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zoom RSS コードギアス二次小説 BEFORE TURN02 朱雀 の 目覚め

<<   作成日時 : 2008/05/08 00:57   >>

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「中華連邦の艦隊は、その後動く様子を見せません。」
「本国からの増援は、後52時間後に到着します。」
 その後も報告は続いたが、議論は始まる気配は無かった。
 コーネリア自身、軍人として極めて優秀で統率力にも富んでいた為、いざい
なくなると会議は空転していた。
「中華連邦から、何らかの声明が出されるはずだ。と、言ってもこのエリア1
1に侵攻する事を知らせる為のだがな。」
「では、中華連邦は本気でこのエリア11に攻めてくると、ギルフォード卿は
おっしゃられるのですか?」
「よほどの事が無い限りはな。奴らとて、海水浴を楽しむ為に出撃したわけで
はないのだぞ。」
 なにをいまさら。と、怒鳴りつけたくなるのを我慢してギルフォードは答え
た。
 会議が始まって2時間にもなるが、まともな意見一つ出てこないことにギル
フォードは疲れを感じ始めていた。
「ギルフォード卿!中華連邦が声明を発表する模様です。」
 会議室のモニターに中華連邦の高官らしき男が映る。
「あれは、李紹。大宦官が出てきたか・・・。」
 中華連邦は天子を頂点とする国家だが、実質は大宦官と呼ばれる官僚達
が実権を握っており、天子はお飾り同然なのが現状である。
「この度の旧日本国、ブリタニア側呼称エリア11における大虐殺、解放軍で
あった黒の騎士団を討伐した事実に対し、我が国は極めて遺憾の意を示
す・・・」
 声明の途中で画面にノイズが走った。
「故障か?この大事な時に!」
 ギルフォードは苛立ちのあまり、机を拳で叩いた。
「私は、神聖ブリタニア帝国第二皇子にして宰相である、シュナイゼル・エ
ル・ブリタニアです。本日は特区日本設立式典での虐殺事件に関して、重大
な事実をお知らせします。」

「シュナイゼル殿下!」
 幕僚の一人が声を上げた。
「エリア11副総督にして、神聖ブリタニア帝国第三皇女ユーフェミア・リ・ブリ
タニアによる虐殺はゼロのマインドコントロールによる事件と判明いたしまし
た。なお、この情報は黒の騎士団の残党から入手したものであり極めて信憑
性が高い物であります。この度の虐殺を防げなかった事は誠に遺憾であり、
犠牲者には深く哀悼の意を表します。」
 一旦言葉を切って、シュナイゼルは一分間ほど黙祷し再び口を開いた。
「既に虐殺の首謀者であるゼロは、我が軍に追い詰められ死亡いたしました。
黒の騎士団も敗退し各所に散り散りになって逃亡しておりますが、治安を回復
させた後に全力を上げて捜索いたします。幸い、各地の暴動も沈静の方向に向
かっており、中華連邦やその他の国が行動を起こす必要はなくなりつつあると
言えましょう。中華連邦艦隊には即刻本国へ撤退する事を求めます。それでも
尚、エリア11に侵攻した場合、我がブリタニアは断固としてそれを排除する
事を宣言いたします。しかし、我が国は無用な流血を好みません。中華連邦の
関係各位にはどうか現状をご理解していただき、流血を回避する術を選択なさ
る事を切に望みます。」
 スクリーンに映っていたシュナイゼルの映像が消え、大宦官李紹の映像が再
び映った。
「き、協議の上、これからの我が国の対応を発表させていただくものであ
る。」
 慌てたようにそう言い、モニターの映像が消える。
「さ〜て、どう出てくるかねぇ〜。中華連邦は?」
 ロイドが組んだ指の上に顎を乗せ、呟く。
「彼らの大義は、失われました。このまま侵攻しても無駄な血が流れるだけで
す。その程度は理解しているでしょう。」
 特に表情を変えず、スザクはロイドに自分の意見を言った。
「大義ねぇ〜。国家の大義なんていうのは、その国の都合でいくらでも生み出
されるんだよねぇ〜。」
 スザクが何か言おうとしたが、ギルフォードが発言したので何も言わなかっ
た。

「中華連邦が新たに声明を発表するまで、暫く間があるだろう。このまま撤退
してくれればありがたいが、そうならない可能性も考慮しておくべきと考え
る。艦隊が侵攻して来た際の作戦について、策がある者がいれば遠慮なく発
言してもらいらい。」
 そういい、会議に出席している人間全員を見てから、座る。
「ギルフォード卿。先程のシュナイゼル殿下の声明にもありましたとおり、彼
らの出兵の意味はもはやありません。撤退する可能性が濃厚と考えますが。」
「それに、ここで侵攻してくれば、我が国との全面戦争に発展しかねません。
シベリアの利権で関係が冷え込んでいるEUが援軍を派遣してくる可能性も
ほぼゼロ。杞憂に過ぎぬと考えます。」
 お前達は、いままで何を見てきたのだ!そう怒鳴りつけたくなるのを、ギル
フォードは必死に押さえ込んでいた。今まで起きるはずの無い事がこのエリア
11で何度起きてきた事か。
 その中でギルフォードは、知略を持って不可能を可能とすることが、考えて
いる事よりも多い事を思い知った。故に、今回の中華連邦の行動にも注意を払
っていたのである。
大宦官達も決して無能ではない。こちらが備える事も充分に考えている可能
性はかなり高いと、考えていた。
「みなさん。もっとちゃんとした意見言ってくださいよ〜。おかげで欠伸が出
てきそうなんですから。このままだったら、ランスロットの整備に戻りたいん
ですけどねぇ〜。」
 皆が口を開かないままでいる時、ロイドが不謹慎と取られても文句の言いよ
うが無い事を言って、隣で何か意見がありそうなスザクを横目で見ながらわざ
とらしく欠伸をした。
「貴様、この重要な会議の最中に何と不謹慎な!!」
「シュナイゼル殿下の威光を嵩にきて、人を馬鹿にした態度を取りおっ
て!!」
「たかだか一少佐の分際で、何を言うか!口を謹め!!」
 案の定、参謀達がロイドを非難し始めた。
「でも、中華連邦は攻めて来ないって考えていらっしゃるんでしょう?なら、
我々特派がここにいる意味もありませんよねぇ〜?それに、皆さんにとって特
派は“従軍しているだけのイレギュラー”なんですよねぇ〜?だったら、いて
もいなくても変わらないと思いますけど。」
 ロイドの言っている事を無視する事は、幕僚達には不可能だった。事実、彼
らは中華連邦が攻めて来る可能性はゼロと考えているし、特派をイレギュラー
扱いして邪険にしているのも事実だからである。
「どうやら、いなくてもいいようですねぇ〜。じゃ、失礼させていただきます
よ。」
 スザクを立たせようと促した時、ギルフォードがそれを制止した。

「アスプルンド少佐。特派は今の状況をどう考えているか、意見は何か無い
か?」
「私に聞くより、枢木卿に聞く方がいいと思いますが?彼、何か考えがあるみ
たいですし。」
 ギルフォードはスザクの表情を見た。
「枢木卿、何か意見があるのなら。遠慮なく言って欲しい。」
 お前如きに発言の資格は無いわ。そう言いたげな参謀達の視線を受けなが
ら、スザクは発言した。
「此度、中華連邦が差し向けた戦力が、東シナ海にいる艦隊だけか否か。それ
によるかと。」
「と、言うと?」
「東シナ海の艦隊の他に、部隊がいる可能性です。」
 そうスザクが意見を述べると、参謀達が一斉に批判し始めた。
「馬鹿な!!それこそあり得ぬわ!」
「もしここで新たに艦隊を出撃させれば、我が国と全面戦争に突入するリスク
が格段に高くなる。その程度も解らんのか!青二才が!!」
「所詮、ナンバーズではその程度の事も解らぬと見える。このような者を昇進
させるとは、コーネリア総督も何をお考えか・・・。」
 その言葉を聞いた途端、発言した参謀はギルフォードの鋭い視線を感じ顔色
が蒼白になった。
「続けてみよ。コーネリア殿下は何をお考えか、思うことを余すところ無く申
してみよ・・・!」
 ギルフォードはダールトンが戦死した為に、実質的にエリア11の軍事部門
のナンバー2ともいえる存在で、租界でも黒の騎士団との戦いで最前線に立ち
ブリタニア軍を勝利に導いた功労者である。実績で言えばここにいる幕僚の中
で彼に及ぶ功績を上げた者は一人もいない。
 今更ながら、その事実を思い出し参謀達も口を開くのを止めた。
 また、コーネリアに絶対の忠誠を誓うギルフォードにとって、コーネリアを
侮辱するような発言は何においても許しがたいものであった。
 参謀達は怒りの矛先をやり過ごそうと、額の冷や汗を拭いながら必死に考え
を巡らしていた。
 一方のギルフォードは参謀たちに嫌気がさしていた。自分達で物事を考えよ
うとせず、唱えるのはありきたりの常識論。非常時に当たって対処する術を持
たない参謀達に対して、既に忍耐という錠前は吹き飛んでいた為、一切遠慮を
しなかった。
「いえ、決してそのような意味では・・・。」
「我々は只、若い枢木卿に年長者として助言をしようと思った次第でし
て・・・。」
 次々に、弁解を述べる参謀達を見て、ギルフォードが再び何か言おうとした
時だった。
「ギルフォード卿、この場に我々特派がいては議論が進まず有効な手立てを打
てぬ可能性もあると考えます。故に退室させていただきたく存じますが、いか
がでしょうか?」
 スザクの発言で、今は対応策を決める事が最優先だと自分に言い聞かせて、
どうにか冷静さを取り戻した。
「いや、それには及ばぬ。続けてくれ。」
 ギルフォードは机の上にあるミネラルウォーターを一口飲んだ。
「そ、そうだな。枢木卿の意見にも聞くべき所があるな。」
「うむ、まずは聞いてから考えればよかろう。」
 さっきとはうって変わった参謀たちに、ロイドは軽く肩を竦めた。
「ありがとうございます。確かにここで新たな艦隊を出撃させれば、中華連邦
と我が国との全面戦争の確率は高くなるでしょう。艦隊ならば・・・。」
「成る程、お得意の義勇軍か・・・。」
 苦々しく呟いたのは、クレインである。30代半ばの指揮官で猛将や知将と
言われるほどではないものの、堅実な手腕で任務を全うする事の出来る人物で
ある。
 黒の騎士団との戦いにおいても、防衛線の一つを猛攻にさらされながらも的
確な指揮で、守り抜いている。
「はい。義勇軍は有志団体で、中華連邦軍の指揮系統には組み込まれておら
ず。故にエリア11に手出しをしてきても、中華連邦は本国の命令ではないと
言い切ることが出来ました。今回の中華連邦の軍事行動は確かに今迄に無く大
規模でありますが、万が一失敗したとしても言い訳は用意している筈です。と
は言え、いざとなれば艦隊も「一司令官による、暴走である。」と切り捨てる
可能性も考えられますが・・・。」
 今度ばかりは、幕僚達も口を差し挟もうとはしなかった。
 現在、中華連邦とブリタニアは直接戦火を交えてはいない。が、正規の指揮
系統から外れている義勇軍を差し向けて、各地のレジスタンスに重火器に留ま
らずナイトメアまで提供している事は周知の事実で、コーネリアもこれに対し
て出征を重ねていた。
 正規軍ならともかく義勇軍を使用する可能性は充分考えられる。
「義勇軍が出てくるとなると、どこに侵攻してくると考える?」
 クレインが説明の続きを求めてくる。
「海に面した地域、特に中華連邦側であるカナザワ、トヤマ、ニイガタ、マイ
ヅル等が濃厚かと。しかし、義勇軍が来るといっても今までとは違うやり方で
来ると考えます。」
「違うやり方?どういう事だ。」
 怪訝そうな表情で尋ねてきた男の名をゲインズバラという。三十代後半で見
事な髭と逞しい体つきの、歴戦の指揮官である。
 基本的に幕僚会議では、コーネリア麾下の指揮官達は発言をしようとしなか
った。
 意見や考えが無いからでは無く、クロヴィスの頃からエリア11にいる参謀
達との衝突を避けるためである。贈収賄に手を染めてきた参謀達を、赴任して
きたコーネリアは一斉に逮捕・更迭した。それ自体は必要であったが、他の参
謀たちは、いずれ自分達の権限を奪われやがてお飾りになるのではという不安
があった為、ギルフォードやダールトン以外は発言を控えていた。が、今回は
遠慮無用と判断し議論に加わり始めた。
「今までのように武器を供与するだけなら、他にやり方があると考えます。」
「供与するだけ・・・?マフィアによる密輸に偽装するということか・・・。」
 クレインがスザクの言いたいことを理解した。
「自分が予想した地点の多くは、現在も暴動が続いております。さらに、総督
の出征で主だった組織は潰れていますが、形を変えて関係が続いている可能性
は高いと考えます。向こうとて諦めがよい性格ではないでしょう。」
「厄介な!すると、リフレインの密輸ルートを、使う可能性も出てくるぞ!」
「カナザワ等の海沿いの地域は、周辺に出回っているリフレインの陸揚げの場
所でもある。ならば、枢木卿の考えにも納得がいく。」
「マフィアによる密輸なら、こちらが言えることにも限度が出てくるからな。
精々取締りの強化を要求するのが精一杯なのが現状だ。」
 当初は特派を好意的に見ていなかったコーネリア麾下の指揮官達も、スザク
が戦功を上げ続けるのを見て、見方は随分変わりコーネリアの手前表立っては
言わないが、スザクを高く評価していた。
 実際スザクが予想した地点は、軍や水上警察の監視が行われているにも関わ
らず、リフレインの陸揚げ場所となっている。
「貴公ならどう対応する?枢木卿。」
 ギルフォードが尋ねる。
「既にコーネリア総督は、水上警察に水中用ナイトメアを配備させておられま
す。それに海兵騎士団を加えて備えるが、良いかと。陸上の暴動にはどのみち
役には立ちません。が、海でなら存分に力を発揮します。加えて、中華連邦は
水中用ナイトメアを配備しておりません。その点でも、こちらが有利と考えま
す。問題は中華連邦艦隊です。彼らも陽動に撤する事は無いでしょう。暫くは
東シナ海にいるでしょうが、そう時を置かずにトウキョウ租界を狙うと考えま
す。故に、何としても艦隊を東シナ海にいる間に決戦に持ち込み打ち破る必要
があると判断します。」
「異議なし!」
「ギルフォード卿。枢木卿の案、用いるべきと考えます。」
 ターナー、マルサス等の指揮官達は、全員スザクの案を指示した。
「よし、行動可能になった水上警察と海兵騎士団は、担当海域での警戒を厳重
にするよう伝えよ。暫く休憩とする。再開は1時間後だ。」
「イエス、マイ・ロード!」
 その時各地の状況報告が入った。
「やはり黒の騎士団から漏れた情報が効いたな。トウキョウ租界周辺以外の地
域でも黒の騎士団を支持していなかった過激派を除いて、戦意を失い既に鎮圧
され始めた。運はこちらに向いてきたぞ。」
 その後、1時間の休憩となった。

「いや〜、驚いたよ。議論が全然進んでいないのに、あそこまで考えていたな
んてね。君、参謀としての才能まであったんだね〜。」
「いえ、ゼロならどうするだろうかと考えてみただけです。正攻法で戦う我が
軍に、ゼロは思わぬところから奇襲を仕掛けてくる事が多くありました。これ
みよがしに艦隊を出撃させれば、通常は艦隊の迎撃にどうしても思考が傾いて
しまいます。ゼロならばその隙に奇襲をかけてくると考えました。そこで中華連
邦が投入する戦力は何か?頭に浮かんだのが義勇軍です。正規の指揮系統
から外れているなら、いくらでも使いようがあると思い、辿り着いた結論が先程
の会議で述べた意見です。」
「中華連邦が本国に撤退するとは考えていなかったわけだ。大義が失われたん
じゃなかったのかな?」
「だからと言って、それだけを前提にして事態を考えるわけにはいかないと考え
ました・・・。」
 スザクの話を聞きながら、ロイドは表情を見ていた。
『やっぱり、いつもの彼じゃない・・・。』
 軍務についているときにはいつもの年相応の表情は消えても、童顔のせいか
あどけなさが見える。が、今はそれすら消えて冷徹な軍人としての顔になって
いる。
 ロイドが知る限り、このような表情をスザクが見せた事は無い。
 今もスザクの頭の中は、中華連邦軍への対応策のことで頭が一杯なのだろ
う。紙コップの中のコーヒーは、口をつけられないまま既に冷め切っていた。
「せっかくのコーヒー。口もつけずに冷ましてしまうのはもったいないのでは
ないかな?枢木卿。」
 そこには、紙コップを二つ持ったギルフォードがいた。
「先程は申し訳ありません。出すぎた事を申しました。」
「いや、私こそ貴公に感謝している。貴公が自分の考えを述べてくれたからこ
そ、議論も進んだのだからな。休憩が終わった後も、遠慮なく意見を言ってく
れ。」
「はっ。」
「頼むぞ。正直、今回は参謀達があてにならん。非常時にどう対処すればいい
か解っておらず、ただ常識論を合唱するだけのオーディオプレイヤーとなって
いる。我々でどうにかするしかあるまい。」
 スザクにコーヒーを渡して、隣に座ってから溜息をつくと、コーヒーを口に
運ぶ。
「貴公もコーヒーでも飲みながら肩の力を抜け。幕僚会議は初めてだから、思
ったより疲れている筈だからな。」
 それを聞いて、スザクもコーヒーを口に運ぶ。
「さて、中華連邦はあとどれ位で声明を発表してくるかな。」
 誰に聞かせるでもなく、ギルフォードがポツリと言った。
「向こうもシュナイゼル殿下の演説を聞いて、大分驚いていたみたいですから
ね〜。そこから会議で結論を纏めるのに4、5時間は最低必要だと思います
が。」
 ロイドがギルフォードに意見を言う。
「休憩を踏まえて最低でも一時間後には、声明を発表してくるわけか・・・。」
 コーヒーを飲みながら、再びギルフォードが考え込んだ時、シュナイゼルか
らの通信文が届けられた。
「レクレールからの通信文であります。」
 伝令兵から受け取った通信文にギルフォードが目を通した。
「到着まで、後35時間だと?どういうことだ。」
「多分、途中に補給艦を待機させて、出来る限り速力を上げて来たんでしょう
ね。今頃は全速で向かってきているはずですよ。」
 ロイドの答えに成る程と答えて、残っていたコーヒーを喉に流し込んで立ち
上がった。
「さて、そろそろ会議の再開の時間だな。」
「はい。」
 コーヒーを飲み終わったスザクも立ち上がり、他の指揮官や参謀達に混じっ
て会議室に戻った。
 そんなスザクの後姿をロイドは見ていたが、溜息をついて会議室に向かった。

 その頃、レクレールでは参謀や指揮官達が集められ、会議が開かれていた。
「中華連邦からの声明は先程の通りだ。残念ながら戦う以外に道はなさそう
だ。」
 シュナイゼルの言葉に、会議に出席している人間達は表情を固くしていた。
『暴動をいまだ鎮圧しきれていない状態は我が中華連邦にも悪影響を及ぼす
と判断を下し鎮圧の為、我が中華連邦は武力介入を行う。尚、これは領土拡張
にあらず、極東の平和を切望する我が国の苦汁の決断である。既に東シナ海に
向かっているブリタニア軍は、即刻本国に戻られたし。48時間後に我が軍は
彼の地を平定する為の軍事行動に移る。』
 結局中華連邦は侵攻する旨の声明を発表したのである。
「何が苦汁の決断か!!元々、そのつもりであったろうが!!」
 海兵騎士団を指揮するロックウェルが、机を強く叩いた。
「ロックウェル卿、ここで我らが激昂しても何の徳にもなりません。今は中華連
邦の艦隊との戦いでの作戦行動を第一にお考えになるべきです。」
「そうでしたな・・・。いや、見苦しいところをお見せして申し訳ない。」
 ロックウェルが、エリファレットに頭を下げる。
「そう恐縮なさらないで下さい。私とて怒りたいのは同じなのですから。」
 恐縮するロックウェルに、エリファレットは柔らかい表情でそう答える。
「ロックウェル。その怒りは戦いのときまで取っておいてくれ。どのみち海で
の戦いは海兵騎士団が主力になるのだからね。」
「イエス、ユア・ハイネス!」
 その声にシュナイゼルは頷いて、会議に参加している幕僚達を見回す。
「侵攻を48時間後と通告してきた以上、向こうは我々が後35時間後に到着
するとは思ってはいないだろう。そこをついて短期決戦で艦隊を叩き中華連邦
の戦意を喪失させ、外交で決着を図る。このまま中華連邦との全面戦争に突
入するのは得策ではないからね。」
 幕僚達が一斉に頷く。
 EUとの戦いが予断を許さない状況で、中華連邦とも全面戦争に入り二正面
作戦を取るのは明らかに得策ではない。
 故に、シュナイゼルは周辺のエリアに駐留している軍を出動させず、出動す
る気配だけ見せてけん制する事によって、時間稼ぎをしていた。が、最後通告
をしてきた以上、もはやそれも限界となった。
「後は、エリア11の駐留軍がどう動くかですな。うまくこちらと呼応できれ
ば挟撃が可能になりさらに早く戦いを終わらせる事が出来るのですが・・・。」
 総参謀長のスタインベックが腕を組みながら考え込む。
「向こうでも対策を練っているはずだ。何か知らせてはきていないかな?」
「はっ、未だに。」
「ふむ。そうか・・・。ギルフォード卿の事だ。うまくやってくれていると思
うが・・・。」
 顎をつまみしばし考え込んでいたシュナイゼルは、エリファレットに話しかけ
る。
「エクターの調整はあとどれくらいで終わるかな?」
「後30時間程で終了します。」
「充分だ。戦闘が開始されたら、艦載機と共に海兵騎士団に先行。出来る限り
相手を霍乱してくれ。その方が、海兵騎士団も仕事がやりやすくなる。」
「イエス、ユア・ハイネス。」
「恐れながらシュナイゼル殿下、それではナイチンゲール卿がかなりの危機に
さらされます。わが海兵騎士団との相互支援ができる作戦を考えるべきか
と。」
 シュナイゼルの作戦案に、ロックウェルが作戦案の修正をすべきとの考えを
示す。
「エクターとポートマンでは共同作戦を取る場合、今回のような作戦の方がむ
しろそれぞれの能力を発揮できます。それに彼我の速度を考えますと相互支
援は無理でしょう。今回は艦載機との奇襲です。別に支援が無いわけではあ
りません。それに、私とてナイトオブラウンズの一人に名を連ねる騎士。このよ
うな時に力を発揮してこその、ナイトオブラウンズと考えます。ロックウェル卿の
お心遣い、誠にありがたく思います。ですが、ご心配なさらないで下さい。
私も、そう簡単にやられるつもりはありません。それにエクターも出撃までには
調整が完了します。どうかご安心下さい。私は大丈夫です。」
 ロックウェルの心遣いに感謝の言葉を述べながら、安心させるように言った。
「いや、こちらこそ失礼いたした。そこまで申されるなら、もはや何も言いますま
い。」
「ナイチンゲール。支援があるとしても、危険な作戦である事に変わりは無い。
くれぐれも注意してくれ。向こうは正規軍だからね。」
「承知しております。私もここで死ぬ気はありません。必ずや生きて帰ってまい
ります。」
「ああ、待っているよ。必ず生きて帰ってきてくれ。」
「イエス、ユア・ハイネス。」
 そこに一通の通信が入った。
「失礼いたします。エリア11から通信が入りました。」
 シュナイゼルが、通信文を読む。
「どうやら、挟撃が可能になりそうだ。既に、出撃準備に入っているそうだよ。」
 その後、部隊配置等の協議を行い、幕僚会議は終了した。
 
「ふむ、特派が奇襲をかけ敵の旗艦を撃沈し、指揮系統を破壊。増援部隊と呼
応して、敵艦隊を分断して各個撃破する。成功すれば戦いは早くに終わるだろ
うが、特派はかなりのリスクを負うことになる。お前にしては随分大胆な作戦
だな?ギルフォード。」
 目を覚まして医師の診察を受けたコーネリアは、幕僚会議で決定した作戦案
を聞いていた。
「いえ、今回の作戦の原案は、私が考えた物ではございません。」
「すると、参謀達か?いや、それはありえぬか・・・。あの連中がこのような作戦
を立案するとも思えん。一体誰が立案したのだ?」
「枢木卿でございます。」
「何?あの男がか・・・。」
 ギルフォードの答えに、コーネリアは驚きを隠せなかった。
「枢木にこのような才能があったとはな・・・。」
「私も驚きました。中華連邦の作戦案を看破したのも彼です。実際、行動可能
になった部隊は、マフィアに偽装した義勇軍の輸送船を数隻拿捕し、暴動を煽
っているテロリストとの通信記録も入手いたしました。」
「そうか、中華連邦の艦隊を撃破した暁には、それに対しても報いねばならん
な。ところで、率いる部隊だが、グラストンナイツを連れて行かなくて良いの
か?」
 協議の結果、派遣する部隊はギルフォードを指揮官として、ナイトメア八個
中隊。他に自走砲等の装甲車両を四個大隊。さらに、海兵騎士団や航空機部
隊が加わる。
 現在の空輸能力の限界と、租界の守りを考えた上でのぎりぎりの数である。
 特にナイトメアは、トウキョウ租界に配備されている数の四割が動員されてい
る。
 通常ならば艦船を動員するところだが航路付近の治安が回復していない以
上、空路で行くのがベターだとギルフォードは判断していた。
 トウキョウ租界の守りはクレイン、ゲインズバラ達に任せ、ターナー、マルサス
らの部隊に加えギルフォードが親衛隊を率いる。
「本来ならば、私はコーネリア殿下をお守りせねばならぬ身。しかし、ダールト
ン将軍亡き今、私が軍を率いねばなりません。故に、彼らに殿下を守らせま
す。」
 それを聞くとコーネリアは軽く笑った。
「そなたの心だけ置いてゆくがよい。此度は重要な戦いだ。クレインたちもい
るし、周辺は落ち着きを取り戻した。トウキョウ租界周辺の部隊に守りを固め
させて置けば、ここを守る城壁となろう。グラストンナイツを連れて行き、私
の分まで存分に戦え。我が騎士ギルフォードよ。」
「イエス、ユア・ハイネス!必ずや吉報をお届けします。」
「頼むぞ。」
 ギルフォードが病室から出ると、コーネリアはベッドに横になりながらスザ
クの事を考えていた。
『まさか、これほどの才能を持っていたとはな・・・。ユフィ、お前はそれを知
っていたのか?いや、違うな。お前は、私ができぬ物の見方をしていた。そ
うなのだろう?ユフィ。』
 そう考えたことが、この後のエリア11の統治策を一変させることになる。

後書き
第二話です。
今回は一期の23話で出てきた、東シナ海の中華連邦艦隊との戦いの前の、作
戦会議を主な内容としました。
私が銀河英雄伝説のファンと言うこともあり、こういう会議の場面は好きなんです。
今回はスザクが自ら立案した作成を提案していますが、黒の騎士団との戦いで、
学んだ点が大きかったのではと考えたからです。
私は昔将棋をよくやっていたのですが、強い人を相手にすると不思議と自分のバリ
エーションが増えていった経験があります。
その意味では、寡兵であるにも関わらず、知略でブリタニア軍に勝利してきた黒の
騎士団の作戦行動は、非常に参考になると考えてこういう展開になりました。
スザクは、決して馬鹿ではありませんし、16話でナナリー救出の手立てを考えた
事から、冷静であれば今までの経験を生かすことが出来ると考えました。

次回はBEFORE TURN03 東シナ海 会戦です。

実を言うと、ギルフォードがコーネリアに話した作戦案には、孫子等を読んでいる
方が、「これは必要ないだろう。」と、考えるところがあります。
それは、次回に明らかになります。

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内 容 ニックネーム/日時
ルルーシュが好きな私としてはちょっと寂しいのですが、その分R2のスザクが大好きなので、ワクワクしながら読んでいます。
初回からとても読み応えがあったので、急いで2話を開きました。私も銀河英雄伝説のファンで、作戦会議好きです。今回の参謀と実戦指揮官の対比に、冷静なスザクが絡むというのは、実に美味しいシーンでした。この作戦がどれほど中華連邦の勢力図を書き替えるきっかけになるか、また、ナイトオブラウンズへと駆け上がる、枢木卿の活躍はどうなのか。考えるだけでたまりません。
今夜は時間がないので、明日以降、続きをじっくり読ませていただきますね。
余談ですが、アニメ本編でスザクが枢木卿と呼ばれた瞬間、私が思い起こしたのはキルヒアイス閣下でした。オール・ハイル・ブリタニアには、ジーク・カイザー・ラインハルト。ギアスには、かなりの頻度で銀英伝の記憶が刺激されています。おかげで、本文中、ロイドさんの『イレギュラーズ云々』には、この人は確かに第十三艦隊向きだ、と思わずにやり、としてしまいました!
cha-mo
2008/07/25 03:23
cha-moさん。
コメントありがとうございます。

>初回からとても読み応えがあった
 そう言っていただけると、嬉しいです。頑張った
甲斐があったというものです。
 二次創作ですので、ラウンズやナイトメアの設定
は少し変わりますが、楽しんでいただけるよう、頑
張ります。
CIC担当
2008/07/26 23:47

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