いたくないからな。」
「確かに・・・。」
「ああ、そうだ。彼らに連絡を至急こちらに来られたし。と。」
「はっ。」
 2人が話していると、一人の士官が前線からの通信文を持ってくる。
「何と、事実か?」
「はっ。確認が取れました。」
 通信文には、アンジェリーナが率いる部隊が、本国に帰還したという内容の
分が記されていた。
「何を考えているのだ?ブリタニアは。」

「おいおい、本気かい?ラウンズをポルトガルから、帰還させるなんて。」
「いつもいつも、ラウンズに頼っていては、軍が脆弱になりますからな。それに、
シュナイゼルがなにやら裏でこそこそとやらかしているようでしてな。直属のラ
ウンズまで奴の好きにさせる義理はありますまい。」
「まあ、それもそうだけどね。苦戦したらどうするつもりだい。」
「その時の事は、すでに考えております。例の噂をこちらにとって有効にさせる
のにも、ちょうどよいでしょう。」
「成る程。」
 シャルルの思惑を聞いて、V.V.は苦笑する。

「そうか、やはり開戦か・・・。」
 執務を終えたスザクは、本国にいるエリファレットからの通信を聞いて、小さ
く溜息をついた。
「ある意味、決まっていた事なのかもしれない。スペイン州が我が国の同盟国
になるのは、首都が置かれているフランス州にとっては、正面の城壁を失う事。
容認できるはずは無いからね。」
「で、派遣される戦力の総数は?」
「総数、34個師団。アンジェリーヌの部隊が本国に帰還したから、合わせて40
個師団。数において劣る事は無いと思う。けれど・・・。」
「けれど、何だい?」
 言いにくそうにしているエリファレットを見て、スザクは不審に思った。
「前衛が、アプソン、カラレス、バンヤンのお三方なんだよ。」
「何だって!!」
 スザクが席を立ち、資料作成をしていたC.C.もさすがに驚いて、視線を
向ける。
「死兵と化すだろうEU軍に、あの3人は不適格だ。力押しで行けば、跳ね返
されて、逆に多大な犠牲を出しかねない・・・。」
 端末のディスプレイに映る、エリファレットも頷く。
「同感だね。私の心配もそこなんだよ。下手をすれば、大火傷を負いかねない。
シュナイゼル殿下もその事はお分かりになっているはずなんだが・・・。」
『何か、狙いはあるはず・・・。でも、それが解らない。』
 スザクはシュナイゼルの意図を考えたが、解らなかった。
「ヴァルトシュタイン卿も、そこを不思議に思っていたよ。同時に危惧している。
我々、ラウンズが出ざるを得ない状態になる可能性も高いと見ているみたい
だ。」
「君はどう思う?」
 スザクはエリファレットに、意見を求める。
「正直に言って、我々の内2、3人が行かないと、どうにもならなくなる可能性は
高い。中央部や後衛はそれなりの指揮官が指揮しているとはいえ、どうなるや
ら・・・。その場合、増援として向かうのは、スザクだとヴァルトシュタ
イン卿は見ているみたいだよ。君の直属軍、10個師団は貴重な戦力だから
ね。」
『ヴァルトシュタイン卿が、休んでおけと言ったのはそういう意味もあるのだろう
か・・・。」
 騎士としての武勇だけでなく、ビスマルクは戦略家としても非常に優れてい
る。派遣軍の苦戦も既に予測している。そう、スザクは考えた。
「とにかく、僕達は陛下からのご命令があれば、いつでも出撃できるようにし
ておいたほうが妥当だね。」
「同感だね。とにかく、スザクの方もEUとの戦いの情報を集めて置いたほう
がいい。私の方も、何かあったら、知らせるよ。」
「頼む。僕も、状況の推移には注意しておく。」
「そうしておいて。じゃあ。」
 そう言って、エリファレットは通信を切った。

「全く、ろくな状況じゃないな・・・。」
 眉間を揉みながら、エリファレットは呟いた。
「部隊は命令があり次第、いつでも出撃可能にしておきますか?」
「頼むよ。エリオット。」
「はっ。」
 退室する、アレンの姿を見ながら今後の戦況の推移に、エリファレットは思案
を巡らせる。

「ナナリー総督からの親書は読ませていただきました。総督が司法機関を一日
も早く、我々に委ねたいとの内容を読んでほっといたしました。」
 総理大臣の伊藤が、安心したような表情になる。
「この日本は、連邦エリアであり、司法や行政は基本的には貴方方自治政府
が、司るのが原則。現状はそうなってはおりませんが、一日も早くそうなるよう
努力していただければと思います。」
「今日の会議は、その為のもの。有意義な物にしたく思います。」
「私も同感です。よき実りがあらん事を期待しています。」
 伊藤総理の言葉に、ナナリーも微笑みながら答える。

「会議の結果は十分でございますね。総督。」
 ナナリーの車椅子を押す、ミストロロープは微笑みながら話しかける。
「ええ。皆さんのお蔭です。」
 ナナリーも笑顔で答える。
 会議では、司法機関を自治政府に一日も早く委ねる事の再確認及び、人材
教育についても議論された。
「副総督もご苦労様でした。今日くらいゆっくり休んでください。」
「恐縮です。ですが、自分はもう少しEU戦線についての情報収集をしておき
たく存じます。」
「開戦は近いのですか?」
「おそらく1週間後には開戦かと・・・。」

 1週間後、まだ開戦の報は届いておらず、本国の生産ラインを使用して生産
した、自衛軍の使用するナイトメア飛燕が到着したとの報告書を読みながら、
スザクは執務をこなしていた。
「失礼します。」
 クローディアが、スザクの執務室に入る。
「何かあったかい?」
 既に報告の内容は予想できていたが、一応聞く。
「はっ。本日12月26日、午前8:00。EU軍との戦闘が開始されたと、報告が
入りました。」
「始まったか・・・。」
 スザクは執務室の空から、雪が降りそうな灰色の空を見上げた。

後書き
日本の副総督として、また駐留軍総司令官として、しなければならない事が山
程あるスザクですが、EUでは遂に戦いの火蓋が切って落とされました。
皇帝直属のラウンズであるスザクは、その戦いに無関係であるはずもありませ
ん。
一言で言えば、「内憂外患」というのが、今のスザクの状態です。

次回AFTER TURN13 スペイン州 攻防戦
遂に始まった、EU軍とブリタニア軍との戦いのお話です。
EUのベル計画が何だったのかが、明らかになります。
そして、再び彼らが舞台に上がります。

目次へ戻る。

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内 容 ニックネーム/日時
こんにちは、凪です。
北極を中心に描かれた地図は軍人御用達。
当初意味が分からなかったのですが、改めて地球儀を台からはずしてしげしげと見て納得。北はアメリカとソ連の最前線でした。
ギアス世界ではアメリカの位置にブリタニアがある。レーダーの利かない、極北の地で寒冷装備のナイトメアが戦う。完全に破壊する必要は無い。わずかな亀裂でも後は極低温がパイロットを殺してくれる。それは敵味方どちらも同じですけど。
さて、cic様の世界では、EUに開幕ベル。
最初の役者は筋肉番付タイプのお三方。
無能とは言わないけど、適材かは?
相変わらず、腹黒い第2皇子様、彼の目的は皇帝になること?そして、影すら見えない第一皇子。はたして出番はあるのでしょうか。
では、また、しばしばよらせていただきます。

2008/08/28 15:11
凪さん。
コメントありがとうございます。

>改めて地球儀を台からはずして
 両陣営の中間点ですからね。
 だからこそ、周辺にはアメリカのオハイオ
級戦略原潜。ソ連のタイフーン級戦略原潜が
配備され、更には氷海下で戦う事を前提にし
たアメリカの攻撃型原潜、シーウルフ級の建
造が決定されたのですから。
 ナイトメア戦は、かなり厳しいでしょうね。
視界が無いに近い状態ですから、そもそも無理
かもしれません。
 第2次世界大戦でも吹雪が吹く期間は、暗黙
の休戦期間となっていたらしいですしね。

>EUに開幕ベル。
 EUとて、ブリタニアと肩を並べる、大国。
意地もあれば誇りもあるだろうから、そう簡単
に降伏はしないはずだと思い、書く事に決めま
した。
 何より、モルトケ、ビスマルク、メッテルニ
ヒ、クラウゼヴィッツ等、優れた軍人や政治家
が登場した地域ですしね。

また、よろしければおいで下さい。
CIC担当
2008/08/30 00:30

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