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zoom RSS コードギアス二次小説 AFTER TURN07 朱剣 の 変

<<   作成日時 : 2008/07/16 22:44   >>

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「8名・・・。生き残ったのは僅かこれだけか・・・。」
 星刻があらかじめ、脱出したパイロットの救出の為に派遣した部下に救出さ
れ、ラカディーブ諸島の小島の一つで合流した後、生還した黒の騎士団のメン
バーを数えた藤堂は、拳を握り締め地面を見つめた。
「私の部下の数も似たようなものだ。来将軍も戦死され、生き残った部下も出
発時の1割といったところか・・・。」
 星刻は戦死した者を弔うように、黙って目を閉じた。
「だが、我らは生き残った。生き残れた以上、まだ戦える。藤堂殿、貴方はど
うなさる?」
「我ら黒の騎士団は、来将軍に恩がある。それを返す為にも、大宦官を討つ戦
いに手を貸すつもりだ。」

 エリア13侵攻前に初めて藤堂と会った緋剣は、ゼロはどうあれ、藤堂達を
信用していた。
「卑劣な策を弄して、同胞の屍を犠牲の祭壇に捧げ、名声を得ようとする者の
目ではない。」
 藤堂を見て、緋剣はそう言った。
「藤堂中佐。ご無事で何よりです。」
 ラクシャータと共に、ディートハルトが歩いてきた。
「ディートハルトか・・・。首尾はどうだ?」
「はい。ブリタニアの追及の手を逃れて、各地に亡命していた日本人はそれな
りの数を確保しました。さすがに全てとはいきませんでしたが・・・。」
 澤崎の他にも日本が占領された際、旧日本軍の軍人が多く亡命しており、藤
堂達は黒の騎士団に加わるよう説得を続け、エリア13へ侵攻した後は、ディ
ートハルトが中心になって継続していた。
 結果、ゼロが総帥だった頃とは違うという認識を持った者達を味方に引き込
む事に成功し、新型のナイトメアと共に、藤堂達と合流する為に来ていた。
「そうか。で、何人ほどだ?」
「ナイトメアのパイロットとして28名、その他の後方要員は50名程になりま
す。」
「100名にも満たなかったのか!」
 千葉がディートハルトに詰め寄る。
「千葉隊長、チャンスはまだあります。星刻殿と共に、天子を救う事でイメー
ジを変える事に成功すれば、加わらなかった者達も見方を変えましょう。」
「千葉、いまは天子を救う事を最優先に考えろ。そうすれば、ディートハルト
の言うように増員の可能性も生まれる。ご苦労だったな。ディートハルト。」
 藤堂は詰め寄る千葉を宥めて、ディートハルトの労をねぎらう。
「ありがとうございます。」
「さてと、じゃあ斑鳩と新型のお披露目といこうかね。ところでカレンはどう
したんだい?」
「ランスロットに紅蓮を墜とされたのが、余程ショックだったんだろうね。」
 朝比奈が右手の親指で、砂浜にぽつんと座るカレンを指差す。

 カレンは気が抜けたように、ぽつんと砂浜に腰を下ろしていた。
『言い返せなかった・・・。』
 スザクにエリア13侵攻の理由を問われた時、言い返せなかった事がカレン
の心に、棘のように突き刺さっていた。
 事実、今回のエリア13侵攻にカレンは賛同してはいなかった。それは藤堂
達も同じだったが、黒の騎士団のエースパイロットとはいえ、カレンは18歳
の多感な年頃の少女だ。処理しきれない感情が、心の中を満たしていた。
 それにランスロットとの戦いで、愛機紅蓮が撃墜されたが加わって、カレン
は戦う意味を見失いかけていた。
「こんな所にいたのかい?」
「ラクシャータさん・・・。」
 ラクシャータは、カレンの隣に座る。
「負けたんだってね。ランスロットに。戦闘データを解析してみないとどれくら
いか解らないけど、改修されたみたいで相当性能もアップしていたみたいだ
ね。」
「はい・・・。」
「だから、戦う気になれない?」
 ラクシャータの問いに、カレンが弱々しく頭を振る。
「そうじゃないんです・・・。スザクに聞かれたんです。「何でエリア13を攻める
んだ?」て。答えられませんでした。私は今まで日本の独立を目指して、死
んだ兄の願いを叶える為に戦ってきました。でも・・・。」
「まあ、確かに今回の戦いは、日本の独立には何の関係もない戦いだったから
ね。あんたがそう思うのも無理はないか。で、どうする気なんだい?」
「私・・・?」
「せっかく紅蓮の改良型を持ってきたけど、パイロットのあんたがそれじゃ、乗
る奴がいないしねぇ。今のままじゃ戦う気にもなれないだろう?ここで戦いを
止めるかい?」
 煙管を吹かしながら、ラクシャータが尋ねる。
「でも、今更・・・。」
「別に、あんたを死んだように見せかけてEU辺りに亡命させるくらい、できる
さ。生活に困らないよう、現金も渡してね。あたしはそれでもいいと思うよ。副
司令から聞いたけど、あんたのお兄さんは、あんたがレジスタンスとしての活
動に参加するのを、望んでいなかったそうじゃないか。だったら、その通りにす
るのもいいんじゃないかい?」
「でも、それじゃ日本の独立は・・・。」
 俯きながら、カレンがそう呟く。
「藤堂中佐達に任せればいいさ。そして、独立したら日本に戻ればいい。」
「できません・・・。そんな事。皆死んだ後に今までの戦いを忘れて、自分だけの
うのうと暮らして、その後、日本に戻るなんて・・・。」
 声を絞り出すようにして、カレンはそう言う。
「でも、今のままじゃ戦えないだろう?そんなぐらついた気持ちのままじゃ、ラン
スロットには勝てないよ。今度戦う事になったら、確実に死ぬ事になるしね。そ
れでもいいんなら話は別になるけど。」
『死ぬ・・・。もし死んだら、お母さんに会えない。誰もお母さんを守っくれない。』
 そう考えて、顔を上げたカレン表情には迷いはなかった。
「おや、戦うのかい?」
「独立の為以外にも、私が戦う理由があるのを思い出しましたから・・・。」
 ラクシャータにそう答えて、藤堂達のところに戻っていった。
『そう。独立の為だけじゃない。私はお母さんと2人で、普通に暮らせる世界
の為に戦う。例え何があろうと・・・。』
 カレンの戦いの原点ともいえる理由は、処理し切れなかった感情を一気に吹
き飛ばすのに充分だった。

「星刻様、よくぞご無事で。」
「香凛・・・。再び会えたが、多くの部下を死なせた・・・。私がこうして生きてい
られるのは、部下達のお蔭だ。」
 自分の副官である周香凛に、自嘲じみた口調で星刻が話す。
「ならば、尚の事、星刻様には生きていただき、天子様を救っていただかなけ
れば困ります。死んでいった者達は、星刻様がこの国を救ってくれると思った
からこそ、星刻様を生かすために死ぬ事ができたのですから。それは来将軍も
同じだったはずです。」
「そうだな・・・。私はそう簡単に死ぬわけにはいかん。天子様を、この国を救う
まで、いかなる恥辱に受けようとも、死ぬわけにはいかんのだな。すまんな、
ぐちをこぼしてしまって。ところで、手配は済んでいるか?」
「はい。ご指示の通り。それと、例の物も持参いたしました。」
 表情を改めた星刻に、香凛は星刻に指示された事は既に完了している旨を伝
えた。

「へえ、これが新型の暁か。」
 朝比奈は新造航空戦艦斑鳩に搭載されてきた、新型ナイトメア暁を見てい
た。
「あんた達は、指揮官用にチューンアップされた直参仕様に乗ってもらうけど
ね。もっとも、通常型でも性能は月下以上だけど。」
 朝比奈と千葉にマニュアルを渡しながら、ラクシャータは機体の説明をする。
「この機体でランスロットに対抗する事は、できるだろうか?」
 マニュアルを読みながら千葉が尋ねる。
「さすがにそれは無理。持ち帰ってくれたミッションレコーダーの記録を、ざ
っと見させてもらったけど、あんたたちの乗る直参仕様の暁じゃ、まるで歯が
立たない。」
 記録をざっと見たラクシャータは、唖然とした。
 初見から、ランスロットの設計思想に人命重視という考え方がない事を悟っ
ていたが、さらに人命を無視した機体になっていた。
 開発した新型ナイトメアにしても、人命を重視した設計の為、どうしても性
能には限界がある。
 しかも、ランスロットの乗り手であるスザクは、機体の性能をフルに発揮し
ている。暁では到底歯が立たないと、ラクシャータは判断していた。
「と、すると、藤堂さんの斬月か、カレンの紅蓮をぶつけるしかないか・・・。」
 藤堂専用に開発された斬月、改良された紅蓮を朝比奈が見る。
「あれ以上に改良されていなければ、斬月と紅蓮でどうにかなると思うけど
ね。」
 ラクシャータが複雑な表情で、煙管を吹かす。
「どういうことだ?」
 藤堂が尋ねる。
「改良されたランスロットなんだけどね。」
 煙管を口から離して、煙を吐き出す。
「あのプリン伯爵が手がけたにしては、まともすぎるんだよ。改良はまだ終わ
ってないように思えてねえ。」
 そう言って、ふと星刻たちの所にあるナイトメアを見ると、表情が変わる。
「まさか、神虎!?」

 朱禁城では、大宦官達がエリア13侵攻軍壊滅の報を聞いて、祝杯を挙げて
いた。
「どうやら、邪魔者の始末は済んだようですな。」
「誠にめでたい。」
「しかし、あの者達も愚かよな。素直に我らに従っていれば、良い思いをさせて
やった物を。」
「いや、まことにその通り。」
「これで、天子の婚姻が済めば、我らはブリタニアの貴族。ますます安泰という
物。」
「結構、結構。」
 そこに、一人の将軍が入ってきた。
「お楽しみのところ申し訳ありませんが、知らせが入りました。黒の騎士団と、
黎星刻は健在のようです。」
 仇士遠。
 40代後半に差しかかった将軍で、大宦官に取り入り出世したきた人物であ
る。
「何と!生きておったか。しぶとい奴らよ。まさかこの洛陽に向かっているので
はあるまいな?」
「はっ。現在周口周辺に、陣を張っておる模様にございます。」
 周口は准河の支流に位置する都市で、首都洛陽からは200km程度に位置
する。
 つまり、星刻達は目と鼻の先にまで来ている事になる。
「ええい、周辺の駐屯軍は何をしておった!何故、止めなかったのだ!?」
 大宦官の一人、趙皓がヒステリックに喚く。
「既に、星刻が周辺の駐屯軍に、手を回していたようでございます。」
「何と!」
 高亥の顔が引きつる。
「こうなれば、直ちに出撃して叩く以外にございませぬ。」
「当然であろう!直ちに出撃して、星刻の息の根を止めよ!!」
 程忠が仇士遠にそう命じる。
「はっ。直ちに軍を出撃させます。」
「そなたが参り、直接星刻の息の根を止めるのだ!!よいな!!」
 蔡力士が指を震わせる。
「はっ!」
 仇士遠が軍を指揮すべく、その場を立ち去る。
「まあ、そう慌てずともよかろう。生きていても、率いる軍が多いはずもない。
すぐに決着は着こうぞ。」
 趙皓がさして慌てもせずに、他の大宦官にそう話しかける。
 こうして、星刻と黒の騎士団の連合軍と中華連邦軍は、周口において激突す
る。
 「周口の戦い」はこうして始まりを迎えようとしていた。

「星刻様。洛陽から、軍が出撃しました。ナイトメアの総数は140。仇士遠が指
揮を取っています。」
「やはり奴か。」
「知っているのか?」
「大宦官に取り入り、出世をした男だ。欲に目がくらみ、武人の本分をないがし
ろにしてな・・・。」
 不快な口調で、星刻は藤堂に答える。
「藤堂さん。例の準備が整いました。部隊の布陣も完了しています。」
 朝比奈が、報告に来る。
「解った。すぐに行く。ところで星刻殿、本当にあの神虎に乗られるおつもりか?
ラクシャータから聞いたが、正直賛成しかねる。」
「だが、今はあれが必要だ。そしてこれからもな。もしブリタニアと、あの「白き死
神」ランスロットと戦うとすれば、尚更だ・・・。」
 ラクシャータから神虎の事を聞いていた藤堂は、星刻が神虎に騎乗する事に
難色を示していた。
「解った。そこまで言われるのなら、もはや止めはしない。だが、一つ聞きた
い事がある。何故、そこまでして、天子を救う事にこだわる?どうも特別な理
由があるように私には思えるのだが・・・。」
「六年前に遡る・・・。」
 星刻が夜空を眺めながら話し始める。

「当時私は、牢の番人をする下級役人だった。ある時、牢に入れられていた罪
人が病に倒れた。だが、決まりにより勝手に薬を与える事は禁じられていた。
大宦官が作った法律だがな。なにしろ、その頃の罪人のほとんどが、大宦官を
失脚させようとする者だったからな。権力欲に溺れた者もいたが、大宦官の専
横を改めようと画策して、捕らえられた者ばかりだった。その時倒れた者もそ
うだった。私は密かに薬を与えた。ところが、それが露見し私が死罪になりそ
うになった時、お救い下さったのが先代の後をついで即位なさったばかりの天
子様だ。自分も風邪を引いたら薬を貰うのに。と、仰せられてな。そして、お目
通りする事が叶った。その時に、私はあの方に、天子様に生涯忠誠を誓うと、
約束したのだ。そして、私は士官学校に進み、武人の道を選んだ。その後、同
志を集め、準備をしてきたのだ。大宦官から天子様をお救いする為に・・・。」
「そうだったのか・・・。ならば尚の事、天子様をお救いせねばならぬな。我々
も、できるだけの事をしよう。」
 藤堂が手を差し出す。
「済まぬ・・・。本来ならば、我らの手で解決せねばならぬ事。心苦しいが、
今は貴方方の力を貸していただく。その代わり、事が成就したら天子様に、貴
方方を正式に亡命者として、受け入れていただくよう私が願い出る事を、約束
する。」
 星刻が藤堂の手を握る。
「いや、こちらこそ済まぬ。却って、災難を持ち込むやもしれんな。」
 ブリタニアにテロリスト扱いされている、黒の騎士団の亡命を受け入れた時
の事を考え、藤堂は心苦しそうな表情になる。
「何、どの道、大宦官の密約が反故になれば、遅かれ早かれ、ブリタニアとの
戦いになる。貴方方がいようがいまいがな。」
 気にするなという表情で、星刻がそう答える。
「星刻様。まもなく仇士遠率いる軍が、到着いたします。」
「よし、準備は既に整っている。ナイトメアに騎乗しろ。」
「はっ。」
「では、行くとしよう。」
 藤堂が星刻にそう言って、2人は軍の指揮を取るべく、それぞれのナイトメ
アの元に行く。
 やがて、朝日が昇った。

「敵軍を見つけました。周口市周辺の准河の支流を背に、鈎行の陣を敷いてお
ります。」
「何、川を背にしておると?ふん、背水の陣のつもりか。数は?」
 陸上戦艦で指揮を取る仇士遠は、侮辱するような口調になる。
「ナイトメアが約70騎。」
「我が方の半数ではないか。なればこそ側面攻撃に備えての鈎行の陣に、加
えて死兵となる為の背水の陣か。面白い。受けて立ってやろう。全軍、錘行の
陣を敷け。敵中央を突破し、一気に勝負をつけてやる。」
 指示に従い、140騎のナイトメアが錘行の陣を敷く。

「敵はやはり、錘行の陣を敷いております。我が軍の中央を突破するつもりの
ようです。」
「かかったな。数が少ないゆえの背水の陣と見たか。藤堂殿、左翼はお任せす
る。」
「うむ。星刻殿は右翼の指揮に専念してもらいたい。」
「解っている。では・・・。」
 しばらくして、両軍は激突した。

「進め!!敵は敗残兵の寄せ集めに加え、我が軍の半数。一気に陣を崩
せ!!」
 仇士遠の軍は、錘行の陣で中央突破を図る。
「よし、予定通りに行動しろ。うまく敵を例のポイントまで向かわせる。」
「「承知!」」
 千葉と朝比奈が答える。
「香凛。うまく芝居をしてくれ。但し、犠牲は最小限に抑えろ。敵に中央突破
をさせるのが目的だからな。」
「はっ!」
 香凛が答える。
 やがて、星刻と黒の騎士団の連合軍の中央を、仇士遠の軍が破り始める。
「よし、このまま中央を突破する。後続部隊は、2つに分かれた敵軍を迎え撃
て。前衛部隊は、中央を突破後反転し、残った敵を攻め立てよ。」

「よし、敵は罠にかかった。中央突破しつつ例のポイントに向かっている。我ら
は中央を突破する敵軍の横をすり抜けて、敵後方にて展開しよう。」
「了解した。」
 星刻の言葉に藤堂が答え、やがて連合軍は仇士遠の軍が進むにつれて、横
をすり抜けながら前進する。
「敵軍、我が軍の側面を前進し、逃走を図る模様。」
「逃げる気か。そうはさせんぞ。全軍直ちに反転し、敵を追撃する。」
 仇士遠が指示を出すが既に遅く、藤堂と星刻の罠に嵌っていた。

「今だ!!」
 藤堂の声を合図に、仇士遠の軍がいる地点に仕掛けられていた爆弾が爆発
して川岸が崩落し、巻き込まれた前衛の軍が川に落ちていく。
「しまった!!図られたか!陣を立て直せ!」
 仇士遠が陣を立て直そうとする。
「よし、敵陣は乱れた!!追撃せよ!!」
「はっ。」
「さて、神虎。見せてもらうぞ。お前の力を。」
 混乱する仇士遠の軍に向けて、神虎を駆って星刻の軍が突撃する。
「よし、我らも突撃する。新型の力を見せてやれ。」
「「承知!!」」
 藤堂も、専用として開発されたナイトメア斬月を駆って、乱れる仇士遠の軍
の陣に向かっていく。

 神虎の両手に装備されている縄標型のスラッシュハーケンが、ドウ・シーに
突き刺さり、高圧電流が流れ機体は爆散する。
 脅威を感じた他のドウ・シーがグレネードランチャーを撃ちまくるが、既に神虎
の影すらなく、神虎の剣に切り裂かれる。
「成る程、これが神虎の力か。だが、この性能では並みの者では耐えられまい。
呪われし機体といわれるのも頷ける。」
 ナイトメア神虎。
 ラクシャータが、ハイスペックのみを追求した機体の製作依頼を受けて、紅蓮
と同時期に開発した機体である。
 完成した機体のスペックは確かに高かったが、テストパイロットを次々と、死に
追いやり、誰も乗りこなせる物がいなかった為、呪われし機体と言われ、軍の倉
庫に眠ったままになっていた。
 星刻はエリア13に行く前に、香凛に命じて機体を運ばせる手配をしていた。
「だが、お前の力はこの程度ではあるまい。」
 機体の中央のパーツが展開して太い光の槍が放たれ、射線上にいた仇士遠
の軍のドウ・シーが、爆発していく。
「天愕覇王荷電粒子重砲。凄まじい威力だ。機動性も反応速度も申し分ない。
これなら、ランスロットにも対抗できるな。」
 次の獲物を求めて、神虎は進んでいく。

 藤堂の斬月が、次々とドウ・シーを葬っていく。
「月下とは段違いだな。これなら、あの新型にも充分対抗できる。」
 襲い掛かってくるドウ・シーを、内蔵マシンガンで蜂の巣にしてさらに、進んで
いく。
 カレンも新たに開発された紅蓮。紅蓮可翔式で次々にドウ・シーを葬ってい
く。
「これが、新しい紅蓮・・・。」
 ユグドラシルドライブの出力が向上しただけではなく、総合性能もアップしてい
た。
「それじゃあ、試させてもらうよ。」
 新たに開発された徹甲砲撃右腕部に搭載されている、輻射波動弾を放つ。
 今まで近接戦闘でしか使用できなかった輻射波動を、遠距離砲撃にも使用
できるように、ラクシャータが新たに開発した武装である。
 まともに喰らったドウ・シーは、装甲が高温に達し沸騰して、次々と爆発す
る。
 千葉と朝比奈が駆る指揮官用の暁直参仕様も、性能を存分に発揮して仇士
遠の軍を次々と蹴散らしていく。

「敵、まもなく本艦に達しようとしています!!」
 陣を崩され、陸上戦艦の周辺のドウ・シーも数をみるみる減らしていく。
「退け、退くのだ!!」
 仇士遠がヒステリックに喚き立てる。
「逃げられると思うか!?」
 星刻が駆る神虎が、陸上戦艦の艦橋の前に立ち塞がる。
「貴様、星刻か!?」
「仇士遠!民と天子様を守るべき身でありながら、欲に溺れ大宦官に取り入
り、武人としての本分を忘れた罪、貴様の命で贖ってもらうぞ!!」
 天愕覇王荷電粒子重砲が艦橋を直撃し、仇士遠の肉体は消滅した。
 指揮官を失った軍は次々と降伏し、勝敗は決した。
「よし、このまま洛陽に向かう。但し、私は先行して、密かに洛陽に入り、天子
様をお救い申し上げる。香凛は部隊を率いてくれ、藤堂殿ここはお任せした。」
「承知した。無事を祈る。」
 星刻は、神虎を駆り洛陽を目指した。

 一方、洛陽では仇士遠の敗退の報が伝わり、大宦官達は対応を協議してい
た。
「とにかく、新たに軍を出撃させて、叩く他なかろう。」
「しかし、周辺の軍は我等の命を聞かぬ。どの軍を向かわせようというのか?」
「洛陽の禁軍しかあるまい!」
「しかし、禁軍を出撃させては、この洛陽は丸裸になるぞ。」
「では、他に対応策はあるのか!?」
「いずれにせよ。天子は我らが掌中にある。いざとなれば人質に・・・。」
「できると、思っているのか!?」
 大宦官達の視線の先には、剣を手にした星刻がいた。

「天子様は我らがお救い申し上げた。これ以上、この国をお前達の好きにはさ
せんぞ!!ましてや、臣下の身でありながら、天子様を売り渡し代償にブリタ
ニアの貴族の地位を得て、自分達の身の保全を図ろうとするとは言語道断!天
子様の命により、貴様達を成敗する!!」
「馬鹿な!あの小娘に、そのような命が下せるはずあるまい!貴様の独断であ
ろうが!」
 そう喚く、趙皓の顔に命令書が叩きつけられる。
「そこに押されてある、玉璽が見えぬわけがあるまい。玉璽を使う事を許される
のはこの地上で天子様ただお一人!!勅命により、今まで私欲を貪り、民を
苦しめ続けた、貴様達大宦官を成敗する!!」
 趙皓の首が飛ぶ。
「ま、待て星刻。我らと手を組まぬか?そなたにも相応の地位を与えようぞ。
ブリタニアの貴族の地位もそなたに与えられるよう、我らが取りはかる。だか
ら命だけは!!」
程忠が地位を餌に、星刻に命乞いをする。
「我が仕えるは、この世で天子様ただお一人。ブリタニアに膝を屈したりはせ
ぬ!!貴様達と一緒にするな!!」
 星刻の剣が程忠の口を引き裂き、激痛にのた打ち回る背に剣をつきたて
る。
「覚悟を決めろ。この後は、地獄でその罪を償って来い・・・。」
 残りの大宦官も星刻に、一人残さず斬り捨てられた。

「天子様。大宦官は一人残らず成敗いたしました。」
 天子の部屋で、星刻と同士達は恭しく天子に跪く。
「星刻。顔を上げて。」
「はっ。」
 顔を上げた星刻の前には、指きりの形にした天子の右手があった。
「約束を守ってくれた。私を助けてくれるという六年前の約束を・・・。」
「覚えておいででしたか・・・。」
「忘れた日なんかない。でも、もう一つ約束して。これからも私を助けて。
私は政治の事はよくわからない。もちろん、勉強する。でも、その間、この国
を良くするために私を助けて欲しい。だから、もう一度約束して欲しい。」
「天子様・・・。そのような事、当然でございます。お命じ頂ければ、この黎
星刻、全てを投げ出し、天子さまをお助けする所存でございます。」
 星刻が深々と頭を下げる。
「だから、約束して。これからも私を助けると。」
 星刻が顔を上げると、変わらず指きりの形になっている天子の右手があった。
「もったいのうございます。これからも天子様をお助けいたします。私の力の全て
で・・・。」
 星刻が天子の小指に、自らの小指を絡める。
 天子は微笑みながら頷くと、他の者達とも同様に約束を求め、この場にいる全
ての者に約束を求めた。無論、拒む者はおらず中には、涙を流す者もいた。
 暫くして、黒の騎士団と香凛が朱禁城に到着した。

「これより、この国を守りつつも、民を救いこの国を立て直す。簡単ではない。
だが、これを成し遂げてこそ、この国を守り栄えさせる事に繋がる。共に力を尽
くしてもらいたい。」
「はっ!」
 これから、星刻たちが中心となって、人事の一新が行われ、汚職に手を染め
ていた役人や軍人は捕らえられた。
 処刑された大宦官や、汚職に手を染めていた者達の財産から、不当に得た
利益は没収され、それを元に貧困に喘ぐ国民の救済に当てるなどして、国の
再建を始めた。
 大宦官の代わりとなる文官は、先代の天子の元で業績を上げた張范質を中
心に、能力がありながらも大宦官に左遷させられた者が、多く地方から呼び出
され職務についた。
 彼らは能力を発揮し、老いた大国となっていた中華連邦を若返らせる。
 星刻は他の将軍や宰相に任命された張范質らの薦めで、禁軍の総司令官で
ある折衝将軍となった。
 文官たちと緊密に連携して国の再建状況を見極めながら、軍部の中核を担い
軍備を整えていく事になる。

 黒の騎士団も正式に亡命者として扱われて、人工島の一つを貸し与えられ、
組織の再編に本格的に力を入れ始めた。

 この周口の戦いから人事が一新されるまでの一連の事件は、歴史書に「朱剣
の変」として記される事になる。

後書き
星刻のクーデターのお話です。
周口の戦いの布陣は、アニメの第2期10話とよく似ています。
今回は、黒の騎士団に星刻がいますが。
あえてこの布陣にしたのは、ルルーシュはこうすればよかったのではないか?
と言う、私の考えです。
後ろに崖があったのですから、あえて中央を突破させ背後に展開して、押し捲
れば黒の騎士団はあれほど不利な状況になる事は無かったのではと、思いま
して、周口の戦いを書きました。
今回登場した紅蓮は可翔式ですが、このままで登場し続けるわけでは、ありま
ん。
それじゃ、つまらないですしね。
せっかく、ラクシャータのマッドな部分も見えてきたわけですから・・・。

次回 AFTER TURN08 世界 の 流れ
いよいよ、世界は動き出します。

目次へ戻る。

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コメント(5件)

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こんばんわ^^。
今話の話はTVでやってたところと色々シンクロ具合がたくさんあって、「ああ、ここはあのシーンに当たるとこか」って感じで拝見させてもらいました。

それにしても、この話の天子の方がしっかりしてますね。
sora
2008/07/17 01:26
“錘行の陣”とはイメージ的に“紡錘陣形”見たいな、中央突破の陣形でしょうか(無知でして(涙)?
魚鱗・鋒矢の陣形でしたら解るのですが(とほほ、私は無知ですね。

小説を読んでいまして、銀英 の ラインハルト と ヤン(が直接指揮(アスターテ会戦の時) が初めて直接対戦した時と シュタインメッツ(初対戦の時(こちらは、ヤン が ブラックホールを背に背水の陣を布いて、シュタインメッツ) に中央を突破させて
、背後に回りこむ作戦を思い出します。

コードギアス(ルルーシュとスザク) と 銀英(ラインハルトとヤン) の話を致しますと、二人がお互い味方で無いことが悔やまれます。


↓理想的な脳内光景

司令官 ルルーシュ と 部隊指揮官 スザク、カレン、藤堂

国家元首兼最高司令官 ラインハルト と ヤン(軍師?でも政治面が) と キルヒアイス(は漢の韓信な立場かな?


小説の感想は難しいですね、感想らしい感想ができなくて申し訳なく思います。
(FFかな?現代では二次小説のことなんて略すのかな?)
LRBM
2008/07/18 03:15
R2 の感想も読ませて頂いています。
ご無礼をご承知で記入致します、まともな感想をされている方は、CIC担当さんだけです、
他の方 BLOG を読んでいますと、スザク 批判のことばかり記入されていますので。

特に TURN 13 は場合は、スザク は職務上責任者としては当然の行動です。
あの状況で、スザク は 自体を収拾する為にとった行動であり、スザクの体は二つもありません、警察の静止をふり切手、勝手に中に入ったのは シャーリー 自身です。
現場で事件があり、たまたま責任者が現場に居合せて、職務上の責任者が見て知らんフリをして、現場を放棄したらどうなりますかといいたいです。

以前過去に日本で、状況は全く違いますが、事件がおきたのに警察の最高責任者が麻雀で遊んでいる時に事件がおきて、部下から事件の報告だけを聞き、麻雀をやめないで、そのまま麻雀続けたいたということがあります。
当然の如く我々は怒り心頭です…。スザク 批判を記入されている方は、こんな簡単な事が思いつかなかったのでしょうか?

中途半端で申し訳御座いませんが、長文ですのでここまでに致します。
LRBM
2008/07/18 03:17
soraさん。
コメントありがとうございます。

>色々シンクロ具合がたくさんあって
 どうしても、10話、11話と重なる部分が出
てきてしまいました(苦笑)。
 本当はそうならないようにしたかったんですけ
どね。

>この話の天子の方がしっかりしてますね。
 あ、そう見えました?
 個人的には、そんなに変わらないと思っている
んですけどね。
CIC担当
2008/07/19 00:03
LRBMさん。
コメントありがとうございます。

>中央突破の陣形でしょうか
 そうです。
 日本では、魚鱗の陣や鋒矢の陣のほうが定番で
すから、知らないのも不思議じゃないですね。
 部隊が中華連邦なので、中国の兵法書にある陣
形を使おうと思ったんです。
 魚鱗の陣等の八陣も孔明が考案したので、そっ
ちでもよかったんですけどね。

>銀英
 書いてて、私もそう考えました。
 少数で多数を征するには、やはり罠を仕掛ける
必要があると思い、考えた結果こうなりました。
 もうちょっと考えれば、他の展開もあったでし
ょうけど、修行不足です。


>まともな感想をされている方は、CIC担当さん
 だけです
 そうでもないですよ。
 私が以前からお邪魔させていただいている、五
遷・主簿さんの記事は歴史を交えながらの考察で
とても読み応えがあります。
 相互リンクをさせていただいておりますので、
お気に入りリンクの欄にリンクが張ってます。
 是非、いらしてみてください。
 これからもよろしくお願いします。
CIC担当
2008/07/19 00:17

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