cogito,ergo sum

アクセスカウンタ

zoom RSS コードギアス二次小説 AFTER TURN03 前 奏

<<   作成日時 : 2008/06/15 22:12   >>

面白い ブログ気持玉 3 / トラックバック 0 / コメント 2

「会談でありますか・・・?しかもキョウト六家が自分に・・・。」
 ユーフェミアの追悼式典が行われるフジ行政区に向かう前に、スザクはコー
ネリアから呼び出しを受けた。
「何を考えているやら解らぬがな・・・。とにかく実質NACその物と言える
キョウト六家の長である、皇神楽那が貴公との会談を申し出てきたのだ。」
 スザクは困惑していた。
 スザクがブリタニア軍に入隊した時に、枢木家との縁が切れただけでなく、
枢木家そのものがキョウト六家に何の影響力も持たなくなっている。
 おそらく、今でもスザクを売国奴と見ているだろう。
『神楽那とは幼馴染だった・・・。それが原因かもしれないけど、立場上まだ
そのように思っている素振りは見せられないはず・・・。だが、望んだのは神楽
那なのは間違いない・・・。お膳立てをしたのは、桐原公か・・・。』
 会談が申し込まれるまでの状況の推移を、だいたいスザクは掴んだ。
「心中は複雑そうだな。無理も無かろう。皇神楽那は貴公の従兄弟であったと
聞いている。どうする?別に断っても構わないが。」
「いえ、彼らが何を考えているか。自分の目で確かめて見たく存じます。確か
に神楽那は従兄弟ではありますが、今の自分は皇帝陛下に剣を捧げた騎士。
お気遣いは無用です。」
「いや、失言だったな。別に貴公の忠誠を疑ったわけではないのだ。済まぬ。
では、その会談を受けると、返事をしておこう。」
 話している間に出発の準備が整い、コーネリアは自らの旗艦コルチェスター
に向かい、アヴァロンらと護衛艦を伴いフジ行政区に向かった。

 フジ行政区の嘗ての特区設立式典会場には、ユーフェミアの銅像と犠牲者を
祭る霊廟が作られ、ブリタニア人、イレブンを問わず多くの人が訪れていた。
その中の人工池にユーフェミアの名を刻んだローソクが、コーネリアと嘗てユー
フェミアの選任騎士であったスザクの手によって浮かべられ、TV中継もされて
いた。
「まずいな・・・。」
 30歳位の一人のブリタニア人が、眉間に皺を寄せながら中継を見ていた。
「これで、我々はさらに悪役か・・・。」
 20代半ばくらいの、温厚そうな顔つきをした日本人の青年も、腕を組んで
考えていた。
 ブリタニア人の名をディートハルト・リード。
 日本人の青年の名を扇要という。
 2人とも逃亡に成功した、黒の騎士団の幹部である。
「今更言っても、始まらん。問題はこれからどうするかだ。闇雲に攻め込んで
も、勝ち目は無い。更に言えば日本人の賛同も得られない・・・。」
 藤堂鏡志郎。「奇跡の藤堂」の異名を持ち、途中から腹心の部下達、四聖剣
と共に黒の騎士団に参加しており、扇らと共にラクシャータのつてを頼って、イ
ンドに身を潜めていた。
「でも、このまま潜んでいるのもできないみたいだねぇ。連絡があったよ。向こ
うさんから・・・。」
 白衣を纏い煙管を咥えた、浅黒い肌の女性が部屋に入ってくる。
 ラクシャータ・チャウラー。
 インド軍区出身の技術者で、紅蓮弐式や月下といった黒の騎士団のナイトメ
アフレームの開発に携わっている。
「内容は?」
 藤堂にラクシャータは一枚の紙を渡す。
「馬鹿な!?正気か?」
 内容を見た藤堂の表情が険しくなる。
「副司令、皆を集めてもらいたい。」

 格納庫にある、真紅のナイトメアに横にあるシミュレーターから、タンクトップ
に丈の短いスパッツの一人の少女が汗だくになりながら出てきて、床に座
る。
紅月カレン。
 カレン・シュタットフェルトというもう一つの名を持つ、黒の騎士団のメンバーの
一人で、真紅のナイトメア紅蓮弐式のパイロットである。
 一年前にブリタニア軍との決戦に敗れて、インドに身を潜めてから只管シミュ
レーターでの対ランスロット戦を想定した、訓練をしていた。
「駄目だ・・・。今でも脱出する時間をどうにか確保するだけで精一杯。これ
じゃ勝てない・・・。」
 水を飲みながら、カレンは悔しげな表情をする。
 今、シミュレーターで相手をしているランスロットは、ミッションレコーダ
ーに残っているデータを基に再現しているが、何度やってもカレンは勝てなか
った。
 3回に1回どうにか脱出するのが、今のカレンには精一杯である。
『僕は知ってる。間違った方法で得た結果が、何を残すか・・・。』
 式根島での事件の際、スザクが言ったその言葉が頭に響く。
 間違った方法。
 カレンは、今までの戦いがそれだと決める事はできない。
 それは、彼女自身の否定。更に最愛の兄、ナオトの否定にも繋がるからだ。
 唯一つ、彼女が導き出した「間違った方法。」は、ゼロに従った事だった。
 超常の力ギアスを利用し、自分達の悲願を利用し、あまつさえ特区設立に
望みを持った多くの日本人も利用した、仮面を被った卑劣な詐欺師。
 今のカレンにとって、ゼロはそういう存在だった。
『もう、ゼロなんかに頼らない!他のリーダーなんか要らない!私達は自分達
の力で、日本の独立を勝ち取ってみせる!』
 1年前の神根島で、特区での虐殺の真相を知って以来、カレンはそう心に誓
いを立てていた。
「紅月、藤堂さんが呼んでいる。」
 四聖剣の紅一点、千葉凪がカレンを呼びに来た。
「何かあったんですか?千葉さん。」
 立ち上がりながら、千葉に尋ねる。
「解らない。ただ、向こうから何か言ってきたようだ。」
 それを聞いたカレンは、千葉と共に藤堂達のところに行く。
 黒の騎士団が再び舞台に立つ時が、近づいていた。

「皇神楽那です。この度の会談、お受け下さりとても嬉しく思います。」
 フジ行政区の近くに位置する、カワグチ湖にあるサクラダイト供給会議の会
場としても使われるホテルのロイヤルスイートルームで、神楽那とスザクの会
談は始まった。
「神聖ブリタニア帝国、ナイト・オブ・ラウンズ第7席、ナイトオブセブン枢木スザ
クです・・・。」
『あれが、あの枢木の息子か!?』
 桐原はあまりに変わりすぎたスザクを見て、驚いていた。
 冷徹な表情と纏う空気。桐原が知るスザクとはあまりにもかけ離れすぎてい
た。
 そう感じたのは神楽那も同じで、一瞬表情が曇る。
「いかがなさいましたか?何かお気に触る事でも・・・。」
「いえ、何でもありません。お気になさらず・・・。」
 そう答えて、席に着く。
 会談の部屋には、キョウト六家と護衛役、スザクと、今日麾下の中隊を率い
てエリア11に到着したヴァレーリアが、スザクの護衛としてついている。
 そして、会談は始まった。

「それで、何故自分を会談の相手に選ばれたのでしょうか?皇殿。自分は皇帝
陛下直属の騎士ではありますが、このエリアに対する政治的影響力は皆無な
のですが・・・。」
「枢木卿、貴方を通じて、コーネリア総督にお願いしたいことがあるのです。」
「何でしょうか?」
「行政特区日本の再度の設立です。」
 スザクの目が鋭さを増す。
「奇妙な事を願われますね・・・。自分達がぶち壊し、惨劇の場と化した行政特
区日本の再度の設立とは・・・。」
 スザクの表情が、更に冷徹になる。
 一年前、ゼロの手により行政特区日本設立式典の会場は、一転して虐殺の
場と化し、設立を提唱したユフィは魔女と呼ばれた。
 その後、スザクが謎の少年V.V.からギアスの事を聞き、神根島でそれが
真実である事を知ると、自らの手でゼロを討ちユフィの汚名を晴らした。
 同時に、真相を知り半ば放心状態のカレンが、トウキョウ租界で崩壊寸前に
なりながらも戦っていた黒の騎士団に入れた通信がエリア11に伝わり、ユフ
ィに向けられた憎悪は一転して黒の騎士団に向けられた。
「枢木スザク、一つ勘違いをしてはおらぬか?あの惨劇を作り出したのは、我
らではない。あくまでゼロだ。認識を改めてもらいたいものだな・・・。」
 桐原が口を開いた。
「桐原公、そのゼロと黒の騎士団を支持したのは貴方方ではありませんか?に
も関わらず、今更自分達は無罪だと仰られますか?「掌は返す為にある。」とは
よく言った物ですね。キョウトの支援無くば、黒の騎士団があそこまで組織が大
きくなる事も無かった筈。違いますか?」
 鋭い視線を桐原に向ける。
「その黒の騎士団との戦いで、栄達したのは何処の誰だ?」
「自分は軍人です。相手が黒の騎士団であろうが、他の組織であろうが、テロ
リストを鎮圧するのが軍人としての責務。桐原公の仰られようは、警官に「犯
罪者を取り締まるな。」と同じ意味と解釈させていただきますが、よろしいです
か?」
 桐原の強烈な皮肉にも、スザクは動じずそう問い返した。
「物は言いようじゃな。この日本を蹂躙したのはブリタニアであろう?そのブリ
タニアは犯罪者ではないと言うか。そこまでブリタニアに尻尾を振り、日本人
としての誇りを失ったか?」
「つまり、テロリストを容認すればよかったと仰られますか?それによって多く
の罪の無い民間人が死んでも、テロリストは無罪とおっしゃられますか・・・?」
 桐原に向けたスザクの視線が、更に鋭さを増す。
「桐原公、会談を承諾してくださった枢木卿に対する貴方の態度は、非礼の極
み。自重なさってください。」
 神楽那が、桐原に言う。
「ロセッティ卿でしたね。貴方にも不快な思いをさせてしまい、申し訳なく思い
ます。その代わりと言っては何ですが、貴方も仰りたい事があるようですの
で、どうぞ遠慮なく仰ってください。」
「では、申し上げさせていただきます。嘗ての日本政府の要人サワザキが、キ
ュウシュウに中華連邦軍を伴い、乱を起こした際の鎮圧に多大な功績を挙げた
のは誰ですか?更に、東シナ海に進出して、混乱に乗じこの地を我が物にしよ
うとした中華連邦との戦いにおいても、多大な功績を挙げたのは誰ですか?確
かに、黒の騎士団との戦いで、枢木卿が栄達したのは事実。ですが、大佐に昇
進なさった時の功績はこの地を守った事。私が言いたいのはそれだけです。」
 それを聞くと神楽那は静かに頷いた。
「仰るとおりです。無礼は重ね重ねお詫びいたします。桐原公も場をお弁え下
さい。無論、他の方々もです。」
「そうですな。いや、枢木卿、無礼をお許し願いたい・・・。」
 桐原がスザクに詫びる。
「お気になさらず・・・。」
 そう答えるスザクの声は冷たかった。
「枢木卿。少なくとも私は、キョウト六家を束ねる皇家の当主として、去年の惨
劇に責任を感じているつもりです。ですから、それに対する償いをしたいので
す。特区日本を再度設立する事によって、この地が更に平穏になれば総督府
にとってもメリットとなりましょう。どうか、私達の気持ちを汲み取り貴方からも
お願いいただけないでしょうか?特区内での治安維持等、できる事は全てさ
せていただく所存です。どうか、お願いいたします。」
 神楽那が深々と頭を下げる。
「貴方方の気持ちは、コーネリア総督にはお伝えいたしましょう。」
「貴方は、特区構想には賛同してくださらないのですか?」
 神楽那はスザクに問う。
「今の時期では、賛同いたしかねます。イレブン、名誉ブリタニア人と、ブリ
タニア人の心の距離がさほど縮まらぬうちに設立しても、ブリタニア人から見れ
ばイレブンを閉じ込める豪華な檻に過ぎない。それは、貴方方の本意ではない
でしょう?」
「そうですね・・・。仰るとおりです。では、私どもの願いはコーネリア総督にくれぐ
れもお伝えい願います。」
 スザクの言っている事は理にかなっていたので、神楽那も認めた。
「確かに、承りました。では、自分はこれで・・・。」
 スザクが席を立とうとする。
「枢木卿、もう少しお時間をいただけませんか?2人だけでお話したい事がある
のです。」
「それは・・・?」
「2人になった時にお話します。どうか応じていただけませんか・・・?」
「・・・解りました。」
 スザクが、静かに了承した。

「それでは、何かありましたら。コールスイッチを押して下さい。」
「解っている・・・。」
 ヴァレーリアが、緊急用のコールスイッチをスザクに渡す。
 そして、神楽那とスザクは隣の部屋に入った。
「では、伺いましょう。2人だけになって話したいこととやらを・・・。」
 ソファーに掛けながら、スザクが神楽那に問う。
「枢木卿。いえ、スザク。ここでは、従兄弟同士に戻って話をしたいの・・・。」
「話したい事は、昔話かい?神楽那・・・。」
 スザクも神楽那の事を名前で呼んだが、その口調は変わらず冷たかった。
「そうじゃないわ・・・。何故、ブリタニア軍に入ったの?他のレジスタンス
に加わっても良かったはずよ。なのに・・・。」
「僕にそんな資格は、無いよ。」
 自分を嘲る様な笑みを、唇がかすかに作る。
「何故?あなたはれっきとした日本人。なにより、あなたのお父様は日本最後
の首相。軍部を抑える為に自決した事で評価が分かれたけれども、それは関
係ないでしょう?」
 それを聞いたスザクは、小さく笑った。
「そうか・・・。桐原公は君にも話していないんだね・・・。いや、他の六家の当主
にもかな?」
「何を・・・?」
「教えてあげるよ。桐原公が隠している、ある事を・・・。」
 そう話すスザクの表情は、暗く、冷たかった。

 スザクと神楽那が隣の部屋で2人きりになってから、ヴァレーリアは銃の手
入れを入念にしていた。
「いささか、神経質がすぎませぬかな?部屋にいるのは枢木卿と神楽那殿の
み・・・。他には誰もいませんぞ。」
 桐原がヴァレーリアに話しかけてくる。
「生憎と私は用心深い性格です。まして、会談の場とは言えここは敵地も同
然。そうではありませんか?桐原公。貴方は先程、あからさまに枢木卿を裏切
り者と見る発言を、なさっていらっしゃったではありませんか?そのような御
仁がいる場所では、敬服する上官の安全に気を配るのは至極当然と思います
が?」
 ヴァレーリアが鋭い目で、桐原を見る。
「あのような冷徹な男が、敬服に値すると?」
「そう考えられるのは、枢木卿の表面的な部分しか見えていないからです。も
っとも、初対面ではやむを得ないでしょうが、貴方は枢木卿をよく知っている
はず・・・。それでも、枢木卿をそう見られますか・・・。」
 銃をホルスターに収める。
「枢木卿は、確かに冷徹な印象が強い方だが、戦場において常に我等の事を
気に掛けてくださる。一人でも戦死者を少なくする為に、自ら陣頭に立ち戦われ
る。だからこそ、我々はあの方を敬服に値する上官として慕っている。」
 そう言って、ヴァレーリアはドアの近くの壁に背を預け、いつでも外に出ら
れるようにした。

「そう・・・、だったのですか・・・。」
 スザクから、スザクの父ゲンブの死の真相と、ゲンブの思惑を聞いた神楽那
はそう言ったきり、しばらく言葉が出なかった。
「藤堂さんも知っているけど、直接会う機会はあれからなかったみたいだね。
僕に資格は無いといった意味が、これで解ったかな?それに、僕はテロには賛
同できない。下手をすれば、8年前に逆戻りだからね・・・。だから、僕はブリタ
ニアを中から変えていこうと思って、軍に入った。それから、僕と同じ理想を共
有してくれる、ユーフェミア殿下に出会えた。特区日本を設立する為に、皇族と
しての身分を捨てる覚悟で、殿下は奔走していた。けれども・・・。」
 そう言葉を切って、スザクの鋭い視線が神楽那に突き刺さる。
「そうね・・・。私達が間接的に死に至らしめたと言われれば、反論の言葉は見
つからない。でも、一年前、日本の独立の為には、黒の騎士団が最後の希望
だった事も理解して欲しいの・・・。だからこそ、私達キョウト六家も援助をしたの
だから。」
「桐原公にとっては、僕はブリタニアに尻尾を振る裏切り者でしかなかったみた
いだしね・・・。もう、その話は止めよう。水掛け論にしかならないしね・・・。それ
に、僕が軍人としてやっている事を考えると、ゼロの事をどうこう言えないという
見方もあるだろうから。で、話したい事はそれだけかな・・・?」
「ええ、貴方がなぜブリタニア軍に入ったか、そして何をしようとしているかを、
私はどうしても知りたかったから・・・。最後に一つだけ聞かせて。」
「何だい・・・?」
「貴方は彼女を、ユーフェミア殿下を愛していたの・・・?」
 それを聞いたスザクの表情に、僅かに悲しみを見て、神楽那は答えを知っ
た。

 スザクとヴァレーリアを乗せた車が、ホテルから出るのを神楽那は見ていた
が、暫くすると厳しい表情で、桐原を見た。
「桐原公、枢木首相の件を何故私達にも伏せたのか、お聞かせいただけませ
んか?」
 明らかに怒りが混じった、神楽那の視線にも桐原は臆する事は無かった。
「もし、事が露見していたら、余力を残し負ける意味がなくなってしまう。そ
れが理由です。誇りを奪われた屈辱をばねとして、独立を目指す事を期待して
いました・・・。」
「ではもう一つ、何故枢木ゲンブ首相の暴走を制止できなかったのですか?」
「それに関しては、私の落ち度ですな。よもや、あのような事をゲンブが考えて
いたとは思いもよりませんでしたのでな。」
いずれにしても、桐原公。貴方の独断が多すぎます。キョウト六家は貴方の
所有物ではありません。それをお弁え下さい。」
 そう言って、神楽那はスザクと2人で話した部屋に向かった。
「桐原公。私も神楽那殿と同意見です。貴方が考えていた事は、私なりに理解
できる。ですが、合議の上に決定を下す為のキョウト六家。それをないがしろに
されるような事はお慎み願いたい。」
 六家の一人、宗像唐斎がそう釘を刺す。
「解っておる。今後は皆とよく相談するよう心がけよう。」
 答えながら、桐原はスザクの事を考えていた。
『ブリタニアを変えるか・・・。途方も無い理想を持っているものだ・・・。だが、枢
木は皇帝直属の騎士。軍の中核をなす者の一人。このまま上り詰めるとすれ
ば・・・。』
 桐原の頭に、一つの地位が浮かぶ。
『枢木スザク。黒の騎士団との戦いが、あれにとっての登竜門だったのやもし
れぬな・・・。』
 特区設立の時期に対する判断も極めて冷静に下しており、政治的センスの
鋭さを感じさせていた。
 桐原がスザクを挑発するような事を言っても、激昂する事無く冷静な態度で
よどみの無い口調で返した事も、驚かせた。
 桐原の知るスザクなら、間違いなく激しい口調で反論していただろうし、枢
木ゲンブを殺害した際のスザクなら、反論すらままならなかっただろう。
『だが、ユーフェミア皇女の死があそこまで、枢木を変えるとはな・・・。』
 8年ぶりに会ったスザクを見て、そう考えていた。

「成る程。特区日本の設立を要求してきたか・・・。」
 スザクから会談の内容を聞いたコーネリアは、不快極まりないという表情を
した。
 コーネリア個人としては一年前の惨劇は、黒の騎士団を支援してきた六家を
纏めて処刑してやりたくなったほどの、出来事だった。
 最愛の妹は殺され善意を踏みにじられた挙句、魔女に仕立て上げられたのだ
から無理も無いだろう。
 だが、当時六家以外に、ナンバーズの自治をつかさどる事が可能な人間もお
らず、シュナイゼルが「ゲットーの復興費を出させて力をそぐ。」という提案
を示した為、処刑は留保した。
「はっ。しかし、自分にこのエリア11の統治に関する権限はありません。さらに
時期尚早と考え、総督にお伝えするのみに留めました。」
「うむ。ところで、貴公から見た六家はどう見えた?私も興味がある。」
「現在のところは、テロ組織に関与している気配も、する意志も感じられません
でした。その点は心配いらぬかと考えます。無論、監視はしておくべきでしょ
う。特に中華連邦やEUと秘密裏に連絡を取る可能性が、将来的には否定し
切れません。かつて、サクラダイトの輸出を通じてできた、パイプのこともあ
りますので。」
「桐原泰三か・・・。サクラダイトの利権で巨万の富を得て、嘗ての日本を影から
操っていたとも聞いている。それくらいはやりかねんかも知れぬな。いずれにせ
よ、まだ監視を緩める事はできぬか・・・。」
 スザクの意見は、コーネリアを充分に満足させた。
「ご苦労だったな。今日はもう休むがいい。明日からの演習もあるしな。他のラ
ウンズと共に、エリア11駐留軍を遠慮なく鍛えてやってくれ。」
「イエス、ユア・ハイネス。」
 スザクは退室した。

 本土からヴァレーリアの他に、ジノたちの副官の部隊も加わってのオオシマ
での演習の最終日、ギルフォードは一体のナイトメアと対峙していた。
「そこか!」
 背後から奇襲をかけてくるナイトメアに、演習用のペイント弾を装填したH
SLライフルの斉射を浴びせるが、相手のナイトメアは俊敏な動きで、次々と
かわし、ギルフォードの駆るドーチェスターに迫る。
「速い!これで本当に量産機か!?」
 模擬戦用のショットランサーを構えて、迫り来るナイトメアに攻撃を仕掛ける。
が、それをかわし、側面から模擬戦用のMVSで斬りかかってくる。
「くっ!」
 反応型ブレイズルミナスで一撃を防ぎ仕切りなおそうとするが、その時間を与
えずドーチェスターの胸に、MVSを突きつける。
「両名ともそこまで。ギルフォード、お前の負けだ。」
 コーネリアの声で、2騎のナイトメアの戦いは終わった。

「あれが、ランスロットの量産型のヴィンセントか。量産型とは思えぬ動きだ
な。」
 ギルフォードが相手にしていたナイトメアを見て、コーネリアはそう感想を
言った。
 RPI−212ヴィンセント。
 グロースターの後継機として開発が始まったが、完成したランスロットを
意識して、高性能なナイトメアにしようとして、開発は暗礁に乗り上げて、設
計中止となったナイトメアである。
 その後、キャメロットが開発を再開して完成した、ランスロットの量産型の
ナイトメアである。
「ランスロットのように乗り手を選ぶ機体にはなっておりませんので、誰でも
騎乗できます。」
 ロイドがそう説明する。
「しかし、高い技量が無くばその性能を引き出す事はできまい。親衛隊用や私
専用のドーチェスターのように、パイロットに合わせた調整ができるとしても
な。」
 コーネリアも、ブリタニアに名を轟かせるパイロットの一人である。ヴィンセン
トを乗りこなす為には、パイロットにも高い技量が要求されると、すぐに見抜い
ていた。
「もっとも、あの男はこの機体では、己が技量を充分に発揮できまい。何しろ、
あのランスロットを乗りこなす騎士だからな。」
 ヴィンセントのコックピットから降りてくるスザクを見ながら、そう言った。

「完全に私の負けです。枢木卿。」
「いえ、思ったより勝つのは大変でした・・・。さすが、ギルフォード卿です。」
「恐縮です。それにしてもヴィンセントの性能は見事な物ですね。実戦配備は
まだですか?」
「まだ、時間がかかりますね。実戦でのテストも残っていますし。」
 オオシマの基地のハンガーに、戻ってからスザクとギルフォードはヴィンセ
ントについて話していた。
「よっ、お疲れ。」
 ジノたちが歩いてきた。
「いかがですか?このエリア11の騎士達の力量は?」
「さすがに、コーネリア総督の軍の騎士達だな。フロートユニットを装備しての
戦いにも大分慣れたみたいだ。これなら、実戦でも大丈夫だろう。特に、グラ
ストンナイツは大したものだ。」
「最後にはヘトヘトにしたくせに・・・。」
「まあ、確かにね。腕を見るのにヘトヘトにする必要は無いと思うよ。」
 技術者達に、フロートユニットの整備のレクチャーをしていたエリファレッ
トが、白衣を着たまま歩いてきて、アーニャの言葉に続く。
「何言ってんだよ。あれ位になるまで鍛えないと、実戦でフロートユニットが
宝の持ち腐れになるだろ。」
「まあ、ジノの言う事にも一理あるわね。」
 不満そうに口を尖らせるジノに、クローディアがフォローを入れる。

「演習は世話になったな。フロートユニットを装備しての戦いにも、これで対応
可能だろう。ラウンズとの手合わせも、良い刺激になっただろうしな。」
「恐縮です。総督。」
 エリファレットが恭しく、礼をする。
「まあ、刺激になったのは私も同じだがな。まだまだ、精進せねばならんよ。
此度の演習でその事がよく解った。今日までご苦労だったな。ところで、急だ
が、エリア13に行く事になってな。よければ貴公らもどうだ?」
「何かあったのでございますか?」
「いや、先程、総督をしている弟のジュリアスと通信していたら、向こうの軍
を鍛えに来て欲しいそうだ。その後、陛下にその事をお話したら、貴公らの了
承があれば、連れて行ってよいと仰られてな。」
 スザクの疑問に、コーネリアが答える。
「私は同行させていただきたく思います。フロートユニットはエリア13にも、
やがて配備されます。その時に備えて、整備のレクチャーをしておきたく思い
ますので。」
「貴公らしいな、エリファレット卿。ヴァインベルグ卿はどうだ?」
「丁度良いので、エリア13の騎士の腕前も見ておきたく存じます。」
「ほどほどにしておけ。アールストレイム卿はどうだ?」
「お供させていただきます。」
「枢木卿は、どうだ?実はジュリアスが会いたがっていてな。貴公とはまだ面
識が無かったゆえ。」
「ジュリアス殿下が・・・?」
「うむ、どうだ。会ってやってはくれぬか?」
「はっ。仰せのままに・・・。」
「では、出発は3日後だ。それまで、演習で疲れきった兵を休ませねばならぬ
からな。」

 しかし、3日後、軍の一部を率いてエリア13に出発したコーネリア達は、
途中で思わぬ事態に直面する事になる。
 インド軍区の一部、タミル・ナドゥ州の勢力が、黒の騎士団と呼応して、エ
リア13に侵攻を開始した事である。

後書き
黒の騎士団が再び舞台に立つのに備えて、少し顔見世をしています。
ランスロットとのシミュレーションは、一期24話のスザクの激昂した感情がなく
冷静にスザクの戦闘能力を再現した物です。
スザクを贔屓目にしすぎると思われる方もおられるでしょうが、冷静に判断した
結果、今のカレンではやはりスザクに勝てる要素はないと結論づけました。
メインとなる六家との会談では、何故スザクがブリタニア軍に入隊したのか。そ
してユーフェミアの死が、どれだけスザクを変えてしまったのか。それを知った六
家がどう考えるか。今後の六家が動きに関連する要素となります。
そして、世界の動きはスザクを巻き込みます。
次回、AFTER TURN04 エリア 13 侵攻。
世界は再び、動乱の時代に入ります。

目次へ戻る。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 3
面白い 面白い
ナイス

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
おお、遂に黒の騎士団の残党と本格的な戦闘に入るんですね。
どう考えても、今の(この話の)ブリタニア軍相手には一矢たりとも与える事が出来るとは思えませんが、どういった戦いになるか、とても楽しみです^^b。

sora
2008/06/16 22:19
soraさん。
いつもコメントありがとうございます。

>今の(この話の)ブリタニア軍相手には一矢
 たりとも与える事が出来るとは思えませんが
 黒の騎士団自体、組織として完成していませ
んし、兵の練度も違いますから、今は対抗する
には難しいでしょうね。
 今は・・・ね・・・。
CIC担当
2008/06/17 22:56

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
ブログランキング・にほんブログ村へ
コードギアス二次小説 AFTER TURN03 前 奏 cogito,ergo sum/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる