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zoom RSS コードギアス二次小説 BEFORE TURN05 序曲 終了

<<   作成日時 : 2008/05/25 15:17   >>

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「ターナー隊及びマルサス隊、敵両翼の部隊を包囲しました。」
「よし、そのまま揉み潰せ。敵中央の部隊はどうか?」
「枢木隊、ギルフォード隊と間もなく戦闘に入ります。」
 四ヵ月後、G1ベースには療養から復帰したコーネリアが座乗し、トットリのレ
ジスタンスの掃討作戦に当たっていた。
 租界の再建は終了し、各地のゲットーの再建も進んでいるものの、反抗勢力
もあちこちに残っており、また、東シナ海会戦の際にスザクの提案で水上警察
と海兵騎士団を義勇軍に備えさせたが、監視網を潜り抜けてエリア11のレジ
スタンスの手に渡った重火器やナイトメアは、決して少なくはなかった。
 コーネリアの療養中にシュナイゼルが臨時総督として、各地の平定に当たっ
たが全てを平定するまでには至らず、復帰したコーネリアはエリア11の再建
と各地の平定を、同時に進める必要があった。

「ミラー隊は砲撃準備。ロセッティ隊は突撃の準備をせよ。ギルフォード卿の部
隊と呼応して敵部隊を一気に殲滅する。」
「「イエス、マイ・ロード。」」
 ヴァレーリアと、新たにスザクの麾下に入ったヒルダ・ミラーがスザクの指示
に応える。
 コーネリア軍の主力ナイトメアはグロースターであったが、現在はドーチェス
ターとなっている。
 スザクの部隊にもドーチェスターが配備されており、その汎用性を最大限に
活かしながら、的確な指揮でスザクは武勲を挙げていた。
現在、ミラー隊は四つあるハードポイントの上部二つにAKM低圧砲を装備した
長距離砲撃戦を想定した装備になっており、ロセッティ隊はアサルトライフルを
上部ハードポイント二つに装備し、ショットランサーで相手を撃破する突撃仕様
になっている。

 親衛隊専用にチューンされたドーチェスターのコックピットの中で、ギルフォー
ドはスザクの部隊の様子を見ていた。
 既に配置は完了し、長距離砲撃と近接戦闘で敵を仕留めるべくその時を待
っていた。
「ギルフォード卿、こちらの配置は完了しました。」
「了解した。支援砲撃はそちらに任せる。私は貴公の部隊と呼応して敵の殲
滅に専念したい。」
「了解しました。我々が敵を迎え撃ちます。ギルフォード卿はその間に敵の後
方に回り込んでください。」
「了解した。包囲して一気に仕留めるぞ。」
「イエス、マイ・ロード。」
『恐ろしい男だ・・・。今回の作戦もここまでさして損害は出ていない。逆に
テロリストはかなりの損害を出している。両翼部隊の命運は既に尽きた。
後は我々が残りの部隊を殲滅すれば、それで終わりか・・・。』
 今回の作戦の概要は、複数の拠点に砲撃を加え、立て篭もるレジスタンスを
引きずり出し、本陣に至るまでのルートに縦深陣を築いて出血を強いて、後方
の部隊で止めを刺すという物である。
 強引に力攻めをしてはこちらの損害も少なくないと理由を述べて、スザクが
立案した作戦案は幕僚会議で採用され、作戦通りに事は進んでいた。

「私も出るぞ。後は頼む。」
「総督自らでございますか?」
 参謀たちが驚きの声を上げる。既に勝敗は決したも同然、コーネリアが戦場
に出る必要はなかった。
「正面から敵を迎え撃つには、もう少し部隊があったほうがよかろう。私が出る
としよう。」
 そう言いコーネリアは、専用のドーチェスターを駆り予備部隊を率いて、戦場
に出た。

「総督、どうしてこちらに?」
「貴公ならば一個中隊でも今の相手を止める事は可能だろう。だが、一応私も
出たほうが良いと判断した。そういう事だ。ギルフォードが後方に回り込むま
で、ひと暴れさせてもらうぞ。」
「イエス、ユア・ハイネス。」
「枢木卿、敵が間もなく射程距離に達します。」
 ヒルダから通信が入る。
「射程に入り次第、砲撃開始。その後はこちらの支援砲撃を頼む。」
「イエス、マイ・ロード。」
 その20秒後に砲撃が開始され、スザクとコーネリアは正面からレジスタン
スの残存部隊に突撃を開始した。
 その後レジスタンスは為す術も無く包囲殲滅され、トットリのレジスタンス
は一掃された。戦場にはレジスタンスが義勇軍から入手したガン・ルゥの残骸
が、多数転がっていた。

 トウキョウ租界に戻ってから、コーネリアは幕僚会議を開いた。
「殿下。テロリストの拠点を捜索させた所、義勇軍からの武器提供に関する記
録が発見されました。」
 報告書に目を通して、コーネリアは眉を顰める。
「どこも同じだな。中華連邦め、いつまでも苦労をさせてくれる・・・。」
 コーネリアが不機嫌そうに呟く。
 ゼロは死亡したが、黒の騎士団の残党も幹部クラスが未だに逃亡中であ
り、そちらの捜索も思うように進んでいない為、コーネリアは少々苛立ってい
た。
「とにかくトットリの平定は完了しました。ゲットーの復興を速やかに完了す
る事により、奴らの居場所を奪うのが先決かと。荒廃したままでは、再びテロ
リスト達の拠点となりかねません。」
 コーネリアの苛立ちを察したギルフォードが話題を変えた。
「そうだな・・・。とにかく奴らを家なき子にする方が先決か・・・。」
 そう言ったコーネリアは、スザクが考え込んでいる様子を見た。
「枢木、何か思うところがあるのなら申してみよ。」
 そうスザクに声を掛けた。
「はっ、しかるべき場所に餌をおき罠を仕掛け、一気に殲滅するというのはいか
がかと・・・。」
「発想としては良いが、何を餌にする?この私か?」
 それを聞いたスザクは、静かに首を横に振る。
「では誰だ?」
「総督の目の前にいる男であります。」
 一同がざわついた。
「死ぬつもりか?」
 コーネリアが厳しい表情で問う。
「いえ、そのつもりはございません。この策は必勝を期しております。」
「解った、話してみよ。」
 スザクの言葉に頷いて、先を話すよう促す。

「成る程、接収した中華連邦製の歩兵用AKM兵器を使用するか・・・。どちらに
せよ始末するしかないゴミだ。好きに使うがいい。ところで何故名誉ブリタニア
人の兵を大量に動員する?」
 てっきり正規の兵を使うと思っていたコーネリアは、不審に思い質問する。
 エリア11のレジスタンスの平定が進むにつれて、再び名誉ブリタニア人の
兵士を募集し、基礎的な訓練を終えて人数は既に2個大隊を編成するに足り
ている。
 これは、総督府から発表された名誉ブリタニア人の地位向上の政策が、理
由である。
 いつまでも軍をブリタニア人だけで構成し、名誉ブリタニア人に立身出世の
チャンスを与えずにいては、政策に対する信用に関わる為である。
「名誉ブリタニア人の地位向上を、より広く知らしめるためでございます。現
在名誉ブリタニア人部隊は、以前以上に忠誠心を試され厳しい審査をパスし
た者のみで構成されている為、銃火器の携帯を許可されておりますが、内心
ではいつ以前のように戻るか不安に思っている兵も、少なくはないでしょう。こ
の戦いで戦功を挙げた者をそれに応じて昇進させる事によって、忠誠心を固め
ると共に、テロ活動に身を投じる事の予防にもなります。故に彼らを動員したく
存じます。」
 今回の作戦に参加した、指揮官たちが頷きながら話し始めた。
「殿下。枢木卿の案、私は有効と考えます。名誉ブリタニア人の兵の忠誠心を
再度試した上で、彼らがブリタニアへの忠誠心をより強く持つ事は、決して損
にはなりません。」
 ギルフォードが賛成の意を示す。
「うむ、それに総指揮官が枢木卿とあれば、彼らも従いやすいだろう。」
「確かに。」
「中華連邦製のAKM兵器なら、ガン・ルゥ相手には有効だろう。ついでに処
分も兼ねられるなら一石二鳥でもあるな。」
 指揮官たちも賛成する。
「よかろう、貴公に任せる。だが、主力のナイトメア部隊は麾下の二個中隊で
は不足であろう。貴公とランスロットであれば、一個大隊並みの働きをするだ
ろうが、それは同時に危険と隣りあわせだ。今までの働きから見て、さらに一
個中隊を麾下につけようと思うがどうだ?階級にも釣り合う。」
「お言葉ありがたく存じます。しかし、それはまだ早いと考えます。それに今
回の作戦は自分が餌になるのが大前提です。まず自分が単独行動で奇襲を
かけて餌になるのが第一段階、その後の迎撃が第二段階です。迎撃の準備
も迅速に済ませたく思いますので、自分の麾下の戦力程度が丁度良いと考え
ます。それに、第二段階でのテロリストのナイトメアの数もさほど多くは無いな
いでしょう。海に面した地域でもなく、バックアップをする組織は、今のエリア1
1には皆無です。」
「場所は何処だ?」
 コーネリアが尋ねる。
「ナリタ連山です。ここにもテロリストの拠点はあります。それに、ナリタは嘗て
は日本解放戦線の根拠地。周辺の勢力は聖地のように考える傾向が極めて
強い事は調査の結果明らかになっています。なにより、現在最もテロリストの
行動が活発な地域の中心であり、勢力も最大です。まず、ここに奇襲をかけ壊
滅させます。壊滅させた自分を彼らはどう思うでしょうか?」
 スザクの狙いをギルフォードが理解した。
「危険すぎる!!貴公は枢木ゲンブの息子。ただでさえ、テロリストからは裏
切り者扱いされて命を狙われている。もし作戦を開始すれば、怒り狂ったテロ
リストたちが貴公の首を狙わんと大挙してくるぞ!」
 コーネリアも表情がさらに険しくなる。
「ギルフォード卿の仰るとおりです。だからこそ自分が餌になる意義があるの
です。怒り狂ったままでは冷静に策を立てることは不可能。自分目掛けて一直
線に来るというなら、こちらの理想どおりの展開になります。幸いにも、迎撃に
向く地形です。偵察で敵の同行を掴めば、こちらに優位な戦いに持っていけ
ましょう。」
 コーネリアは目を閉じて、考え込んだ。
「よかろう。ならば、作戦は貴公に一任する。ただし、グラストンナイツを連れて
行け。」
「しかし、グラストンナイツは総督直属の精鋭。お傍を離れるのは危険がありま
す。」
「租界にいる限りは、こちらの方が安全だ。それに勝算があってもやはりリス
クが高すぎる。その為の保険だ。それに彼らを使いこなす事が出来れば、一個
大隊を率いても問題なかろう。そういうことだ。」
「総督のご配慮には感謝の言葉もございません。必ずや吉報をお届けしま
す。」
「うむ。では準備にかかるがよい。」

二週間後の深夜、ナリタ連山のレジスタンス「日本解放軍」が、スザクとアヴ
ァロンの奇襲を受けて一夜にして壊滅した。
 周辺のレジスタンスは、攻撃を指示したのがスザクと知るや全ての戦力をナ
リタ連山に差し向けた。
「スザク君、聞こえる。」
「はい。敵の配置はどうですか?」
 アヴァロンは上空から、レジスタンスの配置を調べていた。
「敵は三つに分かれて、あなたを目指してくるわ。ナイトメアの数は44騎。」
 ランスロットの戦術モニターに、レジスタンスの配置が表示される。
 両翼のナイトメアはそれぞれ12騎。中央に20騎が配置されている。
 スザクは麾下のナイトメアを2個小隊ずつ配置し、右翼の指揮をヴァレーリ
アに、左翼の指揮をヒルダに、中央の指揮をグラストンナイツのリーダー格で
あるクラウディオ・S・ダールトンにそれぞれ取らせている。
 スザクはグランストンナイツの内4人を遊撃戦力として率いて、中央部隊の
後方にいる。

『ナイトメアを先頭に、武装したレジスタンスが続く・・・。配置は理にかなってい
る。思ったより冷静か・・・。とはいえ、ナイトメアの数も中央のナイトメアが最も多
いのも予測通り・・・。うん?』
 中央のナイトメアの熱源反応から機種を割り出す。
「パンツァーベーア?EUの前主力ナイトメア。どうやって?セシルさん。」
「スザク君も気付いたようだね。な〜んで、EUのナイトメアがあるんだろう
ね?」
 通信に出たのはロイドだった。
「密輸だと思います。EUではまだマフィアが暗躍していて、武器の密売にも手
を染めていると以前資料で読んだ記憶がありますから・・・。」
 軍略に関する書物を読む傍ら、スザクは各国の情勢についての資料にも目
を通していた。
 前主力ナイトメアとはいえ、武装、装甲ともガン・ルゥを上回る。
「クラウディオ、こちらに向かってきているナイトメアは、ガン・ルゥじゃない。EU
の前主力ナイトメアのパンツァーベーアだ。ドーチェスターの敵ではないが、注
意してくれ。」
「イエス、マイ・ロード。」
 次に中央の歩兵部隊に連絡を入れる。
「そちらに向かったのはEUのナイトメアだ。無理に撃破しようと考えると犠牲が
増える。関節や頭部のセンサーに向けて攻撃したら、所定のルートです
ぐに現場を離脱。武装しているテロリストに対しては、当初の作戦通りに攻
撃。但し、無理はするな。」
「イエス、マイ・ロード。」
 その他の部隊にも連絡を入れて、スザクは戦術モニターを見つめる。
「作戦開始。」
 スザクの指示で、各所に隠れていた兵士たちが攻撃を開始し、ナイトメア部
隊も前進する。

 AKMロケットがレジスタンスのガン・ルゥに向けて発射され、被弾したガ
ン・ルゥが火を噴きながら爆発する。
「くそっ!」
 レジスタンスの一人がその方向に銃口を向けるが、側面からアサルトライフ
ルやマシンガンに加え装軌装甲車の重機関砲で、レジスタンス達は狙い撃ち
にされる。
「罠か!!応戦しつつ上に上がれ、とにかく枢木を殺す事に専念しろ!!」
 右翼の部隊を預かる朱天党のリーダーが指示を出し、スザクがいる本陣目
掛けて駆け上るが、後方からの攻撃でさらに損害を増やしていった。
 左翼も同様の事態になってとにかくスザクを殺す事を最優先とし、上に駆け
上がっていく
「両翼の部隊はさらに前進。既に相手は浮き足立っている。そのまま押し続け
ろ!中央の部隊の様子はどうか?」
 両翼の部隊に指示をしながら、中央の部隊を指揮するクラウディオに通信を
入れる。
「やはり、ガン・ルゥのようにはいきません。損害こそ与えたものの、戦闘可
能なナイトメアは多いようです。」
「歩兵部隊には武装したテロリストの掃討に専念させろ。」
「イエス、マイ・ロード。」
 指示を出している間にも両翼の部隊は戦力を削られ、中央部隊と合流しよう
としている。
「よし、両翼はさらに押し込め!中央部隊は両翼の部隊と呼応して包囲網を構
成。歩兵部隊は後方を遮断しろ。自分もグランストンナイツと共に出る。続
け!!」
「「「「イエス、マイ・ロード!」」」」
 スザクもランスロットを駆り戦場に向かう。

「あれはランスロット。枢木か!!」
 パンツァーベーアに搭乗するレジスタンスが、両腕の速射砲をランスロット目
掛けて撃ちまくる。が、既にそこにランスロットはおらず、気がついた時に
はMVSがモニターに映っており、次の瞬間パンツァーベーアは真っ二つにされ
た。
 左右から挟みこむように迫ってきた、ガン・ルゥの攻撃を身を低くしてかわし、
スラッシュハーケンを射出する。コックピットを貫かれたガン・ルゥで他のナイト
メアをなぎ倒し、次の相手に向かっていく。
『戦うごとに、さらに強さを増すのか枢木卿は・・・。』
 目の前のパンツァーベーアをショットランサーで貫きながら、クラウディオは自
分の手が震えているのを感じた。
 クラウディオも数々の戦場を経験しているが、スザク程の強さを持った相手は
見た事が無かった。
 東シナ海会戦終盤でのナイトメア戦で、スザクの強さは知っていたつもりだっ
たが、さらに判断は早くなり動きも鋭くなっている。それを感じて無意識に恐怖
していた。

 それからしばらくして戦闘は終了した。
 味方のナイトメアに損失は無く、レジスタンスのナイトメアは全滅。後方の
レジスタンスは退路を断たれて、抵抗した後降伏した。
 歩兵部隊の死傷者は2個大隊720名のうち死傷者は50名ほどであった。
 その後、負傷した兵士の手当てをして軍病院に移送した後、レジスタンスの
拠点を捜索して、様々な情報を得てからスザクはトウキョウ租界に帰還した。

「EUのナイトメアか・・・。まさか、そんな物まで持っていたとはな。」
 帰還したスザクが提出した報告書に目を通したコーネリアは、苦虫をダース
単位で噛み潰したような表情をした。
「密輸ルートに関して、貴公はどう考える?」
 コーネリアの機嫌を察して、ギルフォードがスザクに話題を振る。
「流したのはイタリアの南部マフィアでしょうが、黒幕は中華連邦で間違いない
かと・・・。」
 少し考えて出したスザクの結論に、コーネリアが興味を持つ。
「根拠を聞かせてもらおうか・・・。中継地点はたしかに中華連邦で、最初の輸
出元はEUのイタリア州の企業だが、黒幕がEUである可能性も否定できま
い?」
「第一に、イタリア南部のマフィアは地元の企業に強い影響力を持ち、いくら
でも積荷の中身を誤魔化して、ひそかに他国に輸出する事が可能な事です。
第二に国としても取締りが難しく、警察もそう簡単には捜査の手が伸ばせない
状況に加え、警察署の署長や軍の士官までマフィアに買収されている例が、
幾度もあったと記録にあった事を覚えております。このような状況でEUが密輸
を黙認してしまえば問題の解決がさらに困難になります。政府のよる偽装だと
知られれば、国内でも大問題になりましょう。この二つの理由からEUが黒幕
とは言えません。中華連邦が黒幕である理由ですが、表向きは正規の貿易な
ので、仮に実はナイトメアだと解っても、中華連邦も被害者を演じる事ができま
す。知らぬ存ぜぬを決め込める事ができるので、安心して武力を行使せずに
揺さぶりをかけることが可能だと考えるからです。」
「確かにな・・・。と言う事は、外交ルートで中華連邦に働きかけても無駄
か・・・。EUに抗議するしかないな・・・。」
 スザクの推測を聞いて、冷静になったコーネリアはそう言った。
「殿下、シュナイゼル殿下から働きかけていただいては如何でしょうか?」
「それしかあるまい・・・。早速兄上にお話しするとしよう。ご苦労だったな枢
木。もう下がって休むがいい。」
「それでは、失礼いたします。」
 スザクは一礼して、コーネリアの執務室を去る。

「此度の作戦、ご苦労であった。ところで、貴公たちの目から枢木卿はどう見
えたかを話してもらいたい。」
 呼び出されたグランストンナイツは、お互いの顔を見る。
「どうした?何か言いにくい事でもあるのか?」
 ダールトンが養子として引き取り、精強な騎士に育て上げられた彼らにして
は様子がおかしかった。
「咎めはせぬ。思った事を正直に申せ。」
 それを聞いて、クラウディオが口を開く。
「枢木卿は友軍であるにも関わらず、我々が戦ってきたどんな敵よりも恐ろし
く感じました。戦うほどに強さを増し、策は巧妙になります。味方であるにもか
かわらず、テロリストとの戦いよりも、枢木卿に対する恐怖を押さえつけるほう
が遥かに困難でした。」
「ふむ。確かにそれは言いにくかろうな・・・。」
 コーネリアが頷く。
「何より、普段でも冷徹な表情で、本当に人間なのかと感じます・・・。」
 アルフレッドも、口を開きそう言った。
「ロセッティ卿、ミラー卿も当初は同じ事を申していました。」
 ギルフォードがコーネリアに話した。
「そうであったな・・・。だが、今は敬服するに値する指揮官と言っている。
初めて枢木の指揮下で戦う者は皆そうなのかもしれんな・・・。ご苦労であっ
た。下がって休むがいい。」
 一礼してグランストンナイツは執務室を出た。

「どう思う?ギルフォード。」
「軍人としては成長しているのでしょう。しかし・・・。」
「しかし、何だ?ギルフォード。」
 言いたいことが解っているような表情で、ギルフォードに問う。
「人間としてはどうなのかと・・・。特派のクルーミー大尉に、以前の枢木卿につ
いて聞いてみたのですが、やはり以前は明るくよく笑っていたとの事でし
た。」
「その枢木は、今はグラストンナイツの話し通りか・・・。別人のように変わった
とは、まさにこの事だな・・・。」
 椅子の背もたれに体を預けながら、コーネリアは溜息をつく。
「はっ。何より、友人たちにも一切会おうとしておりません。」
「この四ヶ月、テロリストの掃討で忙しかったからな・・・。後はアオモリとハコダ
テのみ。その準備の間に、休養を取らせよ。今の我が軍にとって、枢木の存在
は大きい。中華連邦から流されてくるリフレインの量も激減しているしな。」
「それもありますが訓練や軍略を学ぶ事に没頭しており、友人たちが会いたい
といっているのに、枢木卿自身会おうとしておりません。」
 コーネリアが訝しげな表情で、ギルフォードを見る。
「どういう事だ?何か、仲違いをするようなことでもあったのか?それとも黒の
騎士団の反乱に、多数のイレブンや名誉ブリタニア人が参加した事に負い目
を感じているのか?だとしたら、見当違いも甚だしい。偶には友人と会うよう言
ってやるがよい。」
 そう言ったコーネリアに、ギルフォードがファイルを差し出す。
「これは?」
「枢木卿のカウンセリングの結果です。」
 受け取ってコーネリアは目を通し始める。
「軍人としての責務を全うする事以外、頭に無いと言う事か?」
「おそらくは。ですが、担当医は、そうではない気もすると。」
「成る程。たしかにそうも書いているな・・・。」
 ファイルを閉じ、ギルフォードに渡す。
「いずれにせよ、しばらくは兵たちに休養をとらせることが必要だろう。特に枢
木の部隊は連戦で疲れているからな。」
 そう言い、幾つかの書類にサインをして休息を取った後、本国のシュナイゼル
に通信を入れる。

「枢木を北アフリカ戦線に?」
 通信でシュナイゼルが口にしたのは、スザクと特派を北アフリカ戦線に投入
したいという言葉だった。
「ああ。無論、今のエリア11駐留軍にとって彼の存在がいかに大きいかは、
知っている。が、こちらとしても彼が必要なんだ。今、セウタを攻略する準備に
入っているんだが、強力なナイトメア部隊と優れた指揮官が必要でね。正直心
苦しいが、彼を転属させてもらう。その代わりに、優秀な参謀をそちらに派遣す
る。もちろん、エリア11の状況はよく理解している。今の参謀に対し、大分不
満を持っているようだから、これで枢木の抜けた穴はそれなりに埋められる筈
だ。」
 セウタはジブラルタル海峡の入り口に位置する、北アフリカの都市で古くか
ら海上交通及び軍事上の要衝として知られていた。
 北アフリカの港湾都市を、次々とブリタニア側に押さえられているEUにと
っては、北アフリカ戦線に展開する部隊の重要な補給拠点であると共に、ジブ
ラルタルと共に地中海の出入り口の安全を確保する重要な都市でもある。
 もし、ここを抑えられたら、対岸のジブラルタルの確保にも支障をきたすばか
りでなく補給にも支障をきたす為、守りは堅い。実際、ブリタニア軍の攻撃を幾
度も防いでいる。
 シュナイゼルとしては、スザクとランスロットの突破力を活用して一気に陥落
させ、ジブラルタルに脅威を与える事で地中海を利用した補給及び部隊の増
強をさらに困難にして、泥沼から脱しつつある状況から優位な状況に持ってい
きたいのだろう。
 それに、スザクと特派は元々シュナイゼルの直属であり、この事に対するコ
ーネリアの拒否権は無かった。
「承知しました。兄上の思うままになさって下さい。」
「すまない。助かるよ。」
「ところで、EUの件ですが。」
「EUがどうかしたのかい?」
 コーネリアはナリタ連山の戦いについて話した。

「それは放って置くわけにはいかないね。解った。その件に関しては、私が直
接EUに申し入れをしよう。向こうにしたところで、放って置くわけにはいかない
だろうからね。」
「お願いいたします。」
 コーネリアが頭を下げる。
「実を言うとね。今回枢木をこちらに転属させるのは、彼の精神状態にとっても
よい事だと私なりに思っているんだ。エリア11は彼にとって悲しい思い出があ
る土地。少し、離れた方が良いと思っている。実を言うと、枢木のカウンセリン
グの結果は私の元にも届けてもらっているんだが、このままでは良くないだろ
う。離れた方が心の整理もしやすいだろうと、前々から思っていてね。そちらの
情勢が落ち着き次第、転属させようと思っていたんだよ。」
「兄上、何故そこまで枢木の事を?」
 いかにスザクが優秀な軍人であろうとも、宰相であるシュナイゼルが一軍人
に過ぎないスザクにそこまで関心を持つ事に、コーネリアは不思議に思った。
「彼は優秀な人材だからね。これからEUとの戦いはますます激化するだろ
う。それに備えておきたいだけだよ。それに、ユフィの事もあるしね。恩返しと
いっては何だが、できる限りチャンスは上げたい。そう思っているんだ。」
 そう言って、シュナイゼルは通信を切った。

 スザクは特派の専用スペースで、シミュレーターで訓練をしていた。
 相手は、黒の騎士団の月下5騎に紅蓮弐式の計6騎である。無論、それぞ
れの行動パターンが出来うる限り再現された上で、クリアするごとに難易度を
高くしている。
 今回は相手の6騎の反応速度や機動性は、ランスロットと同格に設定されて
いる。それでもスザクは撃破される事無く、最後に残った紅蓮弐式のコックピッ
トにMVSを突き立てて、シミュレーターを終了させる。
「6騎総掛かりでも、クリアタイムは5分48秒・・・。しかも相手のスペックはラン
スロットと同等なのに・・・。」
 複雑そうにコンソールを見るセシルに、ロイドが近づく。
「う〜ん。あの6騎のパイロットは、逃亡中の黒の騎士団のエースなんだけど
ね・・・。」
 腕を組みながら、渋い表情になる。
「ロイドさん。しばらく休養を勧めてみませんか?スザク君、出撃以外はいつ
もシミュレーターか軍略の勉強ですし・・・。それに、カウンセラーも休養が必要
だと診断を出していますから・・・。」
 床に座って、各種ミネラルを加えたドリンクを飲むスザクを心配そうに見つめ
ながら、セシルがそう話す。
「君の意見には、賛成なんだけどね・・・。本人がそれを聞き入れるかどうか
が、問題でね・・・。」
 実際、出撃の合間に何度も休養を勧められたが、スザクは聞き入れようとせ
ずに、訓練や軍略の勉強に没頭していた。
「ロイドさん、セシルさん。シミュレーションの難易度を高くして、さらに1騎につ
きサザーランド2騎を援護につけてください。スキルは平均の騎士より2割り増
しでお願いします。」
 そう言って、デスクワークの為に軍服に着替えに行く。
「ねえ、スザク君。偶には休まない?気分転換もメンタルヘルスの為には必要
よ。どこかに遊びに行くとかどう?」
 着替え終わったスザクに、セシルがそう話しかける。
「いえ、自分は大丈夫です。それより、シミュレーションの件をお願いしま
す。」
 首を横に振って、スザクはそう言ってからデスクワーク用の執務室に向か
う。
「階級では彼が一番上だからね。特派は階級を気にしないのがルールになっ
ているけど、さすがに僕達が命令するわけにはいかないからね。」
 小さく溜息をつきながら、ロイドが言った。
「それは・・・、そうですけど・・・。」
 沈んだ表情のセシルが、目を伏せる。
「ま、このまま放っておくわけにもいかないからね。ちょっとしたイベントを用意し
たよ。」
「イベント、ですか?」
 何のことか解らず、セシルは首をかしげた。
 その直後、書類の決裁をしていたスザクに呼び出しがかかった。

「北アフリカ戦線でありますか?」
 呼び出されたスザクは、北アフリカ戦線への転属が言い渡された。
「兄上からの命令だ。元々特派は兄上直属の部隊だからな。」
 シュナイゼルから送られてきた資料を挟んだファイルを、ギルフォードが手渡
す。
「中を読んでもらえれば解るが、攻撃目標は幾度も我が軍の攻撃を跳ね返して
きた。貴公とて油断すればどうなるか解らぬ。注意してくれ。」
「はい。」
 ギルフォードのアドバイスに、スザクが背筋を正す。
「それでは、すぐに準備に入れ。作戦までにはまだ間もある、貴公の部隊は連
戦が続いている事を考慮して、3日の休養を与える。貴公も、しばらく軍務の事
は忘れろ。それと、新たに貴公の麾下に加わる者が先程到着した。紹介しよ
う。入れ!」
 コーネリアの声を聞いて、一人の女性騎士が入ってくる。
 年齢は20代半ば位、やや薄い色の金髪を短く切って青い瞳をしている。
「本日付をもって、枢木卿の麾下に配属されましたジーン・モーゼスでありま
す。」
「枢木スザクだ。よろしく頼む。」
「モーゼス卿は、私の士官学校の後輩に当たる。手腕は保証しよう。」
 ジーンとスザクが自己紹介を終えた頃、コーネリアがそう伝える。
「では、両名とも下がってよい。ご苦労であった。」

 特派の専用スペースにスザクがジーンを連れてきた時に、ロイドが声を掛け
る。
「お帰り〜。さっき知らせが来たよ〜。出発まで3日間お休みだね〜。ザァ〜ネ
ンでした。訓練もお休みだよ〜。」
「ロイドさん・・・。正しい連絡の仕方、教えて差し上げましょうか?」
「忙しいので、遠慮しておきます・・・。あ、そうだ。ちょっとお客さんが来ている
んだけど、僕達いろいろ忙しいから代わりに相手してあげて。あ、そちらが
モーゼス卿だね。ど〜も、長旅お疲れ様でした。特派のロイド・アスプルンド中
佐です。」
「ジーン・モーゼス少佐であります。以後、よろしくお願いいたします。」
 独特な特派の空気にやや呆然としながらも、ジーンは自己紹介をする。
「セシル・クルーミー大尉です。」
「ジーン・モーゼス少佐だ。よろしく頼む。」
 セシルの応対は至極まっとうだった。
「スザク君。お客さん待たせちゃ駄目だよ〜。」
「解りました。」
 スザクは客が来ているという部屋に向かう。
「つかぬ事を聞くが、クルーミー大尉。特派で最も階級が高いのは、枢木卿で
間違いないな?」
「そうですけど。特派の中では階級はあまり気にしないのが、ルールなんで
す。もっとも、軍務のときは変わりますが、基本的にはフランクな雰囲気なんで
すよ。慣れるのは大変だと思いますけど・・・。」
「そうか、正直驚いたよ・・・。あの枢木卿がそのような事を認めるとはな。あれ
ほど、冷徹な雰囲気の軍人を私はほとんど見た事が無いので、さぞ規律に厳
しい場所だと思っていた・・・。」
 ジーンのスザクに対する印象を聞いたセシルは、表情を曇らせた。
「昔は、もっと明るい性格だったんです・・・。でも・・・。」
「いや、済まなかった。聞くべき事ではなかったようだな。忘れてくれ。それと
私の事もジーンでいい。改めてよろしく頼むぞ。セシル。」
 セシルの表情を見たジーンが、セシルに詫びながら握手を求める。
「こちらこそよろしくお願いします。ジーンさん。後で、ヴァレーリアさんとヒルダ
さんも紹介しますね。」
 笑顔で、セシルが握手をする。

「リヴァル、シャーリー、それに会長・・・。」
 スザクが驚きのあまり、僅かに目をみはる。
「スザク、久しぶりだな。元気だったか?」
 リヴァルが歩み寄り、手を握る。
「あ、うん。皆こそ元気そうだね。」
「四ヶ月ぶりね。背伸びた?」
 シャーリーが話しかけてくる。
「うん、少しね。」
「噂は色々、お爺様やロイド伯爵から、聞いているわ。大活躍ですってね。」
 ミレイが手を差し伸べてくる。
「会長もお元気そうで何よりです。」
 スザクが僅かに笑みを見せる。

「それにしても元気そうで何よりよ。あれから学校にも来ないし、ニーナが飛
び級試験に合格して、本国に行く時も見送りに来なかったから心配していたの
よ。みんな。」
 ニーナはユーフェミアがゼロに殺された事にショックを受けて、ガニメデを改造
して核爆弾を作り上げたが、ミスがあり爆発はしなかった。
 その後、ニーナの研究に興味を持っていたロイドの推薦で、飛び級試験を受
験し合格してから、核物理学を学ぶ為に本国の大学に入学した。
「ニーナが僕を許すとは思えませんから。」
 本来ニーナはイレブンに嫌悪感情を抱いておりスザクには慣れたが、特区で
の悲劇でユーフェミアが死んだ時に、ゼロへの復讐心のあまりガニメデを核爆
弾にした事を聞いた時から、スザクはニーナがユーフェミアを守れなかった自
分を許すとは、考えていなかった。
「ニーナね。私のところに電話してくる時、あなたのことをさりげなく聞いて
くるのよ。あなたの事を許せないのは確かかもしれないけど、本人は生徒会の
時みたいな関係に戻りたがっている事も確かだと思うの。」
「そう・・・ですか・・・。」
 スザクは、途中でセシルが入れた紅茶を、一口飲んだ。
「なあ、偶には学校来いって・・・。ルルーシュも相変わらず行方不明だし
さ・・・、せめて、お前くらい来いよ。」
「そうか、相変わらず行方不明のままなんだ・・・。」
 トウキョウ租界での決戦以来、ルルーシュは行方不明であり、元皇子なだけ
に積極的に警察や軍に捜査を依頼する事もできなかった。
 故に、アッシュフォード家が主体となって捜索を行っているが、依然として行
方不明のままだった。
『何か、何か、大切な事を忘れている気がする・・・。』
 スザクは何かを忘れている気がして、考え込んだが結局解らなかった。
「スザク君、さっきアスプルンド伯爵に聞いたんだけど、転属になるって本当な
の?」
「はい、北アフリカ戦線に転属になります。」
 ミレイの質問に、スザクは静かに答える。
「やっぱり、そうなのか・・・。」
「うん、元々僕達特派はシュナイゼル殿下直属だしね。いつまでもこのエリア
11にいるわけじゃないんだ・・・。」
 リヴァルの呟きにスザクはそう答えた。
「でも、北アフリカ戦線て、凄い激戦区なんでしょう・・・。大丈夫なの?」
 シャーリーが心配そうに尋ねてくる。
「解らない・・・。ただそう簡単に死ぬつもりは無いよ。」
 スザクが、静かに答える。
「そうよね・・・。じゃあ、スザク君も仕事があるだろうし、失礼するわね。リヴァ
ル、シャーリー、帰るわよ。」
 ミレイ達は帰って行った。
『租界での決戦前に僕が書けた電話、それに、今も行方が解らないという事
実。信じたくはないけど、やっぱり君がゼロだったのかい?ルルーシュ。』
 スザクは前々から、ゼロがルルーシュではないかと考えていたが、それが確
信にさらに近づいた。
『例えそうだとしても、許しを請うつもりはない。請えるわけもない・・・、
死者に許しを請う事はできない。誰かを殺した者にそんな事は、許されな
い・・・。それでも、僕は・・・。』
 戻ってきたスザクの表情は、再びいつもの冷徹な表情に戻っていた。
「はあ〜、イベントの効果は無しか・・・。」
 そんなスザクを、溜息をつきながらロイドは見ていた。

「スザク、変わったよな・・・。変わりすぎて、本当にスザクかと思ったよ。
俺・・・。」
「うん・・・。」
 リヴァルの呟きにシャーリーが頷く。
 知り合った当初からスザクは軍人だったが、スザクは明るくよく笑い、軍務に
戻るときでも、あれほど冷徹な表情はしていなかった。
「せめて、ルルーシュがいれば何とかなったかもしれないわね。」
 空を仰ぎながら、ミレイが呟いた。

4日後、軍用空港から特派の所属となった浮遊航空艦アヴァロンと、複数のナ
イトメア用輸送機が北アフリカ戦線へ向けて、飛び立った。
「行きましたな。」
 執務室の窓から、空を見てギルフォードが呟く。
「そうだな・・・。」
 書類の一つにサインをして、コーネリアも空を見る。
「殿下、何故、モーゼス卿を枢木卿の麾下に?私は戦力増強の為と思ってい
ましたが。」
「あれが、自分から志願していたからな。それに・・・。」
「それに?」
「私からの礼だ。ユフィの事に対してのな。」
「できれば、枢木卿には、もう少しこちらにいて欲しかったですな。あの性格の
ままでいるのは、正直・・・。」
「仕方あるまい。兄上の命だ・・・。」
 別人のようになったスザクを、2人なりに案じていた。

「さて、仕込みは終わった・・・。あとは・・・、やっぱりヒロインに登場してもらうか
な。時期を見てね・・・。」
 そう呟く少年の傍らには、車椅子に座った少女が眠っていた。

 スザクが北アフリカ戦線に転属になって4日後、EUの重要拠点セウタが、ブ
リタニア軍の攻撃により陥落した。命からがら本国に帰ったEU軍の兵士が語
ったのは、白と金色で塗装された美しくも恐ろしい力を持つナイトメアの事だっ
た。
「ほう、枢木が北アフリカで成果を上げおったか・・・。」
 いつもの神殿のような場所で、シャルルは侍従から報告を聞いていた。
「は。その戦いぶりたるや、味方ですら恐れるものであったと。」
「ふむ・・・。」
 暫く考え込んだシャルルはおもむろに口を開いた。
「取り立ててみるか・・・。やはり使い出がある男だ。」
 笑みを浮かべながら、そう言った。

セウタを攻略してから一週間後、ブリタニアに衝撃が走った。
 ナンバーズ初の貴族であるスザクが、皇帝直属の12騎士ナイト・オブ・ラウ
ンズに加わると発表された為である。
 ブリタニア貴族の多くが、天を仰ぎ悪夢と嘆いたが、当のラウンズ達はむしろ
面白そうにしていた。
「彼が、ナイトオブセブンに?」
「そう。驚いたわ。あなたから技量は聞いていたけど、それからまだ四ヶ月よ。
まあ、セウタ攻略で最も功績を立てたから、当然といえば当然だけど。」
 エリファレットにそう話しかける女性騎士。象牙色のマントを羽織るその騎士
の名はクローディア・ガーシュイン。ラウンズの第8席、ナイトオブエイトの騎士
である。
「いや、彼なら東シナ海会戦での功績でラウンズになっても、おかしくなかった
と思うよ。」
 クローディアの専用機。厚い装甲とハドロン砲を始め強力な武装を持つ重量
級ナイトメア、IFX−401ガレス。開発が難航していた機体だが、エリファレッ
トがスタッフに加わった事により完成した機体である。オーバーホールの様子
を見ながら、そう感想を言った。
「おっ、やっぱり話題になってたか。」
 長身で金髪の陽気な騎士が話に加わる。緑のマントを羽織るその騎士の名
はジノ・ヴァインベルグ。ラウンズの第3席、ナイトオブスリーの騎士である。
「トリスタンのオーバーホールはどうしたんだい?ジノ。最後は君が確かめない
と駄目だろう。」
「終わったよ。とっくに。それより話を続けようぜ。」
「新しい、ラウンズの事?」
 小柄な少女が話しに加わる。ピンクのマントを羽織る少女の名はアーニャ・ア
ールストレイム。ラウンズの第6席、ナイトオブシックスの騎士である。
「ああ、貴族連中が大騒ぎだぜ。世も末だってな。」
「君だって、その貴族の家柄だろう。」
 楽しそうに話すジノに、苦笑を浮かべながらエリファレットが言う。ジノは帝国
の名家ヴァインベルグ家の出身である。
「冗談。俺はここまで昇るだけの実力もあるし、実績だって積んできた。家柄だ
けを誇りにするような奴らと、同類にされるのは御免だね。たとえナンバーズだ
ろうと、実力で昇ってきた奴の方を評価するよ。」
「確かにね。」
 ジノの意見に、クローディアが同意する。
「所詮、貴族達の単なるひがみ・・・。」
 アーニャのきつい一言に、一同が苦笑する。
 ラウンズは、帝国では最も実力主義の考え方を持っており、スザクが加わる
事に対しても、何の異論も出なかった。
「さて、明日の叙任式を楽しみにするか。」
 エリファレットがそう言って、再びガレスのオーバーホールの様子を見る。

 ブリタニア宮の謁見の間。
 そこで、帝国史上初めてのナンバーズのラウンズが加わろうとしていた。

 通常の軍服とは違うラウンズ専用の軍服に身を包み、鮮やかな青のマントを
羽織った、引き締まった表情のスザクが、玉座に座る皇帝シャルルの元に歩
いていく。
「神聖ブリタニア帝国第九十八代皇帝シャルル・ジ・ブリタニアの名の下に、
汝、枢木スザクをナイト・オブ・ラウンズ第7席、ナイトオブセブンに任命す
る。又、子爵の爵位を与える。以後、ブリタニア皇室と帝国に無二の忠誠を尽
くすと誓うか?」
「イエス、ユア・マジェスティ。」
 跪いたスザクが恭しく差し出した剣を受け取り、両肩を叩く。
「これよりナイトオブセブンとして、その力を帝国の為に尽くせ。」
「イエス、ユア・マジェスティ。」
 剣を鞘に収めたスザクが立ち上がり、謁見の間に集まった他のラウンズや貴
族を見る。
 皇帝の前とあって、不満そうな表情を見せるものはいなかったが、スザクの
歳に似つかわしくない冷徹な表情にほとんどの貴族達は息を飲む。
 盛大な拍手にはタイムラグがあった。
 最初の拍手は、スザクと面識があるエリファレットと、スザクのラウンズ入りを
好意的に見ていたジノ達。ほぼ同時に、特派の技術主任にしてアスプルンド
伯爵家の当主であるロイド。そして、シュナイゼル。遅れて、他の貴族たちが
続く。
『あれが、枢木スザクか・・・。ここにいるだけで、皮膚が切れそうなほどにまと
っている空気が冷徹だな。他の貴族共がビビルわけだぜ・・・。』
 スザクを見ながらジノは、そう考えていた。
『よくここまで昇ってきたね。これからもっと昇りつめてもらうよ・・・。』
 シュナイゼルは、何故かそのように考えていた。

 一ヵ月後、スザクのナイトオブセブン就任に伴い、スザク専属の技術者となっ
たロイドが、エリファレットの協力を取り付けランスロットの改修を行い、スザク
は戦場に赴いていった。

後書き
BEFORE TURNはこれで終了です。
今回はエリア11の平定と、スザクや周囲の人間の心情を、書こうと思ったの
ですが、中々うまくいきませんね。
スザクについて、もうちょっと書くべきだったかなと、考えています。
さて、ナリタ連山の戦いですが、これは一期の日本解放戦線の戦い方は、こう
するべきだと、思っていた戦い方をスザクにしてもらっています。
ナリタ連山は例えるならば山城。最も攻めにくい部類に入ります。
戦国時代でも、武田信玄が戸石城を、伊達政宗が二本松城を、手中に収める
のに非常に苦労しています。
いかにブリタニア軍に、大量のナイトメアがあろうと、地の利のある解放戦線は
ゲリラ戦に徹していれば、あれほど無残な負け方をする事は無かった筈です。
そして、イタリアですが、南部マフィアに関しては、実際イタリアが頭を痛めてい
る問題でもあります。
知っている方もいらっしゃるでしょうが、工業化の進んだ北部と南部には収入
等でも格差があり、政府のこれを何とかしようとしているのですが、イタリア南
部のマフィアが地元の企業に強い影響力を持っているため、企業の進出が難
しく、またマフィア関連の企業の収益も大きく、実際に警察の署長が、買収され
ていたという例の記述も見た記憶があります。
次回からはAFTER TURNです。
ナイトオブセブンとなったスザクはどう行動し何を思うかを、中華連邦や黒の騎
士団と絡めながら話は進んでいきます。
次回 ナイト オブ ラウンズ

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
スザクの心の闇はリヴァル達では払えませんでしたか。

シュナイゼルが何か企んでそうなとこにそそられますww。

それにしてもあの子供は、やっぱりV.V.?。
いや、やっぱり言わなくていいです^^。
楽しみにこれからも読ませていただきますんで。

BT書き上げ、ご苦労様でした。
続編のATも頑張って書いてください。もちろん、無理のない範囲で!!。
sora
URL
2008/05/26 01:06
soraさん。
いつもコメントありがとうございます。

>スザクの心の闇はリヴァル達では払えませんで
 したか。
 アッシュフォード学園で、最初にスザクを受け
入れたのは生徒会の面々ですけど、スザクについ
てそれほど多く知っているわけではありませんか
らね。

>シュナイゼルが何か企んでそう
 企んでますよ〜。
 それはこれからをお楽しみ下さい。

>続編のATも頑張って書いてください。もちろ
 ん、無理のない範囲で!!
 お気遣い、ありがとうございます。
 BTは以前から書き溜めていましたから、別に
無理はしていませんし、ATも1話は書きあがっ
ているんですよ。
CIC担当
2008/05/27 01:39

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