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zoom RSS コードギアス二次小説 BEFORE TURN01 ゼロ 亡き 後

<<   作成日時 : 2008/05/05 13:28   >>

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 爆音が響いた。
 それは、スザクの目の前にいたある男が胸につけていた、流体サクラダイトが
爆発した音である。
 神根島という小さな島にある遺跡でその男を追い詰めたスザクは、胸について
いた流体サクラダイトを無視するかのように心臓を躊躇無く打ち抜いた。
『俺の心臓の鼓動が止まれば、爆発する。お前達もろとも。』
 だが、その言葉どおりにはならなかった。
 爆発はしたが、それは死体を吹き飛ばす程度の規模だった。
 エリア11と名を変えた日本に現れ、ブリタニアに宣戦布告をした謎の仮面の男
ゼロは、遺跡の床に黒い焦げ後を残しこの世から消えた。

「ゼロ、これが君のやってきた事に対する結果だ・・・。」
 スザクは焦げ後を冷たく見下ろした。
 特区日本設立式典の際、ゼロと会談に臨んだスザクの主、神聖ブリタニア帝国
第三皇女ユーフェミア・リ・ブリタニア。
 が、突如人が変わったように日本人への虐殺命令を下したその時、黒の騎士
団が介入。
 ユーフェミアはゼロに撃たれた。
スザクはユーフェミアをアヴァロンに運んだが、既に手遅れだった。
 ベッドの上にいたユーフェミアは虐殺を命じたユーフェミアではなく、ブリタニア
人であろうがなかろうが、平等に暮らせる世界を夢見ていたスザクの知る彼女
だった。
『日本人の方は・・・、喜んでくれた・・・?』
『スザク……あなたに、逢えて・・・。』
ユーフェミアの今際の言葉が未だにスザクの耳から離れなかった。
 みなの幸せを願っていたこれ以上なく彼女を貶めた、ゼロと超常の力ギアス。
 遺体の傍らに付き添っていたスザクに、その事実を告げたのは謎の少年だっ
た。
 そして事実は、真実だった。

 カレンの気配はもう無かった。
 ゼロの口から告げられた、「日本人を利用していた。」という真実。
 余程堪えたのだろう。
 この場を去ったのだろうが、スザクにはどうでもよかった。
 ユーフェミアの仇を討ち、汚名を雪ぐ。その為に、この神根島にきたのだから。
 その先の、自分自身の生にも死にもなんら関心は無かった。
「アヴァロンへ、こちらブリタニア騎士候枢木スザク少佐・・・。」
 ランスロットを起動させたスザクは、すぐにアヴァロンへ通信を入れた。
「スザク君。良かった、無事だったのね。」
 聞こえてくる声は、セシルの声だった。
「はい。そちらの戦況は?」
「黒の騎士団は敗走したわ。租界周辺の暴動は大分収まってきているけど、中華
連邦の艦隊が東シナ海に進出しているの。今は侵攻してくる気配は無いけど、こ
の後はどうなるか解らないわ。とにかくすぐ戻ってきて。」
「解りました・・・、直ちに帰還します・・・。その前に、重要な話があります。」
「何?」
「ユーフェミア殿下のことです。式典での・・・。」
「何か、解ったの?」
 スザクはゼロの事を話し始めた。
「そうだったの・・・。」
 しばらく呆然としていたセシルだったが、スザクの話には納得がいった。
 どう考えても、ユーフェミアは特区での虐殺をするような人間ではない。セシル
自身もユーフェミアの行為に大きな疑問を感じていた。
「とにかく、すぐ戻ってきて。ランスロットの整備もしないといけないから。」
 そう言い通信を切った。
「スザク君、僕を殴ったときとは全然別人だねぇ。」
 溜息をついていたセシルにロイドが話しかけた。
「やっぱり、ロイドさんもそう思われます?」
「そりゃね。あの時は激情で理性が吹き飛んでいたけど、今は酷く冷静なんだよ
ねぇ〜。むしろ冷静すぎる。」
「ええ。」
 通信をしている時のスザクの表情は冷たく、声は乾いていた。
 かつてのスザクの面影はどこにもなかった。
 そう考えると自然と表情が重くなる。
「一応、整備の間に長時間の戦闘が心身に影響を与えていないかって理由で、メ
ンタルチェックの時間を僕は作っておくけど、君も気をつけておいてね。それと、さ
っきのスザク君の報告も上に上げておくよ。」
 そう言って、ロイドはブリッジを出て行った。
「スザク君・・・。」
 セシルは沈痛な表情で、掌を握り締めていた。

 エリア11派遣軍の旗艦である戦艦レクレールで、ある人物が報告を聞いてい
た。
 長身で端正な容貌をしている男の名をシュナイゼル・エル・ブリタニアと言う。
 第二皇子であり帝国宰相を務める彼は、ブリタニア皇帝の子達の中でも特に有
能な人物である。
 今回のエリア11への派兵の司令官を誰が務めるか、議論が堂々巡りになりそ
うになった時に彼自ら志願した。
「そうか・・・、そういう裏があったのか・・・。私自身ユーフェミアが何故あの
ような事をしたのか、不思議に思っていたのだが、そういうことだったのか。」
 シュナイゼル自身、特区日本設立式典が一変して虐殺の場にかわった時は言
葉を失ったが、現エリア11総督、第二皇女コーネリア・リ・ブリタニアの専任騎士
であるギルバート・G・P・ギルフォードからの報告を聞いてシュナイゼルは納得が
いった。
「枢木君には感謝せねばならないな。ユーフェミアの汚名を雪ぎ、仇まで討ってく
れたのだからね。ところで彼はどうしているのかな?」
「今はメンタルチェックを受けています。ただ・・・。」
「ただ、何かな?彼に何かあったのかい?」
 ギルフォードの口調に疑問を感じた、シュナイゼルが問う。
「はっ。これは私見なのですが、私が知る限りの彼とはまるで別人のように思え
ます。」
「別人?」
「冷静を通り越し、あまりにも冷徹すぎるように思えます。まるで機械のように・・
・。」
「そうか・・・。ユーフェミアの死が彼を変えたのかもしれないな。メンタルチェックの
結果が出たら私にも送信してくれ。目を通しておきたい。」
「何か気になる点がお有りですか?殿下。」
「あるといえば、あるかな。まだ子供の部分が残っていたが、彼自身には私は好
感を持っていたからね。個人的に気になるだけだよ。」
「承知いたしました。結果が出しだい、お送りします。」
「頼む。それと、コーネリアの容態は?」
 目の前にいるギルフォードの主君にして、自分の妹であるコーネリアの容態を
尋ねる。
「枢木が密かに医師を手配しておりまして、そのおかげで手術は無事に成功。先
程意識が戻られました。復帰まで二ヶ月ほどかかるとの事です。」
「そうか、安心したよ。つくづく枢木君はよくやってくれるな。私としてもまた国とし
ても、それに報いねばならないね。到着するまで、軍の指揮を頼むよ。」
「イエス、ユア・ハイネス。」
 通信を切った後、暫く目を閉じていたシュナイゼルは、傍らの幕僚の一人に声を
掛ける。
「ナイチンゲール卿を呼んでくれ。それと、本国に通信を。」

 レクレールにあるナイトメアの格納庫で、一人の男がコンソールの前で作業を行
っていた。
 歳は20代半ばを少し過ぎたくらいだろうか。伸ばした橙の髪を束ねている。
 白衣を着ているが、その下に着ている服は技術者とも士官とも違っていた。
 男の前にはシートをかけられたナイトメアがある。彼はその機体の最終調整の
最中だった。
「修正プログラムのインストールは完了。これで、フロートユニット使用したときの
操縦のレスポンスは理想通りといっていいかな。あとは、シミュレーターで確認
しておくか。地上での戦闘時の修正プログラムはその後でいい。とりあえず確
認をしてから・・・。」
 コンソールから離れて、ナイトメアのシミュレーターを起動させようとする。
「ナイチンゲール卿、シュナイゼル殿下がお呼びとの事です。」
 伝令兵からその事を聞いた三十代前半の士官に呼ばれたシミュレーターを起
動しようとしていた男は、コンソールの元に降りてきて、白衣を脱ぎ瑠璃色のマ
ントを身につける。
「敵の偵察機にでも接触したのかな?エリオット。」
「いえ、そうではないようです。」
「解った。殿下は執務室に?」
「はっ。」
 作業をしていた男の名は、エリファレット・ナイチンゲールと言う。
 12人の皇帝直属の騎士、ナイト・オブ・ラウンズの第4席、ナイトオブフォー
の騎士である。
 話していた士官は、アレン・エリオット。エリファレットの副官を務めている騎
士である。
 身だしなみを整えた、エリファレットはシュナイゼルの執務室に向かった。

「やはり、ユーフェミア殿下の御意思ではなかったのですね。」
 ギルフォードからの報告をシュナイゼルから聞かされたエリファレットは、そう
感想を漏らした。
「君は、本国でもユーフェミアが催眠術ないしマインドコントロールにかけられた
のではないかと考えていたね。理由を聞きたい。」
「では、申し上げます。第一に、ユーフェミア殿下の為人から考えてあまりにも
可能性が少ない事でございます。私が知る限り、殿下はとても寛容で慈愛に
溢れた方です。その殿下があのような事をなさるとはあまりに考えにくうござい
ます。第二に、世界中に放映されていた特区設立式典の会場で、虐殺行為
があれば我がブリタニアの外交の信頼は地に堕ちます。ユーフェミア殿下は
政治からは離れていた方ですが、そこは充分にご理解なさっていたはずです。
何より、特区での一連の事件で一番得をしたのは、黒の騎士団と率いていた
ゼロです。以上の点から、私はユーフェミア殿下が自らの御意思でなさったと
は考えませんでした。」
 エリファレットの意見を聞いたシュナイゼルは、大きく頷いた。
「そうだな。確かに君の言う通りだな。私も同じような事を考えていた。だが、
証拠がなかったからね。幸い、ゼロの所業だという確かな証拠を掴むことがで
きた。
何とかユーフェミアの汚名を雪ぐ事も出来るだろう。ところで、エクターの調整
はどれ程進んでいるかね?」
 エクター。
エリファレットが、ナイトオブフォーになった際に皇帝から直接開発費を下賜さ
れて開発した専用のナイトメアである。本国で最終調整を行っていた際に、特
区での虐殺とエリア11各地での暴動、黒の騎士団のトウキョウ租界侵攻に
加えて、中華連邦艦隊の東シナ海進出が伝えられた為、シュナイゼルは皇帝
シャルル・ジ・ブリタニアにナイト・オブ・ラウンズの一人の派遣を求めた際にエ
リファレットが指名され、旗艦レクレールの格納庫で最終調整を行う事になっ
た。
「実戦投入は現段階でも充分可能です。ですが、その前に修正プログラムを
インストールさせて更に万全な状態にしておきたいと考えます。」
「どれだけ時間が、必要になる?」
「あと35時間程あれば。」
「問題ないね。エリア11に着くまでに間に合うだろう。その間に済ませておい
てくれ。」
「イエス、ユア・ハイネス。」
「そういえば、エクターはランスロットの設計図や稼動データも参考にしている
そうだね。パイロットである枢木君を君はどう思うかね。」
 皇族の専任騎士とはいえ一パイロットの話題になって、エリファレットは少な
からず驚いた。
「一人の騎士として申し上げさせていただくなら、彼以上の騎士はブリタニアに
も極めて少ないといってよいかと。身体能力の高さは異常と言っても良いでしょ
う。
また技術者として申し上げさせていただきますと、いずれランスロットでも彼の
要求には応えられなくなるかもしれないと考えております。」
 元々、エリファレットは技術者であった。グラスゴーの開発に携わっている際
にパイロットとしての資質が開花しテストパイロットとして前線に出て武勲を重
ねながらもサザーランドの開発に携わり、グロースターの設計も担当する事に
なった異色の騎士である。
「なるほどね。ところで東シナ海にいる中華連邦の艦隊をどう見るかね?」
「おそらく、今回は充分に勝算ありと踏んで艦隊を派遣してきたと見てよいと
考えます。サワザキの事件のように有志団体扱いの義勇軍でなく、正規軍で
しょう。彼らにしてみれば、エリア11を我が国に抑えられている状況は、喉下に
剣を突きつけられているも同然。この気に乗じて人道支援の下に平定した後、
傀儡政権を樹立させると考えます。」
「すでに、黒の騎士団は敗走しているが、それでもかね?」
「むしろ、この状況の方が彼らにとっては望ましいのでしょう。黒の騎士団を敗
退させた駐留軍を悪役に仕立て、自分達が駆逐する事によってエリア11に対
する影響力を強める事は今の時期の方がやりやすいと考えます。黒の騎士団
が敗走したといっても、駐留軍の主力の損害は決して少なくないでしょう。それ
に、トウキョウ租界周辺の暴動が治まらぬ限り軍の主力を他の地域に割くのは
リスクがあります。
故にトウキョウ租界から遠い地域は手薄にならざるをえません。確実に侵攻は
あると考えます。どのみち、中華連邦が声明を発表するまでまだ間がありまし
ょう。その間に、エリア11周辺のエリアが出動の気配を見せる事により、我々
が到着するまでの時間稼ぎになると考えます。」
 話の最中に新たな情報がシュナイゼルの元に届けられ、幕僚から渡された
通信文を読んだシュナイゼルは、それをエリファレットに渡した。

「どうやら、天はこちらの味方のようございますな、殿下。各地に情報が伝わ
った以上、蜂起も下火になりましょう。航空機で輸送できる程度の数なら、派
遣も可能かと。」
「まさか、黒の騎士団からユーフェミアがゼロに操られていたという情報が漏
れるとはね。だが、これでさらに時間稼ぎも出来るだろう。私は声明を出すと
しよう。君はエクターの調整に専念してくれ。」
「イエス、ユア・ハイネス。」
 エリファレットはエクターの調整に専念する為に、再び格納庫に戻った。
 こうして事態は進展していくが、この事態が何者かに手を加えられた結果だ
という事を知る者はほぼいなかった。

「これは・・・。」
 帰還したスザクがメンタルチェックを受けている最中に、ランスロットのシス
テム調整を行っていたセシルは、ミッションレコーダーを解析して唖然とした。
 今までより遥かにスザクの反応速度が上がっており、機体がスザクの操縦
に対応し切れていない状況が数多くあった。
 カワグチ湖での、リニアキャノンの破壊に際してはトンネルと言う狭い空間に
もかかわらず、相手の攻撃を全て回避していたが、今回は発射された榴弾を
MVSで真っ二つにし、相手を破壊すると言う常識では考えられない事をして
のけていた。
 また、回避してから相手を破壊するまでの時間が著しく短縮されており、今
までのデータと総合すると、スザクの要求への機体の追従率は平均70%とい
う結果であった。
 その証拠に、ランスロットの駆動系は悲鳴を上げており、かなりの部分でパー
ツ交換が必要となっていた。
「どお、ランスロットの状態は?」
 メンタルチェックに行くスザクに付き添っていたロイドが、後からコンソールを覗
いていた。
「あちこちかなりやられています。駆動系の大部分はパーツ交換をしなければな
りません。」
「相手にやられたってだけじゃないね。このデータを見ると。頭に血が上ったこと
で、スザク君がリミッターを外したってことだね〜。」
「スザク君の様子はどうでしたか?」
 心配そうにセシルが尋ねる。
「ちょっと、精神的に不安定なところがあるそうだよ。今は安定剤の点滴を受けて
眠っているから、しばらくは目を覚まさないだろうね。とは言っても、戦闘に支障
はないそうだけどね。ただ・・・、他の部分はどうかな?僕はそっちは専門外だけ
ど、今のスザク君はちょっと危ういと言うか、脆い部分があるように思えるんだよ
ね。それで、軍医と相談して点滴をしてもらっているわけ。」
 ロイドもコンソールの前に座り、データを見ながら技術者達に指示を出す。
「不安定なところとはどういう事でしょうか?」
「喪失感と憎悪の間にいるとでも言えばいいのかな。ユーフェミア殿下が亡くなら
れた事で生じた喪失感。ユーフェミア殿下を魔女に仕立て上げたゼロや黒の騎士
団に対する憎しみ。お守りする事が出来なかった自分に対する憎しみ。その中で
スザク君の心は彷徨っている。そういう事。」
 それを聞いたセシルが思わずコンソールを強く叩き、その音に驚いた技術者達
が目を向ける。
「それのどこが、戦闘に支障が無い状態なんですか!?キュウシュウの反乱の
時以上に危険じゃないですか!!とても戦わせていいような状態じゃありませ
ん!!スザク君の休養を進言します!!」
 セシルの視線を受け止めながら、ロイドはずり下がった眼鏡の位置を直す。
「普通ならね。でも、今は休養させる方が危険なんだよ。」
「聞かせてください・・・。」
 ロイドがやや憂鬱そうな表情になる。
「今のスザク君を休養させたらどうなるかな?言ったでしょ。ユーフェミア殿下を
お守りする事が出来なかった自分に対する憎しみが、スザク君の心の中にある。
一人になったスザク君はどうするだろうね?」
 ロイドの言いたいことを理解したセシルの顔色が、蒼白になる。
「解ったみたいだね。性格からして後を追って自害しかねない。だから、一人にす
るのは危険なんだよ。よほど殿下の存在は、スザク君にとって大きな物だったん
だろうね。けれど、殿下はもうこの世にはおられない。脆い部分があるように思っ
たのはそういうことだよ。」
「戦闘なら近くでスザク君の様子を見守る事ができる。そういう事ですね?」
 沈痛な表情のままセシルの視線は、整備中のランスロットにいく。
「だからさ。今の僕たちに出来る事は、ランスロットを万全の状態に持っていくこ
とだけなんだよ。駆動系のパーツは新しく開発した新型に変える。これで、前より
はスザク君の要求にも応えられるはずだよ。フロートユニットにもオプションをつ
ける。もちろん、この後のスザク君の事は軍医とよく相談する必要があるけど。」
 ロイドの言葉を聞きながら、セシルはなにやら考えていたがすぐにコンソールと
向き合い、新型パーツのデータをロードして、システムの調整を始めた。

 ロイド達がランスロットの整備を始めてから暫くたった頃に、スザクは医務室の
ベッドから起き上がり軍服に着替えていた。
「どうですか?枢木卿。頭痛がしたりしてはいませんか。」
 スザクが正式に騎士候になった事は、すでにエリア11に駐留しているブリタニ
ア軍に通達されていた為、軍医にそう呼ばれていた。
「いや、問題ない。状況は?」
「申し訳ありません。私は軍医ですのでそういうことは解りかねます。」
 以前、スザクのメディカルチェックを担当した軍医は、別人のようになったスザ
クに戸惑いながらもそう答えた。
「解った。ありがとう。」
 着替え終わったスザクは、医務室から出て政庁にあるナイトメア格納庫の中の
特派の専用スペースに行こうとしたところ、兵士の一人に呼び止められた。
「何か?」
「はっ。コーネリア総督がお呼びでございます。」
「解った。特派の方に、ランスロットの整備状況を気にしていたと伝えてくれ。」
「イエス、マイ・ロード。」
 兵士が特派のスペースに走っていったのを見て、スザクはコーネリア専用の病
室に向かった。

 政庁は要塞化されていることから解るように、侵攻も想定されて頑強に建設さ
れている。
 当然、手術室も備わっていた。
 植民エリアの最も重要な人物に当たる、総督専用病室のベッドの上にコーネリ
アはいた。
「枢木スザク少佐。お呼びにより参上しました。」
 ベッドのリクライニング機能で、半身を起こしたコーネリアの前に跪く。
「そう畏まるな。立つがよい」
「はっ・・・。」
 立ち上がったスザクは直立不動の姿勢を取る。
「ギルフォードより報告は聞いた。神根島の件見事であった。これでユーフェミア
の汚名も雪がれ、ゼロはこの世から消えた。ご苦労であった。」
 ベッドの傍らには医師団が控えており各種モニターが置かれ、幾つかの点滴
を投与されているが、目はいつものコーネリアの目だった。
「もったいなきお言葉でございます。」
 頷きながらも、自分が知る限りのスザクとはまるで違う事に、コーネリアは驚い
ていた。
「もうひとつ良い知らせがある。黒の騎士団の通信からも、特区での事件はゼロ
が真犯人である事が立証された。」
「エリア11全土にその事は伝わったと考えてよろしいのでしょうか?」
『情報源はカレンか・・・。』
「うむ。すでにトウキョウ租界周辺の暴動は収り、他の幾つかの地域も終息に向
かっている。中華連邦の艦隊は今だ東シナ海にいるがな。軍事の話はこれくら
いにしておこう。本題に入る。ギルフォード、剣をこれへ。」
「はっ。」
 ギルフォードが手に持っていた剣を恭しく、コーネリアに渡す。
『ユフィの汚名は雪いだ。けれど君を守れなかったね。ごめん。僕は君の騎士な
のに君を守る事が出来なかったよ。そっちにいっても、僕は君には会えない
ね。』
 スザクは再び跪く。が、コーネリアは鞘から抜いた剣でスザクを斬ろうとせず。
騎士の叙任のように両肩を叩く。
「此度の功績により、汝、枢木スザクに男爵の爵位を与え、中佐に任命する。」
 驚きのあまり、スザクは顔を上げる。
「そなたは見事に主君の汚名を雪ぎ、仇を討った。その働きに対し本国から男
爵位を授与する旨の通信があった。昇進は私の判断だ。前に出よ。」
 スザクが前に出ると、スザクの胸に男爵を示す金のバッチがつけられる。
「総督、これはいかなることでありましょうか・・・?」
「知っての通り、皇族の専任騎士は貴族扱いとなる。近いうちに貴公にも爵位が
授与される予定だったのだ。」
「しかし、自分はユーフェミア殿下をお守りする事は出来ませんでした・・・。」
「だが、見事に主君の仇を討ち、汚名を雪いだ。そもそも、ユフィは貴公に随伴せ
ぬように命じてゼロと二人きりになり、ゼロの卑劣極まる奸計で命を奪われた。貴
公に責任が全く無いわけではないが、それを元に貴公を糾弾するには至らぬと、
私は判断した。そういう事だ。今後も励めよ。死んだ妹もそれを望んでいると私は
思っている。」
「もったいなきお言葉・・・。身命を賭して必ず・・・。」
 コーネリアは一つ頷くと、医師の指示で横になり眠りに着いた。が、ギルフォー
ドはスザクの態度に嫌な予感がしていた。

「枢木卿。」
 スザクが病室を出た所で、ギルフォードが声を掛けてくる。
「ギルフォード卿。どうかなさいかしたか?」
「一時間後に、幕僚会議を開く。貴公にはアスプルンド少佐と共に、特派の代表と
して出席してもらう。いいな。」
「しかし、自分は一兵も指揮してはおりませんが?」
 幕僚会議に出るのは、最低でも中佐の階級を持つ参謀や指揮官である。階級
では問題ないが、一兵も指揮していないスザクが出席する事に、疑問を覚えるの
は当然だろう。
「だが、特派が所持するナイトメアはランスロットのみ。貴公はそのパイロット。
実質、特派の実戦部隊のトップは貴公だ。故に、出席する事となった。」
「了解しました。では一時間後に・・・。」
 スザクは自室へ戻っていた。
 ある決意を胸に秘めたまま・・・。

『嫌な予感の正体は解らぬが、メンタルチェックの結果も合わせてシュナイゼル殿
下に報告しておくべきだろうな。』
 ギルフォードは、執務室に向かった。

後書き
コードギアスの二次創作の第一話であります。
しばらくは、スザクやその周辺の話が前章として続きます。
なぜ、そうしたかは、ナイト・オブ・ラウンズとなるまでの一時期でも、スザクの事を
丁寧に書いてみたかったからです。
スザク嫌いの方は、ちょっと読む気にならないかもしれませんね。
尚、この二次創作ではコーネリアのスザクに対する見方が変わっています。
その理由も明らかになっていきます。
オリジナルキャラのナイトオブフォーは、技術者出身の異色のラウンズです。
実は彼はエリア11とは縁があります。
それも、後で明らかになります。

次回BEFORE TURN02 朱雀 の 目覚めです。

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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
これ、CIC担当さんのオリジナルですか?。
凄い面白かったです!!。
喰い入るように読んでしまいました。

ゼロ=ルルが完全に死んだって設定で話を進めるのは新鮮だなぁ。

続きを楽しみにしてますね。もちろん早く見たいですが、CIC担当さんの楽なペースで頑張ってください^^b。
sora
2008/05/05 21:13
soraさん。
コメントありがとうございます。

>ゼロ=ルルが完全に死んだ
 第2話でルルーシュが死ななかった事に
 とても違和感があったんです。
 あれだけゼロを憎み、ルルーシュに対し
 て銃まで向けて、なぜああなるのかなと
 思っていましたので、あえてこういう設
 定にしてみました。
 とはいえ、黒の騎士団が完全に滅亡した
 訳ではありませんので、彼らも舞台に上
 がります。
 続きを楽しみにされている期待を裏切ら
 ぬよう頑張りますのでよろしく。
CIC担当
2008/05/05 21:35
CIC担当さん、こんばんはです。

オリジナル小説、面白かったですよ!
スザクの不自然なくらい冷静である意味危うい精神面がどうなるのか、続きが気になります。
aquabrade
URL
2008/05/05 21:50
aquabradeさん。
コメントありがとうございます。

>スザクの不自然なくらい冷静である意
 味危うい精神面がどうなるのか、続き
 が気になります。
 ご指摘の通り、今のスザクは危うい精
 神状態にあります。
 どうなるかは・・・、ある人物が関係し
 てきます。
 一話をお読みになられたのなら、多分
 お分かりになる筈です。
 続きは頑張って書いております。
 お楽しみいただければ幸いです。
CIC担当
2008/05/05 23:16
興味深く拝見させていただきました。まだまだ始まりですよね?今後の様々な布石があるようで、それがどう明らかになっていくのか楽しみです。
スザクの内面、この先のビジョンって本編ではあまり語られていないので、CIC担当さんがどんなふうにスザクを描くのか楽しみです。
本編では語られていない部分、語ってください!
また、お邪魔しま〜す!
samada
URL
2008/05/07 11:28
samadaさん。
コメントありがとうございます。

>興味深く拝見させていただきました。まだ
 まだ始まりですよね?
 BEFORETURNとタイトルにある通
 り、ブラックリベリオン直後からのお話で
 すので、本番はこれからです。
 皇帝の目的、神根島の遺跡、C.C.の願
 い、V.V.が登場した理由。
 そしてゼロを失った黒の騎士団の、今後等
 物語はこれからです。
 
>どんなふうにスザクを描くのか
 目的に向けて、茨の道を歩むスザク。
 現実に屈するか?傷つきながらも前に進
 むか?

 読んでくださっている方々の期待に答え
 るよう頑張ります。
CIC担当
2008/05/07 22:44
CIC担当さんこんにちは!
ゼロ亡き後から始まる設定ってドキドキします。
23話以降のスザクのぶちきれようならゼロを殺しちゃうんじゃないの?って勢いでしたからね。でもそれをやったらギアスが終わってしまうので、ないない…と思っていたら、ここでやって下さいましたか!
ゼロがいないことで物語がどう進んでいくか全く読めませんが、CIC担当さんのこと、スザクの内面に迫るストーリーを展開してくださることを期待しています!
harpseal
2008/05/11 02:48
harpsealさん
コメントありがとうございます。

>でもそれをやったらギアスが終わってしまうの
 で
 ギアスをルルーシュの物語と考えているとそう
 考えてしまいますよね。
 しかし、私は多くの登場人物という糸で紡がれ
 る織物のようにギアスを見ているので、終わり
 は無いと考え、スザクとルルーシュの互いに対
 する憎悪の結果、こうなると考えて、物語を始
 めました。

>スザクの内面に迫るストーリー
 やはり、そこが気になりますか。
 物語を通しながら、そこはきちんと書いていき
 ます。
 スザクが何を思い、どう行動して、どのような
 影響を周囲に及ぼすのか、そして、世界はどう
 なるのか。
 お楽しみいただければ幸いです。
CIC担当
2008/05/11 13:01
え、コレ本当にオリジナルなんですか?
すごいです!!
食い入るように見てしまいました^^;;
面白いですし、しかも、頭の中でアニメ風に
キャラが動いていくものだからすごいです。
本当の小説版を読んでる気がしました。

ゼロ亡き後って設定はすごいと思います。
初めはびっくりでしたがうまく物語が
成り立っていてよかったです^^

これからもがんばってください^^
琥珀
URL
2008/09/20 11:13
琥珀さん。
コメントありがとうございます。

>本当にオリジナルなんですか?すごいです!
 ありがとうございます。
 ルルーシュが死んだという設定で、ギアスの
二次小説を書いている方って、ほとんどいない
ですし、スザクはウザクと言われて、嫌われて
いるのでそう言っていただけると、嬉しいです。
頑張りますので、これからもお楽しみいただけ
れば、幸いです。
CIC担当
2008/09/21 13:34

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